皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
メルカトルさん |
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平均点: 6.04点 | 書評数: 1835件 |
No.175 | 5点 | 九杯目には早すぎる- 蒼井上鷹 | 2011/08/10 21:29 |
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はっきり言ってどれもこれも取るに足らない、もっと言えば読んだその日に忘れてしまうような短編集。
その中で唯一『私はこうしてデビューした』が、折原一氏を髣髴とさせて面白かった。 ちょっとしつこい感じもするが、オチもキッチリついていてブラックな結末はなかなかのもの。 その他の作品は、サスペンスでもなければ本格でもない、どっちつかずの中途半端な出来映えである。 |
No.174 | 6点 | エナメルを塗った魂の比重 鏡稜子ときせかえ密室- 佐藤友哉 | 2011/08/04 21:54 |
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どうでもいいが、なぜこんなに評価が割れるのか?どちらにしても不思議な作品ではある。
途中まではなかなか引き付けられる、なんだかよく解らない魅力を感じたが、謎解きに至って尻すぼみな感が否めない。 またキャラ萌えの要素もあり、ラノベのような作風でもある。 しかし、文体は非常に癖があり、好みが別れるところだと思う。 |
No.173 | 5点 | もう一人の私- 北川歩実 | 2011/07/29 21:23 |
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派手な殺人事件が起こる訳でもなく、至って平凡な短編集だと思う。
私にとっては、驚きもなく、かと言って展開の妙も感じられない、全体的に低調な印象を受けた。 中には少しだけおっと思わせるものもあったが、それはほぼ例外であって、残りの短編はほとんど記憶にも残らないような作品ばかりであった。 もう少し、読者にあっと言わせるようなストーリーを書いてもらいたいものである。 |
No.172 | 6点 | 水霊- 田中啓文 | 2011/07/24 22:06 |
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飲料水の恐怖に神話を絡めたホラー大作。
宮崎県のとある村。 村の神社の遺跡から湧き出た水を、「おいしい水」として商品化しようとする村長。 ところがその水を飲んだ者が次々と異常な食欲を示した後衰弱し、死亡するという事件が起こる。 田中氏らしい脱力感は影を潜め、非常に生真面目に取り組まれた大変な力作となっている。 随所に見せ場があり、読み応えは十分、飽きの来ない作品に仕上がっている。 |
No.171 | 6点 | 儚い羊たちの祝宴- 米澤穂信 | 2011/07/15 21:31 |
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古き良き時代の怪奇小説や探偵小説を髣髴とさせる佳作。
平均して面白いが、特に『身内に不幸がありまして』が好み。 また、『玉野五十鈴の誉れ』のラスト一行には唸らされた。 取り敢えず、暗くて古風な雰囲気は今時のミステリにはない存在感を示しているのではないだろうか。 |
No.170 | 4点 | 4ページミステリー- 蒼井上鷹 | 2011/07/10 21:52 |
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全て4ページのショートショートが60篇収められた短編集。
必ずしもミステリと言う訳ではなく、むしろジャンル不明の単なる小説の方が多い。 全く捻りのないもの、オチのないもの、様々。 たった4ページのわりに読みづらく、結構苦痛であるし、そもそもこのページ数でミステリを詰め込むのは無理があるようだ。 ついでに、この人の文章は私には合わないかも知れない。 |
No.169 | 6点 | 「裏窓」殺人事件 tの密室- 今邑彩 | 2011/07/06 21:46 |
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密室状態からの飛び降り自殺?と女子大生連続殺人事件が有機的に繋がっていく様は、なかなかサスペンスフルで小気味良い。
車椅子の少女をめぐる人間関係と、刑事達の地道な捜査、女子大生殺人事件の謎など、様々な要素がバランスよく配置されて、読んでいて飽きが来ない。 意外な犯人と併せて、まさかの人物が予想外に事件に関わってくるのは、さすがに読めない展開だ。 |
No.168 | 6点 | 龍の寺の晒し首- 小島正樹 | 2011/07/02 21:55 |
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ボートを漕ぐ首なし死体、天に昇る竜など魅力的な謎がこれでもかと詰め込まれているが、その真相の多くが偶然に頼ったご都合主義的なトリックであり、拍子抜け。
唯一なるほどと思わされたのが、彩の首の隠し場所である。もっともこれも現実的には無理がありそう。 その重要と思われる生首を晒す理由にはほとんど触れられていない、私の読み落しかもしれないが、どちらにしても私には理解できなかった。 全体の雰囲気は横溝正史氏というより、島田荘司氏の御手洗シリーズを髣髴とさせるものがあり、ミステリとしては楽しめると思う。 |
No.167 | 5点 | プリンセス・トヨトミ- 万城目学 | 2011/06/27 21:46 |
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日本国内に大阪国という独立国家が存在した、という荒唐無稽な設定で、グイグイ読者を引っ張っていく。
若干無駄と思えるものも含めて、様々なエピソードを経て物語は大阪全停止というクライマックスを迎える。 特に大阪に住む人は、お馴染みの地名が続々と出てきて、それだけで嬉しくなってしまうのではないだろうか。 しかし、プリンセスの正体は誰が考えても一瞬で分かってしまうし、これと言った謎の提示もないので、サスペンスとは呼べない。 いわゆるファンタジーだと思うが、正直『鴨川ホルモー』と比べると、その面白さは格段に落ちる。 全体的に冗長さは否めないし。 |
No.166 | 5点 | 少女Aの殺人- 今邑彩 | 2011/06/17 21:18 |
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なかなかよく練られたストーリーだとは思うが、インパクトに欠ける上、正直あまり面白くない。
それ程複雑なプロットでもないわりに、冗長な感が否めない。 タイトルはなるほどと思わせるが、登場人物が限られているので、比較的真犯人が分かりやすいのもマイナス点になるだろう。 まあ、凡作と言っても差し支えないと思う。 |
No.165 | 4点 | 押入れのちよ- 荻原浩 | 2011/06/12 21:30 |
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これは本当にホラーなのだろうか、と疑問に思わざるを得ない作品がずらりと並ぶ短編集。
特に印象深い作品もなく、どれもどこかで聞いたような、或いは読んだような物語ばかりで新味を感じない。 この人は今後このようなホラーもどきは書かないほうが賢明だろうと思う。 巷に溢れる全然怖くないホラーよりも更に怖くない、いかにも平々凡々とした作品集となっているのは残念な限りである。 |
No.164 | 6点 | 第三の時効- 横山秀夫 | 2011/06/08 21:31 |
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表題作は確かに面白かったし、ミステリ的な仕掛けも施されていて楽しめる。それ以外の短編は微妙だが、警察関係者のアクの強い個性豊かな人物が目白押しで、その意味では読者を惹きつけて離さない。
特に第二班の班長、楠見は非常にリアリティがあってよい。 だが、警察小説としてはよく出来ているとは思うが、本格志向の読者にはお薦めできない。 なぜなら、オチや捻りが今ひとつと感じられたから。 |
No.163 | 7点 | 水没ピアノ 鏡創士がひきもどす犯罪- 佐藤友哉 | 2011/06/03 21:46 |
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全く無関係に見える3つの物語が平行して一人称で語られる。
しかしそのストーリーがやがて・・・これ以上はネタバレになるので書けない。 独特の筆運びで最初は読みづらい印象を受けたが、読むにつれて気にならなくなり、次第にその世界観に引き込まれる。 少々長いが、最後まで読者を惹きつける手腕はなかなかのものではないだろうか。 しかしラストの鏡の残酷な仕打ちはちょっといただけない気もする。 またそれをまともに認識できない彼って一体。 |
No.162 | 5点 | ミミズクとオリーブ- 芦原すなお | 2011/05/30 21:27 |
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普通、一介の刑事が一般の民間人に事細かに殺人事件の概要を説明するだろうかとか、うら若き女性が初対面の男にそんなに馴れ馴れしい口調で話すだろうか、と言った突っ込みどころは見受けられる。
しかしまあ、奥さんの痒いところに手の届く、一本筋の通った性格はなかなかよく描かれているように感じるし、魅力的でもある。 ミステリとしてはいかにも弱く、素晴らしい出来とは決して言い難いが、雰囲気を楽しむべき作品なのだろう。 小難しいミステリに疲れた時などの息抜きにはもってこいの、ほっこりとした佳作である。 |
No.161 | 7点 | よもつひらさか- 今邑彩 | 2011/05/26 21:48 |
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ホラーとミステリの境界線を危うい綱渡りをしながら、どちらにも傾かず上手く平衡を保っている稀有な短編集。
ホラーにも合理的な結末が用意されているものもあり、ミステリの要素を取り入れているのは今邑女史らしいところ。 しかもそれぞれの作品が一々面白く、まさに粒揃いと言ってよいであろう。 先の展開が読めたりもするのだが、更にもう一捻り加えられていたりして、工夫がなされているのも好感が持てる。 それぞれ余韻を残す佳作が並んでいるので、読んでいて飽きる事はない。 |
No.160 | 6点 | 落下する緑- 田中啓文 | 2011/05/22 21:39 |
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真面目に書いてるなあ、というのが第一印象。
駄洒落が遊び心程度に放り込まれているくらいで、勿論グロの要素も皆無だし、脱力系でもない。 いたって普通の連作短編集。 田中氏もやれば出来るじゃないか、と再認識させられる一冊でもある。 内容的には日常の謎を扱ったものだが、さして魅力的な謎が提示される訳でもないのに、結構没頭できる不思議な作品と言えるかもしれない。 |
No.159 | 6点 | チルドレン- 伊坂幸太郎 | 2011/05/18 21:59 |
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伊坂氏本人の言の通り、短編集の形を借りた長編といった感じ。
そこそこ楽しめたが、全体を通して何か物足りなさを覚えてしまう。 それはドラマ性やストーリーの起伏が薄いせいかもしれない。 謎解きも至って単純なものではあるし、ミステリ色はあまりないように思われる。 しかし、最終話のどこかほのぼのとした結び方は悪くない。 各登場人物も上手く描き分けられているので、キャラ萌え小説としても楽しめるのではないだろうか。 |
No.158 | 6点 | メルカトルかく語りき- 麻耶雄嵩 | 2011/05/15 21:37 |
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5編の物語で構成される短編集。
本格ミステリとはいえないと思うが、良くも悪くも麻耶氏らしい作品ではある。 メルカトル鮎は悪徳探偵ぶりを遺憾なく発揮しているし、彼らしい怜悧な推理を披露してくれて、存在感はやはり只者ではない。 ただ、ある程度予想はしていたが、期待通りの出来とは言えず、文体も読みづらいのでファン以外の読者が楽しめるとはあまり思えない。 第一話は別として、それ以外の作品はどれもラストがスッキリしないのもどうかと。 |
No.157 | 7点 | そして誰もいなくなる- 今邑彩 | 2011/05/12 21:29 |
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前半はサスペンス仕立てのわりに緊迫感が希薄で、歯応えが感じられなかった。
シナリオ通りに見立て殺人がおこなわれていて、次の犠牲者が分かっているにもかかわらず、女子高生達に危機感がなく、暢気すぎるのは読んでいて不可解さを覚える。 しかし、物語が佳境に差し掛かってからは、一変スピード感に溢れ展開がめまぐるしくなり、歯応えが出てくる。 真相も捻りがよく効いていて、ありがちな展開とは言え、読者を引き込む筆力は素晴らしいと思う。 個人的には今邑女史の最高傑作は『金雀枝荘の殺人』だと考えているが、本作はそれに比肩するほどの傑作ではないだろうか。 |
No.156 | 4点 | 蹴りたい田中- 田中啓文 | 2011/05/09 21:31 |
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『蹴りたい背中』ではない。
勿論、芥川賞受賞作でもなく茶川賞受賞作である。 ミステリ、時代劇などを含むバカバカしいほどの大スケールで描かれるSFを中心とした、短編集。 相変わらず、脱力系だじゃれ満載の田中節が炸裂する。 決して読者に迎合することなく、自分の書きたいものを書くという、作者の意気込みは伝わってくる。 だから、読者を選ぶタイプの作品だが、ある種のマニアにとっては堪えられないだろう。 しかし、人に薦められる小説でない事は確かである。 |