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まさむねさん
平均点: 5.89点 書評数: 1282件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.682 5点 物件探偵- 乾くるみ 2017/08/11 16:34
 不動産をテーマにした6編から成る短編集。各短編の扉には、不動産屋や賃貸雑誌で見かけるような「間取り図」が挿入されていて、まさに「不動産ミステリー」といった趣きです。ミステリーとしては小粒なのですが、不動産の勉強にもなったし、その点も含めれば楽しめたと言えるかな。
 ちなみに、探偵役の不動尊子は、どの短編でも終盤だけに登場。登場パターンがいつも一緒というのはアリだとしても、キャラ自体は平面的で魅力をあまり感じなかったなぁ…と。多少勿体ないような気もしました。

No.681 6点 なんでも屋大蔵でございます- 岡嶋二人 2017/08/08 20:13
 なんでも屋(いわゆる便利屋)を営む「釘丸大蔵」を探偵役とする短編集。
 軽快なテンポで非常に読みやすく、読中感・読後感ともに良いので、軽く読書したい気分の方に最適です。反転も十分に楽しめますがが、「いやいや、犯人もそこまでは普通やらないよねぇ」と感じた部分も正直ございました。まぁ、ちょっと気になった程度であって、全体に流れる温かい雰囲気への評価の方が勝りましたけれども。
 最終話の展開から続編を求めたくなる読者も多いものと思われますが(勿論、私もその一人)、岡嶋二人のコンビを解消した今となっては、さすがに難しいでしょうか。ちょっと残念です。

No.680 7点 ほうかご探偵隊- 倉知淳 2017/08/06 16:15
 ミステリーランド作品。これまでミステリーランド作品は10冊位読んでいると思うのですが、それらの中で、この作品は、「かつて子どもだったあなたと少年少女のための」という、ミステリーランドのコンセプトに最も忠実だと思いますね。本格作品の楽しみを次世代に伝えたいという想いが伝わってきて好感が持てます。ミステリ入門編としても、極めて正しい作品と言えましょう。
 とは言っても、内容としては、入門編として安易に纏めているものではなく、このサイト愛好者も十二分に楽しめると思います。舞台は基本的に小学校内、登場人物も無暗に増やさない、読みやすく温かな筆致、その中での捻り具合…巧いなぁ、と感心いたしました。
 ちなみに、読後にふと考えてみたら、この作者さんの作風って、ミステリーランドにすごくフィットしていますよねぇ。

No.679 6点 双蛇密室- 早坂吝 2017/07/30 21:49
 上木らいちシリーズ第4弾。
 いやはや、バカミスであることは間違いないのですが、これを怪作と呼んでいいものかどうか。賛否両論ありましょうが、とにかく、やってくれちゃってます。
 タイトルどおり、蛇がらみの2つの密室が登場。そのうち2つ目の密室は肩透かし感満点でして、さすがにこれはいただけない。無理があり過ぎるし、面白味もない。
 問題は1つ目の密室(物語全体の真相とも言える)。これも無理があり過ぎると言えばその通りなのだけれども、個人的には初めて見たパターンであることは間違いなく、その発想力には驚かされました。らいちシリーズなだけに、藍川刑事がよく見る悪夢の真相の一部は、完全ではないけれども、きっとこの手のものであろういったレベルまでは想像がついたとは言え、全ては見通せなかった。確かに、このシリーズでデビューしたこの作者ならではで、独創的ではあります。
 でも、物語全体としてはどうなのか。その心意気や良しとすべきなのか、いやいや、突っ込みどころ満載で拙い点を(文章も含めて)一つひとつ挙げるべきなのか。どう評価すべきなのか、正直判断に迷うなぁ。

No.678 6点 GIVER- 日野草 2017/07/29 18:25
 第一話・第二話の復讐代行譚の流れで、第三話も同様かと思いきやそうでもなく、多少のギアチェンジ。個々の短編の反転も効いているし、短編集全体として見ると、主人公の成長譚として捉えることも可能で、その構成力は素直に評価したいと思います。

No.677 7点 探偵さえいなければ- 東川篤哉 2017/07/23 16:03
 烏賊川市シリーズの短編集。このシリーズとしては第三弾の短編集に当たる(と思います)。
 作者の原点と言うべきシリーズですが、いつもの鵜飼杜夫、二宮朱美、戸村流平の三人が揃って登場する短編はありません。というか、三人とも登場しない短編すらございます(砂川警部と志木刑事は登場するから、辛うじて烏賊川市シリーズということになるのかな?)。でも、このシリーズは主要三人以外のサブキャラクターがいい味を出していて、前短編集で個人的にツボだった、ゆるキャラ探偵「剣崎マイカ」が(1短編のみとはいえ)再登場してくれたことが嬉しい。凄く嬉しい。
 いずれの短編も水準以上の出来栄えにありますが、個人的には何といっても「剣崎マイカ」が見事に解決する「ゆるキャラはなぜ殺される」がベスト。ユルすぎるとか、バカバカしいとか、批判もあるでしょうが、私には無関係。ゆるキャラを活かしきったプロットは秀逸と言ってよいのではあるマイカ。そして作者としては、今後も彼女のキャラを積極的に使うべきではあるマイカ。
 他の四短編も、なかなかの出来栄えです。倒叙形式もあり、かつ、反転が心憎い作品も多くて好感を持ちました。緩いユーモアを巧く活かしながらの、極めて堅実な短編集と言えると思います。(様々な意見はあろうかと思うのですが。)

No.676 6点 がん消滅の罠 完全寛解の謎- 岩木一麻 2017/07/17 20:57
 第15回『このミステリーがすごい! 』大賞受賞作であります。
 余命半年の宣告を受けたがん患者が生命保険の生前給付金を受領した後に、なぜか病巣が消失する事象が立て続けに起きているという設定。いわば「がん連続消失事件」で、つまりは「殺人事件」ならぬ「活人事件」であるという機軸は、なかなかに斬新で興味をそそられます。
 国立がん研究センターでの勤務経験を活かしたのであろうディテールの描写や、最後の最後まで何か仕掛けようとする意識など、新人賞応募作品ならではの(?)面白味がある一方で、キャラクターの設定は全体的に弱く、リーダビリティも高いとは言い難いかな…と。この辺りは次回作に期待したいと思うのですが、再び医療ミステリで行くのかな?

No.675 5点 午前三時のサヨナラゲーム- 深水黎一郎 2017/07/15 16:49
 プロ野球ファンを切り口とした短編集。プロ野球史に残る「史実」も多数登場するので、プロ野球ファン(まぁ40代以上の方になるかなぁ…)は結構楽しめると思いますねぇ。
 作者のプロ野球に対する愛が詰まっているのですが、冷静な分析(?)も素晴らしい。「野球ファンのMKR(蒸し返し率、だそうです)は他のスポーツファンより高い」という説はまさにそのとおりで、自分を見透かされている気持ちになりましたね。それと、無死又は一死で三塁にランナーがいる場合に、犠牲フライやバウンドの高い内野ゴロすら打てなかった割合を「最低限が出来ない率」と称し、その上位30傑を独自集計する人物も登場しますが、個人的には激しく同意。これは、是非とも公表されるべき数値だと思うのですが、全国でどなたか集計していないものかなぁ。
 正直、ミステリとは言い難いのでこの採点としますが、プロ野球好きの方はどうぞ。

No.674 6点 天使の傷痕- 西村京太郎 2017/07/12 20:56
 昭和40年度の江戸川乱歩賞受賞作。
 本格からの社会派ミステリといった印象です。フーとハウは結構わかりやすいのですが、ソコだけを読みどころにしていない辺りに、若き西村京太郎氏(50年以上前なんですねぇ)の熱意とセンスを感じます。リーダビリティも高く、読者にストレスを感じさせません。その後売れっ子作家となる片鱗を十二分に示しています。

No.673 6点 こんにちは刑事ちゃん- 藤崎翔 2017/07/08 21:17
 殉職したベテラン刑事が後輩刑事の赤ちゃんとして1年間の期限付きで生まれ変わるという、なかなかに思い切った(?)設定であります。想像すると結構シュールで笑わされつつ、ちょっと感動したりも。
 多少強引な推理が気になったりもしましたが、ミステリとしてもまずまず楽しめました。軽快なタッチもいい。続編もありそうなので、ちょっと楽しみ。

No.672 6点 恋のゴンドラ- 東野圭吾 2017/07/07 23:15
 ゲレンデを舞台とした、恋愛がらみの連作短編集。スノーボードかスキーがお好きな方はより楽しめると思いますが、全くやらない方が楽しめないわけではございません。
 ゲレンデ+恋愛モノということで、チープなのではと問われますと、否定できない面もございます。確かに、80年代の「私をスキーに連れてって」に代表されるホイチョイ的な雰囲気も多分にございます。
 しかし、そこは流石に東野先生でして、多少のスリルも織り交ぜながら、スラスラとページをめくらされます。そつがないなぁ、そして裾野が広いよなぁ…と改めて感じ入った次第。
 ちなみに、日田クンはいつか必ず幸せになってほしいし、桃実サンには今後素晴らしい幸せを掴む権利がある、と思いましたね。

No.671 7点 一の悲劇- 法月綸太郎 2017/07/02 19:18
 とても良く練られたプロットで、最後までグイグイ持っていかれました。ほとんどの登場人物が一度は「容疑者」として扱われるのも面白い。真相のトリックも、簡潔ながら個人的には盲点となっていて、正直想定できていませんでした。誰一人として幸せになっていない、超悲劇的な結末も印象に残りそうかな。
 とはいえ、ちょっとダイイングメッセージの解釈には無理筋な面もあるのではないか…という気もして、1点マイナスします。

No.670 5点 バイバイ、ブラックバード- 伊坂幸太郎 2017/06/29 23:51
 五股をかけている男「星野一彦」は、のっぴきならない事情で「あのバス」で連れていかれてしまうことになった。その前に、監視役のブッチャー的大女「繭美」と一緒に、五人の恋人一人ひとりに別れを告げに行く…という設定の連作短編集。
 個人的には、別れを切り出される女性たちに情が傾いてしまって、正直、楽しみにくかった面もありましたね。星野も繭美も、どうしようもない奴なのか、いい奴なのか微妙っていう点も、何かくすぐったい感じもする。何よりも、「あのバス」って…。結構登場人物同士の会話とかは面白いのだけれども。
 まぁ、様々な面で伊坂さんらしい作品ではあります。

No.669 6点 明日の空- 貫井徳郎 2017/06/23 22:49
 3章で構成されているのですが、第1章の時点で「匂い」がプンプン。ガラッと場面が変わる第2章でどういう関連なのかと疑念を深めつつ、最終章へ。スラスラと読みやすいだけに、次々とページをめくらされました。
 結構な伏線がありつつも、最終的な真相までは正直分からなかったですねぇ。でも、全体構成としては十分に想定の範囲内。また、ちょっと都合が良過ぎる設定で、かつ、綺麗にまとめ過ぎていないかなぁ…と。サクッと読む分には、十分に楽しめましたので、決して否定的な訳ではないのですが。

No.668 7点 秋の花- 北村薫 2017/06/18 22:04
 シリーズ三作目で、初の長編作品であります。ミステリという側面よりもむしろ、物語全体の「深み」に脱帽です。
 特に、円紫師匠の最終盤のセリフ「許すことは出来そうにありません。ただ~」、そして、津田さんの母親が円紫師匠に語った最後のセリフが印象深いですね。

No.667 7点 マリオネットの罠- 赤川次郎 2017/06/11 17:29
 作者がデビュー後に書き下ろした初めての長編ミステリだそうです。(刊行順では別の作品の方が早いらしいのですが。)
 スッと作品に引き込まれ、次々にページをめくらされました。終盤まで加速度を落とすことなく引っ張るストーリー展開は見事で、良質のサスペンス小説と言えるのではないでしょうか。タイトルの意味が最終盤で浮き上がってくるスタイルも好きです。
 赤川作品と言えば軽快なシリーズものの印象が強く、確かにそれも作者の力量があってこそだと思うのですが、個人的には、作者の力量はこの第一長編にこそ、如実に表れていると思いますね。

No.666 8点 不連続殺人事件- 坂口安吾 2017/06/10 22:35
 登場人物が異様に多く、しかも物語のスタートから次々に登場するものだから、人間関係も含めて、人物把握が結構しんどかったですね。登場人物一覧が欲しい…と何度思ったことか。そういった観点では、あまり読みやすいとは言えないでしょうね。また、現在では決して書かれないであろう差別的用語も満載でございました(個人的にはその時代の社会的認識に触れられるという意味で、否定的には捉えないけれども)。
 とは言え、フーダニット作品として実に面白い。解決篇で探偵役が語る「心理の足跡」にも納得。確かに、ソノ場面を読んでいる際には何となく違和感を抱いたのですよねぇ。「木は森の中に隠せ」。まさしくそのとおりで、私は隠された木を見つけることができませんでした。
 何より、坂口先生は明らかに楽しみながら書いたのであろうなぁ…という感じが伝わってきて、好感を持ちましたね。

No.665 6点 家庭用事件- 似鳥鶏 2017/05/28 23:34
 市立高校シリーズ第6弾(だと思う)の短編集です。
 第1話「不正指令電磁的なんとか」から第4話「お届け先には不思議を添えて」まで、いずれも提示される謎が不可解で魅力的。個人的には、一発勝負の感はあるけれども、第1話のトリックが印象に残りそうかな。
 ちなみに、第4話「お届け先には不思議を添えて」ってどこかで読んだような…と思っていたら、学園ミステリ・アンソロジー「放課後探偵団」に収録されていたのですね。本格度と言う観点では本作中のベストでしょうか。
 最終話の「優しくないし健気でもない」は、雰囲気も内容も一変。ネタバレを避けるために多くは書きませんが、フェア、アンフェアを含めて様々な捉え方があり得そう。驚かされ、また、考えさせられたことは間違いないのですが。

No.664 6点 ぼくのミステリな日常- 若竹七海 2017/05/21 11:57
 12の短編に組み込まれた伏線が終盤で回収されて全体の形を見せるという、連作短編としての面白さは十分にあります。(作中作を駆使した1本の長編という見方もできるのでしょうが。)
 一方で、個々の短編(若しくは個々の作中作)自体の面白味はマチマチで、次々にページを捲りたくなったかと問われると、ちょっと辛い部分もあったかな。おいしい終盤まで読まずに放棄する方もいるかも。
 「ちょっと長めの編集後記」における全体像垣間見え感も勿論いいのだけけども、個人的には最終盤の「配達された最後の手紙」におけるゾクゾク感の方が記憶に残りそうかな。

No.663 5点 マカロンはマカロン- 近藤史恵 2017/05/14 22:50
 下町の小さなフレンチ・レストラン「ビストロ・パ・マル」を舞台にした短編集の第3弾。
 相変わらずの読み心地の良さ。その中に多少ビターな短編も用意している辺りも好きかな。かなり食べてみたくなった料理も登場して興味深いのだけれども、ミステリとしてはちょっと弱いのでこの採点としましょう。

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まさむねさん
ひとこと
ミステリとしての特別な知識なく乱読していますので、私の書評はあまりアテにしないでくださいね。
好きな作家
道尾秀介・東野圭吾・東川篤哉
採点傾向
平均点: 5.89点   採点数: 1282件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(58)
有栖川有栖(45)
東川篤哉(44)
森博嗣(37)
島田荘司(29)
道尾秀介(28)
伊坂幸太郎(26)
西村京太郎(24)
米澤穂信(23)
歌野晶午(21)