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E-BANKERさん
平均点: 6.00点 書評数: 1845件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.125 7点 Yの悲劇- エラリイ・クイーン 2009/11/01 21:39
世界的、歴史的名作というべきでしょうか。
ドルリー・レーンというのは名探偵として非常に魅力的な人物ですね。真犯人や事件の背景を知ってしまって苦悩する本作は、彼の魅力が強く出ている作品だと思います。
ものすごい作品だという評判を聞いたうえ読んだため、世間的な評価よりは厳しめの点数かもしれません。
有名な「マンドリン」という凶器の選択やヴァニラの匂いなど、読者が真相を解くヒントは多いですし、とにかくドラマティックな作品という印象です。
ただ、やっぱり私も”Y”よりは”X”の方がミステリー的には優れているとは思いますが・・・

No.124 4点 名探偵水乃サトルの大冒険- 二階堂黎人 2009/11/01 21:23
水乃サトルシリーズの短編集。
4編とも軽い作品でサラッと読めすぎる内容。
「ヘルマフロディトス」・・・児童向けの推理クイズみたいな作品。「なんじゃこりゃ」的です。
「『本陣殺人事件』の殺人」・・・元ネタの解決について異を唱えているところのみが読みどころ。
あとの2つも評価には値しないでしょう。
蘭子シリーズの合い間にやっつけで書いたんですかね?

No.123 6点 時の密室- 芦辺拓 2009/11/01 21:12
森江春策シリーズの大作。
非常に長い作品ですが、作者の意気込みは買います。
明治、昭和そして平成の現在に起こる3つの事件の謎が提示され、特に昭和と平成の2つの事件は大きな関連性があります。
途中の万国博覧会(明治時代の)についての挿話は確かに暗号的な面白さはあるんですが、ちょっと趣向が強すぎるような気がします。
現在の事件の真犯人は「えっ!」というような人物ではあるんですが、動機その他なにか納得できないですね。
全体として、プロットは面白いんだけど、なにか消化不良というか、モヤモヤ感の残る一作っていう感想になりました。

No.122 6点 死者の木霊- 内田康夫 2009/10/27 17:25
”信濃のコロンボ”こと、竹村警部(本作では部長刑事ですが)シリーズの第1作。
それ以上に意義深いのは、現代の大流行作家である内田康夫を世に送り出した作品ということでしょう。
作品の内容としては、解決した殺人事件に疑問を感じた竹村が、様々な障害を乗り越えて、真相に辿りつく・・・というもの。
何となく、コロンボというよりは、フレンチ警部を思い起こさせます。(多少のアリバイ崩しもありますし)
氏の作品というと、テレビの2時間物を思い浮かべて敬遠する方も多いと思いますが、”浅見光彦物”のワンパターン旅情ミステリーに比べて、本作は作者のエネルギーのようなものを感じさせる分良いと思います。
氏のもう一人のキャラクター、岡部警部補と竹村の出会いも本作の魅力の1つでしょうか。

No.121 6点 失踪者- 折原一 2009/10/27 16:59
「~者」シリーズ。
前作「冤罪者」よりは落ちます。また、作品の舞台が前作までの高円寺周辺から、氏の作品ではお馴染みの場所、埼玉県北部(久喜~白岡)に変わります。
しかし長いですねぇ。最終章の途中までは正直「どうなってるの?」と感じながら読まされます。(それが作者の狙いでしょうけど・・・)
要は、「昔の少年Aと現在の少年A」、「ユダとユダの息子」について読者が混同するように巧妙にミスリードされてるわけですよね。
今回、再読したらその辺の狙いがよく分かりました。

No.120 9点 悪霊の館- 二階堂黎人 2009/10/27 16:32
二階堂蘭子シリーズ。
二階堂氏の書評は本当に好き嫌いがはっきり分かれますね。作風からいってもしようがないかもしれませんが・・・
私にとっては、本作はかなり”嵌まった”作品でした。これほどまでに「古き良き探偵小説」を復活させた作品は他にないでしょう。
秘密のある不気味な館、悪意のある遺言に端を発した一家連続殺人事件、魔術めいた密室殺人、動き出す西洋甲冑・・・etc
(横溝+乱歩+カー、ってとこですか)
どんな結末が用意されているかドキドキしながら読み進めていきました。そして、劇的な真犯人指摘の場面・・・
どんな悪評も批判も聞こえなくなるような瞬間ですねぇ。

No.119 6点 川の深さは- 福井晴敏 2009/10/24 19:59
作者の長編処女作。
主人公の保と元警官の桃山のコンビは、「亡国のイージス」の如月行と仙石伍長のコンビをもろに彷彿させます。
「亡国・・・」や「終戦のローレライ」を先に読んでから本作を読んだので、どうしてもこの2作と雰囲気がかぶってしまうし、前2作よりは落ちるなぁ・・・という印象になってしまいました。
それでこの点数ですが、決して面白くないということではありません。

No.118 8点 奪取- 真保裕一 2009/10/24 19:50
作者のエンタメ小説家としての力量を感じさせる作品です。
とにかく、「偽札」の作り方に関する薀蓄や方法がこれでもかというほど出てきますし、主人公の偽札に対する「熱さ」が読み手にもビンビン伝わってきました。
対帝都銀行についての部分はちょっとリアリティに欠けてるし、ヤクザや銀行員に対する描き方があまりにも悪人悪人しすぎて捻りを感じないのがややマイナスでしょうか。
でも高評価なのがよく分かる作品ですし、「真保ワールド」を満喫するには最適かもしれません。”名前”にはそういう意味があったんですね。(ラストシーン)

No.117 5点 株価暴落- 池井戸潤 2009/10/24 19:35
池井戸氏らしい経済(銀行)ミステリーですが、ちょっと”やっつけ感”の残る一作。
銀行という組織の中で爪弾きにされた主人公が、自分の汚名を削ぐために事件の渦中に飛び込んでいく・・・という氏の王道パターンが本作でも出てきますが、他の良作とは違ってご都合主義的な展開が多すぎる気がしますね。
ちなみに本作には野猿(やえん)刑事という登場人物が出てきますが、とんねるずの影響?

No.116 8点 灰夜 新宿鮫VII- 大沢在昌 2009/10/20 23:10
「新宿鮫シリーズ」。
シリーズ中では異色の作品で、いつもの新宿ではなく、旅先である鹿児島が舞台になります。(だから「灰」夜です)
いつもなら、桃井警部や藪、晶といったおなじみの登場人物が絡んできますが、今回はまさに一人です。地元の警察官までも敵に回して、それでも戦う鮫島はやはり”かっこいい”としか言いようがありません。
ラスト前の戦闘シーンも迫力満点。本シリーズ独特の緊張感漂う鮫島の心情が読み手にも十分伝わります。
たまには、新宿を飛び出してもいいのでは?と思える作品。

No.115 7点 グリーン家殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン 2009/10/20 22:53
ミステリー史上の名作の1つとして、この評価です。
「一家(一族)連続殺人事件」というスタイルを確立し、日本の作家に影響を与えた功績は大でしょう。
いわゆる「意外な真犯人」という範疇に入るのだと思いますが(当時)、まぁ今読むと”普通の作品”の域は出ないかもしれません。
ただ、「古き良き探偵小説」を十二分に感じさせてくれる一作
であるのは間違いないでしょう。

No.114 5点 法隆寺の殺人- 篠田秀幸 2009/10/20 22:43
弥生原探偵シリーズ。
本作は、本格ミステリーと歴史ミステリーの融合を狙った作品ですが、成功しているとは言い難い出来ですねぇ。
本格ミステリーとしては、「悪霊館」や「幻影城」と比べて明らかにレベルダウンしてます。
また、日本史におけるミステリアスな人物=「聖徳太子」の謎解きを行っていますが、これは某井沢元彦氏の「逆説の日本史」の受け売りではないでしょうか。説がほぼ同じ内容です。
氏は1作ごとに新たな試みを行っており、そのチャレンジブルな精神は買いますが、いかんせん本作では内容が・・・という感想。

No.113 5点 飛鳥のガラスの靴- 島田荘司 2009/10/18 22:25
吉敷シリーズの1作。
管轄外の未解決事件に吉敷が興味を持ち、またしても主任とのイザコザの末真相解明に乗り出す・・・という展開。
本作では、ある民話に関してある人物が残した手記が問題となるのですが、「飛鳥」についての謎はちょっと読者には解明不可能でしょうね。(そんなのありかよ的です)
本作では氏の作品中によく出てくる、「日本という国の風習、”日本的な考え方、日本人の思考”について、やや批判的な立ち位置からの持論」という部分が目立ち、純粋なミステリーとしてはどうかなぁという印象が残ります。(島田氏らしいと言えばらしいですけど)
「羽衣伝説・・・」後の吉敷と通子についても触れていますので、そっちの方では後の展開が気になりました。(「涙流れるままに」を読んでスッキリしましたが・・・)


No.112 6点 白銀を踏み荒らせ- 雫井脩介 2009/10/18 21:52
分野でいえば「スポーツミステリー」とでも分類する珍しいミステリー。
今までにあまり読んだことのない種類のミステリーで、スキー関係の薀蓄と一緒になかなか楽しめた作品ではあります。
前作(「栄光一途」)を読んでないので、主人公コンビのキャラはあまり馴染めませんでしたが、展開とともに謎を深めていく展開は、やはり雫井氏らしいところでしょう。
ただ、他作品との比較ではまぁこの点数程度ですかねぇ。

No.111 3点 片眼の猿- 道尾秀介 2009/10/18 21:40
「ミスリードがうまい」というふうに評価されていますが、本作でいうところの”ミスリード”とは、どこの部分を言っているのでしょうか?
”秋絵”のこと? ローズフラットの住人のこと? まさか真犯人のこと?
ストーリー的には安手の探偵物連続ドラマの1作という印象でしょうか。あらゆる意味で軽すぎるミステリー。
テレビや音楽と一緒に”ながら読書”するなら適した作品でしょう。

No.110 9点 天国への階段- 白川道 2009/10/17 16:42
素晴らしい作品の一言。文庫版3分冊で1,400ページ超という長さですが、次の展開が気になって相当なスピードで読了してしまいました。
物語の背景や展開としては、割とベタな作品ではないかと思うのですが、登場人物1人1人に対してここまで丁寧に書かれると、ものの見事に感情移入させられます。
主人公である柏木は復讐を果たすために政財界で成り上がっていくのですが、その柏木もまた復讐の対象になっていく・・・
誰もが壊された愛(親子愛も含めてですが)のために復讐を果たそうとする展開がなんとも哀しみをそそります。
ミステリーとしての要素は薄いですが、無味乾燥なミステリーに飽きたら是非再読したい作品。

No.109 6点 英仏海峡の謎- F・W・クロフツ 2009/10/17 16:18
個人的に、翻訳物の名探偵ではポワロよりもF・ヴァンスよりもフレンチ警部が好きなのですが(「名」探偵ではありませんけど・・・)、そのきっかけとなった作品のひとつ。
ストーリー的には特に目立つ部分はなく、作者得意のアリバイ崩しをフレンチがコツコツと積み上げ、ふとしたきっかけで真相に行き着く、という展開。
ただ、それまでは翻訳物といえば名探偵が最終章で容疑者の中なら鮮やかに真犯人を指摘する・・・という物ばかりを読んでいたので、ある意味新鮮でした。

No.108 3点 アルキメデスは手を汚さない- 小峰元 2009/10/17 15:57
第19回の乱歩賞受賞作。
今一つ掴みどころのない作品ですね。確かに殺人事件は起こるし、密室は出てくるし(簡単に謎は解けますが)、アリバイ崩しも出てくる(偶然に謎は解けますが)のですけど・・・
本作はそんなことよりも、当時の高校生のニヒリズムやセックス観というものの方が印象に残ります。
最終章での田中君(登場人物です)の実利主義に徹した言葉もなんか虚無的で、発刊当時はそんな時代背景だったのかなぁと考えさせられます。

No.107 7点 オリエント急行の殺人- アガサ・クリスティー 2009/10/14 22:20
意外すぎる犯人物の最右翼でしょう。(「アクロイド・・・」も当然その一つですけど)
まずは作品の設定そのものがいいですね。雪の中で立ち往生するオリエント急行の中で起こる殺人事件・・・
被害者の体に残った多すぎる傷跡が問題になるわけですが、まさかそんな結末とは。
薄々そういうことかなぁと考えてはいましたが、実際そうですと言われると、「大技!」と唸らざるを得ません。
ただ、このネタは2度と使えないというのが本作の一番の特徴かもしれません。

No.106 5点 寝台特急(ブルートレイン)殺人事件- 西村京太郎 2009/10/14 22:13
光文社文庫の「西村京太郎アニバーサリーフェアー」として最近復刻版が発売されたため再読しました。
トラベルミステリーの隆盛(主にテレビの2時間ドラマでですが・・・)のきっかけとなった記念碑的作品。
再読してみて時代の流れを感じました。十津川警部は最近の作品に比べて若々しく(37歳という設定ですから)、JRがまだ国鉄と呼ばれていた時代です。
トラベルミステリーに付き物のアリバイトリックも単純なものですし、バックに政治家が・・・という氏お決まりのネタも入っていて、正直レベルは低いと言わざるを得ません。
ただ、やっぱり一つの歴史的作品ですし、鉄道好きとしては「はやぶさ」と「富士」が西鹿児島まで走っていた時代がなんともなつかしくてうらやましいです。

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