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[ 本格/新本格 ]
私情対談
改題『殺意の対談』
藤崎翔 出版月: 2015年06月 平均: 6.25点 書評数: 4件

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KADOKAWA/角川書店
2015年06月

KADOKAWA
2017年04月

No.4 6点 メルカトル 2018/11/30 22:06
雑誌の対談と対談者の心の声や回想で全篇が占められる、連作短編方式のイヤミス系かと思いながら読んでいましたが、違いました。第一章では、リアリティの欠片もない程偶然が重なってはいるものの、意外なくらい本格ミステリの様相を呈しているので、期待はいやが上にも高まりましたが、第二章でイヤミス全開な感じになり、第三章ではまた毛色の違う感動的とすら言える物語となり、この先どんな展開が待っているのか全く想像がつきません。

しかし、本筋はここからでいよいよ本格的なメインテーマへとなだれ込んでいきます。他の章、特に第一章が絡んできて加速するのは良いですが、最後はぐだぐだになった感があるので、個人的にはあまりスッキリしませんでした。
作者独自のスタイルを確立するのは良いですが、せっかくの面白さが倒叙の形を取ったため半減してしまっている気がしてなりません。普通に本格ミステリとしてしっかりとした構成で作り上げれば、更なる傑作に仕上がったのではないかと思います。それこそどんでん返しの連続、サプライズ感満載のミステリファン必読の書に大化けした可能性も否定できませんね。

評者はメインストーリーは勿論いいですが、第三章が暗号を含めて気に入っています。そんな馬鹿なとは思いますが、まあ小説ですから。良いんじゃないでしょうか。ただ一般受けするかとなると疑問ですよね。

No.3 7点 E-BANKER 2018/11/13 21:30
「神様の裏の顔」で横溝正史ミステリー大賞を受賞した作者が贈る二作目がコレ。
単行本では「私情対談」のタイトルで発表されていたが、文庫化に当たってなぜか「殺意の対談」へタイトル変更。
今回、加筆修正された「殺意の対談」にて読了。単行本は2015年の発表。
ほぼ全編に当たり『雑誌の対談記事+対談中の登場人物たちの心の声』にて構成された連作形式の作品。

①「『月刊エンタメブーム』9月号」=一見して単なる物語の“導入部”と思いきや、後でそうではなかったと思い知る・・・(ネタバレっぽいが)。殺害状況が割とエグイので注意。ミ○サーでなんて!
②「『SPORTY』ゴールデンウィーク特大号」=同じJリーグのチームでライバル同士のFW2人の対談。ベテランと若手のすれ違いやら考え方の違いなんてよくある話なんだけど・・・オチがなかなか強烈。
③「『月刊ヒットメーカー』10月号」=女1・男2の3人組人気バンドの対談。で、この女1がかなりの食わせ物なわけで、オジサンの想像の遥か上をいく暴挙! これって○股なの? さらに最後は・・・
④「『テレビマニア』9月10日~9月23日号』=本作のある意味分岐点となる一編なのだが、最初はまさかそんな感じになるなんて想像もつかなかった。超女好きのイケメン俳優に駆け出しの若手女優が食い物にされるはずが・・・これは③以上の展開。
⑤「『週刊スクープジャーナル』11月23日号掲載予定原稿」=この“掲載予定原稿”というのがミソ。
⑥「4月18日『メディアミックス・スペシャル対談』」=最後は雑誌ではなく生放送のインターネットTVが舞台。①~⑤までが大いなる前フリだったことが明らかになる。明らかになるのだが、あまりに振り幅が大きすぎて頭がクラクラしてくる。
⑦「エピローグ『実話真相』6月20日号」=トドメのオチ。

以上7編、というか7つのパート。
いやいや・・・なかなかの怪作。
好き嫌いがはっきり分かれそうだが、個人的にはよく考えたなぁーという感想。
(元お笑い芸人ということからすると、アンジャッシュやしずるのネタが発想のきっかけではないかと推察するのだがどうか?)

もちろん無理矢理感は満載だし、リアリティは皆無だし、これなら何でもありだろと思われるのも当然。
でも何だか無視できないパワーと勢いは感じた次第。
オリジナリティや読者を驚かせたいという意気込みは伝わってきた。
「あり」か「なし」かで言うなら、大きな声で「あり」と言いたい。

No.2 7点 名探偵ジャパン 2017/08/07 20:11
対談やインタビューの中に、参加者の裏の顔、陰の声が挿入されていき、思いも寄らない繋がりが暴露されていきます。
基本的に短編形式ですが、話が進むにつれて、全くの無関係だと思われていた登場人物に意外な繋がりが垣間見えてきますので、最初から順番に読んでいかないといけません。
複雑に入り組み、愛憎渦巻く人間模様の果てに迎える、壮絶なラスト。
終盤に至るまでは、いわゆる「いやミス」的な後味の悪い結末となるのかと思っていましたが、決してそうではないので、「いやミス」のようなものに嫌悪感を覚える方も安心して(?)お読みいただけると思います。
あまりに波瀾万丈すぎる人生を送ってきた人たちが多すぎ、それらがどこかで接点を持っているという設定は、確かに「やりすぎ感」はありますが、これは、本作を構築するために必要な形式でしょう。それを補うだけの勢いとパワーがある作品だと思います。

No.1 5点 まさむね 2017/01/17 22:10
 横溝正史ミステリ大賞受賞第一作。
 序盤は、様々な雑誌の誌上対談におけるやり取りを描いた連作短編的な感じ。お互い表と裏の顔が違う、しかも裏の顔は殺人経験まであるような…という、独創性という面では弱いけれども、まぁ、人物間の繋がりを含めて成り行きを想像しながら、一定は楽しめる展開。
 しかし終盤になってくると何かとゴチャゴチャしだし、ちょっと人物相関の把握が面倒に感じたりし、最終的には強引すぎるかなぁ…と感じざるを得ませんでした。設定の現実感が…とか無粋なことは言わないとしても、だって、終盤のとあるシーンは明らかに無理があると思うのですよねぇ。
 元お笑い芸人というだけあって、受賞作を含め、ノンストップの面白い話を紡ぐ才能があるのであろうなぁ、とは感じたのですが、単に人間の表裏の差異による面白さという観点ではなくて、純粋なミステリとしての面白さも見せてほしいなぁ…と今後を期待しつつ、この採点とします。


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