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E-BANKERさん
平均点: 6.01点 書評数: 1812件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.112 6点 白銀を踏み荒らせ- 雫井脩介 2009/10/18 21:52
分野でいえば「スポーツミステリー」とでも分類する珍しいミステリー。
今までにあまり読んだことのない種類のミステリーで、スキー関係の薀蓄と一緒になかなか楽しめた作品ではあります。
前作(「栄光一途」)を読んでないので、主人公コンビのキャラはあまり馴染めませんでしたが、展開とともに謎を深めていく展開は、やはり雫井氏らしいところでしょう。
ただ、他作品との比較ではまぁこの点数程度ですかねぇ。

No.111 3点 片眼の猿- 道尾秀介 2009/10/18 21:40
「ミスリードがうまい」というふうに評価されていますが、本作でいうところの”ミスリード”とは、どこの部分を言っているのでしょうか?
”秋絵”のこと? ローズフラットの住人のこと? まさか真犯人のこと?
ストーリー的には安手の探偵物連続ドラマの1作という印象でしょうか。あらゆる意味で軽すぎるミステリー。
テレビや音楽と一緒に”ながら読書”するなら適した作品でしょう。

No.110 9点 天国への階段- 白川道 2009/10/17 16:42
素晴らしい作品の一言。文庫版3分冊で1,400ページ超という長さですが、次の展開が気になって相当なスピードで読了してしまいました。
物語の背景や展開としては、割とベタな作品ではないかと思うのですが、登場人物1人1人に対してここまで丁寧に書かれると、ものの見事に感情移入させられます。
主人公である柏木は復讐を果たすために政財界で成り上がっていくのですが、その柏木もまた復讐の対象になっていく・・・
誰もが壊された愛(親子愛も含めてですが)のために復讐を果たそうとする展開がなんとも哀しみをそそります。
ミステリーとしての要素は薄いですが、無味乾燥なミステリーに飽きたら是非再読したい作品。

No.109 6点 英仏海峡の謎- F・W・クロフツ 2009/10/17 16:18
個人的に、翻訳物の名探偵ではポワロよりもF・ヴァンスよりもフレンチ警部が好きなのですが(「名」探偵ではありませんけど・・・)、そのきっかけとなった作品のひとつ。
ストーリー的には特に目立つ部分はなく、作者得意のアリバイ崩しをフレンチがコツコツと積み上げ、ふとしたきっかけで真相に行き着く、という展開。
ただ、それまでは翻訳物といえば名探偵が最終章で容疑者の中なら鮮やかに真犯人を指摘する・・・という物ばかりを読んでいたので、ある意味新鮮でした。

No.108 3点 アルキメデスは手を汚さない- 小峰元 2009/10/17 15:57
第19回の乱歩賞受賞作。
今一つ掴みどころのない作品ですね。確かに殺人事件は起こるし、密室は出てくるし(簡単に謎は解けますが)、アリバイ崩しも出てくる(偶然に謎は解けますが)のですけど・・・
本作はそんなことよりも、当時の高校生のニヒリズムやセックス観というものの方が印象に残ります。
最終章での田中君(登場人物です)の実利主義に徹した言葉もなんか虚無的で、発刊当時はそんな時代背景だったのかなぁと考えさせられます。

No.107 7点 オリエント急行の殺人- アガサ・クリスティー 2009/10/14 22:20
意外すぎる犯人物の最右翼でしょう。(「アクロイド・・・」も当然その一つですけど)
まずは作品の設定そのものがいいですね。雪の中で立ち往生するオリエント急行の中で起こる殺人事件・・・
被害者の体に残った多すぎる傷跡が問題になるわけですが、まさかそんな結末とは。
薄々そういうことかなぁと考えてはいましたが、実際そうですと言われると、「大技!」と唸らざるを得ません。
ただ、このネタは2度と使えないというのが本作の一番の特徴かもしれません。

No.106 5点 寝台特急(ブルートレイン)殺人事件- 西村京太郎 2009/10/14 22:13
光文社文庫の「西村京太郎アニバーサリーフェアー」として最近復刻版が発売されたため再読しました。
トラベルミステリーの隆盛(主にテレビの2時間ドラマでですが・・・)のきっかけとなった記念碑的作品。
再読してみて時代の流れを感じました。十津川警部は最近の作品に比べて若々しく(37歳という設定ですから)、JRがまだ国鉄と呼ばれていた時代です。
トラベルミステリーに付き物のアリバイトリックも単純なものですし、バックに政治家が・・・という氏お決まりのネタも入っていて、正直レベルは低いと言わざるを得ません。
ただ、やっぱり一つの歴史的作品ですし、鉄道好きとしては「はやぶさ」と「富士」が西鹿児島まで走っていた時代がなんともなつかしくてうらやましいです。

No.105 5点 絶叫城殺人事件- 有栖川有栖 2009/10/14 21:59
火村シリーズの短編集。
全体としては、短編集らしくこじんまりまとまった作品が多いように思います。
表題作はラストがあまり面白くありません。
「紅雨荘・・・」はラストの捻りが効いており、一番面白い出来。
「月宮殿・・・」はだから何?という感じ。
「壷中庵・・・」は単純な密室物ですが、なかなかの出来。
その他は「うーん」という感想でした。

No.104 6点 匣の中の失楽- 竹本健治 2009/10/12 15:39
これを読む前は「アンチ・ミステリー」ってなに?という素朴な疑問から読み始めたわけですが・・・
まぁ、現実の世界と虚構の世界が入り混じっており、そこに「作中作」が加わって、訳が分からなくなってどうしたらいいの! という多くの読者と同じ感想にならざるをえませんでした。
勇気を持って再読してみれば、ある程度作者の狙いというか、面白さが少しずつ分かったような気はしたのですけど。
何はともあれ、後の作家や作品に多大な影響を及ぼしたのは間違いないでしょうし、「虚無への供物」よりは読みやすいでしょう。

No.103 7点 ABC殺人事件- アガサ・クリスティー 2009/10/12 15:27
私を最初に(レベル1の)ミステリー中毒にした記念碑的作品です。(今はレベル5くらいの中毒ですが・・・)
とにかく謎の提示が魅力的ですし、それに尽きるといっていいでしょう。「なぜ、犯人は被害者と殺害場所をABC順にしなければならないのか?」
それだけなんですが、最後、解決の場面でポワロが事件関係者を集めて真犯人を指摘したときに、感動で体が震えたのを今でもはっきり覚えています。

No.102 8点 沈黙の教室- 折原一 2009/10/12 15:09
良くも悪くも折原氏らしい作品ですし、ある意味「折原ミステリー」の到達点といっていい作品でしょう。(日本推理作家協会賞受賞作ですし)
氏の作品には、手記とか日記とかいった小道具が作品のスパイスになっていますが、本作の「恐怖新聞」は一連の小道具類では最も効果的になっていると思います。そして、黒板に書かれた「粛清!」の文字・・・
読者を数々の?に巻き込みながら、クライマックスへの盛り上げ方も良い出来ですし、オチも氏にしてはきれいに収まっているんじゃないでしょうか。
ただ、例によって非常に長いので途中萎えそうになりますが・・・

No.101 7点 13階段 - 高野和明 2009/10/08 23:19
乱歩賞受賞作らしい作風ですが、処女作としてはかなりレベルの高い作品だと思います。
主要登場人物が少ないだけに、終盤のどんでん返しはある程度見えていましたが、決してつまらなくはないです。
死刑制度の是非ついても作中で語られていますけれど、特に中盤での南郷の「死刑制度なんて、あってもなくても同じなんだよ」という言葉が印象に残っています。確かに理性と本能の問題は難しいですね。

No.100 10点 人狼城の恐怖- 二階堂黎人 2009/10/08 23:09
100冊目の書評は是非この作品でと思ってました。
とにかくいろいろな意味で「すごい」作品であるのは間違いないと思ってます。
第一部の「ドイツ編」が刊行されて読破して以降、「フランス編」「探偵編」「解決編」ととにかく刊行されるのをいつかいつかと待ちわびてました。
2つの城で「これでもか」と起こる怪奇&ミステリアスな事件の数々、招待客に迫り来る魔の手・・・読みながら何とも言えない気分にさせられましたね。
確かに、矛盾もかなりあるでしょうし、特に人狼城に関するあの秘密は、さすがに違和感に気付くだろう!とは思いましたが、とにかく作品の迫力とボリュームだけでも10点の価値はあります。
まぁ、ある意味こんな馬鹿げた作品を出す作家なんてもう出てこないでしょうね。

No.99 5点 北の狩人- 大沢在昌 2009/10/08 22:48
本作の舞台も「新宿鮫シリーズ」と同様、歌舞伎町なのですが、夜の新宿が似合う鮫島警部と違い、秋田から出てきた田舎の青年が主人公です。
やっぱり「新宿鮫シリーズ」には敵うべくもない、というのが感想ですね。
主人公が真相を追う事件の真犯人も確かに意外性はあるんですが、「さもありなん」という設定という感じですし・・・作品自体の盛り上がりとか緊張感に欠けてます。

No.98 5点 水晶のピラミッド- 島田荘司 2009/10/04 22:10
御手洗潔シリーズがやたら長くなったシリーズ?の2作目。(1作目は「暗闇坂・・・」)
複数の方の書評にもありますが、エジプト云々とタイタニック号云々というサイドストーリーは本当に必要なのか誰か教えてほしいです。読み手にとっては、本題に入る前に挫折しそうになります。
まぁ、これも島田氏の器・スケールの大きさ故なのでしょう。御手洗もレオナとの絡みではやたら格好良く書かれているので、ちょっと好感度下がります。

No.97 5点 聖アウスラ修道院の惨劇- 二階堂黎人 2009/10/04 21:59
二階堂蘭子シリーズの長編3作目。
初期の蘭子シリーズとしては出来の悪い部類でしょうねぇ。首切り殺人やキリスト教の暗部など、後の作品にも度々出てくるようなギミックも登場しますが、今回はいかんせんトリックがパッとしないです。
蘭子シリーズは、たびたび犯罪のバックボーンとして宗教絡みの話が出てきますが、なかなか呑み込めない部分がありますね。

No.96 7点 密室殺人ゲーム王手飛車取り- 歌野晶午 2009/10/04 21:40
異色の連作短編集で、氏のプロットと技巧のうまさが光る作品。
個別の殺人事件についてチャットのメンバーで推理合戦をするということだけかと思いきや、バックに大きな秘密が隠されていた・・・という展開。
個人的には、最初のミッシングリンクの話が○○絡みで一番面白かったですね。あと、「生首に聞いてみる?」はタイトルが面白い。
とにかく氏のアイデアに脱帽です。続編も楽しみ。

No.95 8点 人形はなぜ殺される- 高木彬光 2009/10/03 00:11
日本の本格推理小説における一つの金字塔なのは確かだと感じます。
まさに「様式美」ですね。神津恭介という稀代の名探偵やおどろおどろしささえ感じる犯人像、そして「読者への挑戦」の挿入・・・本格ファンが喜ぶ要素で一杯です。
多くの方の指摘どおり、本格物を読み漁っているファンであれば、真犯人に関しては途中で感付くと思いますが、そこでタイトルの謎が立ちふさがります。「人形はなぜ殺されるのかと」
まず、「読んでおくべき作品」という評価で間違いないでしょう。

No.94 5点 架空通貨- 池井戸潤 2009/10/02 23:47
乱歩賞受賞後の長編第2作目。
ある大企業に牛耳られている地方都市を舞台に、その街だけで流通している”通貨”をめぐって起こる犯罪・・・というのが粗筋です。
ちょっと中盤ダレ気味になるのと、大きな風呂敷を広げた割にはラストがややしょぼいというのが読後の感想ですかねぇ。
まぁ、まだ作家としての方向性が定まっていない時期だったんでしょうし、仕方ないかな。

No.93 7点 幻影城の殺人- 篠田秀幸 2009/10/02 23:30
氏の弥生原探偵シリーズでは一番出来のいい長編。
ホテルの一室で起こる「四重密室殺人事件!」が本作の白眉です。(犯人が現場に入れないし出られない)
一部過去の名作のトリックを借用していますが、なかなか綺麗な解決方法ですし、不可能状況の見せ方はうまかったですね。
ただ、角川映画(「人間の証明」とか「戦国自衛隊」とか…)
をモチーフとした架空の大型テーマパークを作品の舞台としているのが何か笑えます。(なぜか、薬師丸ひろ子も出てきますし・・・)

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