皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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kanamoriさん |
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平均点: 5.89点 | 書評数: 2426件 |
No.1886 | 7点 | 山魔の如き嗤うもの- 三津田信三 | 2013/02/11 12:27 |
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怪異譚蒐集家・刀城言耶シリーズの第4長編を再読。
解説によると、意外なことに作者は横溝正史へのオマージュ的な意識は全くないとのことですが、わらべ唄の見立て連続殺人、顔のない死体、旅芸人一座など、どう見ても「悪魔の手毬唄」を想起せざるをえませんw (復員服の男は「犬神家」ですが)。 メインの謎である”一家全員の突然の消失”のカラクリに関しては、初読時たまたま直前に梶龍雄の某作を読んでいたため、その類似性が気になったのですが、今回再読してみると伏線の張り具合や見せ方に違いがあり、こちらのほうが巧妙だと感じました。 ホラー部分は比較的弱いかなと思いますが、恒例の”一人多重解決”や蝦蟇油壺のロジックなど、本格ミステリ部分が充実していると思います。 (文庫版には、舞台となる山村の略図イラストがあって位置関係が分かりやすい) |
No.1885 | 6点 | 小鬼の市- ヘレン・マクロイ | 2013/02/09 23:37 |
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第二次大戦下の、ドイツの潜水艦が出没するカリブ海の小さな島国を舞台にした冒険スリラー風のミステリ。
これまでの本格寄りのシリーズ作品とかなりタイプが違ったのですが、最後に明らかになる趣向で、「さすが、マクロイ!」と唸らせてくれました。 主人公である通信社の新任支局長スタークが探る前任者が残した謎のスプーク・ネタは、登場人物が限られ時代設定を考えれば、それほどの意外性はないものの、黒幕を指摘するプロセスのロジカルさなどに本格派らしい持ち味を感じます。 ただ、「ひとりで歩く女」の翻訳が先になってしまったのは止むを得ないとしても、帯と内容紹介の一文は作者の意図に反すると思われるもので、セールスポイントを重視するあまりの版元の勇み足でしょう。誰もが途中まで読んで「あれ?」と思うはず。 |
No.1884 | 6点 | 犯罪ホロスコープⅡ 三人の女神の問題- 法月綸太郎 | 2013/02/08 11:06 |
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黄道十二星座をモチーフにしたパズラー短編集の2巻目。「犯罪カレンダー」の法月綸太郎風アレンジといったところでしょうか。
ギリシャ神話のエピソードを活かしてパズラーを構築するという作者の苦労・労力が、それほどミステリの面白さにつながっていない感もありますが、最初の2作品は完成度が高いように思います。 1話目の「宿命の交わる城で」は、メイン・プロットが作者自身の某長編と同じですが、見せ方を180度変え、最後まで悟らせない複雑な仕掛けがすごい。意味深なタイトルもいいです。 次の「三人の女神の問題」は、チェスタトン的ロジックによる構図の反転が面白い。ギリシャ神話のモチーフが編中で一番活かされているように思います。 残りの作品で共通して気になったのは、犯人の意外性を演出するための、その人物の配置方法ですね。 |
No.1883 | 6点 | 刑事くずれ- タッカー・コウ | 2013/02/05 15:39 |
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ハードボイルドや犯罪小説といったタフ・ノヴェルから、ドタバタ・コメディ風のユーモアミステリまで、幅広い作風で知られるドナルド・E・ウェストレイクが別名義で書いたフーダニット・ミステリ。元刑事ミッチ・トビンが探偵を務めるシリーズの第1作です。
女性がらみの不祥事で同僚刑事を見殺しにし市警を追われた過去に囚われ続ける主人公という設定や、無駄を省いた乾いた文体からは、ネオ・ハードボイルドの雰囲気があり、一方で、被害者である組織の大幹部の愛人が残した書きおきを分析し容疑者を絞り込む過程とミスリードの仕掛けに本格ミステリ的な技巧を感じます。本格とハードボイルドのコラボといった感がありジャンル分けが悩ましいですね。 当シリーズのもう一つの特徴は、本書における犯罪組織をはじめ、ヒッピー集団、精神病患者の療養施設など、いずれも特殊な社会・集団内の殺人を扱っていることで、容疑者を限定するところにも本格色が現れているように思います。 |
No.1882 | 7点 | コモリと子守り- 歌野晶午 | 2013/02/04 12:34 |
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舞田ひとみ高校生編。ひとみの中学までの同級生で、引きこもりの少年を物語の中心に据えたボリュームのある長編で、本書は仕掛けを凝らした誘拐ミステリの秀作と評価したいです。ただ、これまでのシリーズの流れから、タイトルは「舞田ひとみ17歳、子守りときどき探偵」でもよかったのでは?とも思いますが。
幼児虐待、生活保護、引きこもりなどの社会性のあるテーマを背景にしつつ、スマホの特殊機能やコインロッカーの新システムといった最先端知識を駆使した構成は、”現代の誘拐ミステリ”としてなかなか読ませます。連続幼児誘拐事件の裏の構図の手がかりもフェアに提示されていて、丁寧に読めば途中で読み解くことも可能でしょう。 謎解きが終わった後の、100ページにわたるエピローグは確かに長すぎるのですが、青春ミステリ風のラストシーンはいいですね。印象的です。 |
No.1881 | 6点 | 第三の皮膚- ジョン・ビンガム | 2013/02/02 11:04 |
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世間知らずで気弱な19歳の青年レスリー・マーシャルが、ダンス・ホールで知り合った女性にそそのかされて、前科もちの男と二人で押入り強盗を働くが・・・・、といったクライム・ストーリーです。
レスリーが守衛殺しの共犯とみなされたことで、てっきり物語はノワールの方向に向かうものと思っていたのですが、途中から母親アイリーンの視点が多くなり、一種の家族小説の様相になっていくのがユニークです。この母親の心理的葛藤・妄執の推移の描写がおもしろく読みどころだと思います。ただ、この結末はどーなんでしょうか、少しモヤモヤ感が残りました。 なお、タイトルの「皮膚」の意味は、”一皮むけた”とか”化けの皮がはがれる”などと使われる「皮」とたぶん同義で、(アイリーンが思索するところの)三つ目の皮とは、人間本来のこどものような純真な資質をあらわすようです。 |
No.1880 | 6点 | 禁断の魔術- 東野圭吾 | 2013/02/01 13:30 |
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探偵ガリレオ・シリーズの第5中短編集。
いずれも殺人事件を扱っていますが、「犯人は誰か?」という本来中心となるべきフーダニット部分よりも、被害者やその関係者に纏わる秘密・謎などをメインに据えているのが本書の特徴です。また、たんにトリック解明小説にとどまらず、湯川の人間性が前面にでて以前と比べ物語に深みが増しているように思います。 「透視す」では、殺される要因となったホステスの透視術のカラクリよりも、ラストの義母の心情が胸を打ちますし、「曲球る」の、戦力外通告を受けたプロ選手選手の妻の行動の真相も同様です。 最終話の中篇「猛射つ」では、タイムリミット・サスペンスの様相ですが、湯川が最後に取った行動もこれまでのキャラクターを思えばかなり意外性があります。 これにてシリーズ完結という風にもとれるラスト・シーンですけども、続編はあるのかな? |
No.1879 | 5点 | 第四の郵便配達夫- クレイグ・ライス | 2013/02/01 12:00 |
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高級住宅街の同じ路地で三人の郵便配達人が相次いで殺される。逮捕されたのは、タイタニック号で死んだ恋人からの手紙を30年以上待ち続けている近くに住む大金持ちの老人で、この事件に弁護士マローンが関わることになるが・・・、というシリーズの第9長編です。
フォン・フラナガン警部の転職話ネタやら、ヘレン&ジェイクのジャスタス夫妻が絡んで事件をかき回すという、まあシリーズのお約束どおりの展開ですが、今回はマローンが現場近くで拾って連れまわす野良犬が笑いのツボかな。もてあまして困るパターンとは逆で、行く先々で「譲ってくれないか」と声をかけられるのがなんとも可笑しい。 ミステリ的に驚くような仕掛けはないけれど、犯人の動機にやはりライスらしさを感じる作品です。 |
No.1878 | 5点 | 論理爆弾- 有栖川有栖 | 2013/01/30 22:48 |
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独立した北海道と敵対関係にあり、私的探偵行為が禁止されたパラレル日本を舞台にした、少女探偵”ソラ”シリーズの第3弾。
北の特殊工作部隊が暗躍しトンネル崩落で外界から孤立した九州山奥の村で、17歳の少女”ソラ”こと空閑純が村民連続殺人事件に挑むというのがメイン・プロットですが、作中終盤に、「論理の欠けらもない。こんな謎、解けるわけがない」とあるように、ミッシングリンク・テーマの本格ミステリとして読むとかなりの肩透かしを喰らう(作者の狙いは別のところにあるというのは分かりますが・・・)。 シリーズを通して本格部分が弱いのですが、本書はよりスパイ冒険スリラーの色彩が強いように思う。ただ、もともとヤングアダルト向け叢書でスタートした関係か、重いテーマや分量の割にスラスラ読める軽さは良です。 |
No.1877 | 6点 | 九つの答- ジョン・ディクスン・カー | 2013/01/29 23:07 |
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偶然出会った大富豪の甥との契約で、彼になりすまし英国の”伯父”のもとに赴いた青年ビルが、命まで狙われる陰謀劇に巻き込まれるといった冒険活劇スリラー。ですが、作者の稚気溢れる趣向と、(たぶん当時の感覚でもアンフェア認定と思われる)かなり大胆で強引なトリックを施したゲーム性の強い本格ミステリでもあります。
原題の”Nine Wrong Answers”(9つの誤った答)が示す通り、物語の途中で作者が何度も顔を出して、「〇〇〇と考えるだろうが、それは誤りである」といったチャチャ入れがなんとも微笑ましい。 ただ、ポケミスで400ページを超えるボリュームはもう少しコンパクトにできるだろうし、途中の錯綜した活劇スリラー部分がやや冗長かなと思います。 |
No.1876 | 4点 | 謎解きはディナーのあとで 3- 東川篤哉 | 2013/01/28 11:23 |
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人気の令嬢刑事&毒舌執事シリーズの連作短編集3作目。
このシリーズは、赤川次郎などがよく書くシチュエーション・コメディの形を採りながらも、トリック&ロジック面でもそれなりに読ませるまずまずの本格ミステリになっていたと思いますが、ここにきてネタ切れ感がありありです。 マンネリ回避のためか「怪盗からの挑戦状でございます」という変化球もありますが、これが一番の凡作になっているような・・・。 最終話「さよならはディナーのあとで」の内容から、本書でシリーズは完結のようで、そうであれば賢明な判断だと思います。 |
No.1875 | 6点 | ゴルゴタの七- アントニー・バウチャー | 2013/01/27 11:45 |
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ミステリの評論部門で名高いアントニー・バウチャーの1937年のデビュー長編。
現在の創元推理文庫発刊の母体となった世界推理小説全集(全80巻)のなかでも文庫化されていない絶版作品の一つです。 カリフォルニア大学バークリー校の留学生が集まる国際寮が舞台の連続殺人を扱ったカレッジ・ミステリで、最終章前に手掛かり索引付きの”読者への挑戦”を置き、関係者を一堂に集めた謎解きなど、本格派マニアへのサービス精神が横溢しています。 ただ、第1の殺人のネタを早々に割っているのはもったいない気がしますし、フェア・プレイ重視のあまり真相がやや分かりやすい側面もあるかもしれません。また、探偵役アシュウィン教授の決着の付け方はどうなんだろうか?という感もあります。 文学論や異端派宗教などの言及部分が難解ですが、古い翻訳の割には学生たちの造形も端役までそれなりに書き分けられており、読みずらい感じはありませんでした。 |
No.1874 | 5点 | 大富豪同心- 幡大介 | 2013/01/25 18:53 |
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江戸一番の豪商の末孫で放蕩三昧で遊び暮らす若旦那・卯之吉が町方同心となって難事件を次々と解決していく、「富豪刑事」の捕物帖版”大富豪同心”シリーズの第1作。
卯之吉の祖父が金に物言わせて裏側で全て都合よくコントロールするといった、シチュエーション・コメディの面白さはあります。裏工作で千両箱が乱れ飛ぶさまが可笑しい。 ただ、昨年の怪作「猫間地獄のわらべ歌」のようなトリッキィな本格ミステリの要素はなく、後半は意外と普通の捕物帖になっているのは物足りない。 |
No.1873 | 6点 | 刈りたての干草の香り- ジョン・ブラックバーン | 2013/01/24 14:47 |
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英国情報局長のカーク将軍らが、地球滅亡の危機から人類を救うため活躍するという、文芸的なタイトルからは想像もつかないB級感あふれる怒涛のホラー&冒険スリラー・シリーズ第1作。
ソ連の片田舎での奇妙な出来事を発端に、突然変異体という”怪異の正体”をぼかしながらも徐々に明らかにしていく手際が巧く、深夜テレビの再放送ホラー映画をみるようなゾクゾク感を味わえるw 東西冷戦時代ならではのスパイ小説的な展開や、旧ナチスドイツの天才女性科学者の陰謀など、300頁にも満たない分量で、よくこれだけネタを詰め込んだものだと感心します。 人類の危機に対処するのが将軍らと若い生物学者夫婦のわずか4人(後の主役の1人、レヴィン卿は本書にはまだ登場しない)だったり、地球規模の陰謀のわりに謎の首謀者がすぐ身近にいたりで、突っ込みどころも多いですが、これが予想以上に面白かった。 |
No.1872 | 8点 | 64(ロクヨン)- 横山秀夫 | 2013/01/22 23:07 |
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わずか1週間で終った昭和64年に発生し、今も未解決のD県の少女誘拐殺害事件。時効を1年後に控え現在でも”ロクヨン”の符丁で呼ばれるこの過去の事件を巡って、D県警の広報官・三上は警察内部の未曾有の暗闘劇に巻き込まれることになる-------。
この圧倒的な筆力はすごい! わが娘の失踪という家庭問題を抱えながら、広報室vs記者クラブ、警務部vs刑事部という二つの対立軸から派生する諸問題で三上が窮地に追い込まれる様は、一種の企業小説さながらで読み応え十分です。また、そういった人間ドラマだけで終らず、そのなかに敷かれた伏線から急転する終盤のスリリングな展開、全ての疑問点がつながり明らかになる構図の意外性も鮮やかです。 今回脇役で再登場の、警務調査官・二渡や捜査一課長・松岡もいい味を出しており、本書の読了後は、多くの読者が「陰の季節」を再読したくなるに違いない。 |
No.1871 | 7点 | 占領都市 TOKYO YEAR ZERO 2- デイヴィッド・ピース | 2013/01/20 12:39 |
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日本在住の英国人作家デイヴィッド・ピースが、終戦直後の日本の暗黒事件を題材に描く”TOKYO三部作”の第2弾。
昭和23年1月、帝国銀行椎名町支店で発生した大量毒殺事件、いわゆる「帝銀事件」が本書の主題です。芥川龍之介の「藪の中」からヒントを得たという、独白、手紙、手記、捜査メモなどで語られる12人の関係者による12のエピソードのなかに、”死者の叫び”のようなフレーズが繰り返し挿入されるなど一種異様な構成で、「ドグラ・マグラ」を連想させる幻想風の序盤の数章などはかなり読者を選びそう。途中で投げ出す人もいるでしょうね。 日本の能「隅田川」に見立てて犠牲者の母親の心情を表わす最終章など、多くの日本文化の趣向を取り入れているのには、”あんた本当に外国人か?”と言いたくなるほどで、非常に刺激的な読書でした。ただし、帝銀事件と石井731部隊との関連など、事件の「真相」は参考文献に挙げられている松本清張「小説帝銀事件」や森村誠一「悪魔の飽食」などに依存するもので、あまり新味はなく、本書は謎解きを主眼とするものではないです。 |
No.1870 | 5点 | 女名刺殺人事件- 梶龍雄 | 2013/01/19 11:46 |
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優雅で推理力に秀でた長女、スポーツ万能で行動力がある次女、お色気と観察力がウリの三女の、狭山家三姉妹が4つの事件に挑む「三姉妹探偵団」シリーズ-------じゃなくて、「探偵姉妹トリオ」シリーズの第1弾。
軽快なユーモアとサスペンスの取り合わせで抜群のリーダビリティだった赤川次郎のあのシリーズより、数年後に出た当シリーズの方がなぜか古臭く感じるのはご愛嬌。 たしかに、本書はB級感のある本格ミステリではあるものの、第3話の「母なる殺人」など、伏線や意外な構図の使い方にカジタツらしい技巧が見れました。 |
No.1869 | 5点 | サイモン・アークの事件簿〈Ⅳ〉- エドワード・D・ホック | 2013/01/18 13:04 |
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オカルト探偵サイモン・アークの第4短編集。作者ホックが自ら選んだこれまでの3巻分の26作品とは違って、本書は訳者・木村仁良氏がセレクトした作品集です。
率直に言うと出来がいいと思った作品はあまりなかったですね。 悪魔との対決を求めるオカルト研究家というシリーズの基本設定が足かせになってマンネリを感じます。また、怪奇現象などの発端の謎に引き付けるものがない、普通の作品が多いように思います。 印象に残った作品を強いていうと、語り手「わたし」の故郷と家族に関わる事件「黄泉の国の判事たち」と、修道院に棲む悪魔の正体が印象的な「悪魔がやって来る時間」ぐらいかな。 |
No.1868 | 5点 | 皇帝の新しい服- 石崎幸二 | 2013/01/17 12:58 |
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”婿選び”の伝統儀式が執り行われる瀬戸内海の島で、みたび過去の惨劇が繰り返される?----といっても、石崎ミステリですから、横溝正史ワールドのおどろおどろしい雰囲気などあるはずもなく、会社員・石崎とミステリ研女子高生3人組によるボケとツッコミが連発されるお笑い本格ミステリです。
伏線があからさまなので、恒例の〇〇ネタであることはすぐに解ったのですが、ミリアの推理と同じ結論どまりで真相には至りませんでした。しかし、タイトルがアンデルセン童話のアレの直訳というのは一般常識なんだろうか? 知っていれば事件の構図もピンとくるんじゃないかな。 |
No.1867 | 6点 | ゴースト・タウンの謎- フランク・グルーバー | 2013/01/16 13:01 |
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怪しげなボディビル本のセールスで全米各地を旅しながら、遭遇した殺人事件の謎を解く、フレッチャー&クラッグの凸凹コンビによるドタバタ・ミステリ。
いちおう軽ハードボイルド風の語り口なので「ハードボイルド」に分類しましたが、いろいろな要素がごった煮のように入っていてジャンル分けが難しいシリーズです。 本書でいえば、金欠病解消のため信用詐欺を重ねる二人の珍道中はユーモア・コンゲーム&ロード・ノヴェルといえるし、アリゾナ州トゥームストン(=ワイアット・アープの「OK牧場の決闘」で有名)での銃撃戦はウェスタン小説の雰囲気があるし、暗闇の地下坑道をさまようさまは冒険小説そのものです。 いずれもテンポのいい場面転換で面白く飽きさせませんが、そもそもの発端である銀鉱山の採掘権利を巡る殺人事件の解決部分が唐突で、謎解きミステリとしては弱いのが残念です。 |