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虫暮部さん
平均点: 6.22点 書評数: 1843件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.29 7点 それは令和のことでした、 - 歌野晶午 2024/08/29 13:10
 本当にありそうな怖い話々。題材を物語にする技には安定感がある。但し突出した部分は見当たらないし、“近年社会問題化した事象を織り込む” と言う狙いが、こうやって一冊にまとめてしまうと約束事めいて少々鼻に付く。

 「わたしが告発する!」。死体が発見されなければ起訴も無いのだから、投了には早過ぎると思う。でも気持が折れちゃったんだね。

No.28 5点 首切り島の一夜- 歌野晶午 2023/02/03 11:51
 話がどっちへ進むか見当が付かない点は良かったが、それをアクロバティックな論理でつなげるでなく、読み終えてみると期待外れ。それは “歌野晶午にこういう方向性を期待しているわけではない” と言うことでもある。この人は過去にも幾つかそういう長編を書いて読者を困らせているな……。

No.27 9点 絶望ノート- 歌野晶午 2022/06/26 11:56
 面白過ぎて評しづらいな。ビデオのアップロードについては未消化な感じがある。刑事と探偵の会話が尻切れ蜻蛉なのも気になる。しかし、歌野晶午作品は概ね読んだが、私はこれが一番好き。

No.26 7点 舞田ひとみ14歳、放課後ときどき探偵- 歌野晶午 2022/06/26 11:55
 ちゃんと探偵しているひとみが、しかも中学生なりの関わり方だから中途半端で、それ故 “謎の完全な解明を目指さないシリーズ” 。私は良いアイデアだと思う。
 「白+赤=シロ」の “隠し金庫” は、自宅で実践してみた。アレを更に捻ってああいう形で謎に組み込むとはなかなか凝っている。解明部分のカタルシスが凄い。

 小説に於いて、話し方が読者の認識に与える影響の大きさを改めて感じた。それだけに、“話し方と外見のギャップ” と言うキャラクター設定がここでは生きてないんじゃないか。漫画じゃないんだから。どうしても御嬢様&ボーイッシュのイメージから抜け出せなかった。

No.25 7点 ハッピーエンドにさよならを- 歌野晶午 2022/06/09 14:20
 「玉川上死」が傑作。後半は少々不自然だが、犯行自体がパーフェクトなので、どうやって種明かしをするか作者も困ったのではないか。加害者の捨て身っぷりに私はグッと来た。それを高く評価するのは、法月綸太郎の最高傑作を「身投げ女のブルース」だとする気持と共通のものかも。
 「 In the lap of the mother 」と言う題はクイーン(エラリーじゃないよ)の曲名「 In the lap of the gods 」に由来する。旧作にも幾つか同バンドのネタを使っているし間違いない。
 掌編も含め、粒は揃っていると思う。“殺人の時効成立” は過去の話になっちゃったねぇ。

No.24 5点 魔王城殺人事件- 歌野晶午 2022/05/03 12:17
 今にも子供が戻って来るかもしれない状況でデジカメに偽装工作、と言うのはサーヴィス精神が過剰かな?
 机に刻みこまれていた“19845150OU812” は知名度がどの程度あるんだろう。VHのアルバム・タイトルですよ。

No.23 6点 家守- 歌野晶午 2022/04/16 12:23
 「人形師の家で」、ラストの台詞のような事情があるなら、共犯者を呼び出す必要は無いよね。
 「転居先不明」、偶然をどこまで許容するかは悩ましいところだが、人を殺した夜に偶然もう一人の人殺しがやって来た? うーむ……。

No.22 7点 そして名探偵は生まれた- 歌野晶午 2022/04/13 12:41
 表題作と「夏の雪、冬のサンバ」の密室トリックは、同じもののヴァリエーション。更にそれを作中作(映画)でも暗示している。
 つまりこれは『安達ヶ原の鬼密室』と同じ仕掛けで、但しあちらではそのことを明示したのに対して、こちらでは “どーだ、分散させたら気付かないだろ” と言いたげ。『安達ヶ原の鬼密室』で叩かれた意趣返し?

No.21 6点 館という名の楽園で- 歌野晶午 2022/04/06 15:03
 息子の復讐劇で館が炎上するものだと思っていた。はっきり書かれてはいないけど、保険金も使い尽くしたと言う含みだよね。
 いかにもミステリ・マニアがやりたがりそうなトリックの為のトリックをミステリ・マニアが実践している、と言う意味での説得力はある反面、自分も同類ゆえ勘で何となく気付いてしまったのが残念。

No.20 8点 ブードゥー・チャイルド- 歌野晶午 2022/02/16 13:46
 “前世” の謎は見事で、その解明に奔走する過程も読み易く面白く書かれていると思う。但し――
 基本的に悪意は何処にも無いのに過去のものも含めて殺人2件、意識不明1件。暴力に対するハードルが低い。
 “英語が通じない” と言うだけで一気にコミュニケーション不全に陥っているようで極端。
 牧師の対応は何か韜晦しているみたいだなぁ。

 4章。“奥さんは、あなたとは無関係の来客がある場合でも、あなたに伝えるような人でしたか?” とは変な質問だ。伝えなかったら “伝えていない” ことも判らないじゃないか。ネタじゃないよね?

No.19 7点 生存者、一名- 歌野晶午 2021/12/25 10:56
 何しろテーマが “孤島” だから、或る程度パターン通りなのもやむなし? その上で登場人物の気持など、それなりに上手く書かれていると思う。教団についてもっと描写して欲しかった。あっ、“ケモノ” の真相が不明なままだ。

No.18 8点 安達ヶ原の鬼密室- 歌野晶午 2021/11/18 10:25
 再読なり。ストーリー、何となく覚えていた。トリック、それなりに覚えていた。欠点、はっきり覚えていた!
 と言うわけで「こうへいくんとナノレンジャーきゅうしゅつだいさくせん」「 The Ripper with Edouard 」は飛ばして読んだ。エクセレント! これでいいのだ。個人的にこの密室トリックは五指に入る。

No.17 6点 放浪探偵と七つの殺人- 歌野晶午 2021/10/09 13:06
 「水難の夜」の鮮やかな反転は見事。「阿闍梨天空死譚」トリック自体は結構判り易かったが、飾り付けが面白い。
 「烏勧請」わざわざゴミ屋敷を作るほうが大変では? ブツを動かせない確固たる理由が欲しかった。「有罪としての不在」あんなメタネタはいらん。

No.16 7点 正月十一日、鏡殺し- 歌野晶午 2021/08/12 11:32
 前半は“リミッター装着済み”って感じで、特に「盗聴」は物足りない。後半はそれを解除、「美神崩壊」は十年後も夢に見そう。
 “作風のヴァリエーション”ってことではあるが、こんな風に明確に並べてしまうと、後半を引き立たせる為に前半を捨て駒にしたように思えてしまう。と言うか、私に対してはそのように機能した。

No.15 7点 さらわれたい女- 歌野晶午 2021/08/03 13:02
 ネタバレしつつ揚げ足取り。
 部屋の借主である会社A。その関係者Bさん。Aと契約している会社C。そこに勤めるDさん。
 しかし、Dさんの本作品に於ける役割は、Cの社員ではなく“Bさんの愛人である”ことだ。
 Dさんが別の仕事をしていれば、便利屋が糸を辿ってもDさんに出会うことはなかった。この出会いで真相に気付いた。
 つまり、結末から逆算して、手掛かりになるように作者が人物を配置しているのである。ちょっと露骨じゃないかなぁ。確かに、手掛かりをきちんと用意するのは大事だけど。

No.14 4点 ガラス張りの誘拐- 歌野晶午 2021/07/03 11:03
 事件の様相は面白いが真相は残念。
 助教授のキャラは良い、と思ったら、そういうことか……あっ、関係を築く為に必要とはいえ、依頼人の娘を買ったんかい。帰郷したら本当に死んでいたと言う偶然はやり過ぎ。

No.13 6点 舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵- 歌野晶午 2021/05/07 10:26
 ひとみが推理しているわけじゃなくて刑事が勝手にヒントを読み取るのは赤川次郎“三毛猫ホームズ”方式? 小粒ながら良質な短編を巧みに並べて中粒くらいにはランクアップさせている。子供の描き方の匙加減も上手く、雰囲気の良さで勝ちだ。
 『名探偵、初心者ですが 舞田ひとみの推理ノート』として再刊。新作かと思った。こういう改題はやめて欲しいな。

No.12 7点 動く家の殺人- 歌野晶午 2020/10/05 11:45
 最後に推測される動機にはあまり説得力が感じられない。
 詐欺についての諸々は面白い。 
 でも作中の劇は全然面白そうじゃないな~。オーギュストは Auguste だから、頭文字を並べ替えてもああはならない。

No.11 6点 白い家の殺人- 歌野晶午 2020/09/10 12:06
 エレベーター無し4階建て別荘の最上階の部屋を最年長85歳にあてがうとは。おばあちゃんいじめられてない? 登場人物表&別荘見取り図を見た時から気になって気になって。一応理由はあるが、つまりは神たる作者が都合のいい状況設定をしたトバッチリである。
 犯人特定の理屈、“○○が出来そうなのは誰それだけ”は根拠薄弱。爪を隠せる鷹だっているだろ。

No.10 5点 長い家の殺人- 歌野晶午 2020/06/30 11:44
 小説に登場するバンドマンに説得力を感じたことはあまり無い。作者は音楽に詳しくない読者も想定して書くから、CDのライナー・ノーツや音楽雑誌の記事とは拠って立つところが違うのは止むを得ない。私の得意分野である故に却って相性が悪い、と言う皮肉だ。そんなわけで本作もキャラクター的な部分でいまひとつ乗れず。
 第二章で引用される“If I'm not back again...”はクイーン「Bohemian Rhapsody」。“Mama, just killed a man...”てな歌だからミステリに相応しいかも。
 
 揚げ足取り。最初の殺人で、'54年のストラトキャスターを納めたギターケースの行方が判らなくなり、死体のある部屋で発見された。ところが中身を確認する描写が一切無いまま、いつの間にか“ギターは無傷で戻ってきた”と周知の事実のように地の文でサラッと語られている。ケースそのものの状態は? ピック等の小物類は取られていない? 作者はそういう確認が不要だと知っていたので、ついそこを疎かにしちゃった。だってそのケースは実はおっとネタバレ。

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虫暮部さん
ひとこと
好きな作家
泡坂妻夫、山田正紀、西尾維新
採点傾向
平均点: 6.22点   採点数: 1843件
採点の多い作家(TOP10)
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