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[ 社会派 ]
君たちに明日はない
垣根涼介 出版月: 2005年04月 平均: 6.67点 書評数: 6件

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新潮社
2005年04月

新潮社
2007年10月

No.6 7点 メルカトル 2020/07/05 22:35
「私はもう用済みってことですか!?」リストラ請負会社に勤める村上真介の仕事はクビ切り面接官。どんなに恨まれ、なじられ、泣かれても、なぜかこの仕事にはやりがいを感じている。建材メーカーの課長代理、陽子の面接を担当した真介は、気の強い八つ年上の彼女に好意をおぼえるのだが…。恋に仕事に奮闘するすべての社会人に捧げる、勇気沸きたつ人間ドラマ。山本周五郎賞受賞作。
『BOOK』データベースより。

重すぎず軽すぎず、付かず離れず、暗すぎず明るすぎず、丁度良いバランスで描かれた佳作。
君たちに明日はないという割りには、どのリストラ要員の最後の姿も、決して暗い未来しかない訳ではないです。中には、最後の面接さえ描かれず終わった物語もあったりしますが、それは読者の想像におまかせとばかり、粋な作者の計らいを匂わせます。それにしても、事前の想像では主人公がもっと硬派な感じがしましたが、普段の顔はやや軽めです。しかし、いざリストラの面接官という任に着いたら、じんわりと相手の懐に入り込み、あの手この手で懐柔に掛かります。決して無理強いはせず、あくまで相手の意志で決断を促す手腕には、拍手を送りたくなると同時に、人間味人情味すら覚えます。その意味で、リストラ請負業者という特殊な職業に対する嫌悪感を読者から排除することに成功していると思います。敵ではないのだと、意識付けをし、アンチヒーローを否定するように仕向けているようです。

そして、何と言っても各キャラが生きています。そして動きます、行為だけではなく心までも。そこに読者は共感せざるを得なくなり、敵見方関係なく両者に感情移入できるシステムが見事に構築されていると思います。ただ、村上以外の面接官の情報が完全にシャットアウトされていて、その辺りもう少し描写があっても良かった気がします。これは流石にシリーズ化されるのも納得の出来でしょう。

No.5 8点 itokin 2015/11/28 11:03
とにかく面白かったです。まず、文章の表現の仕方が氏独特というか余分な述語、形容詞を省き確信を突いた短い分の連続でスピード感と共感を呼ぶ文章に引き込まれました。私自身も数回のリストラを冷や飯を食わされながらなんとか潜り抜けた経験からリストラ対象者の心情がうまく表現されているのに感服、感涙しました。

No.4 2点 江守森江 2010/07/20 17:41
NHKでドラマ化されたのを観たが(坂口憲二が俳優としてイマイチ好きではない為か)面白く感じなかったので放送二回目までで観なくなった。
それでも、原作はハジケテいて面白いとの噂から読んでみた。
本来なら深刻なリストラをエンターテインメントに昇華させた非常に面白い作品だった(エロ描写も大好きだが、さすがにNHKでは放送出来ない)
主人公の恋愛や成長の部分では青春小説でもある。
一般小説なら満点(8点)レベルの面白さだが、私的なミステリーの範疇外な作品なのでポリシー通り2点とする。
シリーズ次作&次次作も読んでみる気になった。

No.3 9点 akkta2007 2010/01/24 20:58
山本周五郎賞受賞の大変面白い作品であった。
一般企業からの依頼を受け、社員の退職斡旋にかかわり、様々な人々との関係を面白可笑しく描いていく・・・
依頼人は次々と変わっていくが、物語は続く・・・その当たりにも著者の鋭さを感じた。
いわゆる「リストラ」を主にした作品であるが、重たい雰囲気もなく、非常に楽しい作品であった。

No.2 6点 E-BANKER 2009/11/11 22:21
山本周五郎賞受賞作。
シリアスな作品の多い作者ですが、本作はまったく違う雰囲気の作品。
突然、会社からリストラ宣告される社員と商売として「リストラ業」を行う主人公。まさに悲喜こもごもの心情が読み手にも伝わります。
でもなぜか、読後はさわやかな後味が残るんですが・・・
まぁ、ほとんどミステリー色はないといっていい作品ですが、さすがに権威ある賞の受賞作だけはあるという内容でしょう。

No.1 8点 makomako 2008/11/16 10:03
これは面白い。リストラ請負会社などというものが成り立つかどうか不明であるが、とにかく普通に考えればいやな仕事には違いない。実際に大変な仕事が次々と依頼される。ところが冷たそうな主人公はリストラ相手と肉体関係になったりかなりハチャメチャ。エッチな描写も結構ある。しかしストーリーが展開するにつれ彼の人生がさらりと浮かび上がり、リストラ側の人物たちも次の仕事に命がけでがんばったりする勇気と浪花節の世界へと進む。いいぞがんばれと応援したくなる。


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