皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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kanamoriさん |
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| 平均点: 5.89点 | 書評数: 2460件 |
| No.2060 | 6点 | 機械探偵クリク・ロボット- カミ | 2014/03/06 20:54 |
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| 古代ギリシャの天才発明家の直系子孫であるアルキメデス博士と、彼が発明した機械仕掛けのアナログ・ロボット”クリク”とのコンビによる推理・冒険譚の中編2編収録。文庫版には特別付録としてショートコントが2題付加されています。
フランス風のとぼけたギャグと、数ページ毎に出てくる素朴な挿絵で、思わず口元が緩むユーモア・ミステリ。クリクが口から出す暗号文の推理回答や数々のダジャレが、日本語でも意味が通じるように意訳・改変された内容になっており、この翻訳者の仕事ぶりがお見事です。 「五つの館の謎」は、フーダニット&ハウダニットを問う謎解きモノの本格ミステリ風で、連続盗難事件、銃声、凶器のナイフという3つの伏線をつなげた真相が鮮やか。 「パンテオンの誘拐事件」は、フランスの偉人が眠る霊廟を舞台にした冒険スリラー風。地下墓地(カタコンベ)の細部描写も堂に入っており、ドタバタ劇で使用するのはもったいないぐらいwの魅力的な設定がいい。 ともに、ハチャメチャな展開のように見えて、最後はキッチリ収束させており、お笑いだけのミステリでないことに感心しました。 |
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| No.2059 | 6点 | 本棚探偵の冒険- 評論・エッセイ | 2014/03/04 21:16 |
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| 漫画家にして古本蒐集家で知られる喜国雅彦氏による、古本を巡るディープで笑えるエピソードを綴った騒動記。「読むための購入」から「蒐集のための購入」に、いつのまにか手段が目的に変わってしまった、ある古本マニアの悲しくも滑稽な物語w
ミステリ本蒐集にハマるきっかけとなった乱歩邸訪問では同行の京極夏彦、山口雅也両氏、当初の古本蒐集の先生である二階堂黎人氏、喜国さんに書庫の整理を依頼する我孫子武丸氏など、ミステリ作家たちとの交際でのやり取りが、それぞれ人柄が現れていて楽しい。 奇行エピソードでは、古書店を回って一日でポケミスを何冊見つけられるかという「ポケミス・マラソン」の一部始終が笑える。 ミステリ本の内容そのものにはあまり触れておらず、しかも対象が乱歩、横溝など国内古典寄りの話題が多く海外ミステリが少ないのは残念ですが、それでも本編や巻末のマニア座談会で出てきた、輪堂寺耀「十二人の抹殺者」、大阪圭吉「死の快走船」、大河内常平「九十九本の妖刀」などの稀覯本が続々と復刊されようとしている現状は喜ばしい限りです。(マニアは逆に困るのか?) 本書が好事家に好評だったためか、続編で「本棚探偵の回想」「~の帰還」が出ており、来月には「~最後の挨拶」も出る予定とのこと。そのうち読んでみたい。 |
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| No.2058 | 5点 | サイモン・アークの事件簿〈Ⅴ〉- エドワード・D・ホック | 2014/03/04 18:38 |
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| 悪魔と超常現象の探求者、オカルト探偵サイモン・アークものの第5短編集。前巻につづいて翻訳者・木村二郎氏によるセレクト集になっています。
怪奇趣向を前面に出したパズラーというのが本シリーズの特徴ながら、そういった要素が弱まっているものが散見され(なかにはアークが探偵事務所を開いているものまであり)、探偵のミステリアスさ・独自性が失われている作品が多かったのは残念なところ。他の探偵キャラクターでも違和感のない事件が多かった気がする。また、当シリーズは、サム医師ものと違って、シリーズとしての連続性が配慮されていないのも不満なところです。 個々の収録作の中で印象に残ったのは、施錠された礼拝堂内の殺人を扱い構成にも仕掛けがある「怖がらせの鈴」、前半冗長なところがあるも読みごたえ十分のフーダニットもの中編「炙り殺された男の復讐」、顔のない死体テーマにヒネリがある「海から戻ってきたミイラ」の3作品です。 まだまだ未訳作品があるも本書でサイモン・アークものは終了らしい。つぎはレオポルド警部シリーズの訳出を期待したい。 |
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| No.2057 | 6点 | ビブリア古書堂の事件手帖5- 三上延 | 2014/03/02 20:43 |
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| 人気ビブリオ・ミステリの第5弾。古書店主・篠川栞子と大輔の関係進展に、裏で古書の謎を演出する母・篠川智恵子の暗躍を絡ませた、3つの”日常の謎”の物語が収録されています。
第1話「彷書月刊」は、古書に関する専門誌を売却のため持ち込んでは買い戻す不思議な老婦人の謎。意外な人物との関係が明らかになるが、それまでのミスディレクションが巧み。 第2話「手塚治虫『ブラック・ジャック』」は、コミック本の稀覯巻を巡るある男性の理不尽な行動の謎。新刊書店でも古書店でもない”書房”はたしかに現代では盲点かも。真相には涙腺を刺激された。 第3話「寺山修司『われに五月を』」は、謎解きとしてはやや平凡ですが、タイトルを本書の主題にリンクさせている点で秀逸。 個々の話は、ミステリ趣向的にマンネリを感じなくもありませんが、プロローグに(中町信もどきのw)ちょっとした仕掛けがあったりで楽しめました。 |
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| No.2056 | 6点 | 猫とねずみ- クリスチアナ・ブランド | 2014/02/28 20:26 |
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| 雑誌社「乙女の友」で人生相談コーナーを受け持つ女性記者カティンカは、常連投稿者アミスタからの結婚を知らせる手紙を見て喜ぶ。ところが、休暇で故郷の村に帰ったカティンカが、アミスタが暮らす山深い館を訪ねると、「そんな女はいない」と誰もが口をそろえて告げるのだった-------。
発売中の「ミステリマガジン」4月号の特集は”乙女ミステリのススメ”で、小泉喜美子の短編やクレイグ・ライスのエッセイに並んで、「猫とねずみ」をテキストにした解説が掲載されている。”乙女ミステリ”とは、サスペンスにしろコージーにしろ、ゴシック小説にしろ、女性を主人公にしロマンスを重要な要素としたミステリということだろうと思う。 本書の基本構成は”ゴシック&ロマンス”ですが、「アミスタという女性はいったい誰で、どこにいるのか?」という謎が終始物語を引っ張ります。ゴシック・ミステリとしての隠された構図は割とありがちですが、アミスタの正体を巡って四転五転する多重推理的な展開はよく出来ていて、読者を引きずり回す技巧はやはりブランドらしいです。 また、ラストで明らかになるある女性の想いと行動は胸を打ちます。なるほど、だから”乙女ミステリ”かと思い至る真相です。 |
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| No.2055 | 5点 | 暗闇の殺意- 中町信 | 2014/02/26 18:45 |
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| トリッキーな本格ミステリ7編収録の短編集。まさか光文社文庫から出るとは思わなかったが、創元推理文庫の「~の殺意」シリーズのプチ・ブームに便乗した企画なのか。
プロローグでの騙りによるミスリード、ダイイングメッセージ、密室状況の殺人など、短編にもかかわらず、どの作品も長編とまったく同じスタイルを貫いているのは好感が持てる。ただ、青樹社版短編集「Sの悲劇」の収録作との重複が7作中3作も含まれているのは残念なところ(よって、編成に1点減点)。 個別に見ていくと、既読の「裸の密室」「動く密室」を超えるものが見当たらなかったが、ラストに構図を反転させた安楽死テーマの「濁った殺意」と、小品ながら騙りがスマートなアリバイもの「手を振る女」がとくに印象に残った。 作者の短編はそう多くないが、もう1冊分ぐらいは残っているはず。ぜひ第2弾も出してもらいたい。 |
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| No.2054 | 7点 | ヘッドハンターズ- ジョー・ネスボ | 2014/02/24 21:16 |
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| やり手のヘッドハンターとして人材紹介会社に勤めるロジャーは、美しい妻の画廊経営などで多額の赤字を抱えていたため、裏で絵画の窃盗という副業に手を染めていた。そこに現れたのが、完ぺきな転職条件を備えたエリート男で、しかも彼はルーベンスの幻の名画を所持しているという-------。
オスロ警察のハリー・ホーレ警部シリーズで知られるノルウェーの人気作家、ジョー・ネスボの(現在のところ)唯一の単発作品。 名画を巡るクライム・ノヴェル風の序盤から、エリート男の正体が明らかになってからは、予想外の展開が怒涛のごとく続く「巻き込まれ型のサスペンス」になっている。主人公が最初は自信家のイヤな男として描かれているので、感情移入は難しく、逆にロジャーが”ドツボにはまる”場面は、ブラック・ユーモアさえ漂っている。 窮地を脱するためのロジャーの数々のアイデアが面白いし、最後にはディーヴァーもどきのどんでん返しまで仕掛けられていたのには驚いた。ただ、確かにその部分を読み直してみても虚偽の記述はないように思えるものの、ちょっとあざとい感じを受けます。 |
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| No.2053 | 6点 | 殺人リハーサル- 梶龍雄 | 2014/02/22 18:28 |
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| 雑誌記者で人気芸能レポーターの栗田は、演歌歌手の川村鳥江から、過去に捏造記事でネタにした因縁のある前科者の男から脅迫されていると相談を受ける。そして、鳥江は自宅とナイトクラブの楽屋で二度にわたって不可解な状況で襲撃され、三度目はついに死体で発見される-------。
最初期の青春ミステリとはガラリと趣を変えた、芸能界を背景とした本格ミステリで、やや通俗的な雰囲気はあるものの、そこは梶龍雄のこと、細かに張られた伏線と二段構えの解決で、最後には見事に構図の逆転を見せてくれる。 確かに、いくつかのトリックは実行可能性という点で疑問符がつくものの、それを逆手にとって、想定外の偶発的事由が事件をより複雑化・混迷させているところが巧妙で、皮肉な真相につながっています。 傑作とはいえないですが、作者の現代もののなかでは佳作と言えるのではと思います。 |
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| No.2052 | 5点 | 友情ある殺人- ロバート・L・フィッシュ | 2014/02/20 20:33 |
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| 人類愛財団から高額の賞金を受け取った老ミステリ作家三人組が楽しい船旅を終えイギリスに帰ってくる-----そんな新聞記事を読んだ小悪党コンビは、その一人を誘拐する計画を立てる。老作家たちが株の暴落で一文無しになっていることを知らずに。
”殺人同盟”シリーズの3作目。法廷ミステリ、船上ミステリに続いて、今回は誘拐をテーマにしたクライム・コメディになっている。 誘拐された側が逆に主導権を握ったり、立場を逆転させることでスラップスティックな笑いを誘うのが、このタイプの定番の趣向で、誘拐犯の片割れでお人好しのハロルドを利用した他愛無い策略が可笑しい。例によって弁護士のパーシヴァル卿が絡んでくる後半は一種のコンゲーム的な面白さが加わる。ただ、言葉のパロディ部分など非英語圏の読者にはいまいち面白さが伝わりにくい側面もありますが(この難点は、シュロック・ホームズものと共通する)。 なお解説に、同趣向の誘拐コメディ作品として、「リリアンと悪党ども」「ジミー・ザ・キッド」「赤ちゃんはプロフェッショナル」「ドーヴァー⑧人質」「大誘拐」が挙げられているが、本書を含め出版がほとんど70年代後半に集中しているのが興味深かった。 |
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| No.2051 | 6点 | 贖罪の奏鳴曲- 中山七里 | 2014/02/18 22:56 |
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| 多額の報酬を要求することで悪名高い弁護士・御子柴は、ある保険金殺人事件の上告審を引き継いだが、過去を知られたフリーライターに強請られ、深夜にライターの死体を入間川に遺棄する-------。
中学生の時に理由なく幼女を惨殺し、医療少年院に収監されていた過去を持つ、御子柴の特異な人物造形が一つの読ませどころ。名前を変え弁護士となり、保険金殺人を巡る法廷劇では主人公として事件の隠された構図を暴くという構成がユニークで、いわばダーク・ヒーローもののリーガル・サスペンスとなっている。 また、強請屋のライター殺しを担当し、御子柴に容疑をかけるのが、「カエル男」事件以来の再登場である埼玉県警の渡瀬&小手川の刑事コンビで、切れ者の渡瀬警部と御子柴の対決もスリリングです。 ただ、贖罪というテーマは明確に伝わってくるものの、二つの事件を並行して描きつつ、かなり色々な要素を詰め込み過ぎている感があるので、焦点がややボヤケてしまっているようにも思う。 |
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| No.2050 | 9点 | 裏切りの街- ポール・ケイン | 2014/02/16 22:33 |
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| 東部からロサンジェルスにやってきた流れ者のジェリー・ケルズは、ある組織のボスから賭博船の用心棒にと頼まれる。しかし一匹狼を貫くケルズは断り、やがて政界とつながる組織間の陰謀と抗争劇に巻き込まれることになる-------。
レイモンド・チャンドラーが”超ハードボイルド”と評した幻の古典クライム・ノヴェル。ダシール・ハメットのブレイクに少し遅れて同じ「ブラックマスク」誌に掲載された作者のデヴュー作品で、唯一の長編でもある。 ”ギャング・エイジ”と呼ばれる不況と混乱の’30年代のロスを舞台に、主人公ケルズが複数のシンジケートを相手に、ハードかつしたたかに戦い、翻弄する様を描く。 本書でまず一番に感心したのはプロットの完成度の高さ。物語が進むにつれ次々と新しい人物が登場するが、混乱せずストーリーを楽しめる。賭博船やボクシングの試合会場、離島にある大組織のボスの隠れ家など、印象に残るシーンも多く、ストーリーが起伏に富んで面白く読めた。ラストも冷徹ながら感動的。 書かれた時代を考慮にいれれば、ハードボイルド小説の隠れた名作といえるのではないかと思う。 |
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| No.2049 | 6点 | 前夜祭- 連城三紀彦 | 2014/02/14 18:45 |
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| 浮気(不倫)という共通したモチーフを用いて、夫婦、親子、嫁姑、本妻と愛人、上司と部下など、様々な人間模様を描く短編集。内容紹介文には正面切って”ミステリ”とは謳っていませんが、8編いずれもが表面上の人間模様が、結末でガラリと別の模様に変転する騙し絵ミステリです。
本妻と夫の愛人の心理劇と、入院中の母と娘の会話という2組4人の女性の物語が、ラストで思わぬ結合を見せる「それぞれの女が....」は、騙りの技巧という点では編中のベスト。また、本作ではカットバックでめまぐるしく視点を変える手法に、ちょっとした実験的な試みがなされています。 ほかにも、息子の結婚を反対する父親の秘密「薄紅の糸」、浮気がばれ妻に去られた主人公が知る意外な事実「普通の女」など、いずれも強引ともいえる仕掛けで構図が反転するという連城マジックは健在です。 |
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| No.2048 | 6点 | パッチワーク・ガール- ラリー・ニーヴン | 2014/02/12 18:39 |
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| 地球・月・小惑星帯の政府代表者が会議で集まる月面都市内の部屋で、代表の一人が展望窓の外からレーザー光線で狙撃される。国連警察のハミルトンが捜査に乗り出すが、現場は密室状況で、唯一の容疑者は彼の昔の恋人だった--------。
「リングワールド」などで知られる人類の未来史を描いた”ノウンスペース”シリーズの一編。本来このシリーズはハードSFですが、ギル・ハミルトン捜査官が登場する本書と中編集「不完全な死体」は、不可能犯罪などハウダニットを主軸としたSFミステリになっているようです。シリーズもの特有の名称が説明なしに出てくるので最初は戸惑いましたが、慣れれば問題ないです。 近未来SFのわりには、不可能トリックは古典的なものですが、月面という設定が小道具をより効果的なものにしているのが巧いです。また、ダイイングメッセージはアルファベットながら、日本人読者でもある程度見当がつけられる内容で、なかなかよく出来ていると思います。難点は、犯人を特定する手がかりが決定的なものではなく、フーダニットとしては不十分なところです。 |
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| No.2047 | 6点 | 黒いヒマラヤ- 陳舜臣 | 2014/02/10 18:56 |
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| ヒマラヤ学術調査団の一員でカメラマンの長谷川は、死期を迎えたチベットの高僧からある物を委託されるが、車で崖から転落死する。カルカッタから帰国途上で現地に寄った毛利は、旧友の死に疑問を抱き調査を始めるが、彼も何者かに襲われる--------。
インド最北東部、チベットとの国境の町を舞台に、ダライ・ラマの側近の高僧が遺した秘宝を巡る連続殺人を扱った異色の本格ミステリになっています。 この架空の町”カムドン”の情景描写が現実感に溢れていて秀逸。インド人、ネパール、中国系、日本人医師など雑多な人種の吹き溜まりのような辺境の地で、複数の欲望が交錯する人間ドラマは作者の真骨頂です。題材から通俗冒険スリラーのような展開になっていますが、いくつものさりげない伏線が終盤に次々と回収される構成は緻密で、アリバイを巡る重層的な推理過程もよく考えられていると思います。 ただ、真犯人の設定に意外性があるものの、最後は犯罪小説のような結末になっているのがやや不満な点です。 |
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| No.2046 | 6点 | これ誘拐だよね?- カール・ハイアセン | 2014/02/08 22:20 |
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| アイドル歌手のチェリー・パイはドラッグとセックスまみれのお騒がせセレブ。そのスキャンダルをマスコミから隠すため、チェリーの替え玉として雇われていたアンだが、熱狂的なパパラッチに人違いで拉致されてしまう--------。
トニー・ケンリックやウェストレイク亡きあと、スラップスティックなお笑いクライム小説の書き手としてカルト的人気のハイアセンの”怪人スキンク”シリーズ最新作。 ハイアセンの作品の特徴は、登場人物たちの濃すぎるキャラで、奇人変人怪人が入り乱れてドタバタ騒動を演出する。 本書では、もとフロリダ州知事の世捨て人で、マングローブが生え茂る湿地帯に暮らすシリーズキャラクターの”スキンク”と、「顔を返せ」で登場した元殺し屋でチェリー・パイのボディガード”ケモ”という、2人の怪人の初顔合わせが見どころかな。 悪徳不動産屋のパンツの中にウニを入れ睾丸をフットボール大にしてしまうスキンクもたいがいだけど、前作で片腕を失くし義手の代わりに電動草刈り機を装着しているケモのぶっ飛び振りもすごい。とくにチェリーのギャル語を矯正する手段が爆笑もの。 かなりクセがあり読者を選ぶ作風ですが、ハマればシリーズを通読したくなること間違いなしの面白さです。 |
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| No.2045 | 6点 | 不必要な犯罪- 狩久 | 2014/02/04 18:48 |
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| 美術大学講師で画家の中杉が女子学生・杏子をモデルに描いた裸婦画がアトリエから消える。一週間後、戻されたその絵画には精密な恥部が書き加えられていた。やがて、海辺のボート小屋で杏子の変死体が発見され、姉の葉子も何者かに襲われる-------。
狩久の生前出版された唯一の長編ミステリ。 ”肉体の貪婪”葉子と”精神の貪婪”杏子。容貌は似ているものの対照的な二人の姉妹をめぐる愛憎劇が、妖しく官能的な描写で綴られています。動機はやや観念的なのですが、この作品世界ならアリかなと思います。 メイントリックも逆説的なロジックが効果的で作者らしいです。ただ、取り巻きの男たちの何人かはいかにも脇役という感じがするので、事件の秘められた構図はなんとなく途中で分かってしまうのではと思います。 泡坂妻夫のからくり本「生者と死者」が復刊でちょっと話題になっていますが、それで連想したのが幻影城ノベルスの本書でした。こちらは単にアンカット・フランス装というだけで、カラクリがあるわけではないですが、アンカット本を裸婦画もしくは女性になぞらえると本書のテーマとダブってくるような気もw |
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| No.2044 | 6点 | すばらしき罠- ウイリアム・ピアスン | 2014/02/02 20:24 |
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| フリー雑誌記者の”私”ヴァンスは、30日間姿を消し逃げ延びるという企画を雑誌社に出し自ら実行する。しかし、成功報酬をもらうため街に戻ってきたヴァンスを待っていたのは、銀行の大金横領と殺人の容疑だった-------。
ポケミスの裏表紙の内容紹介には、”ウールリッチ風の趣向とムード”とありますが、アリバイを証明できず殺人の容疑者になるというプロットは確かに「幻の女」などを思わせるものの、抒情的な雰囲気や強烈なサスペンスはなく、軽妙でテンポのいい「私」の語りや、美女と簡単にいい関係になる展開は軽ハードボイルド風です。 多少都合がよすぎるところもありますが、絶体絶命の状態から、次々と機転を利かせて事件の黒幕を追い詰めていくヴァンスの手際が面白いです。主人公の行動描写が先で、その行動理由が遅れて説明されるので、後付けでナルホドとなりますが。 |
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| No.2043 | 6点 | 日本推理小説論争史- 評論・エッセイ | 2014/02/01 23:53 |
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| 本書は、2011年〜12年にかけて「小説推理」に連載されていた推理文壇における過去の文学論争史を逆編年体(新しい順)に編成し考察したもので、著者は郷原宏氏。
佐野洋×都筑道夫の「名探偵論争」、乱歩、甲賀三郎×木々高太郎の「探偵小説芸術論争」、松本清張×高木彬光の「邪馬台国論争」などの有名どころが並んでいるが、野次馬的な見地で面白かったのは、やはり「匿名座談会論争」ということになる。 「間違いだらけの笠井潔」と題した”このミス”匿名座談会メンバーによるヨタ話が地雷を踏む結果となる。都筑道夫の評論に対する笠井氏との解釈論争から、「匿名による批評の是非」の方に論点が移ってしまい、覆面を剥がす泥試合になった。 匿名B(茶木)、S(関口)、O(大森)は自ら名乗り出たものの、A(新保?)とD(西上?)の対応が益々笠井氏の逆鱗に触れる。お互いに大人げないのだけれど、背景には”新本格派(探偵小説研究会)”VS匿名座談会メンバーの確執があったらしい。さらに勘ぐれば「本ミス」VS「このミス」ということかもしれないが。 高木彬光の「邪馬台国の秘密」を巡る論争も興味深い。発端は佐野洋の「推理日記」における事実誤認の指摘で、それは何とか改稿で問題が収まるかと思いきや、古代史は専門と自負する松本清張が参入し、”学説無断借用”の疑惑も出てきて雲行きが怪しくなる。”本格派の総師と社会派の巨匠の一騎打ち”は大袈裟だが、奇抜なロジック(詭弁?)で窮地を脱しようとする高木、地道に資料を揃え追い詰める清張という、自身の小説作法さながらwの対決は読みごたえがあった。(さらに、他人の学説の無断借用疑惑があり、どうみても高木に歩はないのだけど)。 著者は、最近このような論戦が見られないと嘆いているが、数年前の「容疑者Xの献身」を巡る”本格”論争について詳しく取り上げていないのは残念だった。 |
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| No.2042 | 6点 | 悪いものが、来ませんように- 芦沢央 | 2014/01/31 20:46 |
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| 不妊に悩む紗英、子育てをしながら彼女を気遣う奈津子。お互いをかけがえのない存在と思い、”共依存”の関係にある二人の女性のあいだに”悪いもの”が現れる-------。
年末のランキング本などではほとんど話題に上がらなかったようですが、Amazonのレビューでは何故か絶賛の嵐というちょっと気になっていたサスペンスです。 二人の女性の独白のような文章が交互に綴られ、合間合間に関係者への取材インタビューが挿入される構成で、不妊、子育て、夫の浮気、母親との確執など、重くて辛い現実が語られているが、ぎこちないというか、なんか変------と思いながら読んでいたら、おおっ、そういうことか!と、まんまと騙されておりました。テーマと仕掛けもリンクしており、そのあたりも良。 湊かなえを軽くしたような”イヤミス”テイストは好みが分かれそうな感じで、どちらかというと女性好みのミステリかなと思う。 |
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| No.2041 | 8点 | 11/22/63- スティーヴン・キング | 2014/01/29 23:16 |
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| 英語教師の”ぼく”ジェイクは、死期が迫った友人のアルから秘密を打ち明けられる。それは、50年前の過去に通じるタイムトンネル”兎の穴”の存在だった。そしてアルは、自分に代わってケネディ大統領の暗殺を阻止してほしいとジェイクに告げる-------。
1963年11月22日に発生した歴史的事件、ジョン・F・ケネディ暗殺の阻止を題材にした歴史改変もののSF冒険小説にして、哀切感ただよう恋愛小説。 本書が邦訳出版された昨年は暗殺からちょうど50周年にあたり、また長女キャロラインの駐日大使赴任も重なったこともあって、ちょっとしたJFKブームだった。JFKネタの謀略冒険小説もいくつか出版されたが本書はその決定版といえます。 いやあ凄い、でも長かった。上下巻2段組みで1000ページを超える分量もそうですが、兎の穴が通じているのは”Xディ”の5年も前という設定のため、クライマックスの年に到着するまでの物語が長い。別の事件での予行演習や、最愛の女性セイディーとの出会い、実行犯オズワルドの監視など、ジェイクの過去の世界での行動が手記形式で延々と続くので、正直冗長に感じるところもあった。しかし、それらダラスやジョーディの町でのエピソードは最後に生きてきます。そしてエピローグはなかなかの感涙もの。 「過去は改変されることを望まない」------たびたび出てくるこのフレーズが印象に残ります。 |
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