皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
文生さん |
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平均点: 5.86点 | 書評数: 492件 |
No.132 | 6点 | 悪の教典- 貴志祐介 | 2017/10/31 09:59 |
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生徒たちから慕われ、理想的な教師だと思われたハスミンが実は冷酷なサイコパスだと判明する前半部はスリリングで読みごたえ十分。しかし、多くの指摘がある通り、後半に入ると天才犯罪者であるはずの彼の行動が一気に雑になり、十把一絡げの殺人鬼に堕していくのが残念。もっと彼の悪のカリスマぶりを堪能したかった。 |
No.131 | 3点 | 黄金仮面- 江戸川乱歩 | 2017/10/31 08:39 |
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言わずと知れたルパンVS明智小五郎を描いた問題作。なぜ不殺をポリシーとしているはずのルパンが人を殺したのかという点がこの作品の肝であるのだが、この真相はあまりにもひどい。それに当のルパンが全くルパンっぽく見えないので「お前はルパンを騙る偽物だろう」という感想しかでてこない。それにしても奇岩城を書いたルブランといい、なぜ昔の作家は他人のキャラクターを勝手に出した上に平気で貶めるようなことをするのだろうか。 |
No.130 | 6点 | 星降り山荘の殺人- 倉知淳 | 2017/10/31 08:17 |
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いかにも読者をだましにきているという風な語り口のせいで逆に犯人が完璧に予想できてしまったのが残念。特に、作者による忠告はミスディレクションであることがみえみえで、あれで犯人を確信してしまいました。どちらかといえば、初心者の内に読んでおくべき作品だといえるのではないでしようか。
また、Zの悲劇風な消去法ロジックによる犯人特定はどうもこじつけめいたところが出てくるのであまり好きではありません。とはいえ、古典的なクローズド・サークルと犯人探しの雰囲気は存外楽しめたのでこの点数で。 |
No.129 | 6点 | すべてがFになる- 森博嗣 | 2017/10/30 18:10 |
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物語としてはそこそこ楽しめたのですが、本格ミステリとして読んだ場合、犯人の超人設定に依存しすぎているのがイマイチでした。まあ、本格ミステリとは思わずに、アルセーヌ・ルパンのような超人クライムストーリーと思えば十分面白い作品ではありますが。 |
No.128 | 9点 | 第三の時効- 横山秀夫 | 2017/10/30 16:36 |
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警察小説としての重厚な人間ドラマに本格ミステリのようなトリッキーな仕掛けが絶妙なバランスで配合された連作ミステリー。完成度の点でいえば数ある横山作品の傑作群の中でもこれが最高峰でしょう。 |
No.127 | 7点 | ケンネル殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン | 2017/10/30 16:24 |
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ヴァン・ダインの他の作品と同様にトリックは既存のものを組み合わせただけだが、謎の設定とその解法に工夫が見られ、本格ミステリとしての充実度はシリーズ随一。しかも、物語の進行を阻害するぺダンチックな談義が控え目なので読みやすい。今となってはグリーン家や僧正よりも評価しやすい佳作だと言えるだろう。 |
No.126 | 3点 | 半落ち- 横山秀夫 | 2017/10/29 15:05 |
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妻殺しを自首した元警察官。しかし、彼は犯行から出頭に至るまでの2日間の行動については頑として口を割ろうとはしなかった。
魅力的な謎と多視点で語られる凝った構成に対して真相がひどく凡庸に感じられました。秘密が明らかになると同時に犯罪の構図が反転するような意外性に満ちた真相を期待していただけにがっかり感も半端なく、よってこの点数です。横山氏の作品は警察小説でも本格マインドにあふれててかなり好きなのですが、これは肌に合いませんでした。 |
No.125 | 8点 | 九尾の猫- エラリイ・クイーン | 2017/10/29 13:42 |
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ミッシングリンクの謎に対して新たなバリエーションを創出し、サイコミステリーの先駆者的作品でもあるという後期クイーンの代表作。また、十日間の不思議で取り返しのつかない失敗を犯してしまった名探偵クイーンの復活の物語としても見逃せません。 |
No.124 | 8点 | Yの悲劇- エラリイ・クイーン | 2017/10/29 13:25 |
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クイーンらしいロジカルな推理と衝撃的な展開が楽しめる本格古典ミステリの名作。しかし、物語の構成上途中で犯人がバレバレになっており、世間で言うほど意外な犯人ではなくなってしまっている点が残念である。 |
No.123 | 4点 | 猫は知っていた- 仁木悦子 | 2017/10/29 13:12 |
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トリックは発表年度を差し引いてもすでに使い古されたものであるし、日本のクリスティと言われるほどにプロットにひねりがあるわけでもない。当時としては目新しかったユーモアミステリーとしての味わいが評価されたのだろうけど、今となっては特に見るべき点はないのでこのくらいの点数。 |
No.122 | 7点 | 掟上今日子の備忘録- 西尾維新 | 2015/10/26 16:10 |
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本格ミステリとしては若干甘いところもあるがまずは無難な出来。
小説としてはテンポがよく、キャラも立っているので楽しく読める。 ラストシーンがきれいに決まったのが好印象。 |
No.121 | 6点 | 影の告発- 土屋隆夫 | 2015/10/20 10:12 |
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初読の時は「トリックよし、プロットよし」で危険な童話に並ぶ傑作と思っていましたが、その後、海外の過去作でトリックのまったく同じ作品を見つけたために印象が薄くなってしまいました。 |
No.120 | 5点 | 天狗の面- 土屋隆夫 | 2015/10/20 10:08 |
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ちょっと横溝作品っぽい雰囲気がある手堅い本格ミステリだが、これといって特筆すべき点もない。
土屋隆夫がまだスタイルを確立できていな時代の習作という感じ。 次作以降と比べ、メイントリックが分かりやすいのもマイナス点。 |
No.119 | 6点 | 殺戮にいたる病- 我孫子武丸 | 2015/10/20 08:32 |
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あっと驚く驚愕のトリックですが、そこに至るまでがひたすら陰鬱な話が続くので読み進めるのが疲れる。
物語4点、トリック9点で総合6点というところだろうか。 |
No.118 | 6点 | ドーヴァー4/切断- ジョイス・ポーター | 2015/10/19 01:36 |
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意外な動機という点では史上1、2位を争う作品ですね。ただ、海外のユーモアミステリーがちっとも笑えないのはいつもの通り。 |
No.117 | 6点 | 虹の歯ブラシ 上木らいち発散- 早坂吝 | 2015/10/18 15:07 |
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【ネタばれあり】
援交女子高生を探偵役にし、エロシーンに伏線を盛り込む趣向が斬新。キャラも立っており、十分楽しめる連作ミステリーなのだが、全7章の中で最後の2章が謎すぎる。 「伏線はある」と言ったってそりゃ、ファンタジー設定持ち込めばなんでもあるというものだ。あれでドヤ顔されても読んでる方が困る。 最終的な着地点は、その発想には脱帽するが、プロセスがよろしくない。非常に惜しい作品である。 |
No.116 | 4点 | くたばれ健康法!- アラン・グリーン | 2015/10/18 05:46 |
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不可能犯罪のトリックはユニークだったが、それだけで全編を覆うユーモアというやつが全く理解できず、退屈な作品でした。 |
No.115 | 6点 | 鍵の掛かった男- 有栖川有栖 | 2015/10/17 10:26 |
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作家アリスシーリズ最長作というだけあって、ずっしりとくる重量級の作品である。
ただ、いつものようなロジックのアクロバットを期待してはいけない。 本作の探偵役は主にアリスがつとめ、事件の真相というよりも主に死んだ男の経歴を調べ上げる。そこから浮かび上がってくる被害者の人生こそが本作の主題であり、読み応えのある部分だ。 一方、事件の真相は終盤にやってきた火村の手で解かれる。こちらも悪くはないが、作品の長さを考えると明らかに軽量級。 エラリー・クイーンのライツヴィルシリーズのようなもので、ガチガチな本格を期待すると肩透かしを覚えるだろう。 |
No.114 | 6点 | 生還者- 下村敦史 | 2015/10/17 04:00 |
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雪崩の事故から奇跡的に生還したふたりの登山家の証言が大きく食い違う中、事故で兄を失った主人公がその死に疑念を抱き、真相を探る山岳ミステリー版藪の中。
息詰まる登山シーンから始まり、生き残ったふたりの登山家の証言が180度異なることから生じるサスペンス、そして徐々に明らかになる登山家たちの複雑な過去といったふうに物語が展開する骨太で非常に読み応えのある作品です。 ただ、本格ミステリのフォーマットを採用せず、人間ドラマに力点が置かれているため、早い段階で事件の背景が透けて見えるのは本格ファンとしては少し物足りなかった。 とは言え、事件解明後にも小さなサプライズを用意するなど、細部まで工夫を凝らした力作であることは確かです。 |
No.113 | 7点 | ミステリー・アリーナ- 深水黎一郎 | 2015/10/16 12:30 |
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作中作に基づいて15人にのぼる解答者が次々と真相を推理していく趣向が楽しい。その推理というのがどれもこれもバカバカしいものばかりなのだが、それも昨今乱発されている叙述トリックのバーゲンセールを揶揄しているものと考えれば逆に深みさえ感じられる。
ただ、似たり寄ったりの解答が多いため、中盤少し退屈に感じてしまった。解答者の面々も老若男女色々取り揃えてはいるが、自信過剰の上から目線キャラが多すぎてかなりワンパターン。 楽しい作品であることは間違いないのだが、もう少しメリハリを意識してくれれば傑作になりえたと思う。 |