皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
まさむねさん |
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平均点: 5.86点 | 書評数: 1194件 |
No.20 | 6点 | 殺意の設計- 西村京太郎 | 2024/06/27 22:22 |
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前半は夫の浮気に疑念を持つ妻の視点。心理サスペンスの側面もあって、西村作品としては新鮮な印象も受けます。一転、後半は刑事の視点で、これはいかにも西村先生らしい展開。
こういった構成も含め、面白く読ませてはいただいたのですが、犯人としては、あまりにも都合の良い手法というか、結構なリスクを負う手法を採っているのではないかという違和感は残りました。特に、井の頭公園、かな。 |
No.19 | 6点 | 一千万人誘拐計画- 西村京太郎 | 2024/01/22 20:41 |
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5編からなる短編集。主人公のキャラも内容も画一的ではないので、ワクワクしながら読み進められると思います。初期の西村短編の奥深さを感じることができるのではないでしょうか。長編に活かされたと思われる短編もあって興味深かったです。
「受験地獄」は、他の短編集で既読。皮肉な結果が印象に残ります。 「第二の標的」、「一千万人誘拐計画」では、平刑事時代の十津川さんが捜査に当たります。イケイケで結構やんちゃです。表題作は、頭脳戦というよりも心理戦? 「白い殉教者」、「天国に近い死体」では、徳大寺京介が探偵役。ハウをメインに、本格度は高いです(いずれも多少無理のあるトリックではありますが)。 |
No.18 | 4点 | 死への招待状- 西村京太郎 | 2023/10/22 21:19 |
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6作が収録された短編集。いずれも私立探偵が登場しますが、同一の探偵が登場するのは2作(危険な男・危険なヌード)の秋葉京介のみ。
作者は、人事院を辞めて作家を志す過程で、探偵事務所に勤務していた時期(1963年頃)がございました。収録された各短編の初出が1964年から1976年までらしいので、おそらくは、自身の勤務経験も踏まえて書かれたものと思われます。 短編集全体として見ると、結末があまりにも予測しやすい短編や、単に筋書きを読まされただけでは…といった短編もあって、積極的な評価はしにくいかなぁ…というのが正直な印象。その中でも、個人的には、作者の探偵事務所経験が新鮮であったであろう、1964年初出の「罠」という短編が、作者の初期作品を辿るという意味で興味深かったかな。 |
No.17 | 7点 | 南神威島- 西村京太郎 | 2023/09/14 22:59 |
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作者が「天使の傷痕」で江戸川乱歩賞を受賞したのが昭和40年。しかし、活字となった作品を読み返して「自分の下手さ加減に呆れ、もう一度、勉強し直そうと考えた」そうです。その結果、当時長谷川伸氏が主宰していた新鷹会に加わり、その機関誌で発表した作品から選出した短編を収録したのが本書。そもそもは昭和45年に私費出版で刊行されました。「気取っていえば、推理小説もまた文学でなければならない」、「真のサスペンスは、現実の事件の表面を撫ぜることでは生まれない」。こう言い切る作者の熱意には、今更ながら素直に拍手を送りたいと思います。人間の内面に切り込む作品が揃っています。
①南神威島:人口400名に満たない離島に赴任した医師が遭遇した出来事。伝奇性と合理性。 ②幻想の夏:ミステリ的な点は本短編集で最も高いか。愛と裏切り。 ③手を拍く猿:北海道から東京に集団就職した青年の自殺。都会の孤独と故郷への想い。 ④カードの城:動機は何であったか。挫折とプライド。 ⑤刑事:捜査に執着する刑事の内面を描く。刑事の職務と刑事たる個人。 |
No.16 | 5点 | 怖ろしい夜- 西村京太郎 | 2023/08/27 17:36 |
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タイトルに「夜」が含まれる6作品を収録した短編集。各短編の初出は1960年代から1970年代まで。トラベルミステリ偏重前の西村短編に以前から興味があり、手にした次第です。
特筆すべき「何か」があるものではないのですが、スッと興味を引き付ける出だしの巧さは流石です。 「見せ方は違うけど、確実に同じ発想の下で書いたよねぇ」と感じた2作品の初出を比べると1ヵ月しか違わなかったとか、色々と興味深かったです。 |
No.15 | 6点 | 寝台特急(ブルートレイン)殺人事件- 西村京太郎 | 2023/08/12 20:56 |
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所謂トラベルミステリーの第一作と言われる作品。それまで多彩な作品を発表しつつもベストセラーには恵まれなかった作者の名を、全国に広く浸透させた作品と言えましょう。その後の作者のトラベル偏重路線に関しては、様々なご意見はありましょうが、本作が作者にとって大きな意味を持つ作品であることは間違いないと思います。
あらためて読んでみたのですが、出だしからの興味深い謎の提示、そこから引っ張っていく力は流石だなと思います。後半のサスペンス要素も作者らしい。勿論、突っ込みたくなる点も種々あるのだけれど、それもまたお楽しみポイント、ということで。 |
No.14 | 5点 | 札幌着23時25分- 西村京太郎 | 2023/07/08 16:30 |
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昭和時代以来の再読。航空ストで飛行機が飛ばない状況の中、重要な証人を当日中に札幌まで運ぶミッションを遂行する十津川・亀井コンビ。それを阻止しようとする暴力団顧問弁護士との知恵比べ。
当時の東北新幹線は、大宮・盛岡間だったのですねぇ。青森までは「はつかり」、そしてまだトンネルが使えないから、青函連絡船ですか。時代の流れを感じるなぁ…。こういった懐かしさも悪くないし、サスペンスとしても悪くないです。 一方で、大人になって読み返してみると、突っ込みどころも満載。まずは、札幌地裁の判断があり得ない。仮に陸路で運ぶとしても、もっと安全な策が容易に考えつきます。そもそも、事件に無関係の乗客を危険に巻き込まないことを第一とすべきで、「そんなことに気を遣うのなら、コレコレをしなよ…」とややイライラ。でも、それでは物語にならないし、大人気ないかぁ。うーん、もしかして、時代の流れの中で面倒なオトナになっちゃったのかな…。 |
No.13 | 5点 | 夜が待っている- 西村京太郎 | 2023/03/21 21:50 |
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昭和39年から翌年にかけて発表された6作品を収録した短編集。「天使の傷痕」で江戸川乱歩賞を受賞したのが昭和40年ですので、作者初期の筆致に興味のある方はどうぞ。ちなみに、ミステリ度は低いです。また、この頃からすでに読点が多すぎて読みにくいです。何とかならないものか、とは思いました。
①女をさがせ:元プロボクサーが真相を探るハードボイルド・タッチ。平板か。 ②夜が待っている:これもハードボイルド・タッチ。殺された恋人の復讐譚だが、平板。 ③赤いハトが死んだ:昭和14年の上海が舞台。暗殺任務を負った女性の運命は。 ④愛の詩集:十和田湖が舞台で旅情もある作品。しみじみ。 ⑤死の予告:予知夢の能力のある青年の苦悩。 ⑥夜の秘密:「天使の傷痕」に通じる社会派作品。 |
No.12 | 6点 | 殺人偏差値70- 西村京太郎 | 2022/10/08 22:51 |
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ノンシリーズの短編集で、1964年から1982年までに発表された8短編が収録されています。短編集への初収録作品は「高級官僚を死に追いやった手」のみで、他の短編はこれまでの何らかの短編集に収録済みです。清張風の作品が多く、小品揃いとはいえ、味わいはあります。
マイベストは1作品目の「受験地獄」か。2作品目の「海の沈黙」のテーマは、短編集「歪んだ朝」収録の「蘇える過去」と同じでした。作者として強い問題意識を持っていたのでしょう。 |
No.11 | 7点 | 歪んだ朝- 西村京太郎 | 2022/09/10 10:19 |
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デビュー作や新人賞受賞作など、作者初期の作品を収録した短編集。個人的には、作者の原点を感じられたので収穫大。
「歪んだ朝」:第2回オール讀物推理小説新人賞受賞作。山谷を舞台とした社会派小説で、口紅の謎が響く、好作品。水上勉は選評の中で「この作者のリアリズムには歌がある。文書もいい。」と記しています。現在に通じるテーマ性。 「黒の記憶」:第2回宝石賞候補作。入選は果たせなかったものの、作者にとっては活字化された初の小説(のはず)。結末には、ちょっと無理があるかな。 「蘇える過去」:想定の範囲内の流れではあるものの、「歪んだ朝」と同様に社会派小説としては好印象。 「夜の密戯」:実際の事件をモチーフにしたようで、推理の過程は悪くないけれど、中途半端な印象は拭えない。 「優しい脅迫者」:エラリー・クイーン編の「日本傑作推理12選」に選ばれた作品。転換が効果的かつ印象的。 |
No.10 | 7点 | 午後の脅迫者- 西村京太郎 | 2022/08/15 21:23 |
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「西村先生の短編集って、トラベル系しか読んだことがないのではないか」と気になってしまい、講談社文庫の新装版を手にした次第です。
9作品で構成。嗚呼、いいな。まずは表題作「午後の脅迫者」の鮮やかさ。ラストのセリフもグッとくる。「密告」の締めの一言もいいが、これは「二一:〇〇時に殺せ」も併せて警察小説としての妙味か。「美談崩れ」は横山秀夫を彷彿(その随分前の作品であることがすごい)。「柴田巡査の奇妙なアルバイト」のブラックさも印象的。「私は職業婦人」は、男女雇用機会均等法施行のずっと前の時代の作品であると考えると凄い。個人的には、ラストを飾るショートショート「マルチ商法」に唸った。最後の一言の切れ味が素晴らしい。 そうでもない短編もありつつも、総合的にこの採点で。西村短編は、もう少し読んでみようかな。 |
No.9 | 5点 | 寝台特急(ブルートレイン)八分停車- 西村京太郎 | 2022/07/09 16:16 |
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相当前に読んだはずなのですが、ほとんど記憶に残っていないので再読。
腎臓結石で入院した亀井刑事が、夜のレントゲン室から漏れる男女の会話を耳にします。寝台特急は八分間停まる。八分あれば人殺しもできる。今週の日曜日には必ず奴を殺す。 序盤から中盤まではグイグイと引っ張られました。中盤以降は、犯人が明らかなこともあって、ちょっと中だるみの印象もあったかな。ラストは、レントゲン室で自身の犯行を思わず叫んじゃうのかな?と思ったら、結構あっさりとした幕引き。亀井さんの石が早めに出てきてくれたことは良かったけどね。 ちなみに、有名な話では、あるのですが、作者の、文章は、読点が、多すぎて、とても、読みにくいですよね。 |
No.8 | 7点 | 華麗なる誘拐- 西村京太郎 | 2022/05/12 22:52 |
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左文字進探偵シリーズの第二作。
面白かったですねぇ。まずは、全国民を誘拐したとして政府に5千億円の身代金を要求するという発想が斬新。そして政府が支払わないと見るや、犯人グループは、安全・平和と印刷された5千円のワッペンを付けていれば殺さないと国民に呼びかける。売れ続けるワッペン。まさに「華麗なる誘拐」。どんどんページをめくらされましたねぇ。左文字の語る「犯人の計画が成功すればするほど破滅が近づく」という論理も記憶に残りそう。 犯人グループの特定があっさりし過ぎていないか?という気がしないでもないのですが、個人的には、西村京太郎作品の中でかなり上位に入りそうな作品。(ちなみに、現時点でのトップは「殺しの双曲線」であります。) |
No.7 | 6点 | 消えた巨人軍- 西村京太郎 | 2022/05/04 19:32 |
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左文字進探偵シリーズの第一作。十津川警部以外のシリーズがあることも、そしてこの作品のタイトル自体も、ウン十年前に承知しておりましたが、私にとってこのシリーズは初読です。東京駅から新幹線で遠征先の大阪に向かった巨人軍の監督、コーチ、選手ら37人が姿を消したという展開。左文字探偵や警察の捜査過程も含めてなかなかに魅力的で、西村先生らしさが出ている作品と言えます。(ちなみに、終盤で「このタイムリミット内にそれらの行動をするのは絶対に無理だよね」と思わずにはいられない部分があるのですが、まぁスピード感重視ということで…)
最後に、先生のご訃報に接してヒトコト。今から3年前に湯河原の西村京太郎記念館を訪問した際、偶然ですが先生とお話をさせていただく機会に恵まれました。私が好きな西村作品を挙げたところ、「あれはあまり売れなかったからねぇ」と笑われていたお顔が心に残っています。在りし日のお姿を偲びつつ、改めて先生の作品を読ませていただきたいと思います。 |
No.6 | 6点 | 名探偵なんか怖くない- 西村京太郎 | 2020/10/25 18:28 |
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国内外の名探偵4人が登場。それはそれとして、「3億円事件の類似事件を起こさせる」という出発点は、なかなか面白かったですね。スイスイと読まされました。西村御大の初期作品群は、バラエティに富んでいるし結構好きなんです。
ちなみに、講談社文庫の新版で読んだのですが、収録されていた綾辻行人との特別対談も興味深かったですね。 |
No.5 | 6点 | 天使の傷痕- 西村京太郎 | 2017/07/12 20:56 |
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昭和40年度の江戸川乱歩賞受賞作。
本格からの社会派ミステリといった印象です。フーとハウは結構わかりやすいのですが、ソコだけを読みどころにしていない辺りに、若き西村京太郎氏(50年以上前なんですねぇ)の熱意とセンスを感じます。リーダビリティも高く、読者にストレスを感じさせません。その後売れっ子作家となる片鱗を十二分に示しています。 |
No.4 | 8点 | 殺しの双曲線- 西村京太郎 | 2011/02/10 23:25 |
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このサイトにおける隠れた高評価に刺激されて読んでみました。
いやはや,作者に対するワタクシのこれまでの印象が,良い意味で崩れちゃいました。 本格ミステリとして秀逸だと思いますね。ラストの数行も印象に残ります。1977年の作品であることを考慮すればさらにプラス評価。国内双生児モノの傑作と評価いたします。 東京の連続強盗事件と宮城の雪の山荘(ホテル)における連続殺人事件が交互に語られていきます。 それぞれの事件自体が興味深いですし,その2つが結びついたときに一体何が…という期待で,序盤から一気に読ませてくれました。 (以下ややネタバレ的な要素を含みます。) 結果的には,前者の事件は後者の事件の「引立て役」なのであって,前者の犯人が想定どおりに犯行を行った必然性が感じられません。正直,相当な違和感を覚えました。 しかし,前者の事件がないと,読書の楽しみが激減してしまうのもまた事実。 読者としては何とも悩ましいところですが,作者の仕掛け具合はその違和感を補って余りあるものと判断して8点! |
No.3 | 5点 | 特急「白鳥」十四時間- 西村京太郎 | 2011/01/06 23:27 |
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【東北新幹線青森延伸記念(その2)】
これまた,20数年ぶりにナナメ読み。 当時は大阪と青森を結ぶ昼間長距離特急だった「白鳥」も,今となっては完全に青函連絡特急の位置づけに。よって,今は14時間も走らない訳ですね。時代を感じますねぇ。 で,この作品。サスペンスとして読めば,結構悪くないですよ。 新幹線が函館まで延伸されると,この「白鳥」って名前もどうなることやら。その意味では,ここ数年が読みドキか(笑)? |
No.2 | 5点 | 終着駅殺人事件- 西村京太郎 | 2011/01/06 23:23 |
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【東北新幹線青森延伸記念(その1)】
20数年ぶりにナナメ読み。 新幹線開業によって,青森の玄関口は「新青森駅」になっちゃうのでしょうか。 で,この作品。日本推理作家協会賞作品だったんですね。 ちなみに,アリバイトリックは相当にユルイです。トリックというよりも,何と言うか雰囲気(詳しくは亀井刑事にでも…)を楽しむべき作品かもしれません。 新幹線開業によって,この“雰囲気”を理解できる方も激減するはず。むしろ今が読みドキか(笑)。 |
No.1 | 5点 | ミステリー列車が消えた- 西村京太郎 | 2011/01/06 20:17 |
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先日,島田氏の「消えた水晶特急」を読んだので,列車消失繋がりで20数年ぶりにこの作品をナナメ読み。
同じ列車消失モノでも,個人的にはこっちの方が好みですね。 (以下,微妙にネタバレ) 当時から「現実の管理体制では絶対ムリ」との批判があったと記憶しておりますが,平成23年初頭にして「ああ,もうこの駅はないんだぁ。その意味では絶対ムリになっちゃったんだぁ」ってことに気付き(今頃?),いろんな意味で哀愁を感じることができたことが収穫。 |