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虫暮部さん
平均点: 6.22点 書評数: 1701件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.30 8点 ペルシャ猫の謎- 有栖川有栖 2020/06/11 12:27
 表題作、私は高評価します。“現実に起きる現象だから小説や芝居に取り入れられているんです”――その通り! 目撃証言だけで有罪判決は出ないだろうが、コレで濡れ衣を着せられたら、目撃者も“嘘”を吐いているわけではないだけに、対処するのは大変だ。
 他の短編はいまひとつ。

No.29 7点 濱地健三郎の幽たる事件簿- 有栖川有栖 2020/06/02 12:05
 作中の台詞にあるように“幽霊の法則がはっきりしないね”。それは良し悪しであって、話のヴァリエーションの源になっていると同時に、まぁ説明はどうとでも付くものだと言うことでもある。最も推理小説っぽい「姉は何処」が結局一番印象的だった、との感想は、作品の限界なのか読者としての私の限界なのか。

No.28 4点 英国庭園の謎- 有栖川有栖 2020/03/27 14:04
 「竜胆紅一の疑惑」以外はどれもいただけない。基本は私の好きな有栖川ブシなんだけど、大切な部分が妙に奥の方に引っ込んでいて、そのせいで物語でなく雑学ばかりが目立つ印象。

No.27 7点 ロシア紅茶の謎- 有栖川有栖 2020/02/25 10:55
 藤木稟も麒麟。

 “エラリー・クイーンのひそみに倣った国名シリーズ”と紹介されるが、可笑しなダイイング・メッセージが繰り返し登場する点にこそ“EQの後継者だなぁ”と私は頬が緩む。「屋根裏の散歩者」のラストには良い意味で唖然。しかし江戸川乱歩作品の概要をあんなに明かす必要は無かろうに。

 ところで、ロシア紅茶ってジャムと砂糖、両方入れる?

No.26 7点 マジックミラー- 有栖川有栖 2019/12/30 10:32
 ネタバレしつつ書くが、アリバイ・トリックで良く判らない点がある。某が、白鳥を小松で降りずに、わざわざ金沢まで行って小松へ引き返す手間をかけた理由は? 少しでも長く白鳥に乗っていたかった? どこかに書いてあるのを私が見落とした?

No.25 7点 カナダ金貨の謎- 有栖川有栖 2019/12/19 10:58
 短編2編の“謎そのものよりも謎の出し方がメタ的なヒントになっている”状態が面白い。表題作中の“キャメルの由来”も同様。
 「船長が死んだ夜」。犯人の肉体的特徴の描写が少なくて読み流していた為、解決編で“アレッ、この人はそういうキャラだっけ?”とキョトンとしてしまった。ええ私の読み方が悪いんです。それを除けば、とても良い。

No.24 8点 孤島パズル- 有栖川有栖 2019/10/23 16:11
 美しくも悲しい、物語としての側面は言うことなし。“男女関係ではないけれど仲の良い男女”の描き方も好きだ。
 で、ネタバレしつつ揚げ足取り。第一の事件、相続の際には、公平性の担保の為、関係者の死んだ順番はかなり厳しく判定される、と物の本で読んだ(判定出来ない場合は、同時死亡と推定され、相続は行われない)。命がけの願いが叶うのは難しい気がする。江神が挙げた判例は実話なのだろうか。ちょっとびっくり。
 第二の事件、他の人がアリス達の見ていないところで凶器を現場にこっそり運んだ可能性が除外出来ていない。
 あと、モアイパズルの解答、線を曲げる為だけの点が幾つか存在して美しくない。架空の島なのだから、そういう余剰が発生しない形に設定出来た筈。

No.23 8点 月光ゲーム- 有栖川有栖 2019/08/30 10:04
 物語に停滞がなく常に進行し続けるので、読み易く面白かった。本格ミステリに対する志の高さが感じられる。

 解決編のダイイング・メッセージ解説で江神が言及した“テントに貼りだされた表札”――そんな記述あった? “十七人か、テントに表札つけなきゃね”という台詞はあり、理代たちのテントの表札は事件の小道具として登場するから、全てのテントに表札があると推測は可能だが……私の見落とし?

No.22 7点 46番目の密室- 有栖川有栖 2019/07/30 11:55
 揚げ足取り。
 煙突の中の暗号は、出鱈目を書いておいても(いや、何も書かなくとも)犯行に於いて問題は無い。それなのにわざわざちゃんとした暗号を作って使っている。作中で突っ込んで“ミステリ好きの矜持です”とか言わせればいいのに。
 火村が小さな声で歌ったザ・ローリング・ストーンズ「Paint It, Black」。実は作中の表記に該当する適切なフレーズは存在しない。

No.21 6点 こうして誰もいなくなった- 有栖川有栖 2019/06/24 10:58
 文章が良いので読まされてしまうが、それほど決定的な短編は見当たらない。
 結局、表題作が最も面白いが、作者がこういう形の本歌取りを試みた意図はいまひとつ判らなかった。それと犯人が何か変な行動をしているが、少々アンフェアでは。何故そこで被害者を制止する? 何故せっかくの好機にさっさと殺さずお喋りしている?

No.20 7点 ブラジル蝶の謎- 有栖川有栖 2019/04/01 11:07
 「妄想日記」。アレが結局ダミーだなんてがっかり。期待してたのにぃ。
 「人喰いの滝」。随分と手間暇のかかりそうなトリック。何故死体を滝に喰わせなかったのか。行方不明扱いで済みそうな気がするけど。
 国の名を冠した短編がひとつしか収められていないのに本そのものを〈国名シリーズ〉と銘打つのは誇大広告では? そもそも、どんなモノであれどこかの国で生まれてはいるわけで、タイトルの共通性だけでそう呼ぶのは恣意的というか、かなり実体の無いシリーズだと思う。特別に描写が克明だと言うことでもないし。

No.19 8点 幽霊刑事- 有栖川有栖 2019/01/29 12:02
 ミステリの面白さとはちょっと違う気もするが、変化球ゆえに作者のミステリ以外の部分の良さが上手く出ているのでは。
 早川が目隠しして口寄せすれば幽霊的な何者かの存在はほぼ証明出来る? ただ、証明したからそれで良しと言うものでもないしね。

No.18 8点 インド倶楽部の謎- 有栖川有栖 2018/12/10 11:24
 諸々の要素がバランス良く配された佳品。花蓮のまっすぐなキャラクターが良い。
 気になったのは、探偵事務所のパソコンに壊されたものとそうでないものがある点。情報が共有されていないと犯人が信じる理由は無い。
 そして動機。そうきたかと驚きつつ何か既視感がある。これって'90年代の長編『G***』の鏡像では?

No.17 7点 乱鴉の島- 有栖川有栖 2017/12/05 11:13
 島の秘密の方がメインで殺人事件がオマケみたいに感じてしまった。幾つもの仮説のあとで明かされたその秘密もさほど驚きではない。殺人とのつながりも乏しいし、解明の過程で暴く必要はなかったのでは。アリスの海老原に畏まる様がおかしかった。

No.16 7点 濱地健三郎の霊なる事件簿- 有栖川有栖 2017/11/30 12:28
 特殊な設定のシリーズ短編集、ではあるが、いつもの有栖川作品とさほどテイストは変わらないように思う。これは良くも悪くも、であって、もう少し斬新な新機軸という感じがあっても良かった気がする。
 敢て突っ込むならば、「霧氷館の亡霊」の事後処理について。“ロシアン・ルーレットの当たり”がひとつだけである保証はないわけで、万全を期すなら全て処分するしかないのでは。

No.15 5点 ジュリエットの悲鳴- 有栖川有栖 2017/07/18 10:58
 これは有栖川有栖作品である、というどうしようもなく多大な先入観のもとで読むせいだが、シリーズ・キャラクターがいないだけでこうも会話から軽妙さが失われるものか。

No.14 8点 幻想運河- 有栖川有栖 2017/06/16 12:33
 法的にどうあれ、私はドラッグを試したいとは思わないな~。ところで、詩人が自殺するエピソードはなんなの?

No.13 6点 狩人の悪夢- 有栖川有栖 2017/05/01 10:05
 手首切断の論理がゴチャゴチャしていて判りづらい。“カウダカウダ!”の手掛かりは都合良過ぎな気がする。合意の上でのゴーストライターが悪いとは思わない。
 “柱をはさんで首を絞める”というアリスの案を火村先生は“ドタバタ喜劇”と評したが、被害者は抵抗しにくく加害者は力をかけやすく寧ろ有効な殺し方だと思う。

No.12 6点 朱色の研究- 有栖川有栖 2017/04/18 13:31
 大野夕雨子殺しの動機は共感出来る。本作の優れたポイント。
 だが、作中でアリスも述べているが、崖の上から石をぶつけてひとを殺す、というのは確実性に乏しい気がする。共犯者に依頼する際に指定するような手段か疑問。加害者と被害者に距離がある殺し方じゃないと、実は既に死んでいた、とはならない。そうならないとの後の殺人の動機につながらない、という作者の都合?それはずるい。
 また、マンションでの山内陽平殺しで犯人が講じた工作については、そんな賭けのような行動に出る心理的な裏打ちの説明が強引だと思う。余計なことしなければ容疑者圏外だったのでは。

No.11 9点 女王国の城- 有栖川有栖 2017/02/20 10:06
 江神の台詞にもあるように、〈ペリハ〉にはあまり効き目がない。“捜査を混乱させるためのフェイクの手掛かり”をあまり自由に解禁すると、犯人は(というか作者は)ホワイダニットをぶっちぎって幾らでも奇天烈な事件現場を無意味に作り出してしまうではないか。蛇足だと言う気もするが、しょーもないダイイング・メッセージを持ち出してしまうのはそれこそクイーンの血を継ぐ悪癖か。
 読書の楽しさにじっくり浸れるこの長さはありがたい。やはりこのひとは文章がさりげなく上手い。 

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虫暮部さん
ひとこと
好きな作家
泡坂妻夫、山田正紀、西尾維新
採点傾向
平均点: 6.22点   採点数: 1701件
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