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りゅうさん
平均点: 6.53点 書評数: 163件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.43 8点 仮面山荘殺人事件- 東野圭吾 2010/07/04 22:42
 予備知識なしで読んだので、非常に楽しめた。第1幕の途中で、交通事故死の真相の一部は予測できた(単なる当てずっぽうで、別に自慢することではないが)。終盤に下条玲子が探偵役となって、推理を開陳する場面がある。論理的な推理でつじつまは合っているのだが、犯人を特定する決定的な証拠の「SOSの文字の位置」が明確に示されておらず、平凡な真相だなと思っていると、あにはからんや、最後に驚愕の真相が待ち構えていた。それにしても、「仮面山荘殺人事件」と言う表題にこんな意味があったとは。

No.42 6点 スウェーデン館の謎- 有栖川有栖 2010/06/29 20:03
(若干のネタバレあり)
 シンプルな設定で、読みやすい作品。ページ数を水増ししているとは思わないが、ミステリの構成要素だけをみると短編向きの内容(作者もあとがきで長めの短編になるはずだったと書いている)。足跡トリックの方法はわかったが、足跡の深さと体重の関係までには思いが及ばなかった。犯人が相当な危険を冒している点がやや不自然。煙突が折れていた理由や枕カバーが持ち去られていた理由は拍子抜けであった。

No.41 7点 有限と微小のパン- 森博嗣 2010/06/25 19:29
 かなりの長編だが、長さはさほど苦にならなかった。S&Mや真賀田四季のキャラクターには全く関心を持てないが、作中に出てくる理系的な思想・思考・表現に興味をひかれた。あまりにも突拍子のない謎が提示されるので、いい加減な種明かしをするのではないかとの不安がよぎった。確かに現実にはありえない真相で、反則気味のトリックだ。しかしながら、バーチャルリアリティーの体験場面を挿入するなど、作品そのものが現実と虚構の境界を曖昧にしていることもあって、突拍子のない謎の解決策として、個人的には納得できるものであった。

No.40 5点 ギリシャ棺の秘密- エラリイ・クイーン 2010/06/19 16:17
 国名シリーズでも評価の高い作品だが、作者との相性が悪いのか、イマイチであった。読者挑戦ものだが、犯人を特定する根拠が乏しいと思う。作者お得意のロジカルに犯人を特定していく場面があるのだが、その理由に納得できなかった。犯人は捜査を混乱させるために偽りの手掛かりをいくつもばらまいている。エラリイが犯人を特定した理由についても、犯人が捜査を混乱させるためにわざとそうしたという見方もできるのではないだろうか(私は全く別の人物を犯人と考えていた)。

No.39 8点 11枚のとらんぷ- 泡坂妻夫 2010/06/13 21:25
 構成のアイデアがすばらしいと思う。作中作になっていて、11の短編推理と長編推理の両方を楽しむことが出来るが、短編推理の方がパズル的な内容で面白かった。手品ショーでのドタバタぶりは、筒井康隆の小説を読んでいるようで楽しい。アリバイトリックは見抜くことは出来たが、真相のすべてを見抜くことは無理だと思う。登場人物の一人が、犯行現場のガス栓が開いてあった理由を推理し、犯人を特定する場面がある。いくら何でもこの理由はないだろうと思った(結局○○だったが)。最後に犯人が真相を告白するが、咄嗟にこれだけのことを考えて実行できるかなと疑問に思った。

No.38 8点 大誘拐- 天藤真 2010/06/07 22:22
 細部まで良く練られていて、無駄がなく、丁寧なつくりの作品。おばあちゃんの度胸と頭脳にはおそれいった。最終章で明らかとなる事実についてはほぼ推測できていたのだが、パイロットの証言で棄却してしまった(それは○○だったのだが)。ストーリー重視の作品で、ミステリ色はちょっと弱いかな。

No.37 6点 斜め屋敷の犯罪- 島田荘司 2010/05/31 19:45
 斜め屋敷の見取り図など、設定が緻密であり、「占星術殺人事件」のような無駄な記述の天こ盛りではないのが好印象。メイントリックは確かに面白いアイデアだが、成功の確率に甚だ疑問を感じる。個人的には、密室の機械トリックものはあまり好きではない。伏線も種明かしを読むとぱっとしない。トリックよりも動機の方に意外性を感じた。

No.36 6点 さむけ- ロス・マクドナルド 2010/05/25 19:40
 ハードボイルド作家の作品だが、本格ミステリよりの作品とのことなので読んでみた。人間関係が非常に複雑。表の関係だけではなく、裏でつながっていたりしてややこしい。この人とこの人はどういう関係だったかなと悩むことしきり。登場人物の多くが隠し事をしているため、真相がなかなか見えてこない。このような複雑な設定を考える作者に感心すると言うべきか、あきれると言うべきか。ストーリーの進行は地味で、面白い結末を迎えることができるのか危惧したが、ラストは評判どおりに意外なものだった。でも、やっぱり本格ミステリ作品ではありませんね。

No.35 7点 黒い白鳥- 鮎川哲也 2010/05/23 07:24
 2つのアリバイトリック自体はそれほどでもないが、アリバイを補完するために使われているトリックは秀逸。逆転の発想とも言うべきもので、ちょっと思いつかないものだ(ここまでやるかとも思うが)。
 不満は読者挑戦ものになっていないこと。時刻表などの謎解きに必要な情報が、種明かしの段階になってようやく明らかにされている。伏線も散りばめられているが同様で、その解釈に必要な情報が種明かしまで伏せられている。声優が気付いたことなどは、声優が生きている間にさりげなく語らせたほうが良かったのではないだろうか。

No.34 5点 ハサミ男- 殊能将之 2010/05/18 22:00
(ネタバレあり。注意!)

 ハサミ男の模倣犯の正体、謎の医師の正体はほぼ推測どおりであったが、真のハサミ男の正体までは推測できなかった。真のハサミ男の正体が明かされた時、いったい誰のことなのか直ぐにはわからず、戸惑った。この人物については、表の顔がほとんど記述されていないので見過ごしており、ハサミ男の正体として持ち出されても驚くことができなかった(表の顔に関する記述は2行しかないと思う)。また、真のハサミ男と模倣犯とがほぼ同時刻に同じ女性を狙う確率は、作品中にも書かれているとおり、限りなくゼロに近く、偶然重なったという設定はいかがなものかと思う。

No.33 4点 月光ゲーム- 有栖川有栖 2010/05/15 09:54
 マッチの燃えかすの本数、カメラのフィルム盗難、ダイイングメッセージ、犯行終結宣言など様々な謎が盛り込まれているのだが、解決編を読むとあまりぱっとしないものばかり。こんな貧弱な根拠で犯人を特定するのはいかがなものか。作者のデビュー作という意義しか見出せなかった。

No.32 10点 検察側の証人- アガサ・クリスティー 2010/05/08 21:12
 これはすごい!
 ラストの衝撃度では、今まで読んだ作品中で最高だ。
 読みやすいし、短時間で読むことが出来るので、すべての人にお薦めしたい。

No.31 5点 パノラマ島奇談- 江戸川乱歩 2010/05/08 15:16
 ミステリというよりも幻想小説といった趣きの作品。倒叙物である。人見が菰田源三郎になりすます箇所は真に迫った描写で素晴らしい。人見が夫人を連れてパノラマ島を案内する場面が見せ場なのだろうが、やや退屈に感じた。オチは平凡。最後に明智小五郎をもじった「北見小五郎」なる探偵役が登場する。

No.30 7点 陰獣- 江戸川乱歩 2010/05/08 15:15
 登場人物が少ないこともあって、真相に近いことは推定できたが、真相と同じことまでは推定できなかった。
 本作品のトリックについて、横溝正史が「真説金田一耕助」の中で「世界最大のトリックだといまでも信じている」と書いている。古典的なトリックを発展させたものだが、世界最大というのは横溝正史のリップサービスではないかと思う。

(ここから完全ネタバレ。注意!)
 設定に若干無理があると思う。
 大江春泥は一切目撃されていない設定の方が良かったと思う。わざわざ、浮浪人を雇うようなことをするだろうか。この目撃情報が真相を推理するうえでの障害となっている。
 死体が川で流される保証がない。流されなければ犯人が真っ先に疑われる。

No.29 9点 曲った蝶番- ジョン・ディクスン・カー 2010/05/02 20:03
 傑作。
 どちらのジョン卿が本物なのか、自殺か他殺か、といった謎が二転三転し、興味をかきたてられた。2人のジョンの口頭対決や検視審問でのデイン女史の弁論などの見せ場もある。しかし、何といってもメインになるのは、被害者の周囲に誰もいなかったのに殺されたという不可能犯罪の解明だ。若干ネタバレになるかもしれないが、この作品では2つの種明かしが行われている。1つ目はアクロバチックで確実性に疑問はあるが、十分納得できるもの。2つ目は奇想天外なトリックで、これには意表を突かれた。どちらの種明かしについても巧妙に伏線が貼られている。
 不満に思ったのは、1年前に起きた変死事件の背景がわかりにくかったこと。早い段階で背景の説明がほしいと思った(キリスト教の素養がある人は説明が不要なのかもしれない)。

No.28 5点 頼子のために- 法月綸太郎 2010/04/29 16:37
 これは本格ミステリーではなく、サスペンス小説だと思う。
 読者に謎解きを求めているのではなく、ストーリーの進行に伴って次々と事実が明らかになり、最終的に意外な真相が明かされるといったタイプの小説だ。読んでいる際に真相と同じようなことを可能性として考えたが、必然性がないので決定付けることが出来ないのである。他の真相であっても十分納得できてしまう。
 法月が西村の手記を読んで、2つの疑問点を示し、推理を語る場面がある。1つ目は確かに手記を目を皿のようにして読めば気付くものであるが、もう1つの方は言われてみればそうかなと思う程度のものである。これらの疑問点も、西村が日を置いて手記を書いたために間違ったという解釈でも十分通用するのではないだろうか。
 登場人物間の愛憎が丁寧に描写されているので、ミステリー作品に登場人物への感情移入が必要と考えている人にはぴったりの作品だと思う(私にはそんな趣味はないが)。
 最後に影の犯人とも言うべき人物が示され、ホラー仕立てで終わっている。読み物としては面白いと思うが、私の志向するものとは違っていた。

No.27 7点 クラインの壷- 岡嶋二人 2010/04/27 18:57
 途中で大まかなカラクリには気付いたが、最後にさらにどんでん返しがあり、ラストにひねりもあって、読み物としては抜群に面白い。しかしながら、この作品は現在の科学では実現されていない技術を前提にした話なので、ミステリーというよりもSFだと思う。

No.26 7点 りら荘事件- 鮎川哲也 2010/04/24 10:53
 期待が大きかったせいか、期待ほどでもなかったと言うのが正直な感想。不満の原因は、犯人が使っているトリックがスマートではないと感じることだ(実際、トリックを使ったがために、さらに犯行を重ねるような結果になっている)。
 多くのトリックが使われているが、中には読者が特殊な知識を持っていなければ看破できないものがあり、アンフェアな感じがする。殺人の動機も理解しがたいものが多く、最後の殺人が謎をより一層複雑にしている。読者が完全正解にたどりつくのはほとんど不可能だと思う。
 細かな伏線が巧みに貼られていて、良く出来た作品だとは思うが。 

No.25 5点 シタフォードの秘密- アガサ・クリスティー 2010/04/20 19:07
 雪に埋もれた山荘で霊媒占いが行われ、殺人のお告げがあった。お告げどおりに、山荘から2時間離れた場所でほぼ同時刻に人が殺された...。
 まるで、ディクスン・カーのような書き出しだが、クリスティーはカーと違って、不可能犯罪であることを強調しなかった。
 本作品については、江戸川乱歩だけではなく、坂口安吾も「推理小説論」の中で「意表をつくトリックによって、軽妙、抜群の発明品であり、推理小説のトリックに新天地をひらいたもの」として絶賛している。発表当時は斬新なトリックだったのであろうが、今となっては陳腐としか言いようがないのは残念。クリスティーの作品らしく、犯行の動機には工夫がある。

No.24 7点 しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術- 泡坂妻夫 2010/04/17 19:42
 仕掛けがあることはわかっていたが、残念ながら見抜けなかった。不自然さを感じさせることなく、この仕掛けを実現した作者の手腕には敬意を表する。
 ミステリーとしての出来はあまり良くない。新興宗教、イタコ、断食修行などを取り上げ、凝った設定だが、真相はやや荒唐無稽ですっきりしていない印象。断食修行の際に使われているトリックは奇抜で面白い。

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りゅうさん
ひとこと
 横溝正史の作品を集中して読んだ時期はありましたが、これまではミステリを文学の1ジャンルにすぎないと考え、特にミステリにこだわった読書をしてきたわけではありませんでした。このサイトの書評を見て、ミステリ...
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あえて挙げると、ディクスン・カーと横溝正史
採点傾向
平均点: 6.53点   採点数: 163件
採点の多い作家(TOP10)
横溝正史(22)
アガサ・クリスティー(19)
鮎川哲也(10)
エラリイ・クイーン(9)
有栖川有栖(7)
ジョン・ディクスン・カー(7)
森博嗣(5)
泡坂妻夫(5)
麻耶雄嵩(4)
西澤保彦(3)