海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

kanamoriさん
平均点: 5.89点 書評数: 2460件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1860 6点 メイン・ディッシュはミステリー- 事典・ガイド 2013/01/07 14:02
ミステリ作家で翻訳家の小泉喜美子によるエッセイ風の海外ミステリ読書ガイド。

”殺人をテーマに好んで扱うジャンルだけに、ミステリーは美しく洗練されていなければならない”---という作者のこだわり・嗜好が作品紹介に一貫して出ています。そのため、泥臭い社会派やトリック中心の国内本格などは斬って捨てているわけですが、「”本格”という名称はミステリの王道かと誤解を与えかねないので、”謎解き中心もの”と呼ぶことにする」など、この点はカチンとくる人もいたでしょうねえ(笑)。
謎解き中心もの、ハードボイルド、サスペンス、クライム・ストーリー、警察小説、ユーモア・ミステリなど、一応入門篇らしくジャンルごとに名作群の紹介がありますが、やはりレイモンド・チャンドラーとクレイグ・ライスの項目は気合の入り具合が違います(笑)。
30年位前のミステリ・ガイドですが、今回再読してもあまり古びた感じは受けなかったですね。海外ミステリをもっと読んでほしいという作者の熱意がよく伝わってきます。

No.1859 7点 喪失- モー・ヘイダー 2013/01/06 18:22
昨年度のアメリカ探偵作家クラブ最優秀長編賞(エドガー賞)受賞作品。
英国西部ブリストルの重大犯罪捜査隊に転属したジャック・キャフェリー警部シリーズの5作目です。

連続少女連れ去り事件を発端に、中盤から終盤にかけて事件の様相が劇的に変転する読み応えのある警察小説風のサスペンス大作で、以前読んだ初期作のようなエグい描写は抑えめで、あるミステリ趣向を施すなど単純なシリアル・キラーものでない点は評価できると思います。ただ、シリーズを通した過去のエピソードに説明不足なところがあり、個人的には、ミステリの完成度では同じエドガー賞候補の「容疑者X」に分があるように思いました。
登場人物では、個性的な潜水捜索隊の女性隊長・フリー・マーリーが主役を食う活躍で、キャフェリーとの過去の因縁含みで今後の展開が楽しみではあります。

No.1858 7点 快楽としてのミステリー- 評論・エッセイ 2013/01/05 11:45
昨年亡くなった丸谷才一氏の書評・エッセイ・評論集。「快楽としての読書」日本篇・海外篇につづく第三弾で、本書はミステリー小説に特化した内容になっています。
取り上げる作品が古典から007、松本清張、大沢在昌「絆回廊・新宿鮫Ⅹ」まで、年代もジャンルも幅広いのがまず驚きです。

「ハヤカワ・ポケット・ミステリは遊びの文化」と題した瀬戸川猛資・向井敏両氏との鼎談を収めた第1部が、ポケミス愛にあふれた内容で、同じポケミス・ファンとして楽しめた。今年はポケミス発刊60周年なので、絶版本の復刊フェアが期待できるかも。
「深夜の散歩」(マイ・スィン)からの再録は懐かしい。フリードリヒ・デュレンマット「嫌疑」「約束」や、ポール・ソマーズ(アンドリュウ・ガーヴ)の「震える山」などの忘れられた作品が個人的に気になる。
そういった中で、やはりレイモンド・チャンドラーを取り上げる回数が多いのですが、最近の書評で、清水俊二の「長いお別れ」と村上春樹の「ロング・グッドバイ」を比較したものが秀逸です。そういえば、和田誠氏による本書のカバー・イラスト=黒猫を抱いてパイプをくゆらす紳士、これってチャンドラーですね。

No.1857 4点 殺人者にダイアルを- 梶龍雄 2013/01/03 15:34
「天才は善人を殺す」の芝端敬一ら大学生探偵団の4人が活躍するシリーズの第2弾。
メンバーの紅一点”お京”の知人らの連続自殺事件を調べていくうちに、思いがけない大きなスケールの構図が浮かび上がってきて・・・といった話ですが、残念ながら前作より青春ミステリの味わいが希薄になっていて、伏線の張り具合もイマイチな気がします。時代設定が戦前や終戦直後のものより、本書のような”現代ミステリ”のほうが題材が古びてしまうのは皮肉な感覚ですが、ダイヤル式電話はやはり時代を感じますねえ。
ただ、アリバイ崩しのヒントが”フィボナッチ数列”(=「ダ・ヴィンチ・コード」でもお馴染み)というのは面白かった。

No.1856 6点 悪の断面- ニコラス・ブレイク 2013/01/03 14:56
雪深い片田舎の村を舞台に、共産主義者グループが、正月休暇のためホテルに滞在していた著名な物理学者の娘を拉致誘拐するといったスパイ・スリラーです。
私立探偵ナイジェル・ストレンジウェイズが登場するシリーズの一冊ですが、一家の護衛を任されていたナイジェルは殴り倒されたり、ホテル内のミエミエの内通者の特定に手間取ったりで、あまり名探偵らしくないですね。
それでも、犯人グループの動きと捜査側の追及を並行して交互に描く救出劇は緊迫感があり、監禁された自分をモデルにして小説を書く8歳の娘ルーシーの造形も魅力的です。
ただ、ある男の子の扱いや、結末の処理にはどうしても後味の悪さを感じてしまいます。

No.1855 6点 新 顎十郎捕物帳2- 都筑道夫 2012/12/29 20:43
ふだんは大名屋敷の中元部屋で酒を飲んでブラブラ遊んでいるが、手下のひょろ松が事件を持ちこむと快刀乱麻で謎を解く、久生十蘭が生み出した北町奉行所の”顎十郎”こと、仙波阿古十郎の捕物帖パスティーシュ第2弾。

衆人環視の密室状況下での人死にで敵役・藤波友衛が疑われる「三味線堀」や、座敷牢という密室での殺人を扱った「貧乏神」などの不可能興味で読ませるものから、花嫁衣装を着た幽霊「亀屋たばこ入」、ドッペルゲンガーの殺人「離魂病」などの怪奇趣向のものまで、江戸時代のウンチク話を交えた名調子が楽しい。
贋作と言うより都筑道夫の捕物帖のテイストが強く、途中で顎十郎が砂絵のセンセーとダブッて見えてきました(笑)。なお、個人的ベストはプロットが最後まで凝っていて完成度が高い「貧乏神」。

No.1854 7点 失脚/巫女の死- フリードリヒ・デュレンマット 2012/12/28 10:49
スイス出身の劇作家・小説家、デュレンマットの中短編4編が収録された作品集。作者の邦訳は、ずいぶん前に早川のポケミスから2作ほど出ているのは知っていたのですが、読むのはこれが初めて。
社会性のあるテーマを持った文学的な風刺小説という側面もありますが、そういったものを抜きにしても物語として面白かった。

第1話「トンネル」は、通学の列車内という日常が突如として非日常に変転するシュールな不条理小説。
「失脚」は、スターリン時代のソ連を思わせる政治局会議の一幕劇風の心理サスペンス。幹部それぞれ粛清に怯えながらの心理戦が滑稽だし、結末がこれまた喜劇的です。
「故障」は、ミステリのジャンルでいうと”奇妙な味”。車の故障のためある屋敷に泊まることになった有能セールスマンが、4人の老人と”裁判ごっこ”を始めるが・・・という話で、終盤の展開は読者のヨミの斜め上をいってます。
「巫女の死」は、”オイディプスの悲劇”を扱った歴史幻想もの。デルポイの神託を司る預言者と老いた巫女の俗物的な造形が、現代の怪しげな新興宗教団体のパロディみたいで笑える。

No.1853 6点 のぞきめ- 三津田信三 2012/12/26 12:01
久々(10年ぶりぐらい?)の作家・三津田信三シリーズ。
といっても三津田は最初と最後に登場するだけで、”ある呪われたひとつの村”に纏わる2つの怪異譚が小説の大部分を占めていて、全体の構成は「幽女の如き~」によく似ています。

昭和の終わり、大学生4人がアルバイト先の別荘地近くの廃村で遭遇する恐怖の体験談(第1部)は純粋なホラーで、とくに”視線”のくだりは鳥肌モノです。
昭和の初め、憑依信仰と因習が支配する同じ村を舞台に、ある一家に起きた連続怪死事件をつづった民俗学者の手記(第2部)はホラーミステリ。こちらは途中ちょっと引っ張りすぎと感じるところがありましたが、終章で示唆される”真相”はいかにも作者らしいものでした。
怪異現象にも”説明がつくもの”と”説明がつかないもの”がある。そういった意味では、”如き”シリーズ以上にホラーとミステリが融合している作品ではと思います。

No.1852 6点 アフリカの百万長者- グラント・アレン 2012/12/23 22:15
粘土のように変幻自在に顔を変える怪盗、クレイ大佐登場の連作長編。論創社版”ホームズのライヴァルたち”シリーズの最新作です。
怪盗といっても駆使するのは詐欺的手法なので、コンゲーム小説といった趣です。
ユニークだと思ったのは、標的が拝金主義の俗物大富豪サー・チャールズに固定されていることと、犯罪が被害者側(チャールズの義弟)視点で語られるところでしょうか。こういった繰り返し騙される設定だと本来マンネリになるのですが、各編で騙しのテクニックに変化を持たせ、また被害者と読者にフェイントを仕掛ける工夫もあって飽きさせません。
幕引きの処理については賛否が分かれそうですが、個人的にはほろ苦い余韻があっていいと思います。

本書が論創海外ミステリ叢書の記念すべき100冊目ということなので、私的ベスト3を考えてみました。(初期のころは翻訳技量の評判がよろしくなかったのであまり読んでいませんが)
①「ジョン・ディクスン・カーを読んだ男」(ブリテン)②「巡礼者パズル」(クェンティン)③「不可能犯罪課の事件簿」(ヤッフェ)

No.1851 6点 潜伏者- 折原一 2012/12/22 18:44
サブタイトルが”The Hands of Mr.Hotta Morio”(=「堀田守男氏の手」)ということで、トマス・バークの傑作短編「オッターモール氏の手」(『世界短編傑作集④』収録)に倣ったサイコサスペンスかと思っていたのですが、”アパートの一室に潜む謎の人物の正体は意外にも・・・”といった倒錯シリーズその他で何度も読まされたいつもの折原ワールドの作品でした。
「追悼者」のノンフィクション作家男女コンビが再登場するのですが、探偵役としての役割が中途半端で十分に活かされているとはいえず、謎の核心である行方不明の少女たちの真相も分かりやすく、出来としてはやや期待はずれという印象です。なによりも長すぎますね、もう少しコンパクトにできるはず。

No.1850 6点 夜明けのフロスト- アンソロジー(出版社編) 2012/12/20 12:04
『ジャーロ』に掲載されたクリスマス・ミステリのアンソロジー。この雑誌、今では烏賊川市シリーズの短編連載ぐらいが目玉なんでしょうけど、以前は翻訳ミステリ短編も結構載せていたんですよね。

表題作は中篇で、クリスマスの同時多発事件でモジュラれるデントン署のフロスト警部という、まあ長編と同じパターンの作品。もうひとつの”クリスマスのフロスト”といったところです。
フロスト警部以外にも、シリーズ100編目だという引退したレオポルド警部もの(エドワード・ホック)、ニューヨークにクリスマス休暇のダイヤモンド警視(ピーター・ラヴゼイ)、名無しのオプとシャロン・マコーンの競演(プロンジーニ夫婦合作)、暴走ぎみのダルジール&パスコー(レジナルド・ヒル)と、英米の人気キャラクターが総出演していて楽しめます。
ただ、これらはクリスマスの時期の事件というだけで、心温まるような「クリスマス・ストーリー」とはいえないかな。
そういった意味では、ナンシー・ピカード「Dr.カウチ、大統領を救う」や、ダグ・アリン「あの子は誰なの?」がテーマに合致しているかもしれません。

No.1849 6点 猫間地獄のわらべ歌- 幡大介 2012/12/19 12:03
江戸時代の考証的情報を交えたキッチリとした時代小説という側面と、突如メタ・レベルになりミステリのお約束をネタに笑いを取るバカミスの要素とが入り混じった本格ミステリの怪作です。

密室破りに始まり、首なし死体と見立て連続殺人、読者への挑戦状、館(屋形?)もの、アリバイ崩し、”意外な犯人パターン”など、本格ミステリの趣向がてんこもりで楽しめる。(トリックを活かすために3つの中短編を強引につなげ長編にした感もありますが)。
また、ラストに炸裂する○○トリックについては、冒頭に主人公の御使番に関する情報が明確な伏線になっており巧妙だと感心。直前に「丸太町ルヴォワール」を読んでなければもっと驚けたかもしれません。
いちばんツボだったのが、”読者への挑戦”が、謎解きの挑戦ではなく、”壁本にせずに最後まで読むことができるか”という挑戦だったことですね(笑)。

No.1848 6点 エラリー・クイーンの災難- アンソロジー(国内編集者) 2012/12/17 12:10
エラリー・クイーンの贋作&パロディを集めたアンソロジー。ホームズに関しては掃いて捨てるほど出ているのに、クイーンのものは”世界初”というのがちょっと意外でした。

贋作編のなかでは、エドワード・D・ホックが「インクの輪」と「ライツヴィルのカーニバル」の2編収録されていて、前者がミッシング・リンク(パターン探し)テーマの傑作。単なるパスティーシュにとどまらず、犯人特定のロジック展開など本家と比べても遜色ない出来です。クイーン名義の代作もしているホックですからパステーシュはいわばお手の物でしょうけど。
他の作家のものでは、”ダイイング・メッセージ探し”というような「本の事件」もマニアックでよく考えられた内容の作品です。クイーンが老齢なのにニッキィがなぜ若いのか?と思っていたら・・・オチも面白い。

パロディ&オマージュ編では、探偵クイーンだけでなく、ミステリ作家や編集者としてのクイーンもネタにされている。
ネタ的にはピンとこない微妙なものもありますが、面白かったのは、スティーブン・クイーン作の「ドルリー」で、『レーン最後の事件』の結末が許せない熱狂的ファンが、作者のバーナビー・ロスを監禁し復活譚を書かせようとする話。この作者名とタイトルといい、どっちかというとクイーンじゃなくてキングのパロディだろ(笑)。

No.1847 7点 丸太町ルヴォワール- 円居挽 2012/12/15 20:47
京都を舞台にした疑似裁判”双龍会”シリーズ?の第1弾。
今回全面改稿した講談社文庫版で読了。諸々の書評などの情報からちょっと苦手なタイプのミステリと想像していたのですが、そんなことはなく、全般的な印象は、えらく遠回りしたラブ・ストーリー、と言う感じでしょうか。とくに第1章の論語と”ルージュ”の心理戦風やり取りが秀逸です。
たしかにラノベ風の登場人物たちは鼻につくところがあり、連発される〇〇トリックもどこかで読んだものばかりという感もありますが、その仕掛け方は巧いと思いました。証拠の捏造など”なんでもあり”のコンゲームを思わせる裁判と、終盤の逆転に次ぐ逆転は圧巻です。
また、分かる人にはニヤリとさせる多くの小ネタも楽しい。(たとえば、たびたび出て来る”落花戻し”=「風来忍法帖」など)。

No.1846 5点 ナポレオン・ソロ①/アンクルから来た男- マイクル・アヴァロン 2012/12/13 10:56
国際諜報機関”アンクル”の特別捜査官、ナポレオン・ソロ登場のオリジナル長編シリーズ第1作。

当時は「映画のジェームズ・ボンド、テレビのナポレオン・ソロ」と言われたほど人気があったらしいのですが、007シリーズの亜流もしくは劣化コピーのような通俗的なB級スパイ・アクション小説です。
ただ、本書ではまだ脇役ですが、ロシア人の同僚イリヤ・クリヤキンとのコンビで活動するところは、スパイ小説では珍しい相棒(バディ)ものというユニークさはあります。
世界征服を目論む国際犯罪組織”スラッシュ”や怪しげな科学者を敵に回しての危機一髪の連続展開は、今読むとかなりチープなプロットですが、唯一面白いと思ったのは、”洋服を後ろ前さかさまに着た死体の謎”です。まさか、ナポレオン・ソロの口から「チャイナ・オレンジの秘密」のネタバレ解説が出てくるとは思ってもいませんでした(笑)。

ナポレオン・ソロシリーズは複数の作家が書いており、マイクル・アヴァロンは本書のみですが、アンクルの女性捜査官・エイプリル・ダンサーを主人公にしたスピン・オフも書いているようです。

No.1845 6点 密室蒐集家- 大山誠一郎 2012/12/11 22:37
濃密な密室トリックものを揃えた連作短編集。
いつも終盤に登場し謎を解く”密室蒐集家”は、いわば謎解きマシーンのような存在です。ハウダニットだけでなく意外な犯人像を設定したものもあり楽しめました。
難点は、「たまたま~だったから」というような偶然性に依存した作品が多いということですね。

個人的ベストは、足跡のない殺人テーマの「佳也子の屋根に雪ふりつむ」で、ある既存トリックの応用ですが、犯人特定のロジックがスマートです。「皇帝のかぎ煙草入れ」を髣髴させる設定の「死者はなぜ落ちる」も不可思議性が魅力的な良作だと思います。「少年と少女の密室」は、密室トリックに〇〇トリックを利用したアイデアがユニークですが、序盤に「ん?」と思わせるところがあり早々に仕掛けが分かってしまいました。

No.1844 5点 このミステリーがすごい!2013年版- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 2012/12/10 13:32
今年こそ購読をやめようと思っていましたが、表紙の「ローレンス・ブロック」の大文字につられて、ついつい購入してしまった。(なんだ、1位じゃないのかw)

ランクイン作品の未読本のなかで個人的注目作は、海外では「占領都市」「鷲たちの盟約」かな。デュレンマット傑作集も気になる。国内では、なんといっても幡大介「猫間地獄のわらべ歌」(笑)。同じ作者の、「富豪刑事」の時代小説版「大富豪同心」シリーズも面白そう。

今の時点でランキングの中身に具体的に触れるのは一種のネタバレになるので、かわりに出版社をランク付け?してみました。

「この出版社がやばい!」第1位、論創社さん。
我が社の隠し玉コーナーで個人的に一番注目なのはココ。来年もマニアックな海外クラシックが目白押しなうえに、全編書下ろしの「刑事コロンボ短編集」も楽しみ。採算度外視な感じが本来の意味でヤバイかもw

「この出版社がたかい!」第1位、東京創元社さん。
まあ、いまさらではありますが、ヘニング・マンケル上下巻で2500円というのは、どうみても文庫の規格から外れている。

「この出版社がずるい!」第1位、早川書房さん。
わずか1年前に出したポケミス「解錠師」を、このミス出版に合わせたように文庫化はズルイ!

「この出版社がしょぼい!」原書房、長崎出版、河出書房新社さんなど。
最近クラシック・ミステリの出版がとんとご無沙汰な気が。

No.1843 6点 細工は流々- エリザベス・フェラーズ 2012/12/10 12:00
”逆転探偵コンビ”トビー&ジョージ・シリーズの2作目。

屋敷に仕掛けられた意味を成さない数々の殺人装置というのは、機械的トリックを使ったミステリに対するパロディという側面もあるのでしょうか?その辺はよく分かりませんでしたが、実際は真逆の人間的・心理的なもので、「なぜ」が分かればスルスルと解ける、被害者である「誰からも好かれるお人好しの女性」ルーの人物造形が肝となるものでした。
友達の死でいれ込むトビーに対して、今回もマイペースのジョージですが、ジョージのある身体的異変が絶妙の伏線になっているのが非常に面白い。

No.1842 6点 空耳の森- 七河迦南 2012/12/08 11:55
ネタバレなしで寸評することがちょっと難しい短編集。

全部で9編収録されていますが、「冷たいホットライン」「アイランド」「It's only love」「悲しみの子」の前半の4編は、それぞれ意識的に作風を変えており、ラストにイメージが反転するサプライズを仕込んでいて、単品で読んでも十分面白い。
後半の作品になると、本書全体の仕掛けのためと思われる叙述方法が鬱陶しく感じられ素直に読み込むことができなかった。
最終話の手旗信号をはじめ色々と手がかりがありますが、要は”復帰の物語”ということでいいのかな? まあ確実に言えるのは、前2作を読んでないと「なんのこっちゃ!」状況になるということ。

No.1841 5点 アップルビィ警部の事件簿- マイケル・イネス 2012/12/06 11:49
"クイーンの定員"にも選定されている第1短編集”Appleby Talking”からの6編に、付録1編を加えた短編集(勉誠社版)。

原題どおりアプルビイが友人に過去の事件を語るという構成になっていて、ショートショートに近い「アップルビィの最初の事件」を始めとしていずれも短めですが、長編と比べてストレートな謎解きモノなので読みやすい。
なかでは、大学教授が洞窟で遭遇した不可思議な事象の謎解き「ベラリアスの洞窟」が伏線が効果的な好編でした。海岸の”足跡のない殺人”風の「タイムの砂浜」も面白いですが、今ではトリックがギャグ認定レベルかも。

付録の「崖の上の家」は、屋敷からの人間消失+冒険スリラーですが、なんと名探偵セクストン・ブレイクの探偵譚という珍品。イネスもこのシリーズを書いていたとは知りませんでした。

余談ですが、訳者あとがきに列記されたイネスの長編作品の邦訳タイトルがすごいことになっている。「ハムレットよ、復讐だ!」はまあいいとしても、”Lament for A Maker”が「ある製造業者のための哀悼詩」というのはいかがなものか(笑)。

キーワードから探す