皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
kanamoriさん |
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平均点: 5.89点 | 書評数: 2426件 |
No.1846 | 5点 | ナポレオン・ソロ①/アンクルから来た男- マイクル・アヴァロン | 2012/12/13 10:56 |
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国際諜報機関”アンクル”の特別捜査官、ナポレオン・ソロ登場のオリジナル長編シリーズ第1作。
当時は「映画のジェームズ・ボンド、テレビのナポレオン・ソロ」と言われたほど人気があったらしいのですが、007シリーズの亜流もしくは劣化コピーのような通俗的なB級スパイ・アクション小説です。 ただ、本書ではまだ脇役ですが、ロシア人の同僚イリヤ・クリヤキンとのコンビで活動するところは、スパイ小説では珍しい相棒(バディ)ものというユニークさはあります。 世界征服を目論む国際犯罪組織”スラッシュ”や怪しげな科学者を敵に回しての危機一髪の連続展開は、今読むとかなりチープなプロットですが、唯一面白いと思ったのは、”洋服を後ろ前さかさまに着た死体の謎”です。まさか、ナポレオン・ソロの口から「チャイナ・オレンジの秘密」のネタバレ解説が出てくるとは思ってもいませんでした(笑)。 ナポレオン・ソロシリーズは複数の作家が書いており、マイクル・アヴァロンは本書のみですが、アンクルの女性捜査官・エイプリル・ダンサーを主人公にしたスピン・オフも書いているようです。 |
No.1845 | 6点 | 密室蒐集家- 大山誠一郎 | 2012/12/11 22:37 |
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濃密な密室トリックものを揃えた連作短編集。
いつも終盤に登場し謎を解く”密室蒐集家”は、いわば謎解きマシーンのような存在です。ハウダニットだけでなく意外な犯人像を設定したものもあり楽しめました。 難点は、「たまたま~だったから」というような偶然性に依存した作品が多いということですね。 個人的ベストは、足跡のない殺人テーマの「佳也子の屋根に雪ふりつむ」で、ある既存トリックの応用ですが、犯人特定のロジックがスマートです。「皇帝のかぎ煙草入れ」を髣髴させる設定の「死者はなぜ落ちる」も不可思議性が魅力的な良作だと思います。「少年と少女の密室」は、密室トリックに〇〇トリックを利用したアイデアがユニークですが、序盤に「ん?」と思わせるところがあり早々に仕掛けが分かってしまいました。 |
No.1844 | 5点 | このミステリーがすごい!2013年版- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 | 2012/12/10 13:32 |
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今年こそ購読をやめようと思っていましたが、表紙の「ローレンス・ブロック」の大文字につられて、ついつい購入してしまった。(なんだ、1位じゃないのかw)
ランクイン作品の未読本のなかで個人的注目作は、海外では「占領都市」「鷲たちの盟約」かな。デュレンマット傑作集も気になる。国内では、なんといっても幡大介「猫間地獄のわらべ歌」(笑)。同じ作者の、「富豪刑事」の時代小説版「大富豪同心」シリーズも面白そう。 今の時点でランキングの中身に具体的に触れるのは一種のネタバレになるので、かわりに出版社をランク付け?してみました。 「この出版社がやばい!」第1位、論創社さん。 我が社の隠し玉コーナーで個人的に一番注目なのはココ。来年もマニアックな海外クラシックが目白押しなうえに、全編書下ろしの「刑事コロンボ短編集」も楽しみ。採算度外視な感じが本来の意味でヤバイかもw 「この出版社がたかい!」第1位、東京創元社さん。 まあ、いまさらではありますが、ヘニング・マンケル上下巻で2500円というのは、どうみても文庫の規格から外れている。 「この出版社がずるい!」第1位、早川書房さん。 わずか1年前に出したポケミス「解錠師」を、このミス出版に合わせたように文庫化はズルイ! 「この出版社がしょぼい!」原書房、長崎出版、河出書房新社さんなど。 最近クラシック・ミステリの出版がとんとご無沙汰な気が。 |
No.1843 | 6点 | 細工は流々- エリザベス・フェラーズ | 2012/12/10 12:00 |
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”逆転探偵コンビ”トビー&ジョージ・シリーズの2作目。
屋敷に仕掛けられた意味を成さない数々の殺人装置というのは、機械的トリックを使ったミステリに対するパロディという側面もあるのでしょうか?その辺はよく分かりませんでしたが、実際は真逆の人間的・心理的なもので、「なぜ」が分かればスルスルと解ける、被害者である「誰からも好かれるお人好しの女性」ルーの人物造形が肝となるものでした。 友達の死でいれ込むトビーに対して、今回もマイペースのジョージですが、ジョージのある身体的異変が絶妙の伏線になっているのが非常に面白い。 |
No.1842 | 6点 | 空耳の森- 七河迦南 | 2012/12/08 11:55 |
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ネタバレなしで寸評することがちょっと難しい短編集。
全部で9編収録されていますが、「冷たいホットライン」「アイランド」「It's only love」「悲しみの子」の前半の4編は、それぞれ意識的に作風を変えており、ラストにイメージが反転するサプライズを仕込んでいて、単品で読んでも十分面白い。 後半の作品になると、本書全体の仕掛けのためと思われる叙述方法が鬱陶しく感じられ素直に読み込むことができなかった。 最終話の手旗信号をはじめ色々と手がかりがありますが、要は”復帰の物語”ということでいいのかな? まあ確実に言えるのは、前2作を読んでないと「なんのこっちゃ!」状況になるということ。 |
No.1841 | 5点 | アップルビィ警部の事件簿- マイケル・イネス | 2012/12/06 11:49 |
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"クイーンの定員"にも選定されている第1短編集”Appleby Talking”からの6編に、付録1編を加えた短編集(勉誠社版)。
原題どおりアプルビイが友人に過去の事件を語るという構成になっていて、ショートショートに近い「アップルビィの最初の事件」を始めとしていずれも短めですが、長編と比べてストレートな謎解きモノなので読みやすい。 なかでは、大学教授が洞窟で遭遇した不可思議な事象の謎解き「ベラリアスの洞窟」が伏線が効果的な好編でした。海岸の”足跡のない殺人”風の「タイムの砂浜」も面白いですが、今ではトリックがギャグ認定レベルかも。 付録の「崖の上の家」は、屋敷からの人間消失+冒険スリラーですが、なんと名探偵セクストン・ブレイクの探偵譚という珍品。イネスもこのシリーズを書いていたとは知りませんでした。 余談ですが、訳者あとがきに列記されたイネスの長編作品の邦訳タイトルがすごいことになっている。「ハムレットよ、復讐だ!」はまあいいとしても、”Lament for A Maker”が「ある製造業者のための哀悼詩」というのはいかがなものか(笑)。 |
No.1840 | 5点 | 祟り火の一族- 小島正樹 | 2012/12/04 20:08 |
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横溝正史の作品世界で島荘的奇想を連発させる”自称名探偵”海老原シリーズ。
これでもか!というぐらい多くの怪異現象を提示し、終盤に次々とその謎解きをしていく「やりすぎ本格」は今回も健在ですが、”理屈上は可能でも現実的にはありえない”感も同様で、さすがにちょっと飽きてきました。 メインの仕掛けは違和感があり、多分そうだろうと途中でなんとなく分かってしまいましたが、これはアンフェアと言われても仕方ないのでは?読者にはどこまで信じていいのか分からないのだから。 |
No.1839 | 6点 | 悪鬼の檻- モー・ヘイダー | 2012/12/03 13:08 |
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イッシーさん恒例の「このミス」作品登録があると、あぁ今年も残り少なくなった、と実感できる今日この頃w
今年のミステリ界を振り返ると、前半の大きな話題のひとつは、東野圭吾の「容疑者Xの献身」(”The Devotion of Suspect X”)がアメリカ探偵作家クラブの最優秀長編賞(エドガー賞)にノミネートされたことでしょう。江戸川賞作家が”本物のエドガー賞”受賞なるかw、ということで話題になりました。 今回のエドガー賞ノミネート作家には2つほど特徴があると思っていて、ひとつは5人の作家のうち地元アメリカ人作家が1人しかいないというウィンブルドン現象。もうひとつは、全員すでに初期作品の邦訳が出ているということですね。 そのなかで、”ベルリン三部作”のフィリップ・カー、”ノルウェーのミステリの女王”アンネ・ホルト、”サウス・ノワールの旗手”エース・アトキンスの三人は知っていたのですが、エドガー賞を”Gone"(「喪失」)で受賞した肝心のモー・ヘイダーは初めて知りました。日本で英語教師とか六本木のホステスという経歴にはちょっと驚きました。 本書は、ジャック・キャフェリー警部シリーズの2作目で、ジャンルでいうとサイコ系サスペンスですが、内容がかなり凄惨なうえに文庫で600ページという分量なので読了後はグッタリです。また、主人公キャフェリーの抱えるトラウマが重要な要素になってくるので、これは第1作から順に読むべきでした。失敗した。 |
No.1838 | 6点 | 江神二郎の洞察- 有栖川有栖 | 2012/12/02 12:28 |
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学生アリス&江神部長シリーズ初の短編集。
デビュー短編の「やけた線路の上の死体」だけは殺人事件を扱った長編と同じテイストの本格派ミステリ。鮎川哲也のアンソロジー初出なので、これは”白鳥”の瑕疵といわれるトリックを”黒潮”で返した作品、だと思ったのですが考え過ぎだろうか。 そのほかの収録作は、日常の謎とか、推理のお遊び的なものとなっていて、全体を通すと(読む人の年齢にもよるが)ノスタルジーが漂う読み心地のいい青春ミステリという感じです。 なかでは「九マイルは遠すぎる」の趣向に倣った「四分間では短すぎる」がオチを含めて面白かった。 また、大学のミス研らしく各話でミステリ本の話題がエピソードに絡めて出て来るのだけど、「虚無への供物」「点と線」「ナインテイラーズ」などの名作群に交じって、タッカー・コウ(ウェストレイクの別名義)の「蝋のりんご」が出てきたのには思わずニヤリ。ミッチ・トビンシリーズは、派手さはないけど味わいのあるハードボイルド風味の本格ミステリで、5作ともお薦めです。ただ、作中の「あれを読まずしてミステリは語れない」というのはシャレでしょうけど。 |
No.1837 | 7点 | 疑惑の霧- クリスチアナ・ブランド | 2012/11/30 12:07 |
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最初に読んだときには、容疑者たちのアリバイがあやふやなまま、思わせぶりな内面描写が頻繁に挿入される中盤までの展開に冗長さを感じたのですが、今回、ロウジーが周囲の人々に相談する”全て異なる”妊娠の説明を頭に入れて読むと、登場人物の意味深な言動が意味を持ってきて面白かったです。
犯人候補が次々と自白したり五転六転するブランドお得意のプロットも健在です。 謎の核心が、ラストの数行によって霧が晴れたように明らかになる構成の妙についてはよく取り上げられますが、終盤の裁判シーンでの老ミセス・エヴァンスの行為も印象的です。「命中しました!」は忘れられないw 探偵役は「ジョゼベルの死」につづいて、”ケントの鬼”コックリル警部とロンドン警視庁・チャールズワース警部の競演ですが、共に推理に冴えがなくあまり目立たないです。エヴァンス一家が主役といえますね。 |
No.1836 | 7点 | 東西ミステリーベスト100(死ぬまで使えるブックガイド)- 事典・ガイド | 2012/11/28 13:02 |
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その筋の方々のTwitterを見ていると、この本を買っていない人は日本国中に一人もいないんじゃないかw、と思うぐらい話題が飛び交ってますね。この内容で定価800円というのも良です(プラス1点)。
本書の中で印象に残った企画・コラム・コメント等を適当にあげていくと、 まず、海外作家がアンケートに参加していることで、ジェフリー・ディーヴァー、スコット・トゥロー、トマス・クックというメンツは、さすが文藝春秋社という感じです。そのなかで、ジャック・カーリイが「真実の行方」をあげているのは”我が意を得たり”ですね。『占領都市』のデイヴィット・ピースが島田荘司と京極夏彦というのは意外で、作風からは松本清張あたりを選びそうだと思った。 86年版座談会の再録は嬉しい。内藤陳氏の発言の最後についている(笑)を、すべて(苦笑)に替えて読むともっと楽しいw あの瀬戸川氏のベストテンに中町信が入っているのには勇気づけられるw 、 いいかげんにやめようと思っていたが、中町信をまだまだ読み続けよう。 山田風太郎「太陽黒点」は、あらすじ紹介ではネタバレ防止に気を使って巧みに紹介されているのに、投票者のコメントで堂々のネタバレ披露というのはいかがなものか。 あと、法月綸太郎はまだいいです。ランクインしなかったこと自体で話題になっているのだから。それよりも、まるで存在しない作家のごとく全く話にも出てこない二階堂某らにもっと気を使ってやってほしいと思うw あと文庫化の際には、101位から200位の作品について、タイトルだけでもリストアップしてもらいたいですね。旧版ではその中から偏愛作品に出会えた記憶があるので。 |
No.1835 | 6点 | 静おばあちゃんにおまかせ- 中山七里 | 2012/11/26 21:00 |
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若手刑事が女子大生に事件を相談し、その女子大生は元裁判官の祖母に謎解きを相談するという、カバーイラストやこの構成だけを見ればライト感覚の連作短編集ですが、各編とも不可能トリックを中心によく考えられた本格ミステリです。
個人的ベストは第2話の「静おばあちゃんの童心」で、現場に残された雑誌に関するミスディレクションと消去法推理が巧妙です。「~の不信」以降の後半3編は、いずれも密室殺人もので、トリックの独創性には欠けるものの、現場の設定を活かした小道具の使い方に工夫があります。 最終話「静おばあちゃんの秘密」の連作を通した”秘密”には唖然。なるほど、ブラウン神父シリーズとタイトルの並びを違えて、「~の秘密」を最終話にもってきた理由はこれですか。 |
No.1834 | 5点 | 法螺吹き友の会- G・K・チェスタトン | 2012/11/25 21:42 |
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本書には表題作の連作長編と3つの短編が収録されています。
出て来る人物が次々と奇矯な行動と言動をくり返す表題作「法螺吹き友の会」はミステリとはいえないだろう(強いて言うなら社会風刺小説?)。帽子の代わりにキャベツを頭にかぶる大佐の話については説明が付くのですが、空を飛ぶブタのエピソードになると意味不明。作者自身が再三”耐えがたい読書”とか”読者に苦痛を味わっていただこう”と書いているので、これは確信犯です。 一方、短編はいずれもミステリで、なかでは「白柱荘の殺人」が面白かった。意外な犯人像は、逆説と警句にあふれた名探偵もののパロディと読める。 死の床で書いたとされる”ブラウン神父最後の事件”「ミダスの仮面」は、出来はいまいちですが、これは読めただけで満足です。 |
No.1833 | 6点 | 六花の勇者- 山形石雄 | 2012/11/22 12:04 |
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”剣と魔法”の異世界を舞台にした冒険ファンタジー。
悪の魔神の復活を封じるため集結した”六花の紋章”をもつ選ばれし戦士たち、という王道の冒険ファンタジーものですが、結界によるクローズド・サークルという設定の中で、7人のなかに紛れ込んだ偽の勇者を探すというフーダニット・ミステリ的な趣向が面白いです。 また、ハウダニットについても、密室状況の神殿での不可能トリックが見所で、オーソドックスな解法が否定された後に明らかになる大胆なアイデアによる仕掛けがユニークです。 個人的にはラノベ特有の濃すぎるキャラクターが馴染めないのですが、それが許容できる方なら楽しめる作品だと思います。 |
No.1832 | 6点 | 修道院の第二の殺人- アランナ・ナイト | 2012/11/21 12:26 |
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ヴィクトリア朝時代のエジンバラを舞台にした歴史ミステリ、ジェレミー・ファロ警部補シリーズの第1作です。
文章が軽快で、歴史ミステリといっても堅苦しい感じがないのでスイスイと読めました。 冤罪と思われる殺人事件の非公式の再捜査というメインプロットの合間にはさまれるエピソード、シェイクスピア観劇やファロ警部補のラブ・ロマンスが巧い伏線になっています。ただ、犯人の動機は情報不足ではと思いましたが。 本書の魅力は、やもめのファロ警部補と義理の息子で若手医師のヴィンスを取り巻く個性豊かな登場人物たちでしょう(真犯人まで魅力的なのです)。第1作のため誰がレギュラーなのか分からないという利点があって、それが結末の意外性に寄与しているように思います。 |
No.1831 | 5点 | 虚像の道化師- 東野圭吾 | 2012/11/19 12:02 |
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探偵ガリレオ・シリーズの第4短編集。
前半の2編「幻惑す」「心聴る」は、念力や幻聴という超常現象的な謎を物理・科学ネタで解き明かす、当短編シリーズではお馴染みのパターンなためプロット面では新味に欠ける。 後半の2編「偽装う」「演技る」が、ともに事件の構図をミスリードするミステリ趣向を効果的に使った作品で面白かった。とくに「演技る」は、”なんとか山荘”などを書いていた頃の技巧を思い起こさせる。 |
No.1830 | 7点 | バーニング・ワイヤー- ジェフリー・ディーヴァー | 2012/11/17 10:33 |
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リンカーン・ライム・シリーズの最新作。
今回の相手は”電気を操る男”。インフラとしての電力を標的としつつ、見えない凶器として捜査陣を翻弄するという趣向です。 シリーズも9作目となると、現場で収集した微細証拠を分析し犯人を絞り込む過程にマンネリ感もありますが、オールスターキャストを揃えた脇役陣がそれぞれ活躍しており、今作は読みどころが多いです。 アメリア・サックスをはじめとするライム・ファミリーのほか、もはや準レギュラー化した殺し屋”ウォッチメイカー”と、彼をメキシコで追うキャサリン・ダンス。さらには、「悪魔の涙」の文書検査士パーカー・キンケイドの”友情出演”もあります。(いまどき脅迫状が手書きなのはこのため?)。 そのなかで今回の最優秀助演男優賞は、旧タイプのFBI捜査官デルレイで、終盤の展開は胸のすく思いがした。 お家芸のどんでん返しに加えて、「最後の事件」のオチまで楽しめるシリーズ久々の快作でしょう。 |
No.1829 | 5点 | 戦力外捜査官 姫デカ・海月千波- 似鳥鶏 | 2012/11/14 11:30 |
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プロローグだけ読むと、いままでの日常の謎系のコミカルなミステリから作風を変えたシリアスな警察小説の趣ですが、主人公の萌え系娘っ子警部登場で「あぁ、やっぱり」のライトノベルです。
連続放火事件に毒ガス兵器パニックと続く展開は、多少「踊る大捜査線」風ではあるものの、しっかりした警察小説です。ただ、その部分と捜査本部から戦力外通告を受けるドジな娘っ子・海月警部のドタバタ・キャラとのギャップがかなり違和感ありますね。 海月警部のボケに対する部下の設楽刑事の適切なツッコミが面白く、このあたりの漫才風やり取りは葉山君シリーズと同じテイストです。 |
No.1828 | 7点 | 紳士の黙約- ドン・ウィンズロウ | 2012/11/12 12:18 |
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”生涯サーファー、ときどき探偵”の、サーファー探偵ブーン・ダニエルズと、早朝サーフィン仲間”ドーン・パトロール”によるシリーズの2作目。
前作と違って、今回は私立探偵小説のフォーマットに近いプロットになっていて、ブーンが2つの依頼案件を並行して調査するうちに殺人事件に遭遇、事件が意外な展開をみせるという、まあストーリー自体は定番といえば定番です。 ウィンズロウの小説の魅力は、主人公たちの造形と語り口の巧さに尽きます。軽妙なユーモアやブーンのひとり突っ込みを交えたポップな語り口から、一転クライマックスでの短い章割りによる緊迫感あふれる文章への変転。また、ハードボイルドでありながら、ナイーブで好きな女性には奥手な主人公(作者が描く若者の主人公はみんなニール・ケアリー風なんですが)などなど。 今回、ブーンの元恋人サニーは電話とメールだけの登場ですが、そのシーンがまたいいです。 |
No.1827 | 5点 | 妄想女刑事- 鳥飼否宇 | 2012/11/09 13:39 |
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いったんスイッチが入ると推理が妄想に変わり、それをヒントに事件を解決するという、警視庁捜査一課の女性刑事を探偵役にした連作ミステリ。
作者の「~的」シリーズのようなぶっ飛んだ内容のものを期待していましたが、バカミス度でいうと中途半端という印象。 ミステリ的には、大江戸線を使ったこじんまりした時刻表ミステリ「通勤電車バラバラ殺人事件」が面白かったが、東京の地下鉄になじみがないと取っ付きにくいかもしれません。 全編を貫く謎のバーの店主の正体は、4編目ぐらいでなんとなく判ってしまいました。 |