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kanamoriさん
平均点: 5.89点 書評数: 2460件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1760 6点 マシューズ家の毒- ジョージェット・ヘイヤー 2012/06/15 22:21
マシューズ一族の嫌われ者の家長グレゴリーの不審死を発端とするフーダニット・ミステリ。
遺産相続が絡み、同居する親族のだれもが動機を持ち、親族間で相手を揶揄するユーモラスでシニカルなやり取りが延々と続くところなどなど、物語の構成は前作「紳士と月夜の晒し台」とよく似ています。ハナサイト警視の”役割”も前作同様でした。
プロットは少々起伏に欠けるきらいがあるものの、個性的な登場人物間の会話の面白さで冗長さをカバーしているように思います。

No.1759 5点 四国周遊殺人連鎖- 中町信 2012/06/13 22:28
推理作家・氏家周一郎&早苗夫婦が旅行先で連続殺人事件に巻き込まれるシリーズの3作目。

恒例のいわくありげなプロローグこそないものの、事件の背景にある誘拐事件と轢き逃げ事件の関係者がなぜか全員ツアーに参加していたり、添乗員が殺されても「このまま、旅行スケジュールを消化してもらいたいものですな」という警察の不自然な対応など、ご都合主義全開でB級感漂ういつもながらの中町ミステリです。
とはいっても、犯行動機をミスリードする手際は今回も見事で、この騙しのテクニックだけは侮れません。

No.1758 6点 バターより銃- ニコラス・フリーリング 2012/06/12 18:34
”オランダのメグレ”こと、アムステルダム警察のファン・デル・ファルク警部シリーズ。
オランダとベルギーで名前を変えて二重生活をしていた密輸業者の殺害事件を追って、警部が国境の町やブリュッセルまで足を運ぶというストーリーです。
中盤までは捜査小説のスタイルを採っていますが、物語後半の主人公は、独立心が旺盛ながら世間知らずの娘ルシエンヌで、過去の事件で彼女と顔見知りだった警部は狂言廻し的立場。結末はやるせないが、彼女を見守る警部の思いが救いになっているように思う。

余談ですが、本書ポケミスの初版には印刷手配ミスなのか表紙の作者名が「ジャック・フィニイ」になっていたのは古書市場では有名な話らしい。Wikipediaのジャック・フィニイの著作リストには、「なお、ジャック・フィニイ著『バターより銃』という本が存在するが、これはフィニイの著作ではない」と、わざわざ記されています。

No.1757 6点 玩具店の英雄 座間味くんの推理- 石持浅海 2012/06/11 23:56
「月の扉」の座間味くんシリーズ。
「心臓と左手」につづくグルメ料理つき安楽椅子探偵ものの連作ミステリで、今回は大迫警視正は同席するだけで、科学警察研究所の女性キャリアがネタを提示する。

解決済み事件の話題の中に出てきた、ちょっとした”不自然なもの”を嗅ぎつけ、事件に隠された裏の構図を暴くという基本的に同じパターンなので、続けて読むと”落とし所”が透けて見えるが、真相に至るロジック展開は楽しめる。
本筋とは関係ないけれど、妻子持ちの30歳代の社会人をつかまえて、いまだに「座間味くん」(仮名)というのは違和感があるなあ。

No.1756 6点 コルト拳銃の謎- フランク・グルーバー 2012/06/10 22:05
怪しげなボディ・ビルの本のセールスで米国中を旅してまわる香具師コンビが活躍する軽ハードボイルド調のユーモア・ミステリ。本書は、早川版でも「海軍拳銃」のタイトルで訳出されており代表作らしい。

口八丁手八丁で頭脳派のジョニー・フレッチャーと、生きた商品見本で肉体派のサム・クラッグの凸凹コンビの漫才風のやり取りで笑いを取りながら、意外と本格ミステリのツボを押さえたプロットになっています。
ホテル代も払えない金欠状態から引き受けた仕事が原因で殺人事件に巻き込まれ、やむなく真相解明に乗り出すのですが、状況が変わる毎に目まぐるしく二人の財政状態が変動していくのが可笑しい。

No.1755 5点 阿寒湖殺人事件- 中町信 2012/06/09 18:10
「~湖」シリーズの4作目、と言うよりは「佐渡金山殺人事件」につづく推理作家・氏家周一郎シリーズの第2弾。東北近辺の湖はネタ切れにつき北海道に取材旅行だというメタな設定です。

本人をモデルにした売れない推理作家の自虐ネタを入れつつ、読者を誤誘導するためだけのプロローグや、連続殺人が起きてもバス・ツアーは普通に続行するという、もはや開き直りの定番設定で、ある意味安心して読めます(笑)。
旅行メンバーの自己紹介で氏家の新刊の宣伝をしたり、大団円では夫を差し置き謎解き披露を主導したりで、今回、妻の早苗のしゃしゃりでるキャラが冴えてます。

No.1754 6点 クイーン・メリー号襲撃- ジャック・フィニイ 2012/06/08 18:16
元アメリカ海軍中尉で現在の平凡な生き方に飽き足らない主人公ヒュー・ブリテンは、豪華客船クイーン・メリー号を乗っ取り、乗客から金品を強奪しようと計画する男女5人組の仲間入りをすることに・・・・・。
第一次大戦時にニューヨーク近海に沈んだドイツの潜水艦(Uボート)を引揚げ、魚雷をブラフに客船を襲撃するという、大胆な犯行手段のアイデアで読ませます。基本プロットは「五人対賭博場」と同じですが、今回はコンゲーム風の趣向はなく、ラストの米軍駆逐艦とのバトルなど、冒険小説の味わいを加味した襲撃小説といえます。
ただ、計画準備段階の潜水艦の引き揚げと修復作業の描写が緻密で多く筆を費やしているのに対して、肝心の襲撃シーンがあっさりしているのが物足りなく感じた。

No.1753 6点 消えたタンカー- 西村京太郎 2012/06/07 19:06
大型原油タンカー沈没事故の生存者6名を次々と殺戮していく謎の殺人者に、十津川警部が対峙するという初期のサスペンス。
発端のインド洋から、国内では長野のスキー場、沖縄、海外ではブラジル、最後は南アフリカと、作品舞台のスケールが大きく、犯人と捜査陣の攻防戦もスリリングです。(非常線を張られたスキー場からの脱出劇は、暗殺者”ジャッカル”とルベル警視の攻防を連想させる)。
単なるサスペンス・ミステリに終始することなく、終盤に事件の構図が反転し、謎解きの趣向が凝らされているのも良。
ただ、初読時には気にならなかったが、犯人の採ったアレはやはり現実には実行不可能じゃないだろうか。

No.1752 6点 フランクを始末するには- アントニー・マン 2012/06/05 22:05
シュールで奇妙な味わいの12作品収録の短編集。なかには、シュール過ぎてオチがよく理解できないものもありました。
印象に残ったのは3編。
赤ん坊が刑事の相棒となって殺人捜査の現場に赴くユーモラスな「マイロとおれ」。標的の大物スターに対峙した殺し屋の立ち場が二転三転する暗殺劇「フランクを始末するには」。ともに、”なんとなく可笑しい”シュールな作品。
そして一番の異色作「買いもの」。登場人物や場面説明の描写が一切なく、ただ20日余りの毎日の買いもの品リストを羅列するだけで、主人公の心情の変化と状況の変化を読者に悟らせるという、これはアイデア賞もの。

No.1751 6点 幽女の如き怨むもの- 三津田信三 2012/06/04 21:57
怪異譚蒐集家・刀城言耶シリーズの最新作。
刀城(作者)が冒頭に断っているように、これまでのシリーズのトレードマークである不可能趣向や多重解決・どんでん返しの連続技がみられない”異色作”です。
戦前から戦中戦後にかけて地方の遊郭で連続して発生した身投げ事件と、廓内を徘徊する幽女の謎を、花魁の日記、当時の女将からの聞き取り、新進怪奇作家の手記をもとに安楽椅子探偵風に謎解くというスタイルですが、謎そのものがスッキリせず解法もいまいちキレがない様に思います。”らしい”ところはある人物に関するサプライズだけのような.....。
でも、これまでの作品と比べて文章が読みやすく、特に前半の緋桜の日記などの昭和遊郭史のような部分が面白く読めたのでこの点数に。

No.1750 5点 のっぽのドロレス- マイクル・アヴァロン 2012/06/03 20:13
”忘れられた軽ハードボイルドを読もう”シリーズ。
いまどき、このタイトルに反応するのはコアな宮部みゆきファンぐらいかもしれません(笑)。

私立探偵小説は少なからず主人公の個性で読ませる所があると思うのですが、本書の私立探偵エド・ヌーンは、同じ50年代に活躍した探偵たちと比べるとやや魅力が乏しく、どちらかと言うとプロットで読ませるタイプのようです。
ミステリとしての肝は、ダイヤの原石の隠し場所を示唆する”なぞなぞ風の詩”の謎解きですが、これは判ってしまった。”ニューヨークで、身長191センチのドロレスより高い女性”といえばアレでしょう。
トビラの登場人物表を身長の高い順に並べるなど、作者の遊び心が楽しい作品。

No.1749 5点 午後からはワニ日和- 似鳥鶏 2012/06/03 18:37
いままで東京創元社お抱えで学園ミステリを専門に書いていた作者の新境地、動物園ミステリ。
ワニの盗難を発端に連続する動物盗難事件に、飼育員の”僕”や強烈キャラの女性獣医をはじめ個性的な動物園スタッフが犯人探しに乗り出す。

なんとなく連作ミステリかと思い込んでいましたが、この小粒な事件で長編一本を読ませるのはさすがに少々きつい。盗難の動機も通俗的常識的なものでホワイダニットとして面白味を感じなかった。
ライトな筆致で語られる、動物園管理の裏事情や個性的なスタッフの生態などは読ませはしますが、ミステリとしては薄味です。

No.1748 6点 迷走パズル- パトリック・クェンティン 2012/06/03 17:27
ピーター&アイリスのダルース夫婦が登場する”パズル・シリーズ”の第1作。
昔から、「愚者パズル」(=植草甚一の『雨降りだからミステリーでも勉強しよう』)とか、「癲狂院殺人事件」(=『別冊宝石』訳載)のタイトルで知られた、ファンには待望久しい作品の初の書籍化です。

アルコール依存症のピーターや鬱病のアイリスなど、精神を患った患者たちが入院する治療施設内で、怪異な現象がつづき遂に殺人事件が発生する・・・というあらすじです。タイトルからイメージするようなロジックを駆使したパズラーではありませんし、犯人の特殊技能などに陳腐さを感じますが、終盤の関係者を一堂に集めた謎解きなど、古き良き探偵小説の味わいがあります。

No.1747 6点 パラダイス・ロスト- 柳広司 2012/06/02 12:26
「ジョーカー・ゲーム」シリーズの第3弾。
ドイツ占領下のパリを舞台に記憶を失ったD機関員の工作を描く「誤算」。英領シンガポールのラッフルズ・ホテルを舞台に米海軍士官が巻き込まれる諜報戦の「失楽園」。サンフランシスコから横浜に向かう豪華客船上のスパイ同士の駆け引きと、殺人事件のフーダニットを前後編で描いた「暗号名はケルベロス」など。
3作目となると新鮮な驚きはないけれど、海外の様々な場所で太平洋戦争前夜におけるD機関の活躍を描いていて安定したクオリティを維持している。
駐日英国人記者が魔王・結城中佐とD機関の正体に迫る「追跡」が個人的ベストかな。因みに、西村京太郎の初期スパイ小説「D機関情報」の”ミスターD”はアレン・W・ダレス(のちのCIA長官)がモデルらしいが.....(これは関係ないか 笑)。

No.1746 6点 紳士と月夜の晒し台- ジョージェット・ヘイヤー 2012/06/01 18:20
ハナサイト警視シリーズ(と、言いきっていいのか?)の第1作。これは掘り出し物の本格ミステリでした。
印象的な発端の死体発見シーンが後のストーリー展開に活かされてないのが少々もったいないように思いますが、容疑者最右翼の立場にありながら、能天気でユーモラスな言動を繰り返す被害者の腹違いの弟妹のキャラクターで楽しめます。タイプは若干違うけれどクレイグ・ライスの登場人物を思わせるところがあった。
警視の中途半端?な役割はシリーズ共通のものなのか、次作が楽しみなシリーズです。

No.1745 6点 もろこし桃花幻- 秋梨惟喬 2012/05/31 18:22
中国を舞台に武侠小説と本格ミステリを融合させた”銀牌侠”伝説シリーズの第3弾で、初の長編。
元朝末期、王朝の権威が衰え、流賊が横行する易姓革命の時代を背景に、桃源郷を思わせる閉された村に行きついた主人公らいわくありげな旅人8名が連続殺人に巻き込まれる。

真犯人の正体は意外性を狙いすぎの感があるが、死体の首を切断する理由から浮かび上がる”村の正体”が、このような戦乱の時代ならではのもので、これは感心した。
中国の人名が取っ付きにくいが、旅人一行8名いずれも個性的なキャラクターで書き分けされており、読みずらいということはなかった。

No.1744 6点 完全脱獄- ジャック・フィニイ 2012/05/30 18:15
厳重な警備で知られるサン・クエンティン刑務所に収監され処刑がまじかに迫ったアーニイは、弟ベンと元婚約者のルースの手助けを得て脱獄計画を企てる。

脱獄方法自体は、タイトルからイメージするようなスマートなものではありませんが、ベンの隣家に住み顔見知りである看守が脱獄計画に絡んで、ベンが刑務所に侵入してからの展開が緊張感があって読ませます。
ただ、”事後”のドンデン返しは、「五人対賭博場」と比べると後味がいいとは言えず、フィニイらしくないように思う。

No.1743 5点 綺譚の島- 小島正樹 2012/05/28 21:21
戦国時代の落武者伝説が伝わる島という、「獄門島」と「八つ墓村」を合体させたような設定で、例によって島荘直伝の奇想がこれでもかと言うぐらいに連打される”やりすぎ本格”です。

まあ、好きな人は楽しめると思いますが、ひとつひとつの怪異現象の真相に関しては推理の余地なく、自称・名探偵の謎解きをひたすら拝聴するだけでした。なかでも、海に浮かぶ鎧武者と波間に突き出た木槌の正体には笑わせていただきました。
”奇想=バカミス”ということが再確認できる作品です。

No.1742 7点 アイ・コレクター- セバスチャン・フィツェック 2012/05/27 11:33
ドイツ・ミステリ界の鬼才と言われるだけあって、たしかに型破りのアイデアが施された異形のサイコサスペンスでした。

エピローグに始まりプロローグに終わる構成、ノンブル(ページ番号)も405ページから順に減っていくという構成は、単にタイムリミットもののサスペンスを高める効果のためだけではない、というところが巧妙です。
犯行を幻視する特殊能力をもつ盲目の女性の登場や、主人公である新聞記者の曖昧な心情描写がリーダビリティを損ねているように思いましたが、最後まで読むと納得させられる。
読者を選ぶタイプのミステリだと思いますが、最近の英米ミステリにない自由な発想を評価したい。

No.1741 6点 殺意のまつり- 山村美紗 2012/05/05 23:09
昭和49年から51年にかけて雑誌掲載された初期の短編集。トリックより、捻ったプロットで読ませる作品が多かったように思う。
個人的ベストは表題作の「殺意のまつり」で、20年前の殺人事件の冤罪を追う弁護士の知らない所で、次々と真相が変転していく様は圧巻のひと言。旅客機墜落事故の唯一の生存女性の証言を巡って関係者の思惑が入り乱れる「孤独な証言」もブラックな結末が印象に残る一編。
トリックを主軸にしたものでは、年賀郵便の特殊性を利用したアリバイ工作もの「恐怖の賀状」が細部まで練られた好編。ラストの陥穽も皮肉が効いている。

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