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kanamoriさん
平均点: 5.89点 書評数: 2426件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.20 6点 幻狼殺人事件- 梶龍雄 2011/01/22 16:27
群馬県の山村を舞台に、幻のニホンオオカミの調査で訪れた研究員が巻き込まれる殺人事件。
戦前に村で発生した婦女暴行&大量殺戮事件、鍾乳洞の迷路、最後に屋敷の炎上など、これは明らかに「八つ墓村」のオマージュといえる作品で、作者にとっては異色のミステリでした。
ちょっと色々な素材を詰め込み過ぎで、まとまりを欠いた感じも受けますが、こういった伝奇風ミステリは好みなので良とします。

No.19 7点 龍神池の小さな死体- 梶龍雄 2011/01/21 18:27
戦時中の学童疎開中に池で溺死したという弟の不審死を、23年後に母親の臨終のひと言によって、兄の大学教授が調査に乗り出すというストーリー。
いわゆる”スリーピング・マーダー”ものの現代ミステリで、青春ミステリ三部作と比べると叙情性に欠けるものの、そのぶん本格ミステリに拘った力作です。同じ原理の古典的トリックを4連発で盛り込むところが凄い。(とくに、吉爺に関する”それ”は秀逸)。
ラストは、ドンデンの狙いすぎであざとさを感じますが、それも作者の本格ミステリに対する情熱の表れでしょう。

No.18 5点 真夏の夜の黄金殺人- 梶龍雄 2011/01/21 17:23
副題が”推理早慶戦!”とある通り、海水浴場ちかくの黄金屋敷に用心棒のアルバイトに来た早大生4人組と、近くに合宿中の慶応美術部員たちによる推理合戦という趣向。
初期の青春ミステリの味わいはあまりありませんが、恋の鞘当あり、不可解な殺人事件に細かな伏線ありで、軽本格ミステリとしてそれなりに楽しめました。

No.17 4点 浅間山麓殺人推理- 梶龍雄 2011/01/14 18:06
タイトルからクローズド・サークルの”山荘もの”を想起させますが、これは本格ミステリとは言えないでしょう。
浅間山麓の平原に集まった男女5人が、何者かに狙撃され、その犯人を特定するために、次々と自らの過去の犯罪を語りだすという風変わりなプロットでした。
5人の推理合戦に力点が置かれているわけではなく、いまいち作者の狙いが分かりずらいクライム・ミステリ。

No.16 5点 奥信濃鬼女伝説殺人事件- 梶龍雄 2011/01/14 17:43
探偵助手のアルバイトに採用された女子大生の視点で展開する物語は、奥信濃・秋山郷にある観光ホテル女性経営者の殺人事件を主とした本格編。
この女子大生の語り口が、変な若者言葉の連発で読むのが痛い。しかし、タイトル・設定とも火曜サスペンス劇場風ですが、さりげない伏線張りまくりで、まずまずの本格パズラーだった。まあ、意外な犯人像は定番と言えば定番ですが。

No.15 5点 裏六甲異人館の惨劇- 梶龍雄 2011/01/13 17:47
映画のロケハンのため六甲山へ出向いた助監督が、酔っ払って覗いた別荘で殺人を目撃するという発端の本書は、映画監督・五城が探偵役を務めるシリーズの一編らしい。
まえがきで”殺人とは零点である云々”とあり、しきりにクリスティの「ゼロ時間へ」のオマージュであるかの如く書かれていますが、メイン・アイデアは、むしろ女史の別作品のヴァリエーションでしょう。
やりたかった企みは判るものの、それが機能しているかは微妙です。

No.14 7点 清里高原殺人別荘- 梶龍雄 2011/01/12 17:53
いわゆる"雪の山荘”もので、逃げ込んだ銀行強盗犯5人組が殺されていく本格ミステリ。
なかなかインパクトのある一発ネタトリックが炸裂しています。こちらを先に読んだので衝撃度は大きかった。
現在読めばそれほどとは思わないですが、昭和ミステリの生き残りのような作家が、新本格に先んじてコレを書いた事を評価して、プラス1点を献上。

No.13 6点 葉山宝石館の惨劇- 梶龍雄 2011/01/11 17:44
高台の隣家から宝石館で起こっていることを目撃し夏休みの日記に綴る小学生、その家庭教師の女子大生、若手とベテランの刑事コンビと、いずれも館の外部の登場人物が、それぞれの視点で推理を組み立てていく構成がユニーク。密室の謎に関してはハウダニットより、その理由(というか位置づけ)が面白いと思う。
派手な一発ネタ・トリックはないものの、通り一遍の”館ミステリ”とは違った構成の妙がありました。

No.12 6点 奥鬼怒密室村の惨劇- 梶龍雄 2011/01/10 18:08
戦時下の疎開先の閉された山村を舞台に、少年視点で語られる殺人事件ということで、初期の青春ミステリ風の物語をイメージさせますが、実際は官能&猟奇連続殺人を扱った本格編。
しかも、それらの表面的な事象の裏に隠された構図は、予想外で驚かされます。
文章は相当読みずらいのですが、これまでの作風自体をミスディレクションにしたようなプロットは買いです。

No.11 5点 毛皮コートの死体-ストリッパー探偵物語- 梶龍雄 2010/11/10 22:26
浅草のストリッパー・チエカが探偵役を務める連作短編集。
同じお色気探偵ものでいえば、都筑道夫の泡姫シルビアとだいたい同時期の作品ですが、こちらはB級感というか通俗風味が漂っています。
といっても、表題作や「アパッシュの女」はミステリ趣向としては一定水準以上の出来だと思います。ただ後半になるほど、哀切感のある人情物語になっていきますが。

No.10 5点 男と女の探偵小説- 梶龍雄 2010/09/30 18:28
ノン・シリーズのミステリ短編集。
後期の著者は、長編ではトリッキィなコード型本格ミステリを量産する一方、短編は浮気妻やストリッパーを探偵役にしたシリーズものの通俗ミステリが主体となりました。
本書収録作は、玉石混淆とはいえ、初期の青春ミステリのテイストもある戦時中の事件の回想もの「追憶の中の殺人」や、トリックに工夫を凝らした「イ2号館の幽霊」など、佳作もあり楽しめた。

No.9 5点 青春迷路殺人事件- 梶龍雄 2010/08/11 18:34
戦前の旧制高校シリーズの系統に入る作品で、旧題は「青春迷路殺人事件」。
前3作と比べると本格パズラー的な趣向は薄めで、当時の旧制高校生たちの青春群像を描くことに力点が置かれているように思います。アリバイトリックと意外な動機がミステリをしていて、一高生と三高生の二人の探偵役が別々に行動した結果、真相に至るというプロットがちょっとユニークでした。

No.8 8点 海を見ないで陸を見よう- 梶龍雄 2010/06/25 22:07
初期の終戦直後を時代背景とした青春恋愛ミステリの一冊で、「透明な季節」と登場人物が重なりますが、単独で読んでも支障ありません。
知多半島東舞子の海水浴場を舞台に、主人公の大学生が慕う女性の死の謎を中心に据えたミステリですが、ミステリ以前に青春恋愛ものとしてノスタルジックな物語で、非常に読み心地がよかった。
ミステリとしては派手なトリックはないものの、多数の伏線が物語と綺麗に融け合っているのが美しいと感じました。

No.7 5点 紅い蛾は死の予告- 梶龍雄 2010/05/12 22:47
過去に一家全員が失踪した村を舞台に、その事件をテーマにした映画の撮影に来た女優が、ある事件に巻き込まれ真相究明に乗り出す話。
映画の脚本と現在の事件が交互に描かれていますが、悪い意味で読み手を混乱させています。読後にストーリーを整理して、作者が何をやりたかったか分かった次第ですが、アイデアは非常に面白いのに(のちの新本格や三津田作品に似たアイデアあり)プレゼンテーションが稚拙なため、スッキリと騙された気にならなかったです。

No.6 6点 大臣の殺人- 梶龍雄 2010/05/05 13:04
明治初期、創設まもない警視庁の密偵を主人公にした時代ミステリ。
黒田清隆(当時、北海道開拓使長官)自身の妻殺し疑惑を中心に据えた謀略ミステリの様相で物語が進行していくところは、山風の明治ものを彷彿とさせますが、後半は本格ミステリになっています。
意外性がないことはないですが、全体的に作風が地味でリーダビリティに欠ける感じがしました。

No.5 6点 金沢逢魔殺人事件- 梶龍雄 2010/05/01 17:35
旧制高校シリーズの第3弾。
今回は旧制四校が舞台で、猟奇的な連続殺人事件を扱っていて、前2作と少々テイストが違います。
著者が得意のミッシング・リンクもので、終盤ちょっと驚く仕掛けがありますが、短めの長編なので読み終わって充実感が味わえなかったです。

No.4 6点 鎌倉XYZの悲劇- 梶龍雄 2010/04/17 17:12
鎌倉の旧家を舞台にした遺産相続が絡む本格ミステリ。
情けないほどベタなタイトルの真意は不明ですが、クイーン某作の趣向を取り入れているのは確か。
天国の局長が地上の私立探偵に指示して解決にあたらせるというとんでもないプロットは面白いが、前半の物語がギクシャクしていて、文章の拙さと相まって読みずらいのが欠点ですね。
前例はあるものの非常に意外な真犯人を設定していて、犯人当て小説としては満点に近い裏ベストといっていい出来だと思いますが、上に書いた点がちょっと惜しい気がします。

No.3 6点 銀座連続殺人手帖- 梶龍雄 2010/04/07 18:59
「シラケ姫」こと女子大生・奈都子を主人公にした本格ミステリ、シリーズ第3弾。
前2作「幻の蝶」「淡雪の木曽路」とも文章や変な若者言葉を度外視すれば、意外な殺人動機を核にした端正な本格ものでしたが、今作もミッシングリンクもので動機の謎を中心に据えています。奈都子が画廊で拾得した手帖にメモられた人物の連続殺人が描かれていますが、シリーズものならではの意外な犯人が秀逸でした。

No.2 7点 灰色の季節 ギョライ先生探偵ノート- 梶龍雄 2010/03/28 15:09
太平洋戦争前の旧制中学を舞台背景にした連作短編集。
ギョライ先生探偵ノートという副題がありますが、正彦少年などを中心にした青春ミステリの要素が強い第1短編集です。
「おふくろは霊媒」などの本格ミステリよりも、戦争の影がさしてくる後半の作品のほうが強く印象に残りました。正に灰色の季節です。
マイナーな出版社のためか文庫化もされず、手軽に読めないのはもったいない秀作短編集だと思います。

No.1 6点 殺人者は長く眠る- 梶龍雄 2010/03/03 16:08
女優だった祖母が草軽鉄道から不可解な状況で消えたという。
数十年前のこの謎を主人公は孫娘と称する少女とともに追うことになる・・・これは楽しめた。
トリックは前例があるけれど、なんとなくロス・マク風のプロットがいい味だしてます。

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kanamoriさん
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