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kanamoriさん
平均点: 5.89点 書評数: 2460件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1880 6点 禁断の魔術- 東野圭吾 2013/02/01 13:30
探偵ガリレオ・シリーズの第5中短編集。
いずれも殺人事件を扱っていますが、「犯人は誰か?」という本来中心となるべきフーダニット部分よりも、被害者やその関係者に纏わる秘密・謎などをメインに据えているのが本書の特徴です。また、たんにトリック解明小説にとどまらず、湯川の人間性が前面にでて以前と比べ物語に深みが増しているように思います。

「透視す」では、殺される要因となったホステスの透視術のカラクリよりも、ラストの義母の心情が胸を打ちますし、「曲球る」の、戦力外通告を受けたプロ選手選手の妻の行動の真相も同様です。
最終話の中篇「猛射つ」では、タイムリミット・サスペンスの様相ですが、湯川が最後に取った行動もこれまでのキャラクターを思えばかなり意外性があります。
これにてシリーズ完結という風にもとれるラスト・シーンですけども、続編はあるのかな?

No.1879 5点 第四の郵便配達夫- クレイグ・ライス 2013/02/01 12:00
高級住宅街の同じ路地で三人の郵便配達人が相次いで殺される。逮捕されたのは、タイタニック号で死んだ恋人からの手紙を30年以上待ち続けている近くに住む大金持ちの老人で、この事件に弁護士マローンが関わることになるが・・・、というシリーズの第9長編です。

フォン・フラナガン警部の転職話ネタやら、ヘレン&ジェイクのジャスタス夫妻が絡んで事件をかき回すという、まあシリーズのお約束どおりの展開ですが、今回はマローンが現場近くで拾って連れまわす野良犬が笑いのツボかな。もてあまして困るパターンとは逆で、行く先々で「譲ってくれないか」と声をかけられるのがなんとも可笑しい。
ミステリ的に驚くような仕掛けはないけれど、犯人の動機にやはりライスらしさを感じる作品です。

No.1878 5点 論理爆弾- 有栖川有栖 2013/01/30 22:48
独立した北海道と敵対関係にあり、私的探偵行為が禁止されたパラレル日本を舞台にした、少女探偵”ソラ”シリーズの第3弾。
北の特殊工作部隊が暗躍しトンネル崩落で外界から孤立した九州山奥の村で、17歳の少女”ソラ”こと空閑純が村民連続殺人事件に挑むというのがメイン・プロットですが、作中終盤に、「論理の欠けらもない。こんな謎、解けるわけがない」とあるように、ミッシングリンク・テーマの本格ミステリとして読むとかなりの肩透かしを喰らう(作者の狙いは別のところにあるというのは分かりますが・・・)。
シリーズを通して本格部分が弱いのですが、本書はよりスパイ冒険スリラーの色彩が強いように思う。ただ、もともとヤングアダルト向け叢書でスタートした関係か、重いテーマや分量の割にスラスラ読める軽さは良です。

No.1877 6点 九つの答- ジョン・ディクスン・カー 2013/01/29 23:07
偶然出会った大富豪の甥との契約で、彼になりすまし英国の”伯父”のもとに赴いた青年ビルが、命まで狙われる陰謀劇に巻き込まれるといった冒険活劇スリラー。ですが、作者の稚気溢れる趣向と、(たぶん当時の感覚でもアンフェア認定と思われる)かなり大胆で強引なトリックを施したゲーム性の強い本格ミステリでもあります。
原題の”Nine Wrong Answers”(9つの誤った答)が示す通り、物語の途中で作者が何度も顔を出して、「〇〇〇と考えるだろうが、それは誤りである」といったチャチャ入れがなんとも微笑ましい。
ただ、ポケミスで400ページを超えるボリュームはもう少しコンパクトにできるだろうし、途中の錯綜した活劇スリラー部分がやや冗長かなと思います。

No.1876 4点 謎解きはディナーのあとで 3- 東川篤哉 2013/01/28 11:23
人気の令嬢刑事&毒舌執事シリーズの連作短編集3作目。

このシリーズは、赤川次郎などがよく書くシチュエーション・コメディの形を採りながらも、トリック&ロジック面でもそれなりに読ませるまずまずの本格ミステリになっていたと思いますが、ここにきてネタ切れ感がありありです。
マンネリ回避のためか「怪盗からの挑戦状でございます」という変化球もありますが、これが一番の凡作になっているような・・・。
最終話「さよならはディナーのあとで」の内容から、本書でシリーズは完結のようで、そうであれば賢明な判断だと思います。

No.1875 6点 ゴルゴタの七- アントニー・バウチャー 2013/01/27 11:45
ミステリの評論部門で名高いアントニー・バウチャーの1937年のデビュー長編。
現在の創元推理文庫発刊の母体となった世界推理小説全集(全80巻)のなかでも文庫化されていない絶版作品の一つです。

カリフォルニア大学バークリー校の留学生が集まる国際寮が舞台の連続殺人を扱ったカレッジ・ミステリで、最終章前に手掛かり索引付きの”読者への挑戦”を置き、関係者を一堂に集めた謎解きなど、本格派マニアへのサービス精神が横溢しています。
ただ、第1の殺人のネタを早々に割っているのはもったいない気がしますし、フェア・プレイ重視のあまり真相がやや分かりやすい側面もあるかもしれません。また、探偵役アシュウィン教授の決着の付け方はどうなんだろうか?という感もあります。
文学論や異端派宗教などの言及部分が難解ですが、古い翻訳の割には学生たちの造形も端役までそれなりに書き分けられており、読みずらい感じはありませんでした。

No.1874 5点 大富豪同心- 幡大介 2013/01/25 18:53
江戸一番の豪商の末孫で放蕩三昧で遊び暮らす若旦那・卯之吉が町方同心となって難事件を次々と解決していく、「富豪刑事」の捕物帖版”大富豪同心”シリーズの第1作。
卯之吉の祖父が金に物言わせて裏側で全て都合よくコントロールするといった、シチュエーション・コメディの面白さはあります。裏工作で千両箱が乱れ飛ぶさまが可笑しい。
ただ、昨年の怪作「猫間地獄のわらべ歌」のようなトリッキィな本格ミステリの要素はなく、後半は意外と普通の捕物帖になっているのは物足りない。

No.1873 6点 刈りたての干草の香り- ジョン・ブラックバーン 2013/01/24 14:47
英国情報局長のカーク将軍らが、地球滅亡の危機から人類を救うため活躍するという、文芸的なタイトルからは想像もつかないB級感あふれる怒涛のホラー&冒険スリラー・シリーズ第1作。

ソ連の片田舎での奇妙な出来事を発端に、突然変異体という”怪異の正体”をぼかしながらも徐々に明らかにしていく手際が巧く、深夜テレビの再放送ホラー映画をみるようなゾクゾク感を味わえるw
 東西冷戦時代ならではのスパイ小説的な展開や、旧ナチスドイツの天才女性科学者の陰謀など、300頁にも満たない分量で、よくこれだけネタを詰め込んだものだと感心します。
人類の危機に対処するのが将軍らと若い生物学者夫婦のわずか4人(後の主役の1人、レヴィン卿は本書にはまだ登場しない)だったり、地球規模の陰謀のわりに謎の首謀者がすぐ身近にいたりで、突っ込みどころも多いですが、これが予想以上に面白かった。

No.1872 8点 64(ロクヨン)- 横山秀夫 2013/01/22 23:07
わずか1週間で終った昭和64年に発生し、今も未解決のD県の少女誘拐殺害事件。時効を1年後に控え現在でも”ロクヨン”の符丁で呼ばれるこの過去の事件を巡って、D県警の広報官・三上は警察内部の未曾有の暗闘劇に巻き込まれることになる-------。

この圧倒的な筆力はすごい! わが娘の失踪という家庭問題を抱えながら、広報室vs記者クラブ、警務部vs刑事部という二つの対立軸から派生する諸問題で三上が窮地に追い込まれる様は、一種の企業小説さながらで読み応え十分です。また、そういった人間ドラマだけで終らず、そのなかに敷かれた伏線から急転する終盤のスリリングな展開、全ての疑問点がつながり明らかになる構図の意外性も鮮やかです。
今回脇役で再登場の、警務調査官・二渡や捜査一課長・松岡もいい味を出しており、本書の読了後は、多くの読者が「陰の季節」を再読したくなるに違いない。

No.1871 7点 占領都市 TOKYO YEAR ZERO 2- デイヴィッド・ピース 2013/01/20 12:39
日本在住の英国人作家デイヴィッド・ピースが、終戦直後の日本の暗黒事件を題材に描く”TOKYO三部作”の第2弾。
昭和23年1月、帝国銀行椎名町支店で発生した大量毒殺事件、いわゆる「帝銀事件」が本書の主題です。芥川龍之介の「藪の中」からヒントを得たという、独白、手紙、手記、捜査メモなどで語られる12人の関係者による12のエピソードのなかに、”死者の叫び”のようなフレーズが繰り返し挿入されるなど一種異様な構成で、「ドグラ・マグラ」を連想させる幻想風の序盤の数章などはかなり読者を選びそう。途中で投げ出す人もいるでしょうね。
日本の能「隅田川」に見立てて犠牲者の母親の心情を表わす最終章など、多くの日本文化の趣向を取り入れているのには、”あんた本当に外国人か?”と言いたくなるほどで、非常に刺激的な読書でした。ただし、帝銀事件と石井731部隊との関連など、事件の「真相」は参考文献に挙げられている松本清張「小説帝銀事件」や森村誠一「悪魔の飽食」などに依存するもので、あまり新味はなく、本書は謎解きを主眼とするものではないです。

No.1870 5点 女名刺殺人事件- 梶龍雄 2013/01/19 11:46
優雅で推理力に秀でた長女、スポーツ万能で行動力がある次女、お色気と観察力がウリの三女の、狭山家三姉妹が4つの事件に挑む「三姉妹探偵団」シリーズ-------じゃなくて、「探偵姉妹トリオ」シリーズの第1弾。

軽快なユーモアとサスペンスの取り合わせで抜群のリーダビリティだった赤川次郎のあのシリーズより、数年後に出た当シリーズの方がなぜか古臭く感じるのはご愛嬌。
たしかに、本書はB級感のある本格ミステリではあるものの、第3話の「母なる殺人」など、伏線や意外な構図の使い方にカジタツらしい技巧が見れました。

No.1869 5点 サイモン・アークの事件簿〈Ⅳ〉- エドワード・D・ホック 2013/01/18 13:04
オカルト探偵サイモン・アークの第4短編集。作者ホックが自ら選んだこれまでの3巻分の26作品とは違って、本書は訳者・木村仁良氏がセレクトした作品集です。

率直に言うと出来がいいと思った作品はあまりなかったですね。
悪魔との対決を求めるオカルト研究家というシリーズの基本設定が足かせになってマンネリを感じます。また、怪奇現象などの発端の謎に引き付けるものがない、普通の作品が多いように思います。
印象に残った作品を強いていうと、語り手「わたし」の故郷と家族に関わる事件「黄泉の国の判事たち」と、修道院に棲む悪魔の正体が印象的な「悪魔がやって来る時間」ぐらいかな。

No.1868 5点 皇帝の新しい服- 石崎幸二 2013/01/17 12:58
”婿選び”の伝統儀式が執り行われる瀬戸内海の島で、みたび過去の惨劇が繰り返される?----といっても、石崎ミステリですから、横溝正史ワールドのおどろおどろしい雰囲気などあるはずもなく、会社員・石崎とミステリ研女子高生3人組によるボケとツッコミが連発されるお笑い本格ミステリです。
伏線があからさまなので、恒例の〇〇ネタであることはすぐに解ったのですが、ミリアの推理と同じ結論どまりで真相には至りませんでした。しかし、タイトルがアンデルセン童話のアレの直訳というのは一般常識なんだろうか? 知っていれば事件の構図もピンとくるんじゃないかな。

No.1867 6点 ゴースト・タウンの謎- フランク・グルーバー 2013/01/16 13:01
怪しげなボディビル本のセールスで全米各地を旅しながら、遭遇した殺人事件の謎を解く、フレッチャー&クラッグの凸凹コンビによるドタバタ・ミステリ。
いちおう軽ハードボイルド風の語り口なので「ハードボイルド」に分類しましたが、いろいろな要素がごった煮のように入っていてジャンル分けが難しいシリーズです。
本書でいえば、金欠病解消のため信用詐欺を重ねる二人の珍道中はユーモア・コンゲーム&ロード・ノヴェルといえるし、アリゾナ州トゥームストン(=ワイアット・アープの「OK牧場の決闘」で有名)での銃撃戦はウェスタン小説の雰囲気があるし、暗闇の地下坑道をさまようさまは冒険小説そのものです。
いずれもテンポのいい場面転換で面白く飽きさせませんが、そもそもの発端である銀鉱山の採掘権利を巡る殺人事件の解決部分が唐突で、謎解きミステリとしては弱いのが残念です。

No.1866 6点 六花の勇者 2- 山形石雄 2013/01/15 18:22
”剣と魔法”の異世界を舞台に、選ばれし6人の戦士が悪の魔神と配下の凶魔たちに挑む冒険ファンタジーの第2弾。
前作のような密室状況の不可能犯罪というガチ本格の趣向こそないものの、7人目の偽の勇者探しというフーダニット興味を引き継ぎつつ、凶魔の統率者テグネウとの闘いが本書のメインです。
”地上最強の男”を自称する主人公アドレットは今回脇役で、ある秘密を抱える勇者のリーダー格モーラを物語の核としていて、彼女とテグネウとの策略合戦のコンゲーム的な仕掛けが面白いです。このトリックを見ると、やはり作者は本格ミステリも意識しているなと思います。
魔神側の陣容も明らかになり、次作以降のストーリー進展が楽しみではあります。

No.1865 7点 明日に賭ける- ウィリアム・P・マッギヴァーン 2013/01/13 18:52
初期の悪徳警官ものや社会派ハードボイルドで知られるマッギヴァーンの’50年代後期の傑作です。
4人組が田舎町の銀行を襲うという筋立てですが、物語半ばで計画の実行がなされ、後半は、一味にひきずりこまれた2人の実行犯の逃避行と、心の動きを中心に描いた異色のクライム・ノベルでした。
第二次大戦の英雄ながら平和社会に適応できない白人男アールと、人種の偏見と感情的確執にけなげに耐える黒人男イングラムとの人間関係が、憎悪から友情へと揺れ動く様が克明に描かれていて、このあたりは”社会派”のレッテルに偽りなしです。また、それらがラストの感動的なシーンにつながる構成も素晴らしいです。
当時のミステリ・マガジン編集長・都筑道夫の「これ以上のものを書くとなると、探偵小説にならなくなる・・・」という初版の解説の言葉も肯けます。

No.1864 6点 読まずにはいられない- 評論・エッセイ 2013/01/12 12:52
ミステリ作家・北村薫の書評・エッセイ集。文庫解説や各種雑誌などに書いてきたものを取りまとめたものです。

覆面作家時代の暴露話や、創元社の戸川さんとの数々の因縁めいたやり取りをはじめとして、著者のフアンであれば非常に楽しく読めるエピソードが満載です。
東西ミステリー・ベスト100(もちろん旧版)で、内容紹介とうんちく欄を担当した全ての作品の再録をみると、クイーンと鮎川哲也に対するリスペクト度合いがよくわかります。また、一概にミステリマニアは、有名作を読んでないことを何故か自慢げに披露したくなる習性があると思うんですが、超名作「そして誰もいなくなった」の未読をサラリとカミングアウトするところがいかにも作者らしいです。
いちばん面白かったのは「慟哭」の解説です。ラストの一行、「作者に生きていられると、論評は難しい」には爆笑です。

No.1863 6点 核パニックの五日間- ジョゼフ・ディモーナ 2013/01/10 13:33
アメリカ空軍のミサイル基地から盗まれた核爆弾3個によって、ニューヨークがパニックに陥るという、まぁタイトル通りのデッドラインもの冒険スリラーです。

米ソ冷戦時代の70年代の話なので、戦略核兵器削減交渉(SALTⅡ)とか多国籍企業の暗躍・陰謀からみという古臭いやや定番の背景設定ではありますが、”犯人”である科学者レナード・チュウの行動原理・人物造形が丁寧に描かれているところはなかなか良ですし、デッドライン・サスペンスのパターンを外す中盤の展開も「おおっ」と思わせます。
ただ、主人公の司法省次官補にくっついて行動する大富豪の娘ペギイの言動がかなりチープ感があり、傑作級のサスペンスをB級に貶めてしまったように思います。

No.1862 4点 新本格ミステリの話をしよう- 事典・ガイド 2013/01/10 12:54
「十角館の殺人」から始まった新本格ミステリの25周年に合せて昨年出た評論集。綾辻行人から新鋭の円居挽までの新本格作家20人と、鮎川哲也、島田荘司ら先駆者5名についての作家論、作品論が中心となっています。

著者には申し訳ないですが、途中からは流し読みのようになってしまいました。
本書は、文庫の解説などで過去に著者が書いてきたものを切り貼りしたような編集で、系統立てて”新本格”を解析したものとは言えません。どこかで読んだような話が多く、作家によって内容の濃度にバラツキ(単にその文庫作品の解説だったり)がありました。読む者に「へえ~っ」と思わせるような新鮮な切り口の評論は見当たらなかった。

No.1861 5点 信州・小諸殺人行- 中町信 2013/01/08 22:15
女性画家と幼児が神社の石段から転落死するという事件をきっかけに、小諸に住む老画家や周辺の人物がバッタバッタと殺されていくというB級本格ミステリ。
夫婦探偵ものですが、氏家周一郎&早苗夫婦は登場しないノンシリーズ長編です。
ミスリードのための意味深のプロローグや、過去の事件の真相に気付いた人物が次々と殺されていく展開など、お馴染みのプロットですが、旅館の離れの密室殺人と、室内の三毛猫からのロジック展開はまあ面白かった。しかし普通に考えて、あれだけの理由で何人も殺す必要性はないでしょう。

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