皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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E-BANKERさん |
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平均点: 6.01点 | 書評数: 1809件 |
No.10 | 6点 | 魔王- 伊坂幸太郎 | 2011/10/05 22:34 |
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表題作とそれから5年後のストーリー(「呼吸」)からなる作品。
他作品より若干「硬派」な印象がしましたが・・・ ~会社員の安藤は弟の潤也と2人で暮らしていた。自分が念じれば、それを相手が必ず口に出すことに偶然気がついた安藤は、その能力を携えて1人の男に近づいていった。何気ない日常生活に流されることの危うさ。新たなる小説の可能性を追求した物語~ 何となく考えさせられた。 表題作の主役・安藤(兄)も、「呼吸」の主役・潤也(弟)もある特殊能力を持ち、それを試しながら世の中に挑戦(?)していこうとする。 まぁ、特殊能力という設定自体、作者の十八番とするところですし、使い方がうまいですね。 兄の「腹話術」能力っていうのは、ともすると漫画チックになりそうなのに、「政治」とか「ファシズム」といったかなり硬派なテーマのせいで、ついつい読まされてしまいました。 (政治家に対する感情や思いっていうのは、まさにそのとおりだねぇ) 個人的には、潤也の特殊能力は相当羨ましい! (夢の「単勝ころがし」がいつでもできる!) ただ、ミステリーとは呼べない作品でしょうから、評価はこんなものかな。 ラストはちょっと中途半端なので、続編(「モダンタイムス」)に期待します。 |
No.9 | 6点 | アヒルと鴨のコインロッカー- 伊坂幸太郎 | 2011/07/30 01:00 |
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大ヒットした長編「重力ピエロ」に続く第5長編作品。
本作もやはり、伊坂らしい台詞まわしが特徴的な吉川英治文学新人賞受賞作。 ~引っ越してきたアパートで出会ったのは、悪魔めいた印象の長身の青年。初対面だというのに、彼はいきなり「一緒に本屋を襲わないか」と持ちかけてきた。彼の標的はたった1冊の広辞苑! そんなおかしな話に乗る気などなかったのに、なぜか僕は決行の夜、モデルガンを手に書店の裏口に立ってしまったのだった!~ なかなか評価の難しい作品ですねぇ・・・ 正直、中盤までは読むのが多少苦痛になるようなまだるっこしい展開。 伊坂らしい独特かつ軽妙な語り口だけが目立ち、どうということのない話が続いているだけのように思えてしまう。 それでも、さすがに終盤に入ると、そこまでの伏線がきれいに回収されていく手口を満喫させてもらえます。 「カットバック」もうまく使ってますよねぇー。 こういう書き方をされると、とにかく読み進めていくしかないという気にさせられる。 これで、「もしオチがしょうもなかったら承知しねぇぞ」と思ってしまいますが、まずは及第点といった評価でしょうか。 ただ、コアなミステリーファンにはウケない気がします。 (ブータン人って、そんなに日本人に似てましたっけ?) |
No.8 | 6点 | 終末のフール- 伊坂幸太郎 | 2011/05/28 21:14 |
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ノン・シリーズの連作短編集。
数年後に小惑星が衝突し、地球が滅亡する、というかなりストイックな設定です。 ①「終末のフール」=学業が優れているのが「天才」ではない。特に、こういうストイックな場面では「バカ」の方がよっぽど価値がある・・・ということ? ②「太陽のシール」=世界一(?)優柔不断な男が登場。こんなストイックな状況で、妊娠した妻。果たして生むべきか生まざるべきか? ③「籠城のビール」=確かに、無責任なマスコミは嫌だ! でもマスコミ人も迷っているのだ! ④「冬眠のガール」=何とも魅力的な女性です。やっぱり、死ぬ前に恋人欲しいよねぇ・・・ ⑤「鋼鉄のウール」=苗場さんが実にかっこいい。どんな状況になろうと、「やるべきことをやる」という姿勢こそ最も美しいのだと思わされる。 ⑥「天体のヨール」=やっぱり、「自分の決めた道」を持ってる人は強い・・・っていうことかな? ⑦「演劇のオール」=何となく虚無的。 ⑧「深海のポール」=ほぼ全編に登場するレンタルビデオ屋の渡部氏が主役。一本筋の通った父親のキャラが魅力的。 以上8編。 地球滅亡が迫り、人間の心が一旦荒廃した後、落ち着きを取り戻しつつあるといった状況設定。 「仙台」という設定のせいかもしれませんが、大震災後の今現在を何となく想起させる・・・ ただ、結局、伊坂は何が言いたかったのか? ちょっと不明。 (キャラ的には⑤の苗場さんがベスト。誰もがどうしていいか分からないような状況下では、自分ができることを休まずやることが一番大切なんだと気付かされる) |
No.7 | 5点 | チルドレン- 伊坂幸太郎 | 2011/04/05 22:48 |
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"変な男”陣内や全盲の男、永瀬らを主人公とする連作短編集。
相変わらずの「伊坂ワールド」で、独特のストーリーが紡がれます。 ①「バンク」=タイトルどおり、銀行強盗の話。この話で、陣内・鴨居と永瀬・ベスが出会う。それで、結局強盗は狂言だったのかどうか分からぬままなんですけど・・・ ②「チルドレン」=①から12年後の話。家裁の調査員となった陣内と一人の少年が織り成す不思議なストーリー。で、結局何が言いたい? ③「レトリーバー」=ゴールデン・レトーリーバーの本当の意味は「・・・」。真相はミステリーっぽいオチになってます。 ④「チルドレンⅡ」=ラストのライブハウスのシーンが印象的ですが、「それは非現実的でしょう?」って感じ。 ⑤「イン」=これもよく分からない話。要は、全盲なんて全然関係ないじゃん!ってことを言いたいのか? 以上、5編。 作者自身、「短編の形をした長編」と解説しているとおり、年代を行ったり来たりしながら、変な男「陣内」を中心として、ほんわかしたストーリーが続きます。 決して嫌いではないのですが、本作については、さすがに「ちょっと・・・」っていうほど方向性のはっきりしない雰囲気のため、高い評価はしにくいよねぇ・・・ (作者の作品のほとんどは仙台が舞台となってますが、今回の大震災がどのように影響するのかちょっと心配・・・) |
No.6 | 5点 | フィッシュストーリー- 伊坂幸太郎 | 2011/02/05 17:16 |
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ノン・シリーズの短編集。
"いかにも伊坂らしい”作品が並んでいるのがウレシイかぎりですが・・・ ①「動物園のエンジン」=デビュー作「オーデュポンの祈り」の次に発表された作品。(「オーデュポン」の主人公、伊藤もゲストで登場) 動物園を解雇された男が、マンション建設反対運動に参加する理由とは? 最後に「叙述トリック!?」が炸裂します。 ②「サクリファイス」=伊坂作品の名脇役、黒澤が主人公。何だかありそうで、絶対にない話。「何もそこまで考えなくても・・・」という気がしましたけどねぇ・・・ ③「フィッシュ・ストーリー」=『ほら話』という意味だそうです。都合、40年間に渡る壮大なストーリーのはずですけど、そんな重さは微塵も感じさせないフワフワ感たっぷりの文章。伊坂らしいね。 ④「ポテチ」=これは黒澤が脇で登場。「尾崎って結局誰だよぉ!!」と思いつつ読み進めていくと、最後に種明かしがありました。最後は伊坂らしからぬ爽快さを感じさせる終わり方。 以上4編。 いつもどおりの「伊坂節」ですが、他作品に比べるとやや落ちるかなという印象。 まずは短編から伊坂を始めようと思っている読者にとっては、逆にとっつきやすいかもしれません。 (個人的には①がベスト。ラストのオチは綾辻の「どんどん橋おちた」を思い出してしまいました。) |
No.5 | 5点 | オーデュボンの祈り- 伊坂幸太郎 | 2010/12/22 23:25 |
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作者の処女長編作品。
第5回新潮ミステリークラブ賞受賞作。 ~コンビに強盗に失敗して逃走していた伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。江戸時代以来外界から遮断されている「荻島」には、妙な人間ばかりが住んでいた。嘘しか言わない画家、島の法律として殺人を許された男、人語を操り「未来が見える」カカシ。次の日カカシが殺される。無惨にもバラバラにされ、頭を持ち去られて。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止できなかったのか。卓抜したイメージ力、洒脱な会話、気の利いた警句、抑えようのない才気がほとばしる・・・~ とにかく変な作品。 文庫版では、解説担当の評論家吉野氏が「たいへんシュールな作品」と述べていますが、つまりは読み手によって評価が大きく分かれる作品でしょう。 鎖国状態の島や未来が見えてしゃべれる「カカシ」など、およそ現実感のない独特の世界観・・・まさに「シュール」と言うべき感覚-- 個人的にいえば、この「シュール感」が今ひとつしっくりこなかったというのが正直な感想・・・ 結局、伊坂は何が言いたかったのか?(別にそんな難しい話ではないかもしれませんけど・・・) その辺りが汲み取れませんでした。 ただ、「伊坂幸太郎」という作家を知るには、本作はやはり「はずせない」作品なのは間違いなし。 ”合う””合わない”に関わらず、読むべきなのだろうとは思います。 |
No.4 | 7点 | 死神の精度- 伊坂幸太郎 | 2010/11/13 00:03 |
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「死神」を主人公とする連作短編集。
今回も「伊坂ワールド」全開という感じで、独特のストーリーを味わうことができます。 ①「死神の精度」=唯一の「見送り」なんですよね。これが伏線として最後に効いてきます。 ②「死神と藤田」=ラストがよく分からなかったな。 ③「吹雪に死神」=何と「雪の山荘」で連続殺人事件が発生! ですが、そこはやっぱり「伊坂作品」ですから・・・ ④「恋愛で死神」=とってもいい話。なんで「見送り」にしないかなぁーと思ったら、そういうことですかぁ・・・ ⑤「旅路を死神」=死神の行動&言葉が何ともいえずいい。 ⑥「死神対老女」=ラストはサプライズが2つ。そうかぁ・・・そういうまとめ方かぁ・・・うまいなぁ! 以上6編。 「死神」が何ともいえない「いい味」出してます。是非続編を出して欲しいですね。 |
No.3 | 7点 | グラスホッパー- 伊坂幸太郎 | 2010/09/23 23:01 |
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本書もやはり「伊坂ワールド」全開の作品。
独特の言い回しや展開で、前半はちょっと冗長に思えるんですが、途中から一気に加速し、ラストへなだれこむ・・・という感じ。 殺し屋の”鯨”と”蝉”、そして普通の人”鈴木”・・・3人のストーリーが順番に語られ、そしてまるで運命のように1つのストーリーに吸い寄せられていく・・・作者らしい展開です。 あとがきでは、本書を「ハードボイルド」と括っていますが、ジャンルとしては分類不能、あえて言うなら「変な小説」とでも呼びたくなります。(いい意味で) サブキャラもいい味出してます。特に、健太郎と孝次郎の兄弟(?)・・・生意気だけどこんな奴本当にいそうだなぁ。 |
No.2 | 7点 | ラッシュライフ- 伊坂幸太郎 | 2010/08/01 15:03 |
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作者の遊び心と旨さが前面に出た佳作。
4人の登場人物、4つの物語が順番に語られ、それが少しづつ絡まっていき、ラストで見事に繋がった! ジグゾーパズル的というよりは、線路のようなものを繋いでいく感じと言えばいいのでしょうか、読了後気付いてみれば、壮大な鉄道路線図が出来上がっていたというようなイメージ・・・(うまく表現できてませんけど) まぁ旨いですよねぇー。1人1人の登場人物が生き生きしてます。 泥棒の黒澤は哲学的ですし、リストラ社員の豊田はせつなさ満載ですし、示唆に富んだセリフが次々と出てきます。 本作、「小説」としての評価なら十分10点満点に値しますけど、「ミステリー」としての評価ならこれくらいでしょうか。 |
No.1 | 3点 | 重力ピエロ- 伊坂幸太郎 | 2009/09/07 21:43 |
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すみません。どこが面白いのかよく分かりませんでした。
作者の作品は初めて読みましたが、続けて読んでいこうという気には今のところならない感じです。 何というか、読みながらのドキドキ感やワクワク感が全く味わえませんでした。 |