皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
まさむねさん |
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平均点: 5.87点 | 書評数: 1229件 |
No.969 | 6点 | あいにくの雨で- 麻耶雄嵩 | 2021/10/03 21:16 |
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確かに麻耶雄嵩らしくないのだけれど、一方で麻耶雄嵩らしいか…という、相反する感想をもった作品です。でも、全体の突き抜け感は他の作品には及ばす。そんな高校はないよね、と現実的に考えちゃったりして。
最後の捻りは嫌いではなく、若かりし頃の作者の一断面を見られたこともあって、この採点。 |
No.968 | 7点 | invert 城塚翡翠倒叙集- 相沢沙呼 | 2021/09/26 16:52 |
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昨年度の話題作「medium」の続編で、引き続き「城塚翡翠」が登場。今回は倒叙形式の3つの中編で構成されています。
うち2作品は、上質でオーソドックスな倒叙ミステリ。翡翠の古畑任三郎化?も微笑ましい。その流れでの最終話「信用ならない目撃者」が断トツにおススメ。主人公に語らせておいて、そう来たかという結末で、純粋に楽しめました。なかなか興味深いタイトルだったけれども、最も信用ならないのは作者だったりして。油断ならないなぁ。次作も楽しみに待つとしましょう。 |
No.967 | 5点 | 葛登志岬の雁よ、雁たちよ- 平石貴樹 | 2021/09/18 21:58 |
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函館物語(個人的には「岬シリーズ」と呼びたい)の第3弾。読者が推理できる要素は少なく、警察の捜査と、そこで得られた新情報をひたすら追い掛けるスタイル。退屈と感じられる方もいらっしゃると思います。自分としては、時にそういった作品も読みたくなるので、悪くはなかったのですが、2つ目の殺人の動機にはちょっと疑問。現場とトリックの状況も分かりにくかったかな(読解力が不足しているだけかもしれませんが)。
終盤で探偵役「ジャン・ピエール・プラット」の渡仏の意向が語られたので、このシリーズに幕が下ろされる可能性もあるのかな?シリーズ作品内で描かれる函館の生活感が好きだったのだけれど。ちなみにシリーズの中では第一作の「潮首岬に郭公の鳴く」がベスト。 |
No.966 | 6点 | 新幹線殺人事件- 森村誠一 | 2021/09/13 21:40 |
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2つのアリバイトリック。1つ目の新幹線電話の件は、なかなか面白いですね。ある1点だけが判れば、「水平思考アリバイ」とやらは、読者としても気付きやすかったかな。2つ目のトリックは、何というか、最初の捜査で警察が気付いてほしかった。
トリック以外にも、警察の捜査や芸能界を交えて読ませてくれます。終盤の転換もいいですね。ただ、これを言ってはオシマイかもしれないけれど、2つの殺人とも、そんなリスクの高い手法を採る必要がないのでは…と気になって仕方がありませんでした。 |
No.965 | 6点 | 彼女が追ってくる- 石持浅海 | 2021/09/05 20:56 |
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碓氷優佳シリーズ第3弾。個人的には、倒叙形式はそれほど好まず、碓氷優佳のキャラはそれ以上に好まないのですが、カフスボタンの工夫等々もあって楽しく読ませていただきました。最終盤もイイですね。
一方で、昨晩夕食を共にした知人の刺殺死体を前にしながら、警察への連絡をせずに2時間も推理をする大人たちって、どうなのでしょうねぇ。しかも亡骸のある部屋でねぇ。まぁ、この作者なのだし、読者が慣れるべきなのか。 |
No.964 | 7点 | さよなら僕らのスツールハウス - 岡崎琢磨 | 2021/08/31 22:15 |
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シェアハウス舞台を舞台とした連作短編集。若者たちが人生の一時期を共有している風景、それを少し後にそれぞれが振り返っている描写にグッときましたね。ノスタルジックな気分に浸ってしまう辺り、自分も歳を重ねてきたのものだと、あらためて感じました。読後感もよく、様々に考えさせられます。
短編の中では「陰の花」が個人的ベスト。短い尺ながら、心情的な二転三転が織り込まれています。作品全体としての構成もなかなか考えられています。多少の「あざとさ」にも、むしろ好感。幅広い年齢層にお勧めできそうな作品ですね。 |
No.963 | 7点 | 崩れる脳を抱きしめて- 知念実希人 | 2021/08/26 22:27 |
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この作者さんの作品は初読です。いやはや、グイグイ読まされ、最終的にはやられてしまいました。よくよく考えれば、予測がつくような気もするのですが、グイグイと読まされている時点で作者の術中にはまっていますよね。全体構成も巧く、売れる要素が詰まっています。幅広い層に楽しんでいただけるのではないでしょうか。映像化に向いていそうな作品でもあります。
ちなみに、極めて個人的な意見なのですが、実は冴子の方がフイットするような気がするし、私も冴子の方が好み。こういった意見は好ましくないか。すみません。 |
No.962 | 5点 | 化学探偵Mrキュリー7- 喜多喜久 | 2021/08/21 21:10 |
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シリーズ7作目。前回は長編でしたが、今回は短編集で、沖野准教授&七瀬舞衣のコンビとしての活躍はございません。準レギュラーに焦点を当てた短編集と言っていいかも。
各短編のタイトルを「(準レギュラー)と〇色の〇〇」といった形に統一したり、沖野の家庭教師時代の教え子との交流について時間軸を分けて挟み込んだりといった、工夫は認めるのですが、どうにも「ありがち」な手法。ミステリとしても消極的に評価せざるを得ないです。化学的な知識がないので詳細までは分からないけれども、きっとこういった流れで結末はこんな感じなのだろうと、想定しやすいのですよねぇ。何らかの捻りは欲しかったかな。甘々にして、この採点。 |
No.961 | 6点 | 神の悪手- 芦沢央 | 2021/08/14 18:18 |
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将棋をテーマにした短編集。結構裾野が広い作家さんなのだなぁ…というのが第一印象。でも、ちょっと意図を掴み切れない短編もあったりして、個人的にはちょっと消化不良な感じも受けたかな。 |
No.960 | 6点 | ボーンヤードは語らない- 市川憂人 | 2021/08/09 10:48 |
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このシリーズ初の、というか作者初の短編集。今のマリア&漣、それぞれの原点となった事件や、「ジェリーフィッシュは凍らない」の前日譚などが描かれています。
人種差別などの社会的なテーマも含んでいて、そういった側面での重みはあるのですが、ミステリーの部分はやや軽量か。登場人物の心情面を複雑にすればOKというものではないかな。それと、各短編のパターンが似すぎているかなぁ。 辛口っぽくなってしまいましたが、勿論筋立てはしっかりしているし、決して楽しめなかったわけではございませんので、誤解なきよう。 |
No.959 | 7点 | 樹のごときもの歩く- 坂口安吾 | 2021/08/01 23:44 |
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坂口安吾氏の未完の長編推理小説を高木彬光氏が引き継いで完結させたもの。引き継いだといっても、坂口氏の急逝を受け、江戸川乱歩氏が高木氏をご指名?したようで、全容が判る詳細メモがあったものでもないようなので、高木氏の苦労は相当なものであったと思われます。
高木氏の結論は、なるほど高木氏らしいし、ラストもビシッとしています。しかし、坂口氏が生前に奥様に打ち明けていた内容(犯人も含む)とは異なる結末にせざるを得なかったとのこと。奥様に打ち明けた内容が、本人が構想していた真相と完全に一致していたのか、今となっては誰にも分からず、それこそミステリー。その点を考えながら読み返してみるのも一興かと。 |
No.958 | 6点 | 新 謎解きはディナーのあとで- 東川篤哉 | 2021/07/28 22:51 |
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映像化もされた人気シリーズの続編。お久しぶりですね。
前シリーズとの相違点は、形式的には、天然キャラの後輩新米刑事「若宮愛里」刑事が登場したことでしょうか。とはいえ、ミステリとしての貢献度は高くなく、コミカルさの演出の効果を狙って…といった感じでしょうか。ちなみに、執事・影山の毒舌はそのままでしたが、ちょっとマイルドに、そして人間味を帯びてきたような気がしましたね。ドラマの影響なのでしょうか。風祭警部の貢献度?も無視できない。 各短編の出来栄えには幅がありましたが、総じて本格度を保っています。「五つの目覚まし時計」「煙草二本分のアリバイ」におけるロジックの転換が好印象。「墜落死体はどこから」の島荘感もイイ感じかな。 |
No.957 | 7点 | 運命の八分休符- 連城三紀彦 | 2021/07/25 11:47 |
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同一探偵が登場する連作短編集。連城氏の同種の作品集として思い浮かぶのは、夕萩心中に収録されている「陽だまり課事件簿」くらい。そういった意味でも、興味深く読ませていただきました。
探偵役は、ドングリ目に分厚い眼鏡の定職を持たない「軍平」くん。実際の読み方や漢字は違うものの、いずれも「しょうこ」とも読める5人の女性との切ない恋愛模様を描きながら、ミステリとしてキッチリと作り込まれています。ユーモラスで軽快な書きぶりながら、「画になる」シーンも多く、作者らしい構図の反転も十分に味わえます。数多くの名作短編を産み出しているだけに、作者の作品群の中で決して目立ちはしないけれども、初期の好短編集の一つと言えそうです。 |
No.956 | 6点 | 野球が好きすぎて- 東川篤哉 | 2021/07/11 12:03 |
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これまでの作品でも、しばしば野球ネタ(殊にカープネタ)を活用してきた東川さん。今回は、タイトルどおり、野球ネタ一気通貫の短編集。何か楽しんで書いていそうだ。探偵役にカープ女子、刑事役にスワローズファンのおじさんとその娘を添えるという念の入れよう。パ・リーグをもう少し取り上げてほしかった…という願望もありましたが、プロ野球愛に満ちた書きぶりは嫌いじゃない(むしろ大好物)。「野球ファンあるある」的なところもいい。その分、プロ野球に興味のない方には、ちょっと辛いかも。
どの短編も、ミステリとしての一定の質は備えているのですが、ネタとしてはどうしても小粒。その中でも、一発ネタだけれども、短編としての使い方が巧みな「カープレッドよりも真っ赤な嘘」がベストかな。この短編が、有名ミステリ作家に褒められたりと好評だったことを受けて、年イチペースで続編短編を書き続け、この短編集に辿り着いた模様。ちなみに「有名ミステリ作家」がどなたなのか、ちょっと気になりますねぇ。 |
No.955 | 6点 | ビブリア古書堂の事件手帖Ⅱ扉子と空白の時- 三上延 | 2021/07/04 15:55 |
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セカンドシリーズではありますが、栞子さんと大輔君の出番が多めです。ファーストステージと雰囲気が被りがちな一方で、絶妙な時間軸の設定と娘の扉子さんの存在で奥行きは増しているような気がしました。プロローグやエピローグを含めた構成の巧みさもあったかな。今回のテーマは「横溝正史」で、この点も興味深かったですね。 |
No.954 | 7点 | 二重螺旋の誘拐- 喜多喜久 | 2021/06/22 22:53 |
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なかなかの良作だと思います。
真相の一部(といっても、ほんの一部)は容易に想像がつくのですが、違和感が常につきまといます。とある書きぶりから「きっと、あの手法を使っているのだろう」と想定はしたものの、「いや、それでは辻褄が・・・違うのか?」と思わせられてしまい、あの事実には気づけなかった。伏線は十分にあったのですがねぇ。違和感の正体を、もっと慎重に吟味しとけば良かったなぁ。ミスリードにもやられましたねぇ。外角へのボール1つ分の出し入れで勝負され、見逃し三振に仕留められた気分(意味不明?)。でも、負けて悔しがれるって幸せですよね(これも意味不明?)。 ちなみに、甘めのラストについては、何か都合よすぎないか、本当に大丈夫なのかと思わずにはいられませんでした。これって、私だけじゃないはず。 |
No.953 | 6点 | 化学探偵Mrキュリー6- 喜多喜久 | 2021/06/20 20:57 |
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シリーズ初の長編作品。
アメリカから四宮大学に留学してきたエリーを中心に物語は進みます。彼女は16歳。飛び級で大学に入学した科学の天才です。3年前に母国で偶然出会った四宮大学生を追い掛けて留学してきたのですが・・・。 今回の沖野准教授は、人間臭さが出ていて、何かカッコいい。温かい前向きな終わり方も良かったですね。 |
No.952 | 7点 | Dの殺人事件、まことに恐ろしきは- 歌野晶午 | 2021/06/14 21:33 |
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短編集。各短編とも、乱歩作品の現代版アレンジとして練られているし、高レベルにあると思います。作者らしさも随所に感じることができます。
ベストは表題作で、まさに最新鋭の?本格短編。締め方も作者らしい。「スマホと旅する男」の雰囲気も、乱歩作品のオマージュとして良質。「陰獣幻戯」の終盤でのたたみかけ具合も個人的には好きです。 |
No.951 | 6点 | 赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。- 青柳碧人 | 2021/06/07 23:21 |
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昔話ミステリ第2弾。
前作のテーマが「日本昔話」だったのに対し、今回は「西洋童話」で、「シンデレラ」「ヘンゼルとグレーテル」「眠れる森の美女」「マッチ売りの少女」 が元ネタ。 前作との一番の違いは、探偵役を固定したことでしょうか(タイトルどおり「赤ずきん」が探偵役)。連作短編としてのメリットは当然ありましょうが、一方で、各短編の変化を付けにくい(思い切った設定変更がしにくい)デメリットも否定できない。まぁ、本作は連作短編として綺麗に締めた方が印象に残っていいのかも。各短編は、パロディのパターンが似通っている印象もありましたが、ファンタジックな側面を巧く活用したりして、結構楽しかったですよ。 |
No.950 | 6点 | 七丁目まで空が象色- 似鳥鶏 | 2021/06/05 10:26 |
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楓ヶ丘動物園シリーズ第5弾。研修のために訪れた山西動物園から象が脱走しちゃいます。象を逃がした犯人はだれか、その目的は何か、象は自らの意思でどこに向かおうとしているのか・・・等々の謎が、軽快な文書による個性的なメンバーたちの活躍も含めて楽しめます。気軽に読めるのもいい。 |