皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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kanamoriさん |
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| 平均点: 5.89点 | 書評数: 2460件 |
| No.1280 | 5点 | 脳波の誘い- 佐野洋 | 2010/11/25 18:00 |
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| 最初期の長編ミステリ。
テレパシーで他人を誘導し自殺させるという老研究者が出てきて、おおっこれは「読者よ欺かるるなかれ」に挑戦した不可能犯罪トリックものか、と一瞬思わせますが、そこは常識人の佐野洋のこと、単なる偽装自殺疑惑事件になってしまいます。 とはいっても、意外な犯人像を設定したまずまずの本格ミステリになっていて、読んでガッカリ感はありませんでしたが。 |
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| No.1279 | 6点 | 黄昏にマックの店で- ロス・トーマス | 2010/11/24 17:48 |
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| このシリーズ、2作目以降はクライム小説寄りになっていたように思いますが、今作は再びCIA相手ということで、スパイ謀略系の様相です。もともとワシントンの二代目「マックの店」をCIAに出させた金で開いた経緯があるので、第1作の続編という位置づけの作品でしょうか。
今回、パディロ&マコークルの2人組は、CIAの裏事情を書いた回想録を巡って、虚々実々のコンゲームを繰り広げますが、相変わらず敵も味方も会話が洒落ていて楽しめます。これでプロットがもう少し整理されて分かり易ければ文句がないのですが。 |
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| No.1278 | 6点 | 舞田ひとみ14歳、放課後ときどき探偵- 歌野晶午 | 2010/11/23 21:16 |
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| 舞田ひとみ中学生編。
ひとみに事件と謎を持ち込んでくる語り手のエミリら、女子中学生3人組のキャラクターがよくて、ミステリ部分よりその言動や生態が面白かったので前作より高評価。 パズラーとしてはいずれもユルメですが、激やせ外国人講師の謎「幽霊は先生」が個人的ベスト。 これ以降、17歳高校生編だけでなく、20歳女子大生編、23歳OL編、26歳奥様編.....と続編を希望します(笑)。 |
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| No.1277 | 7点 | 青い虚空- ジェフリー・ディーヴァー | 2010/11/22 20:31 |
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| 「ソウル・コレクター」や今年出たキャサリン・ダンス主役の新作と同様、ネット犯罪がテーマの単発作品。
犯人の名前は早々に明かされており、天才ハッカーと犯人との電脳空間での追跡劇を読まされるだけのサスペンスかと思っていると....さすが、ディーヴァー。次々とお家芸のドンデン返しが連発されます。 物語としての深みは若干欠けるように思いますが、娯楽ものサスペンスとしては充分に楽しめた。 |
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| No.1276 | 8点 | エラリー・クイーン論- 評論・エッセイ | 2010/11/21 21:09 |
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| ファンクラブ会長の評論集だけあって、マニアックでディープ、かつロジカルな考察がぎっしり詰まっている。国名シリーズを読んだのが随分前なので、多少ついていけない所もありましたが。
主な論点は2つ。前半は、作家クイーンのミステリの特異性について述べている。 クリステイ、ディクスン・カーら「意外な真相」志向の作家と違って、クイーンは「意外な推理」を志向しているという考察はあまり目新しいとは思わないが、”読者への挑戦”は必ずしも犯人当てを求めているのではないという考察は面白い。 2つめの論点は、いわゆる「後期クイーン問題」。その中の「名探偵の存在を前提とした犯人が偽の手掛かりを用意した場合、作中探偵は真の解決に至れるか」という命題のほうを俎上にあげている。 笠井潔、小森健太朗両氏の説に真っ向から対峙した反論は、少々くどいけれど知的興奮を掻き立てざるを得ないロジックだ。結論の、”本格ミステリによる対人ゲーム”という主張には斬新さを感じました。 本書の性質上、クイーンの作品を中心に多くのネタバレ(ずばり犯人の名前まで)があるので、ある程度読み通しておく必要があります。というか、読んでないと「後期クイーン問題」の考察の面白さが分からないと思います。特に「ギリシャ棺の謎」を直前に再読しておくと本書の面白さが倍増するはず。 |
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| No.1275 | 7点 | 最高の悪運- ドナルド・E・ウェストレイク | 2010/11/21 20:10 |
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| 不運な泥棒ドートマンダー、シリーズ第9作はオールキャストのお祭り騒ぎで爆笑を誘います。
大邸宅の主人に奪われた記念の指輪を奪還するため、仲間を集めて何度も忍び込むのですが、肝心の指輪ではなく、仲間が次々と邸宅の金品を手に入れていきます。回を重ねる毎に仲間がどんどん増えていく様が繰り返しギャグ風で無性に面白い。 準レギュラーが揃う構成はひょとして「悪党パーカー/殺戮の月」のパロデイかもしれません。 |
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| No.1274 | 5点 | 新・新本格もどき- 霧舎巧 | 2010/11/20 18:54 |
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| パスティーシュ連作短編集の第2弾。今回は新本格第二世代の作家・作品をもどいています。
最初の数作は、いきなり前作を踏まえたシチュエーション、人物設定になっていて若干不親切な創り。前作の状況を憶えてないと判りずらい。 最後のオチが綺麗に決まった「すべてがXになる」と、ノックスの十戒を悉く破っていく趣向の「覆面作家は二人もいらない」が印象に残りましたが、パロデイとしての出来は前作よりだいぶ落ちる感じがしました。 |
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| No.1273 | 6点 | 漂う殺人鬼- ピーター・ラヴゼイ | 2010/11/20 18:35 |
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| ダイヤモンド警視シリーズの8作目は、シリアルキラーもの。
海水浴場で殺された女性の職業が判明し、残された手記が出て来るところから一気に面白くなる。ミッシング・リングの真相は目新しいものとは言えないけれど、現代風にアレンジされていて、ミステリとしては上出来でしょう。 意外だったのは、前作のステラの事件の翳が控えめなこと。そのかわり、ヘン・マリン主任警部という後にスピンオフし主役を務めることになる強烈女性キャラが出てきますが。 |
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| No.1272 | 4点 | 最後の証人- 柚月裕子 | 2010/11/19 18:08 |
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| 法廷ミステリ。
タイトルから、クリスティや小泉喜美子の有名作品を連想せざるをえないこともありますが、小説技巧があまり上手でないため仕掛けが早々に判ってしまいました。それだけがこの小説の読みどころではありませんが、登場人物がいずれも類型的に思えて、二時間ドラマの脚本を読むようでした。どうも、「このミス大賞」出身作家の作品とはどれも相性が良くないようです。 |
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| No.1271 | 6点 | 探偵の帰郷- スティーヴン・グリーンリーフ | 2010/11/19 17:39 |
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| 遺産である農場の処分のため、兄弟が住むアイオワ州の故郷に30年ぶりに帰ってきたジョン・タナー。
私立探偵タナーのハードボイルドは、プロット重視でロスマクの亜流という評価がついてまわるようですが、4作目の本書は自前の作品という感じがします。 文字どおり「探偵の帰郷もの」テーマらしく、甥の殺害事件を柱にしながら、自身の過去、肉親との関係などタナーの揺れ動く心情を絡めた内省的ハードボイルドで完成度は高いと思います。 |
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| No.1270 | 5点 | 災園- 三津田信三 | 2010/11/18 18:09 |
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| こども視点のホラーミステリ、<家>シリーズの3作目。
引っ越し先の家で過去に纏わる怪異に遭遇するというのがシリーズのパターンですが、今回は同じ施設で生活する少年少女のちびっこ探偵団的様相もあり、どちらかというとミステリ寄りの作品でした。 序盤で語られる主人公の6歳の女の子が持つ特殊能力が、物語上活かされていないのは拍子抜けの感。 |
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| No.1269 | 8点 | 縞模様の霊柩車- ロス・マクドナルド | 2010/11/17 18:08 |
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| ”家庭の悲劇”をテーマにしているのは同じですが、円熟期の傑作といわれる3作の中では、徒に複雑な人間関係を設定していないぶん、本書のプロットが一番すっきりしているように思います。強引なドンデン狙いのトリックがないのも好印象。ただ、若者たちが乗りまわす霊柩車のエピソードを挿入した意味と、それをタイトルにした理由がいまいち判らないのですが。
メキシコの地を効果的に使っているのは、マーガレット・ミラーの作品を連想せます。メキシコの教会でのラストシーンは作者の作品の中でも印象に残る名場面でしょう。 |
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| No.1268 | 4点 | 新世界崩壊- 倉阪鬼一郎 | 2010/11/16 18:00 |
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| バカミス。「この館の正体は何でしょう?」シリーズの第3弾。
さすがに、同じような趣向を続けられるとインパクトは落ちますね。泡坂風の活字のお遊びも、作者の労力の割に面白味に欠けるのは前作同様でした。 ニューヨークからロンドンへの瞬間移動のメタな仕掛けが、小森健太朗のあれに匹敵するおバカさで、これは笑撃的でした。 |
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| No.1267 | 5点 | 燃える接吻- ミッキー・スピレイン | 2010/11/15 18:23 |
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| 私立探偵マイク・ハマー登場の第6作。
初っ端から、女性に対するサディスティックな拷問シーンで幕が開き、例によって暴力と銃声にあふれ、最後はやはり「裁くのは俺だ!」になっています。シリーズ第一期の集大成というか、過去の作品で読んだようなシーンが続くのは気のせい? 本書の後、しばらくハマーは姿を消すが、10年後に帰ってきた彼はまるで別人。そういう意味では、本書がタフガイ探偵の最後の雄姿かもしれません。 |
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| No.1266 | 5点 | 砂漠の悪魔- 近藤史恵 | 2010/11/14 22:02 |
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| ちょっとした悪意から友人を自殺に追い込んでしまった日本人大学生の流浪の旅。中国の西の果て・ウイグル自治区へ行きつくまでのロード・ノベルであるとともに、主人公・広太の心の旅でもある。
海外の僻地を舞台にした少数民族が絡む小説といえば、胡桃沢耕史や船戸与一の冒険小説が思い浮かびますが、前者のような冒険ロマンの味わいはなく、後者ほど過激なノワールが前面に出てこない。主人公の心情の変転を丁寧に描写する作者らしい作品ですが、広太たちが終盤に遭遇する”タクラマカン砂漠の悪魔”の扱いについては賛否が分かれそう。 |
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| No.1265 | 7点 | イマベルへの愛- チェスター・ハイムズ | 2010/11/13 17:26 |
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| ハーレム(黒人街)の黒人刑事コンビ、墓掘りジョーンズ&棺桶エドが登場するシリーズ第1弾。
主人公は葬儀屋に務めるお人好しで真面目なクリスチャンの黒人青年ジャクソン。詐欺師3人組に騙され、内妻イマベルの裏切りに気付かず、愚直にイマベルへの愛のためハーレム中を霊柩車で暴走する。猥雑な黒人街のリアルな日常描写とともに、修道女に変装し小銭を稼ぐジャクソンの双子の兄、罪を告解するジャクソンに対し警察へ行けと逃げる牧師などの脇役キャラも立っています。とくに、死体が増えて商売繁盛だとジャクソンの復職を許す葬儀屋の主人が最高(笑)。かえって、本作では墓掘り&棺桶があまり目立たないのですが。 ハイムズは、当初フランスで評価されベストセラーとなった作家ですが、確かにフランス人好みのノワールとシュールな雰囲気が横溢する作品で大いに楽しめました。 |
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| No.1264 | 5点 | 北陸トンネル殺人事件- 斎藤栄 | 2010/11/12 18:21 |
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| 量産作家というレッテルとベタなタイトルで手を出すのを躊躇させますが、構成に趣向を凝らせたまずまずの意欲作だと思います。
脱獄犯2名の逃亡潜入、スーパー食料品売場で見つかった瓶詰めの指、子供の誘拐事件など、南洋台ニュータウン団地近くの駐在所巡査・西原のまわりで次々と事件が発生しますが、この小説の中心の謎が不明のまま、終盤まで引っ張る展開がスリリングです。惜しいのは、タイトル名で動機の推測が容易になっていることと、テーマの割に文章が叙情性に欠けることでしょうか。 |
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| No.1263 | 6点 | エアーズ家の没落- サラ・ウォーターズ | 2010/11/11 18:45 |
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| 18世紀以来の村の名家で、戦後も古びれた領主館に住み続けるエアーズ家に続発する災厄を描いたゴシック・ロマン風の物語。
子供の頃から領主館に憧れを持つ冴えない村医者・ファラデーの視点で語られる一家の斜陽の現実と、かつてのお嬢様で不器量な容姿のキャロラインとの恋愛など、読者を物語に引き込む牽引力はさすがですが、”ミステリ=謎解き小説”という定義であれば本書はミステリとはいえないと思った。 ネタバレになるが、唯一の謎である館で発生する怪異現象の真相は、結局読者にゆだねられている。 作者にしてみれば、原題”The Little Stranger”に全てを込めているのかもしれないが、解釈に迷う終り方でどうもすっきりしない読後感でした。 |
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| No.1262 | 5点 | 毛皮コートの死体-ストリッパー探偵物語- 梶龍雄 | 2010/11/10 22:26 |
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| 浅草のストリッパー・チエカが探偵役を務める連作短編集。
同じお色気探偵ものでいえば、都筑道夫の泡姫シルビアとだいたい同時期の作品ですが、こちらはB級感というか通俗風味が漂っています。 といっても、表題作や「アパッシュの女」はミステリ趣向としては一定水準以上の出来だと思います。ただ後半になるほど、哀切感のある人情物語になっていきますが。 |
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| No.1261 | 6点 | レイチェル・ウォレスを捜せ- ロバート・B・パーカー | 2010/11/09 22:21 |
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| スペンサーシリーズの6作目。
瀬戸川猛資責任編集で、80年から90年代初めの傑作翻訳ミステリを紹介したベスト本「ミステリ・ベスト201」には、代表作といわれる「初秋」ではなく本書が選ばれている。書評担当は温水ゆかり氏だが、”本書にかすかな不快感”とか”レイチェルという女性が全く描けていない”など、ベスト本の書評としては異例の辛口だった。 読んで納得。確かに、男根主義とも言われかねないような内容で、スペンサーの男らしさを際立たせるために、女性が道具になっているような感じを受けますね。一部の女性読者には受け入れがたいプロットかもしれません。 |
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