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E-BANKERさん
平均点: 6.02点 書評数: 1779件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.79 6点 半落ち- 横山秀夫 2009/09/21 22:28
世間的評価の高さに引かれて読破。
確かに「良い小説」だと思いました。空白の2日間にまつわる話も納得いくものだという感じ。(まぁ、驚きはないですが)
ただ、ミステリーとしての評点はこんなもんかなぁ・・・
ほかの作品も多分面白いだろうとは思うんですが、他の読みたい作品に優先して読もうとはなかなか思えないです。

No.78 6点 風果つる館の殺人- 加賀美雅之 2009/09/21 22:17
ベルトラン判事シリーズの第3作目。
ある資産家の女主人の死による骨肉の相続争いをベースに、殺人事件が不可能状況で次々に起こります。
作者によれば、本作は「犬神家の一族」へのオマージュ(骨肉の相続争いにまつわる連続殺人ですから・・・)ということですが、島田氏の「魔神の遊戯」ともスコットランドの巨人伝説で被っています。
大掛かりなトリックということではこれまでの2作と変わらないですが、”迫力”という点では劣りますかねぇ。そのトリックもちょっと分かりにくい。(特に最初のやつ)
ただ、雰囲気は相変わらず好きです。

No.77 7点 天井裏の散歩者 幸福荘殺人日記- 折原一 2009/09/19 21:36
連作短編集(?)
叙述トリック云々というより、単純に読み物として面白い作品。こういう作品は、あら探しをあれこれするよりも、単純に展開を楽しんでしまいます。
読んでいくうちに、どんどん不思議感は広がっていくんですが、ちょっと最後のオチはいただけなかったですね。「それかよ!」という感じ。
でも、初期作品は最近の作品にない明るさやマヌケさがあって好きです。

No.76 5点 魔神の遊戯- 島田荘司 2009/09/19 21:24
普通の作家だったらもっと高い評点でもいいと思いますが、島田氏の作品なのでこの点数です。
読んでいる間ずっと御手洗に違和感を感じてましたが、なるほどそういうラストが用意されてましたか・・・という感想です。
スコットランドの大男伝説については、某加賀美氏も作品の中で引用していましたが、加賀美氏の方がむしろ往年の島田氏を彷彿させるトリックだったような気がします。(あまり成功したとは言えませんが・・・)
やっぱり、近年の氏の作品は何か「キレ」が足りないですね。

No.75 7点 扉は閉ざされたまま- 石持浅海 2009/09/19 17:18
賛否両論いろいろある作品みたいですが、素直に作品世界に浸れば、かなり面白い作品じゃないかというのが感想。
よく言われている「動機の弱さ」は気になりませんね。本作の試みに「動機」は特別重きは置かなくてよいでしょう。
倒叙形式の場合、犯人の心理描写に関してで如何に読者を引き付けるか、という点が大事だと思いますが、そういう意味で伏見氏の心理描写(徐々に追い詰められていく)も十分楽しめました。

No.74 5点 焦茶色のパステル- 岡嶋二人 2009/09/19 17:00
競馬の世界で言う「生産牧場」の不祥事に殺人事件を絡めた作品。競馬+ミステリー好きの私にとっては興味のある作品でしたが・・・
殺人の方はなにかすっきりしない印象。最後にちょっとしたドンデン返しがあるんですが、とって付けたような真犯人みたいで、2時間ドラマのラストシーンみたいですねぇ。
その代わり、パステルにまつわる謎についてはなかなか面白く読ませていただきました。遺伝の件(くだり)も思わずニヤツ。

No.73 4点 千一夜の館の殺人- 芦辺拓 2009/09/15 22:36
実際、あまり氏の作品は読んでいないんですが、「うーん、何か印象に残らない」というのが正直な感想ですねぇ。特にラストが。
本作も謎の提示はいいと思うのですが、いかんせん途中から急にトーンダウンしたという感じです。森江春策もどうも人物像が想像しにくいんですよね・・・
他に評価の高い作品もあるので、決め付けず読んでみようとは思います。

No.72 7点 終戦のローレライ - 福井晴敏 2009/09/15 22:28
太平洋戦争を舞台とした一大スペクタクル小説。
まさに福井版「沈黙の艦隊」といった趣きで、読んでいる間、自分がまるで当時の潜水艦の中にいるかのような臨場感を味わえます。
「亡国の・・・」は上官と部下の信頼・友情をテーマにしていますが、本作はラブストーリー的要素も結構入っています。(映画では妻夫木と香椎由宇でしたね)
個人的には、「亡国」の方が好みなのでこの点数としましたが、時間のあるときに一気読みすることをお勧めします。

No.71 8点 亡国のイージス- 福井晴敏 2009/09/15 22:14
乱歩賞受賞後第1作目。圧倒的スケールで描く、エンターテイメント小説の秀作。
日本推理協会賞受賞作。
~自らの掟に従い、15歳で父親を手にかけた少年。1人息子を国家に撲殺され、それまでの人生を投げ打ち鬼となった男。祖国に絶望して謀反の牙を向く孤独な北朝鮮工作員。男たちの底深い情念が、最新のシステム護衛艦を暴走させ、1億2千万の民を擁する国家が成すすべなく立ち尽くす。圧倒的筆力が描き出す、慟哭する魂の航路~

これはスゴイ小説だ!
とにかく、何とも言えないパワー。これでもかというように、読者に迫ってきます。
イメージ的には、イージス艦版「ダイ・ハード」というのが分かりやすい(?)かもしれませんね。
(とすると、「ホワイトアウト」とも同種?)
紹介文にもあるとおり、登場人物たちそれぞれの思いが、最新鋭のイージス艦という舞台でぶつかり合う、そして・・・ドラマだよねぇ。
そして、たった1艘のイージス艦を前にきりきり舞いさせられ、立ち往生させられる政府。これなんて、現実に起こっても多分こうなるんだろうと思わされる。

終盤にかけては、圧倒的スピード感で、感動のラストまで一直線。
(これなんて、なんだかハリウッド映画を見てるようです)
とにかく、時間を忘れてのめり込んでしまうこと間違いなしの作品。お勧め。
(ただ、まぁミステリーとは呼べないなぁ)

No.70 5点 螺鈿迷宮- 海堂尊 2009/09/13 18:04
本作はこれまでの田口医師は登場せず、代りに医学生、天馬を主人公に話が展開します。
「終末医療」という本来は重いテーマを主軸としていますが、作品のタッチは相変わらずギャグを織り交ぜながら、スピーディーに進んでいき、新しいキャラ“氷姫”の初登場など、読者へのサービスも忘れていません。
ただ、いわゆる「謎解き」の要素はほとんどなく、作者の導く方向へ読み進めていくだけ、という感想。読み物としては水準以上ですが、点数はこれくらいが妥当ではないでしょうか。

No.69 8点 シャイロックの子供たち- 池井戸潤 2009/09/13 17:53
作者得意の連作短編集。
とある銀行の1支店の中で、つぎつぎと事件?が起こっていきます。
氏の作品のほとんどは銀行を舞台としており、本作もそうですが、テーマとしては「ごく普通の人間が持っている嫉妬や欲、狂気という感情を要因として起こる事件・犯罪」であり、それが銀行という組織や銀行員という人間性というフィルターを通すことで、一層魅力的な作品になるんじゃないか・・・という感想です。
本作は一気読み必至の良作という評価でいいと思います。

No.68 7点 硝子のハンマー- 貴志祐介 2009/09/13 17:38
防犯コンサルタント・榎本を主役とするシリーズ第1弾。
ホラー小説の雄である作者が初めて書く「本格ミステリー」。
~見えない殺人者の底知れぬ悪意。日曜の昼下がり、株式上場を目前に、出社を余儀なくされた介護会社の役員たち。エレベーターには暗証番号、廊下には監視カメラ、有人のフロア。厳重なセキュリティ網を破り、自室で社長は撲殺された。凶器は。殺害方法は。すべてが不明のまま、逮捕されたのは、続き扉の向こうで仮眠をとっていた専務・久永だった。弁護士・青砥は久永の無実を信じ、防犯コンサルタント・榎本ももとを訪れるが・・・~

「よくできてる」ミステリー。
ここまで堅牢な「究極の密室」。それも、現代科学の粋を集めたセキュリティ技術で作られた「密室」。
これまでよく出てきた「準密室」といった中途半端なものではありません。
そこに、作者独自のアプローチを感じ取るわけです。

終盤、突然犯人側視点に切り替わるのがどうかというところですが、そんなに違和感なく読めるのでは?
防犯コンサルタントという探偵役の設定もいいトコロ突いてるでしょう。
まずは、作者の力量を十分に感じさせてくれる良作。

No.67 2点 新・寝台特急殺人事件- 西村京太郎 2009/09/12 23:41
トラベルミステリーの元祖とでもいうべき、氏の「寝台特急殺人事件」刊行25周年を記念して発表された作品。(だから、「新」がついてます)
はっきり言って、読むだけ時間の無駄でしょう。旧作とは比べ物になりません。

No.66 6点 光る鶴- 島田荘司 2009/09/12 23:29
短編集。何かしみじみした作品。
表題作は、これまで何度もあった「冤罪事件&吉敷刑事」の組み合わせですが、このペアの相性の良さを感じさせます。
「吉敷竹史の肖像」はミステリーというか、青春小説という趣き。吉敷ファンにとっては、若き日の彼の姿を知ることができて良いのではないでしょうか。
「電車最中」はおまけみたいな短編。

No.65 9点 斜め屋敷の犯罪- 島田荘司 2009/09/12 23:17
御手洗潔シリーズ初期の名作中の名作。
今回、新装ノベルズの完全改訂版で再読。
オホーツク海を見下ろす宗谷岬に傾斜して建つ奇妙な館・・・通称「斜め屋敷」。雪の降る聖夜に開かれたパーティー、そして翌朝、堅牢無比な密室の中で発見された招待客の死体・・・
何て魅力的な設定でしょうか! ミステリー作家なら一度は書いてみたいプロットでしょうし、ミステリーファンならばこれこそ一番の「大好物」。
とにかく、初読のときの「衝撃度」がスゴかった。巻頭にある斜め屋敷の「図」・・・ここに作者の企みが凝縮されています。
加えて、なぜ「斜めに傾いているのか?」・・・ラスト、御手洗の解決編を読んだときに、すべてが腑に落ちていきます。
島田氏にしては珍しく、本筋に余計な薀蓄話やサイドストーリーを一切挟まず、たいへんシンプルな構成ですし、そこにも好感が持てます。
真相解明以降に明かされる「動機」については、C.ドイルの名作「緋色の研究」にオーバーラップしてきます。
というわけで、ミステリー中毒ならば是非一度は手にとって読まなければいけない一冊と断言します。
これを「バカミス」と否定的に見る方もいるかもしれませんが、まぁいいじゃありませんか、「バカミス」でも! こんな迫力のある作品を書ける作家は二人といないはずです。
(牛越刑事が戸惑うだけで、全く活躍できなかったのが唯一の不満。もう少し、渋い役どころを与えて欲しかったなぁ・・・)

No.64 6点 シャドウ- 道尾秀介 2009/09/12 22:58
作者初期の長編作品。
ミスリードの技巧が冴えてます。
~「人は死んだらどうなるの。いなくなって、それだけなの?」。その会話から3年後、凰介の母親は病死した。父と2人だけの生活が始まって数日後、幼馴染の母親が自殺したのを皮切りに、つぎつぎと不幸が・・・父とのささやかな幸せを願う小学校5年生の少年が、苦悩の果てに辿りついた驚愕の真実とはなにか。いま最も注目される俊英がはなつ、巧緻に描かれた傑作~

紹介文のとおり「うまい」作品。
普通に読んでると、作者のミスリードに嵌って、確実に騙されます。
精神性疾患や幼児虐待という「テーマ」を見せながら、読者が自然に「一方向の考え」に陥るように仕向ける・・・
いったい、誰が狂っているのか、誰が本当の悪人なのか?
個人的にはもう少し捻って予想していたため、ラストの種明かしについてのサプライズ感はやや中途半端でしたかねぇー
(ちょっときれいすぎる感じ)

まぁ、ハッピーエンドで終っていて読後感はいいですし、十分に楽しめるレベルの作品なのは確かでしょう。
(人間って、割と簡単に狂えるんですよね)

No.63 6点 鳴風荘事件- 綾辻行人 2009/09/09 22:36
「殺人方程式」に続く、明日香井兄弟シリーズの第2作目。
「館」シリーズとは一味違った、純粋パズラー小説。
~奇天烈な洋館に集まった人々は目を疑った。6年前に殺された女流作家そっくりに、その妹が変貌していたのだ。そして、姉の事件と同じ月食の晩に悲劇が彼女を襲う。不思議な力を持っているという黒髪を切られるという手口も酷似して! 必要な手掛かりをすべて掲示して読者へ挑戦する新本格ミステリーの白眉~

やっぱり、前作よりは落ちるという印象。
「本格物らしい本格物を書くつもりで書いた」と作者あとがきでありますが、まずは提示される「謎」そのものが小粒な感があります。
特に、「なぜ被害者の黒髪が切られたのか」については、本作の中心的な仕掛けでありながら、ミステリーファンには「見え見え」ではないでしょうか?
その辺、もう少し捻りが欲しかったなぁ。

ロジックの積み重ねで、真相を暴いていくというスタイルは好ましいと思えますし、個人的に好きなシリーズですので、評点はこんなもんで・・・
(是非、新作が読みたいシリーズなんですけどねぇ。無理かな?)

No.62 6点 交渉人- 五十嵐貴久 2009/09/09 22:28
途中までは、警視庁一の腕利き交渉人(ネゴシエーター)と病院立てこもりグループとの闘いを良いテンポで描いており、質のいい映画のような展開です。
後半に入ると話が一転、主役が入れ替わり、「実は・・・」という驚きのラストを迎えます。
なかなか練られていると思いますし、水準級の面白さは感じます。

No.61 5点 マレー鉄道の謎- 有栖川有栖 2009/09/09 22:15
一連の火村助教授シリーズでは上位、作者全体としては中くらいの出来の作品。
目張りを施した部屋の密室についてはまあまあの出来ですが、真犯人の意外性のなさをはじめ、なにか全体的に物足りない印象が残る。まぁ、シリーズ全体でも言えることですが・・・
ちなみに、マレー鉄道に関する謎は特に出てきません。

No.60 6点 地獄の奇術師- 二階堂黎人 2009/09/07 22:28
二階堂蘭子の探偵譚第1章。
作者の記念すべきデビュー作。
~十字架屋敷と呼ばれる実業家の邸宅に、ミイラのような男が出現した。顔中に包帯を巻いた、異様な格好である。自らを「地獄の奇術師」と名乗り、復讐のためにこの実業家一族を皆殺しにすると予告したのだ。「地獄の奇術師」の目的は何なのか? 女子高生で名探偵・二階堂蘭子の推理が冴え渡る~

「江戸川乱歩」の世界が甦った!というべき雰囲気。
時は昭和40年代。かろうじて、東京郊外であれば、まだ夜の闇に怖さが残っていた時代なのでしょう。
それ以上に、現代であれば当然行われる「DNA鑑定」などの先進的科学捜査が、まだ運用されていなかった時代、という方がより重要な時代設定なのでしょう。
しかし、前半のくだりはどうなんでしょうねぇ・・・
昔読んだ、怪人二十面相シリーズを彷彿させる、ゾクゾクさせるような展開。
あまりにも大時代的すぎて、ついていけなくなる読者も多いことでしょう。
2作目(「吸血の家」)以降は、大掛かりなトリックで、読者の度肝を抜くようなプロットが登場しますが、本作ではその辺りが弱くて、中途半端。
まぁ、意外な真犯人とその動機が本作の「肝」だとは思いますが、ちょっと荒唐無稽な感がどうしてもつきまといます。

ただ、本シリーズの作品中には、本作のエピソードがたびたび登場しますので、シリーズ作を読まれる方にとってはどうしても避けて通れない1冊とは言えるでしょう。
(しかし、「地獄の奇術師」なんてネーミング! 二階堂氏以外は付けないだろうなぁ・・・)

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E-BANKERさん
ひとこと
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