皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
文生さん |
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平均点: 5.85点 | 書評数: 456件 |
No.10 | 4点 | さよなら妖精- 米澤穂信 | 2024/05/20 03:55 |
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確かにラストはグッとくるものがありますが、作者の他の日常もの学園ミステリーに比べると謎解きもキャラも弱く、全体としてはいま一つ響かない作品でした。 |
No.9 | 8点 | 冬期限定ボンボンショコラ事件- 米澤穂信 | 2024/05/01 06:38 |
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小鳩君と小佐内さんの物語は今後新作が発表される可能性もなきにしもあらずですが、春夏秋冬の4部作としては本作が完結編という位置付けになります。
物語は冒頭で車に跳ね飛ばされた小鳩が病院のベッドで中学時代のひき逃げ事件について回想をするというもの。 この中学時代の事件はミステリーとして大きな仕掛けがあるわけでもなく、小鳩の探偵ぶりも未熟な部分が見え隠れしています。単体のミステリー小説と考えるならばパッとしたできではないのですが、それによって小鳩の思い上がりを浮き彫りにし、小市民というシリーズのテーマにつなげていく手管が見事です。同時に、現代進行形の小鳩ひき逃げ事件と対比しつつ、小佐内さんとの関係性の変化についても巧みに描き出しています。ラストの着地点も素晴らしく、本格ミステリというよりは青春ミステリーとして高く評価すべき傑作です。 |
No.8 | 7点 | 可燃物- 米澤穂信 | 2023/07/27 20:18 |
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著者初の警察小説といいながら中身はしっかり本格。この2つの要素の絶妙な組み合わせがミステリとしての面白さを押し上げています。仕掛け自体はそれほど派手なものではありませんが、それが逆に渋い警察小説の雰囲気とマッチしているのです。警察小説と本格の融合という意味では横山秀夫の『第三の時効』あたりを彷彿とさせます。とはいえ、あちらは刑事同士の権力争いを横軸に据えた群像劇だったのに対し、本作は探偵役を葛警部が一人で担っており、他の刑事の出番はあまりありません。しかし、そうしたなかでも短い枚数でそれぞれのキャラの関係性を的確に描き、重厚さを加味していく手管が見事です。5つつの短編はどれも読み応えありですが、特に、死体をバラバラに切断した動機に迫っていく「命の恩」と、ファミレス立て篭もり事件の構図が反転する「本物か」が個人的にお気に入り。 |
No.7 | 5点 | 真実の10メートル手前- 米澤穂信 | 2023/07/02 13:51 |
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ミステリーとしての仕掛けが小粒なのは割といつも通りなのですが、それを設定の面白さや捻りのあるプロットで盛り上げていくのが米澤ミステリーの真骨頂。しかし、本作の場合はそうした工夫に乏しく、ひたすら地味でした。ジャーナリズムのあり方といったテーマに興味が持てないというのにも同感。決して駄作ではないものの、佳作というにはもの足りなさを感じる作品です。 |
No.6 | 5点 | 栞と噓の季節- 米澤穂信 | 2022/11/25 05:39 |
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図書委員シリーズ第2弾
ほろ苦い味の青春ミステリーとしてよくできているとは思うものの、古典部シリーズや小市民シリーズに比べると、キャラクター小説として突き抜けておらず、かといって『儚い羊たちの祝宴』などと肩を並べるほどのダークさもなくて中途半端な印象を受けました。 また、伏線回収などはさすがの上手さですが、ミステリー的にこれといった仕掛けもなく、青春ドラマとして琴線に触れるものもありませんでした。 良作の風格を感じさせる一方で、個人的には響かなかった作品です。 |
No.5 | 8点 | 黒牢城- 米澤穂信 | 2021/08/29 18:50 |
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織田信長を裏切った荒木村重が立て籠る有岡城で次々起きる怪事件の謎を、幽閉中の黒田官兵衛が解き明かす連作ミステリー。
いわば戦国版日常の謎というべき作品ですが、ここで用いられている仕掛けは小粒なものばかりなので、もし現代を舞台にしたミステリーでそれらのトリックを採用していたとしたら凡作に終わっていたでしょう。しかし、そこに歴史的背景を重ね、なぜそのような謎が生じたのかを追求していくことで物語としての深みが加わり、非常に面白い作品に仕上がっています。 歴史小説としても良くできており、個人的には米澤穂信の最高傑作に推したいほどです。 |
No.4 | 7点 | Iの悲劇- 米澤穂信 | 2020/08/30 10:02 |
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古典部シリーズや小市民シリーズといった著者得意の連作学園ミステリーを公務員に置き換えたような作品です。
限界集落の問題をミステリーの謎に絡めいる点がよくできており、興味深く読むことができます。また、一つ一つの推理には粗を感じる部分があるものの、実はその粗が伏線となっていて最後にすべてがつながるところが見事です。著者ならではのビターな結末も印象深く、なかなかの佳品だといえるのではないでしょうか。 |
No.3 | 8点 | 儚い羊たちの祝宴- 米澤穂信 | 2012/04/02 19:51 |
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散りばめられた愛書趣味と作品全体のブラックな味わいが非常に自分好みの作品だった。
ただ、帯の惹句から本格ミステリーのどんでん返しなどを期待するとちょっと肩透かしを覚えるのではないかと思う。 真相自体はむしろ予想の範囲内。 最後の一行の衝撃とは意外な真相などではなく、作品のグロテスさを引き立たせるスパイスの一滴なのだ。 そいう意味で、 「あらゆる予想は、最後の最後で覆される」 の一文は出版社側の勇み足と言わざるをえないだろう。 |
No.2 | 7点 | クドリャフカの順番- 米澤穂信 | 2010/01/22 08:43 |
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本格ミステリとしてはたわいもないが、登場人物が魅力的で学園小説として楽しい作品。 |
No.1 | 8点 | 犬はどこだ- 米澤穂信 | 2010/01/22 08:40 |
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軽妙な登場人物のやり取りが楽しく、事件の展開も意外さがあって引き込まれる。
そしてヒネリの効いたラストがいい。 軽ハードボイルド本格風味の傑作。 |