皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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まさむねさん |
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平均点: 5.88点 | 書評数: 1258件 |
No.678 | 6点 | GIVER- 日野草 | 2017/07/29 18:25 |
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第一話・第二話の復讐代行譚の流れで、第三話も同様かと思いきやそうでもなく、多少のギアチェンジ。個々の短編の反転も効いているし、短編集全体として見ると、主人公の成長譚として捉えることも可能で、その構成力は素直に評価したいと思います。 |
No.677 | 7点 | 探偵さえいなければ- 東川篤哉 | 2017/07/23 16:03 |
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烏賊川市シリーズの短編集。このシリーズとしては第三弾の短編集に当たる(と思います)。
作者の原点と言うべきシリーズですが、いつもの鵜飼杜夫、二宮朱美、戸村流平の三人が揃って登場する短編はありません。というか、三人とも登場しない短編すらございます(砂川警部と志木刑事は登場するから、辛うじて烏賊川市シリーズということになるのかな?)。でも、このシリーズは主要三人以外のサブキャラクターがいい味を出していて、前短編集で個人的にツボだった、ゆるキャラ探偵「剣崎マイカ」が(1短編のみとはいえ)再登場してくれたことが嬉しい。凄く嬉しい。 いずれの短編も水準以上の出来栄えにありますが、個人的には何といっても「剣崎マイカ」が見事に解決する「ゆるキャラはなぜ殺される」がベスト。ユルすぎるとか、バカバカしいとか、批判もあるでしょうが、私には無関係。ゆるキャラを活かしきったプロットは秀逸と言ってよいのではあるマイカ。そして作者としては、今後も彼女のキャラを積極的に使うべきではあるマイカ。 他の四短編も、なかなかの出来栄えです。倒叙形式もあり、かつ、反転が心憎い作品も多くて好感を持ちました。緩いユーモアを巧く活かしながらの、極めて堅実な短編集と言えると思います。(様々な意見はあろうかと思うのですが。) |
No.676 | 6点 | がん消滅の罠 完全寛解の謎- 岩木一麻 | 2017/07/17 20:57 |
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第15回『このミステリーがすごい! 』大賞受賞作であります。
余命半年の宣告を受けたがん患者が生命保険の生前給付金を受領した後に、なぜか病巣が消失する事象が立て続けに起きているという設定。いわば「がん連続消失事件」で、つまりは「殺人事件」ならぬ「活人事件」であるという機軸は、なかなかに斬新で興味をそそられます。 国立がん研究センターでの勤務経験を活かしたのであろうディテールの描写や、最後の最後まで何か仕掛けようとする意識など、新人賞応募作品ならではの(?)面白味がある一方で、キャラクターの設定は全体的に弱く、リーダビリティも高いとは言い難いかな…と。この辺りは次回作に期待したいと思うのですが、再び医療ミステリで行くのかな? |
No.675 | 5点 | 午前三時のサヨナラゲーム- 深水黎一郎 | 2017/07/15 16:49 |
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プロ野球ファンを切り口とした短編集。プロ野球史に残る「史実」も多数登場するので、プロ野球ファン(まぁ40代以上の方になるかなぁ…)は結構楽しめると思いますねぇ。
作者のプロ野球に対する愛が詰まっているのですが、冷静な分析(?)も素晴らしい。「野球ファンのMKR(蒸し返し率、だそうです)は他のスポーツファンより高い」という説はまさにそのとおりで、自分を見透かされている気持ちになりましたね。それと、無死又は一死で三塁にランナーがいる場合に、犠牲フライやバウンドの高い内野ゴロすら打てなかった割合を「最低限が出来ない率」と称し、その上位30傑を独自集計する人物も登場しますが、個人的には激しく同意。これは、是非とも公表されるべき数値だと思うのですが、全国でどなたか集計していないものかなぁ。 正直、ミステリとは言い難いのでこの採点としますが、プロ野球好きの方はどうぞ。 |
No.674 | 6点 | 天使の傷痕- 西村京太郎 | 2017/07/12 20:56 |
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昭和40年度の江戸川乱歩賞受賞作。
本格からの社会派ミステリといった印象です。フーとハウは結構わかりやすいのですが、ソコだけを読みどころにしていない辺りに、若き西村京太郎氏(50年以上前なんですねぇ)の熱意とセンスを感じます。リーダビリティも高く、読者にストレスを感じさせません。その後売れっ子作家となる片鱗を十二分に示しています。 |
No.673 | 6点 | こんにちは刑事ちゃん- 藤崎翔 | 2017/07/08 21:17 |
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殉職したベテラン刑事が後輩刑事の赤ちゃんとして1年間の期限付きで生まれ変わるという、なかなかに思い切った(?)設定であります。想像すると結構シュールで笑わされつつ、ちょっと感動したりも。
多少強引な推理が気になったりもしましたが、ミステリとしてもまずまず楽しめました。軽快なタッチもいい。続編もありそうなので、ちょっと楽しみ。 |
No.672 | 6点 | 恋のゴンドラ- 東野圭吾 | 2017/07/07 23:15 |
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ゲレンデを舞台とした、恋愛がらみの連作短編集。スノーボードかスキーがお好きな方はより楽しめると思いますが、全くやらない方が楽しめないわけではございません。
ゲレンデ+恋愛モノということで、チープなのではと問われますと、否定できない面もございます。確かに、80年代の「私をスキーに連れてって」に代表されるホイチョイ的な雰囲気も多分にございます。 しかし、そこは流石に東野先生でして、多少のスリルも織り交ぜながら、スラスラとページをめくらされます。そつがないなぁ、そして裾野が広いよなぁ…と改めて感じ入った次第。 ちなみに、日田クンはいつか必ず幸せになってほしいし、桃実サンには今後素晴らしい幸せを掴む権利がある、と思いましたね。 |
No.671 | 7点 | 一の悲劇- 法月綸太郎 | 2017/07/02 19:18 |
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とても良く練られたプロットで、最後までグイグイ持っていかれました。ほとんどの登場人物が一度は「容疑者」として扱われるのも面白い。真相のトリックも、簡潔ながら個人的には盲点となっていて、正直想定できていませんでした。誰一人として幸せになっていない、超悲劇的な結末も印象に残りそうかな。
とはいえ、ちょっとダイイングメッセージの解釈には無理筋な面もあるのではないか…という気もして、1点マイナスします。 |
No.670 | 5点 | バイバイ、ブラックバード- 伊坂幸太郎 | 2017/06/29 23:51 |
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五股をかけている男「星野一彦」は、のっぴきならない事情で「あのバス」で連れていかれてしまうことになった。その前に、監視役のブッチャー的大女「繭美」と一緒に、五人の恋人一人ひとりに別れを告げに行く…という設定の連作短編集。
個人的には、別れを切り出される女性たちに情が傾いてしまって、正直、楽しみにくかった面もありましたね。星野も繭美も、どうしようもない奴なのか、いい奴なのか微妙っていう点も、何かくすぐったい感じもする。何よりも、「あのバス」って…。結構登場人物同士の会話とかは面白いのだけれども。 まぁ、様々な面で伊坂さんらしい作品ではあります。 |
No.669 | 6点 | 明日の空- 貫井徳郎 | 2017/06/23 22:49 |
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3章で構成されているのですが、第1章の時点で「匂い」がプンプン。ガラッと場面が変わる第2章でどういう関連なのかと疑念を深めつつ、最終章へ。スラスラと読みやすいだけに、次々とページをめくらされました。
結構な伏線がありつつも、最終的な真相までは正直分からなかったですねぇ。でも、全体構成としては十分に想定の範囲内。また、ちょっと都合が良過ぎる設定で、かつ、綺麗にまとめ過ぎていないかなぁ…と。サクッと読む分には、十分に楽しめましたので、決して否定的な訳ではないのですが。 |
No.668 | 7点 | 秋の花- 北村薫 | 2017/06/18 22:04 |
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シリーズ三作目で、初の長編作品であります。ミステリという側面よりもむしろ、物語全体の「深み」に脱帽です。
特に、円紫師匠の最終盤のセリフ「許すことは出来そうにありません。ただ~」、そして、津田さんの母親が円紫師匠に語った最後のセリフが印象深いですね。 |
No.667 | 7点 | マリオネットの罠- 赤川次郎 | 2017/06/11 17:29 |
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作者がデビュー後に書き下ろした初めての長編ミステリだそうです。(刊行順では別の作品の方が早いらしいのですが。)
スッと作品に引き込まれ、次々にページをめくらされました。終盤まで加速度を落とすことなく引っ張るストーリー展開は見事で、良質のサスペンス小説と言えるのではないでしょうか。タイトルの意味が最終盤で浮き上がってくるスタイルも好きです。 赤川作品と言えば軽快なシリーズものの印象が強く、確かにそれも作者の力量があってこそだと思うのですが、個人的には、作者の力量はこの第一長編にこそ、如実に表れていると思いますね。 |
No.666 | 8点 | 不連続殺人事件- 坂口安吾 | 2017/06/10 22:35 |
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登場人物が異様に多く、しかも物語のスタートから次々に登場するものだから、人間関係も含めて、人物把握が結構しんどかったですね。登場人物一覧が欲しい…と何度思ったことか。そういった観点では、あまり読みやすいとは言えないでしょうね。また、現在では決して書かれないであろう差別的用語も満載でございました(個人的にはその時代の社会的認識に触れられるという意味で、否定的には捉えないけれども)。
とは言え、フーダニット作品として実に面白い。解決篇で探偵役が語る「心理の足跡」にも納得。確かに、ソノ場面を読んでいる際には何となく違和感を抱いたのですよねぇ。「木は森の中に隠せ」。まさしくそのとおりで、私は隠された木を見つけることができませんでした。 何より、坂口先生は明らかに楽しみながら書いたのであろうなぁ…という感じが伝わってきて、好感を持ちましたね。 |
No.665 | 6点 | 家庭用事件- 似鳥鶏 | 2017/05/28 23:34 |
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市立高校シリーズ第6弾(だと思う)の短編集です。
第1話「不正指令電磁的なんとか」から第4話「お届け先には不思議を添えて」まで、いずれも提示される謎が不可解で魅力的。個人的には、一発勝負の感はあるけれども、第1話のトリックが印象に残りそうかな。 ちなみに、第4話「お届け先には不思議を添えて」ってどこかで読んだような…と思っていたら、学園ミステリ・アンソロジー「放課後探偵団」に収録されていたのですね。本格度と言う観点では本作中のベストでしょうか。 最終話の「優しくないし健気でもない」は、雰囲気も内容も一変。ネタバレを避けるために多くは書きませんが、フェア、アンフェアを含めて様々な捉え方があり得そう。驚かされ、また、考えさせられたことは間違いないのですが。 |
No.664 | 6点 | ぼくのミステリな日常- 若竹七海 | 2017/05/21 11:57 |
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12の短編に組み込まれた伏線が終盤で回収されて全体の形を見せるという、連作短編としての面白さは十分にあります。(作中作を駆使した1本の長編という見方もできるのでしょうが。)
一方で、個々の短編(若しくは個々の作中作)自体の面白味はマチマチで、次々にページを捲りたくなったかと問われると、ちょっと辛い部分もあったかな。おいしい終盤まで読まずに放棄する方もいるかも。 「ちょっと長めの編集後記」における全体像垣間見え感も勿論いいのだけけども、個人的には最終盤の「配達された最後の手紙」におけるゾクゾク感の方が記憶に残りそうかな。 |
No.663 | 5点 | マカロンはマカロン- 近藤史恵 | 2017/05/14 22:50 |
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下町の小さなフレンチ・レストラン「ビストロ・パ・マル」を舞台にした短編集の第3弾。
相変わらずの読み心地の良さ。その中に多少ビターな短編も用意している辺りも好きかな。かなり食べてみたくなった料理も登場して興味深いのだけれども、ミステリとしてはちょっと弱いのでこの採点としましょう。 |
No.662 | 4点 | パレードの明暗 座間味くんの推理- 石持浅海 | 2017/05/09 21:16 |
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作者の代表作のひとつ「月の扉」の探偵役・座間味クンが登場する短編集の第3弾。
「月の扉」から登場している大迫さんは毎回偉くなっていて、何と今回は警視長だそうです。今回のゲストは、女性特別機動隊所属で羽田空港保安検査場に勤務する警察官で、毎回、大迫さん、座間味クンと3人でお食事します。その席で、大迫さんが過去の事件や出来事について話すと、座間味クンが新たな解釈を出して…という典型的な展開。 この展開自体は過去の2短編集と同じなのですが、スケールがどんどん小さくなっています。全話とも転換が用意されてはいるのですが、如何せんこれも小さいのですよねぇ。ゲスト役の女性警察官の魅力も小さいし、女性警察官の成長譚っぽくしようとしているのも、はっきり言って片腹痛い。また、恒例の食事シーンも薄く、そんなにおいしそうに感じられない。何よりも、全話ともパターンが同じだけに、途中から飽きてしまいました。 |
No.661 | 7点 | 群青のタンデム- 長岡弘樹 | 2017/05/05 22:56 |
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男女2名の同期警察官を描いた連作短編集です。
まず、この作者さんに関する個人的な印象の推移を述べますと、ヒット作「傍聞き」→「陽だまりの偽り」と読み、これは新たな短編の名手誕生では?という期待を抱いたものです。一方で、このミス的評価は高かった「教場」に関しては、巧いのだけれど何となく物足りない(現実味もない)という印象を受け、その後「波形の声」→「赤い刻印」→「白衣の嘘」と読むにつれ、その消極的印象が次第に深まっていき(こじつけ感が強いという印象まで加わり)、嗚呼、私の初期の期待が高すぎたのだろうか…などとちょっと悲しくなっていたところでございました。 前置きが長くなりました。で、この作品ですが、私の作者に対する評価グラフが相当に回復する結果となりました。「警察小説連作短編」という前知識だけで読んだ自分としては、プチ驚き所にも綺麗にハマり、読ませるテクニックも相まって、ほぼ一気読み状態。多くは述べませんが、なるほど、こういうタッチの警察小説、向いているかもしれません。 |
No.660 | 6点 | 聖女の毒杯- 井上真偽 | 2017/05/05 21:34 |
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話題作となった「その可能性はすでに考えた」の続編。
今回の事件は「毒殺」ということで、前作に比して事件のスケールは相当にダウンしています。(まぁ、前作の謎が集団自殺や首なし状態で歩いた少年とかでしたからねぇ。) とはいえ、「飛び石毒殺」という設定、その中での推理合戦(かなり強引すぎる嫌いはあるが)、中盤以降の急展開、終盤での連続捻り技等々、全体のプロットとしては前作に引けを取らないように思います。むしろ前作より引き締まっているようにも感じます。 正直7点とも思ったのですが、前述のように推理合戦にあまりにも強引な点が散見された点、それとラノベ・テイストが何とも肌がゆく感じた点(完全に個人的な好みの話で恐縮ですが)、この2点がちょっと興覚めだったことは事実なので、1点減点とします。 |
No.659 | 7点 | 猫には推理がよく似合う- 深木章子 | 2017/04/30 19:52 |
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私も敢えて多くは書きませんが、非常に凝ったプロットです。「仕掛け花火が次々に炸裂するような本格ミステリ」との有栖川有栖氏のコメントも素直に頷けます。
しかし、この作者さんは引き出しが多いですねぇ。流石です。 |