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文生さん
平均点: 5.86点 書評数: 491件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.111 5点 スイス時計の謎- 有栖川有栖 2015/10/13 17:53
表題作が非常に評価が高いわけだが、本作の柱となるロジックが納得できない。

犯行の最中に、自分の腕時計を割ってしまった犯人はなぜ、被害者が持っている同じ種類の腕時計と交換しなかったのか?
(交換しておけば腕時計に注目されて、容疑者を限定されることもなかったのに)

というのが推理の端緒になっているが、被害者の腕時計を持ち帰って自分のものとし、被害者の腕に割れた自分の腕時計をはめたとしても科学鑑定にかけられればいつ自分の腕時計である証拠が見つかるか分かったものではない。
どんな事情があろうと遺留品はすべて持ち帰るのが自然だと思うのだが
いかがなものだろうか。

No.110 7点 冬のオペラ- 北村薫 2015/03/09 04:00
作者の代表作である『空飛ぶ馬』や『夜の蝉』などと同系統の日常系ミステリだが、個人的にはこちらの方が楽しむことができた。
探偵のキャラが立っており主人公も親しみやすい。
文学的な味わいは後退しているが、ミステリとしての切れ味は素晴らしく、全体的に肩のこらないエンタメ作品に仕上がっている。

No.109 7点 倒錯のロンド- 折原一 2015/03/08 14:43
推理小説の新人賞原稿が盗まれ、その犯人を捜すという設定がユニーク。
本格ミステリーとしては結末にいささか無理があるが、多少の無理は強引にねじ伏せる勢いと熱にうなされているような異様なテンションに引っ張られ、真相の不自然さはさほど気にならなかった。

No.108 4点 殺しの双曲線- 西村京太郎 2015/03/07 12:33
西村京太郎本格の最高傑作と呼ばれている作品だが自分には合わなかった。
まず、多くの人が指摘している通りクローズド・サークルものなのに緊迫感が今一つなこと。それに肝心の双子トリックがそれを使用する状況を作りだす手順に無理があり、たとえ成功してもそれほど効果的なトリックだとは思えなかったのが評価を下げた大きな理由。

さらに加えるならば、動機も気に入らない。犯人に同情的な書き方をしているけれど単なる逆恨みとしか思えない。そして極めつけは、純粋なパズラーとして書いているのにもかかわらず、逮捕する決定的な証拠がないからといって犯人の情に訴えて自白を引き出そうとしている点だ。
新しい本格ミステリーを書こうとした当時の意気込みは伝わってくるのだが、どうも自分の求めてたものとは違っていたという印象だった。

No.107 4点 ゴルフ場殺人事件- アガサ・クリスティー 2015/03/06 20:06
デビュー2作目にして後年ミステリの女王と呼ばれるにふさわしい物語運びのそつのなさは垣間見られるのですが、ミステリとしては特にひねりもなく凡作の域を出ていません。

No.106 7点 モルグ街の殺人- エドガー・アラン・ポー 2015/03/06 18:30
奇怪な事件、名探偵の登場、精緻なロジック、意外な結末。
世界最初のミステリにしてミステリのエッセンスがすべてつまっているという恐るべき作品で後世に与えた影響は計り知れない。
現代の読者からすれば、本格ミステリーとして純粋に楽しむことはできないかもしれないが、その物語から滲み出る独特の味わいは時を経ても色あせていない。
また、ポーの非ミステリーの代表作である『黒猫』や『アッシャー家の崩壊』などと読み比べてみるのも一興だろう。

No.105 8点 緑のカプセルの謎- ジョン・ディクスン・カー 2015/03/06 13:09
カーといえばおどろおどろしいオカルト趣味、ベタベタなスラップスティック・コメディ、大仰な密室殺人といったコテコテな要素が満載で手にしただけでお腹いっぱいになりそうなイメージがあります。
しかし、本作はそうした過剰な装飾物はなく、パズラーとしてすっきりした仕上がりになっています。プロットも実に良くできており、読者をだます手管はこれ以上ないというほど巧妙です。
中期の作品では他にも『皇帝のがき煙草入れ』『貴婦人として死す』という本書と同様の魅力を持つ傑作があり、カーは苦手だが、パスラーは好きという方におすすめです。

No.104 7点 猿来たりなば- エリザベス・フェラーズ 2015/03/05 21:06
トリックそのものは極めてオーソドックなものですが、殺されたのが猿であるという事実が読者を上手くミスリードさせることに成功しています。
発想の勝利というべき佳作です。

No.103 8点 遠海事件: 佐藤誠はなぜ首を切断したのか? - 詠坂雄二 2015/03/05 11:08
佐藤誠というキャラクター自体が遠海事件の真相を隠すミスディレクションになっている構成は見事という他ない。
ストーリーそのものは序盤に起こった殺人事件について捜査をしていくだけという地味なものであるが、佐藤誠という不可解な存在に引っ張られてぐいぐいと引き込まれていく。
ただ、『佐藤誠の物語』としての落とし所は少し物足りなさを感じてしまった。80人以上も殺した殺人犯なのだから最期まで不気味な一面を残しておいても良かったのではないだろうか。

No.102 8点 球形の季節- 恩田陸 2012/04/10 21:10
平凡な日常が静かに崩れていく様を描いたSF青春ミステリー。
ショッキングな描写はほとんどなく、何かがとんでもないことが起こっているという不穏な空気感だけで物語を引っ張っていく。
ラストでは何ひとつ解明されないまま唐突に終わりを迎え、ミステリーとして考えるのならば論外だが、思春期の漠然とした不安をSFという形を借りて描いた作品としてこれはそれ以外ないという〆だったと思う。

No.101 6点 ユリゴコロ- 沼田まほかる 2012/04/10 20:47
平凡な家庭で育った男が突如、見舞われる不幸の連鎖。
そんな中、実家で偶然見つけた異様な手記。
前半、その手記を中心に物語は展開されるが、狂気と屈折した情愛の入り混じった内容は衝撃的でサスペンスにも満ち、強く引き付けれるものがあった。
ただ、現実に戻ってからの終盤の展開は予定調和であり、ミステリーとしての仕掛けも見え透いていてパワーダウンを感じたのは残念。

No.100 4点 死者を笞打て- 鮎川哲也 2012/04/10 01:30
鮎川作品の中に実在の作家をモデルにした人たちが登場するパロディ作品だが、
作家たちが無駄にカッコイイのでリアリティに欠け、パロディとして面白味のない作品となってしまった。
事件自体も平凡で他の代表作のような切れは皆無。

No.99 8点 危険な童話- 土屋隆夫 2012/04/10 01:23
社会派ミステリのような刑事の地道な捜査とそれとコントラストを成すように挿入される幻想的な童話。
これがやがてひとつに繋がり、謎が解ける瞬間がこの作品の白眉。
犯人の仕掛けたトリックについてはさほど見るべき点はないが、本格ミステリとしての構成の美しさにはため息がでる。

No.98 7点 獄門島- 横溝正史 2012/04/10 01:11
本格ミステリとしての様々な仕掛けが魅力的である一方で指摘のある通り動機や見立て殺人の必然性には甘さを感じ、東西ミステリーベスト100の第1位は過大評価の感が強い。
とは言え、決して駄作というわけではなく、戦後復興期のミステリの中でも上位に位置する傑作であることは確かである。

No.97 6点 爬虫類館の殺人- カーター・ディクスン 2012/04/09 13:07
扉の内側からテープを貼り付けられた目張りの密室という設定が独創的で伏線の使い方も巧み。
ただ、トリック自体は単純な機械的トリックなので真相が分かった時の驚きには欠ける。
ストーリー自体も奇術師カップルの恋愛を軸に語られ、カーらしいケレンミに乏しく物足りない。

No.96 6点 赤後家の殺人- カーター・ディクスン 2012/04/09 12:56
得意の怪奇性と不可能犯罪の要素を存分に盛り込み、知名度もそれなりに高い作品だが、やはり毒殺による密室というのが不可能性を薄め、トリックについても見当がつきやすいのが難点。

No.95 6点 人喰い- 笹沢左保 2012/04/08 13:02
笹沢左保の初期の作品は本格要素満載でそれなりに楽しめはするのだが、指摘のある通り、トリックに新味も使い方に工夫もないのが難点。
本作も派手なトリックはいくつかあるが、いずれも前例があるものばかりで、使い方に特にひねりがあるわけでもないので傑作と呼ぶには今ひとつ物足りない出来。

No.94 6点 魔女の隠れ家- ジョン・ディクスン・カー 2012/04/07 13:10
1930年のデビューからの数年、雰囲気優先でミステリとしての面白味に欠けていた初期と1934年の『プレーグ・コートの殺人』以降、傑作を連発した全盛期とを繋ぐ過渡的作品。
トリック自体は地味だが、おどろおどろしい雰囲気にミステリ的な仕掛けが有効に作用しており、バランスの良い作品に仕上がっている。

No.93 9点 ユダの窓- カーター・ディクスン 2012/04/06 11:51
ワンアイデアの密室トリックを『ユダの窓』という魅惑的なワードで引っ張っていくプロットがまず見事。
この効力によって本作は密室殺人を扱ったミステリの最高峰という評価を得ることになる。
そしてなんと言っても法廷ミステリーとしての完成度の高さ。
状況証拠がすべてクロの男の無罪をいかに勝ちとるか?
その論戦の面白さは特筆もの。
得意のオカルトを封印したカーの意外な才能を見ることができる名作。

No.92 5点 墓場貸します- カーター・ディクスン 2012/04/06 11:34
プールからの人間消失を扱った長編ミステリー。
人が消えるトリックはよく考えられてはいるが、単純なトリックを組み合わせた奇術的な手法であり、ミステリーとしての面白味には欠ける。
物語としても特筆できる要素はなく、凡作の域を出ていない。

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文生さん
ひとこと
本格脳なので本格度が高いほど評価も高くなります。ただし、本格好きと言ってもフェアプレーなどはどうでもよい派なのでロジックだけの作品は評価が低めです。トリックやプロットを重視した採点となっています。
好きな作家
ジョン・ディクスン・カー、土屋隆夫、竹本健治、山田正紀
採点傾向
平均点: 5.86点   採点数: 491件
採点の多い作家(TOP10)
ジョン・ディクスン・カー(18)
アガサ・クリスティー(17)
横溝正史(12)
西尾維新(11)
カーター・ディクスン(11)
エラリイ・クイーン(11)
東野圭吾(10)
米澤穂信(10)
森村誠一(10)
竹本健治(9)