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kanamoriさん
平均点: 5.88点 書評数: 2474件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1934 6点 グランドマンション- 折原一 2013/06/14 12:02
年金不正受給、幼児虐待、オレオレ詐欺など、現代の日本社会が抱えるさまざまな病巣が集合したようなマンションを舞台にした、怪しげな住人たちによる群像劇風の連作ミステリ。

叙述の技巧を駆使して、人物、時、場所を誤認させサプライズを演出する、いつもながらの折原ワールドが展開されているので、それほど新味はないものの、ファンであれば安心して楽しめる好短編集。
書き下ろしの最終話「リセット」で、これまでのエピソードの伏線を回収し長編に仕上げているところが巧みです。

No.1933 6点 探偵ダゴベルトの功績と冒険- バルドゥイン・グロラー 2013/06/13 13:15
20世紀初頭のウイーン。上流階級社会で横行する詐欺、盗難、醜聞事件などの難問を、高等遊民ダゴベルトが優雅に解決する連作ミステリ。本書も「クイーンの定員」がらみの有意義な作品集です。

第1話の「上等の葉巻」のなかで、ダゴベルトが遺留品から犯人の人物像を推理する手法はホームズのそれを思わせ、”オーストリアのコナン・ドイル”と言われる所以が理解できます。ただ、他の作品のなかには、名探偵と言うよりトラブルシューター的な役割もしており、そういった作品も独特の面白さがありました。
また、冒険譚の聞き手であるグルムバッハ夫人が好奇心旺盛な愛すべきキャラの持ち主で、ダゴベルトの話の合間に入る「情景描写はいいから」などと言うツッコミが現代娘風で萌えます。

No.1932 6点 若きウェルテルの怪死- 梶龍雄 2013/06/13 12:43
昭和9年の仙台、考古学者邸の離れに下宿する学生の毒死事件に端を発する怪事件を描いた”旧制高校シリーズ”の2作目。

特高刑事や非合法の反戦組織の存在が時代の雰囲気を感じさせると共に、巧妙なミスディレクションになっています。
化石骨の身代金奪取のトリックはちょっとアレですけど、毒殺事件時のアリバイ工作に絡んで、図らずも二人の人物が両方とも〇〇だったというアイデアがユニークです。効果のほどは疑問ですが、本書で作者が一番やりたかった仕掛けではと思います。
友人の怪死事件の捜査に関わりを持つことになる旧制二高生の主人公の日記形式という全体構成があまり意味がないように思えましたが、ラストで意外な方向に効いてくるのが流石です。

No.1931 6点 ソープ・ヘイズルの事件簿- V・L・ホワイトチャーチ 2013/06/12 12:37
鉄道マニアの素人探偵ソープ・ヘイズルが活躍する9編にノンシリーズ6編を収録した鉄道ミステリ短編集。論創社のホームズのライヴァルたちシリーズの一冊で、本書は「クイーンの定員」にも選定されている。

走行中の列車から中央部の車両だけを消失させるという魅力的な謎の設定で有名な代表作「サー・ギルバート・マレルの絵」をはじめ、密室状況のコンパートメントからの人間消失、密室内の銃撃などの不可能トリックものから、スパイ冒険スリラーものまで意外とバラエテイ豊かで、20世紀初頭の英国鉄道事情も垣間見れて楽しい。
種明かしが犯人や関係者による告白というパターンが多いのも時代性でしょうか。

No.1930 5点 本能寺遊戯(ゲーム)- 高井忍 2013/06/12 12:03
女子高生3人組が歴史雑誌の新説応募企画に対して議論を繰り広げるという歴史ミステリの連作短編集。

デビュー作の「漂流巌流島」と同様に、外枠に登場するキャラクターは軽妙なのに、内枠の歴史の謎解き(というか新解釈)の部分が資料・文献を引用したかなり硬派な内容なので、日本史の素養がない身にはついて行くのがきつかった。
最終話だけは、そういった読者の思いを逆手に取ったようなメタなオチで楽しめましたが、鯨統一郎ほどとは言わないまでも、もう少しエンタメ性が欲しい。

No.1929 6点 刑事くずれ/蝋のりんご- タッカー・コウ 2013/06/11 13:20
精神病院を退院し社会復帰に備える人々が暮らす療養施設内で不審な事故が連続して発生する。現職時代に同僚を殉職させてしまったトラウマを抱える元刑事ミッチ・トビンは、患者を装い潜入調査に取り掛かるが、という”刑事くずれ”シリーズの第3弾。

有栖川「江神二郎の洞察」の中のある人物のセリフで、”あれを読まずしてミステリを語れない”とあったので再読してみましたw
割と短めの長編にもかかわらず巻頭の登場人物リストに20名を超える患者名がズラリと載っていて、それぞれ病歴に個性を持たせてはいるもののちょっと混乱します。ただ、アリバイを整理し消去法で犯人を絞り込んでゆくミッチ・トビンの捜査はなかなか理知的で立派な本格ミステリにもなっています。
パトQの「迷走パズル」のパズルのピースを増やし、ネオ・ハードボイルド調の語りにしたような作品です。

No.1928 6点 妖精の墓標- 松本寛大 2013/06/11 12:48
島田荘司絶賛の新人賞デビュー作「瑠璃の家」に続く、ボストンの心理学教室研究員トーマ・セラを探偵役にしたシリーズの2作目です。
信州の旧家を中心とした複雑な血縁関係が描かれているため”横溝ミステリへの挑戦”というようなコピーもありますが、作者の狙いとはちょっと違うのでは思います。
事件の性質があやふやなまま、事件と直接の関係がないような”妖精の幻視”の謎を核としているため読むのに多少もどかしさを感じる側面もありますが、巻末に載せられた多くの資料を活かした読み応えのある力作になっています。
ただ、前作と同様にあまり知られていない”特殊疾患”をネタにしていますが、それが妖精の謎に直結しており読者に推理の余地がないように思えるのが難点です。

No.1927 6点 秘められた傷- ニコラス・ブレイク 2013/06/10 13:21
桂冠詩人セシル・デイ=ルイスというよりも、最近は映画「リンカーン」のアカデミー賞男優ダニエル・デイ=ルイスの父親といったほうが通りがいいニコラス・ブレイクの最後の長編ミステリ。

作者自身がモデルと思われる主人公が、新進作家時代に生まれ故郷アイルランド旅行で立ち寄った町で巻き込まれた殺人事件を回想する構成になっていて、トマス・H・クックの一連の作品に似た雰囲気のある単発作品です。
被害者の女性以上にその夫の心の動きがちょっと理解しがたいところが文芸作品風w で、遺作になることを予期していたかのようなエピローグが非常に印象に残ります。

No.1926 5点 私の嫌いな探偵- 東川篤哉 2013/06/10 12:56
烏賊川市シリーズの2作目の短編集。今作では助手の流平くんはチョイ役の登場で、鵜飼と探偵事務所ビルのオーナー朱美とのコンビによる5つの事件簿です。

ぬるいギャグと奇抜なトリックのコラボは健在で、”ターザンごっこ”とかパラパラ漫画といった脱力的なガシェットが作者らしい。ただ、前作と比べるとロジック展開にキレがないものが多いように思えた。
収録作のなかでは、アナログすぎる決め手が笑える「探偵が撮ってしまった画」が個人的ベストかな。

No.1925 6点 黒い壁の秘密- グリン・カー 2013/05/19 12:20
アマチュア登山家にしてシェークスピア俳優のアバーグロンビー・リューカーを探偵役にしたシリーズ第6作。

雄大な山岳風景を舞台背景にクリスティ風の端正な本格ミステリになっていて非常に好感がもてる作風です。リューカーと妻のジョージーのコージー風のユーモラスなやり取りも良です。真犯人の動機つながる伏線の張られ方が丁寧すぎるので途中で真相を察することができましたが。
また、シリーズ全作を解題するために原書すべて再読したという森英俊さんの文庫解説がすごいです。これだけされたら創元社もシリーズの続刊を出さざるをえないでしょう。

No.1924 6点 ライダーは闇に消えた- 皆川博子 2013/05/19 11:59
バイク仲間内で連続して発生する不審死を瑞々しい文章で描いた青春ミステリ。
序盤から多数の若者たちが登場し、特定の主人公を配置しない群像劇ですが、それぞれの造形が巧みに書き分けられています。ただ、明かされる真犯人の犯行動機はすんなりと理解できるものではありませんでした。メカニックなトリックもやや専門的すぎるきらいがあります。

本書は、もともと江戸川乱歩賞に応募するために書かれた作品で、他のルートで作家デビューとなったため応募は見送られた最初期の青春ミステリとのこと。
もし応募されていたら、「ミステリとしては弱い部分があるが、若者たちの生態を描いた文章は見るべきものがある」ぐらいの評価で最終候補作どまりかな(笑)。

No.1923 6点 約束- フリードリヒ・デュレンマット 2013/05/19 11:38
昨年「失脚/巫女の死」で注目を集めたスイス出身の劇作家デュレンマットの50年代に書かれた長編ミステリ。

スイスの森の中で惨殺された少女。その被害者の母親との「必ず犯人を逮捕します」という約束に縛られたように、栄転話を捨て警察の職までなげうって、ひたすら犯人に罠を張り続ける元警部の執念は鬼気迫るものがあります。
しかし、本書は副題に「推理小説へのレクイエム」とあり、また小説の語り手が冒頭に示唆しているように、作者はミステリ読みが期待する真相を用意していません。
この苦すぎる結末は評価が分かれそうで、一種のアンチ・ミステリといえます。

No.1922 6点 天狗 大坪砂男全集2- 大坪砂男 2013/05/12 12:03
薔薇十字社版を増補した創元推理文庫版の大坪砂男全集第2弾。本書は奇想編と時代編に分けられている。

大坪砂男といえば、世評が高いデビュー作の「天狗」一作で知られる作家という一般的な評価があるようで、たしかにこの主人公の奇想天外な殺人トリックと偏執狂的な人物造形は異様でありながら、ブラックユーモアも感じさせる奇妙で記憶に残る作品。
ただ、他の作品は奇想という点では前巻ほどの派手さはなく、「盲妹」や「花束(ブーケ)」など、男女の微妙なひだを描いた心理小説が多い印象を受けた。
時代編では、山風忍法帖を思わせる「密偵の顔」が面白い。

小説以上に興味深かったのは、弟子だった都筑道夫のエッセイで、大坪が柴田錬三郎にプロットを売っていたというエピソード。「幽霊紳士」はともかく「眠狂四郎」もだったとは・・・・。

No.1921 7点 列車に御用心- エドマンド・クリスピン 2013/05/12 11:25
「クイーンの定員」にも選出されているクリスピンの第1短編集。
このミス”我が社の隠し玉”で予告されてから、だいぶ待たされましたけれど期待以上の好短編集でした。

ジャーヴァス・フィン教授もの14編は、人間消失、アリバイ、密室トリック、意外な手がかりなど、短い枚数ながらパズラーの王道を往く端正でロジカルな本格編。なかでは、「喪には黒」「ペンキ缶」「窓の名前」などがよかった。
それらのパズラー以上に印象に残ったのが非シリーズものの「デッドロック」で、クックの記憶シリーズを思わせる抒情性豊かな青春小説として秀逸な作品。

No.1920 6点 螺旋の底- 深木章子 2013/05/12 11:02
北フランス小村の丘に建つ古い館を舞台に、共に秘密を抱えた新婚夫婦の思惑を交互に描くサスペンス小説。

三階から地下室までつづく螺旋階段という舞台設定や前妻の影など、ゴシック小説の雰囲気を漂わせ、前2作とちょっと作風が違いますが、作品全体の構成に仕掛けを施し、最後にサプライズを演出する手法は同じです。トリックに既視感はあるもののなかなか巧妙に騙られていると思います
ただ、物語に膨らみがないので、読み応えという点では物足りない感じを受ける。

No.1919 7点 暗殺者グレイマン- マーク・グリーニー 2013/05/11 12:43
目立たないことで”グレイマン”の異名をもつ凄腕の暗殺者を主人公にした冒険小説。この手の活劇小説では「極大射程」以来久々に最後の最後まで興奮させられた。

死の罠が待ち受ける北フランスの古城を目指してヨーロッパ横断を敢行するグレイマンを標的に、12か国の特殊部隊チームが次々と襲撃を仕掛けてくる、息つく暇のないスリリングな展開の連続がすごい。たしかに、御都合主義的な援護者の登場など欠点もあるけれど、ここまで面白ければ問題ないw
続編もあるようなのでそのうち読んでみたい。

No.1918 6点 六花の勇者 3- 山形石雄 2013/05/11 12:17
”剣と魔法”の異世界を舞台にした冒険ファンタジーの第3弾。
今回の主役はナッシュタニア姫の忠臣の騎士ゴルドフで、全編を貫く怒涛の戦闘活劇がすごい。
ミステリ的な仕掛けはやや減退しているものの、三つの派閥に分離した凶魔側と六花の勇者との間で、それぞれの策謀が複雑に交錯する構図は今回も健在で、誰が敵で誰が味方か、誰が最終的に騙されているのか分からないコンゲーム風の仕掛けが滅法面白い。

No.1917 5点 悪魔と警視庁- E・C・R・ロラック 2013/05/11 12:01
濃霧のロンドン、仮装舞踏会の夜の雰囲気、マクドナルド警部の車の中から悪魔メフィストフェレスに扮した死体の出現、とつづく発端は魅力的で引きつけられるものがありましたが、舞踏会関係者への聞き込みシーンがつづく中盤以降は展開がやや平坦かなと思う。
中国文化に詳しい女性のある行動の意味が分かれば真相が見えてくるという伏線に作者の工夫を感じましたが、メイントリックが陳腐に感じられ、読後感は微妙。期待値が高すぎた。

No.1916 5点 ビブリア古書堂の事件手帖4- 三上延 2013/05/11 11:37
シリーズ初の長編、ネタが江戸川乱歩ということでミステリ作家が取り上げられるのもシリーズ初という本書ですが、月9ドラマ版を先に見ていたこともあり、前三作ほどの面白味を感じなかった。
二銭銅貨の暗号、名前のアナグラム、変身願望、人間椅子など、乱歩へのオマージュを散りばめて、プロットも乱歩の通俗探偵小説を意識したものになっていますが、無理やりネタを詰め込んだ感じを受けた。やはり、このシリーズは短編がいいと思う。
(原作が2月発売で、ドラマ化が3月というのはちょっと早すぎないか?)

No.1915 5点 闇に葬れ- ジョン・ブラックバーン 2013/04/21 12:43
天才とも狂人とも称される十八世紀の芸術家の遺骸が収められた納骨堂の封印を200年ぶりに破った時、内部から不気味な哄笑が高らかに響いてきて....といった幕開けの、モンスター・ホラー&伝奇ミステリ。

本書は、レギュラー主人公のカーク将軍が登場しない単発作品でしたが、発端のオカルト現象から終盤は怒涛のSFパニック小説に変転するお馴染みのジャンル混合型ミステリです。まあ、小説版「ウルトラQ」ですね。
”それ”の正体を隠蔽したまま終盤近くまで引っ張っているのでサスペンスは強烈ですが、明かされたネタが「またかよ」という側面があるのも事実。
小説技巧のうまさとネタのチープさが混在する作者らしさ全開のエンタテイメント小説でした。

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