皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
メルカトルさん |
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平均点: 6.02点 | 書評数: 1767件 |
No.167 | 5点 | プリンセス・トヨトミ- 万城目学 | 2011/06/27 21:46 |
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日本国内に大阪国という独立国家が存在した、という荒唐無稽な設定で、グイグイ読者を引っ張っていく。
若干無駄と思えるものも含めて、様々なエピソードを経て物語は大阪全停止というクライマックスを迎える。 特に大阪に住む人は、お馴染みの地名が続々と出てきて、それだけで嬉しくなってしまうのではないだろうか。 しかし、プリンセスの正体は誰が考えても一瞬で分かってしまうし、これと言った謎の提示もないので、サスペンスとは呼べない。 いわゆるファンタジーだと思うが、正直『鴨川ホルモー』と比べると、その面白さは格段に落ちる。 全体的に冗長さは否めないし。 |
No.166 | 5点 | 少女Aの殺人- 今邑彩 | 2011/06/17 21:18 |
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なかなかよく練られたストーリーだとは思うが、インパクトに欠ける上、正直あまり面白くない。
それ程複雑なプロットでもないわりに、冗長な感が否めない。 タイトルはなるほどと思わせるが、登場人物が限られているので、比較的真犯人が分かりやすいのもマイナス点になるだろう。 まあ、凡作と言っても差し支えないと思う。 |
No.165 | 4点 | 押入れのちよ- 荻原浩 | 2011/06/12 21:30 |
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これは本当にホラーなのだろうか、と疑問に思わざるを得ない作品がずらりと並ぶ短編集。
特に印象深い作品もなく、どれもどこかで聞いたような、或いは読んだような物語ばかりで新味を感じない。 この人は今後このようなホラーもどきは書かないほうが賢明だろうと思う。 巷に溢れる全然怖くないホラーよりも更に怖くない、いかにも平々凡々とした作品集となっているのは残念な限りである。 |
No.164 | 6点 | 第三の時効- 横山秀夫 | 2011/06/08 21:31 |
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表題作は確かに面白かったし、ミステリ的な仕掛けも施されていて楽しめる。それ以外の短編は微妙だが、警察関係者のアクの強い個性豊かな人物が目白押しで、その意味では読者を惹きつけて離さない。
特に第二班の班長、楠見は非常にリアリティがあってよい。 だが、警察小説としてはよく出来ているとは思うが、本格志向の読者にはお薦めできない。 なぜなら、オチや捻りが今ひとつと感じられたから。 |
No.163 | 7点 | 水没ピアノ 鏡創士がひきもどす犯罪- 佐藤友哉 | 2011/06/03 21:46 |
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全く無関係に見える3つの物語が平行して一人称で語られる。
しかしそのストーリーがやがて・・・これ以上はネタバレになるので書けない。 独特の筆運びで最初は読みづらい印象を受けたが、読むにつれて気にならなくなり、次第にその世界観に引き込まれる。 少々長いが、最後まで読者を惹きつける手腕はなかなかのものではないだろうか。 しかしラストの鏡の残酷な仕打ちはちょっといただけない気もする。 またそれをまともに認識できない彼って一体。 |
No.162 | 5点 | ミミズクとオリーブ- 芦原すなお | 2011/05/30 21:27 |
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普通、一介の刑事が一般の民間人に事細かに殺人事件の概要を説明するだろうかとか、うら若き女性が初対面の男にそんなに馴れ馴れしい口調で話すだろうか、と言った突っ込みどころは見受けられる。
しかしまあ、奥さんの痒いところに手の届く、一本筋の通った性格はなかなかよく描かれているように感じるし、魅力的でもある。 ミステリとしてはいかにも弱く、素晴らしい出来とは決して言い難いが、雰囲気を楽しむべき作品なのだろう。 小難しいミステリに疲れた時などの息抜きにはもってこいの、ほっこりとした佳作である。 |
No.161 | 7点 | よもつひらさか- 今邑彩 | 2011/05/26 21:48 |
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ホラーとミステリの境界線を危うい綱渡りをしながら、どちらにも傾かず上手く平衡を保っている稀有な短編集。
ホラーにも合理的な結末が用意されているものもあり、ミステリの要素を取り入れているのは今邑女史らしいところ。 しかもそれぞれの作品が一々面白く、まさに粒揃いと言ってよいであろう。 先の展開が読めたりもするのだが、更にもう一捻り加えられていたりして、工夫がなされているのも好感が持てる。 それぞれ余韻を残す佳作が並んでいるので、読んでいて飽きる事はない。 |
No.160 | 6点 | 落下する緑- 田中啓文 | 2011/05/22 21:39 |
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真面目に書いてるなあ、というのが第一印象。
駄洒落が遊び心程度に放り込まれているくらいで、勿論グロの要素も皆無だし、脱力系でもない。 いたって普通の連作短編集。 田中氏もやれば出来るじゃないか、と再認識させられる一冊でもある。 内容的には日常の謎を扱ったものだが、さして魅力的な謎が提示される訳でもないのに、結構没頭できる不思議な作品と言えるかもしれない。 |
No.159 | 6点 | チルドレン- 伊坂幸太郎 | 2011/05/18 21:59 |
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伊坂氏本人の言の通り、短編集の形を借りた長編といった感じ。
そこそこ楽しめたが、全体を通して何か物足りなさを覚えてしまう。 それはドラマ性やストーリーの起伏が薄いせいかもしれない。 謎解きも至って単純なものではあるし、ミステリ色はあまりないように思われる。 しかし、最終話のどこかほのぼのとした結び方は悪くない。 各登場人物も上手く描き分けられているので、キャラ萌え小説としても楽しめるのではないだろうか。 |
No.158 | 6点 | メルカトルかく語りき- 麻耶雄嵩 | 2011/05/15 21:37 |
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5編の物語で構成される短編集。
本格ミステリとはいえないと思うが、良くも悪くも麻耶氏らしい作品ではある。 メルカトル鮎は悪徳探偵ぶりを遺憾なく発揮しているし、彼らしい怜悧な推理を披露してくれて、存在感はやはり只者ではない。 ただ、ある程度予想はしていたが、期待通りの出来とは言えず、文体も読みづらいのでファン以外の読者が楽しめるとはあまり思えない。 第一話は別として、それ以外の作品はどれもラストがスッキリしないのもどうかと。 |
No.157 | 7点 | そして誰もいなくなる- 今邑彩 | 2011/05/12 21:29 |
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前半はサスペンス仕立てのわりに緊迫感が希薄で、歯応えが感じられなかった。
シナリオ通りに見立て殺人がおこなわれていて、次の犠牲者が分かっているにもかかわらず、女子高生達に危機感がなく、暢気すぎるのは読んでいて不可解さを覚える。 しかし、物語が佳境に差し掛かってからは、一変スピード感に溢れ展開がめまぐるしくなり、歯応えが出てくる。 真相も捻りがよく効いていて、ありがちな展開とは言え、読者を引き込む筆力は素晴らしいと思う。 個人的には今邑女史の最高傑作は『金雀枝荘の殺人』だと考えているが、本作はそれに比肩するほどの傑作ではないだろうか。 |
No.156 | 4点 | 蹴りたい田中- 田中啓文 | 2011/05/09 21:31 |
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『蹴りたい背中』ではない。
勿論、芥川賞受賞作でもなく茶川賞受賞作である。 ミステリ、時代劇などを含むバカバカしいほどの大スケールで描かれるSFを中心とした、短編集。 相変わらず、脱力系だじゃれ満載の田中節が炸裂する。 決して読者に迎合することなく、自分の書きたいものを書くという、作者の意気込みは伝わってくる。 だから、読者を選ぶタイプの作品だが、ある種のマニアにとっては堪えられないだろう。 しかし、人に薦められる小説でない事は確かである。 |
No.155 | 5点 | ささらさや- 加納朋子 | 2011/05/05 22:09 |
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終始ふわふわした雰囲気に包まれていて、それを心地よいと感じるかどうかで評価が変わるだろう。
私には今ひとつピンとくるものがなかったため、辛目の評価になってしまった。 これは夫が事故で死亡し、その夫が幽霊となって妻を見守り、時には近しい人物にとり付いてちょっとした謎を解きながら彼女を救うという、ミステリと言うよりヒューマン・ストーリーだ。 それにしても主人公のさやは頼りなさ過ぎる。 その彼女を助けるべく登場するのが三婆で、この老婆達は実に個性豊かでいい味を出しているが、感情移入できるほどではなかった。 それに、なんといってもドラマチックさに欠けるのが、難点だろう。 しかし、私の嗜好に合わなかっただけで、こういった暖かみのあるほのぼのとした小説が好きに人には、十分面白いのではないかと思う。 |
No.154 | 6点 | 死神の精度- 伊坂幸太郎 | 2011/05/01 21:43 |
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死神のクールさがなあ・・・そこが良いという読者も勿論いるだろうが、私にはやや食い足りなかった。
全体としてはよく考えられた連作だと思うが、ちょっぴり物足りなさを感じるのも確か。 ただ、様々なシチュエーションが楽しめる作品ではあるし、死神が主人公のわりに、暗すぎず重すぎず、適度なユーモアを保っているのは評価できる。 尚、最終話のオチには深く頷かされ、感動的といってもよいと思う。 |
No.153 | 5点 | つきまとわれて- 今邑彩 | 2011/04/28 21:47 |
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日常のふとした事件から超常現象まで、読者の興味を惹きそうな謎を提示した短編集。
ホラー色は薄く、真っ当なミステリとしての体裁は保っている。 本書の特徴は、前の話の登場人物が次に再び登場するという、ちょっと風変わりな設定にある。 そして最後のストーリーが最初に繋がってくるという、リンクが凝っている。 それぞれの短編にオチもしっかりついていて、中には二転三転して楽しめるものもあるが、『鬼』に比べるとインパクトが薄い印象は否めない。 全体としてはまずまずと言ったところか。 |
No.152 | 6点 | 禍記- 田中啓文 | 2011/04/23 23:40 |
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伝奇ホラーの短編集だが、全編に亘って「禍記」が関わってくるのが異色。
だが、連作というわけではなく、それぞれが独立したストーリーになっている。相変わらずグロは健在で、その意味で田中ファンにとっては安心して?読めるであろう。 また、謎解きの要素も各短編に備わっている為、ミステリとしての側面も読み取る事ができる。 あとがきにもちょっとした仕掛けが施されていて、読者サービスも怠っていない姿勢は立派だと思う。 |
No.151 | 6点 | 三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人- 倉阪鬼一郎 | 2011/04/19 21:42 |
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これは正直評価が難しい。
賛否両論を呼びそうな作品だが、本格志向の読者にとっては全く読むに値しない可能性が高い。 バカミスなのは最初から承知で読んだが、何しろ全体的に単調なのは閉口する。 決して人に薦められないので、5点にしようと思ったが、作者の地道な努力に敬意を表して6点。 |
No.150 | 7点 | 鬼- 今邑彩 | 2011/04/17 22:34 |
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ミステリを中心とした、ホラーを含む短編集。
久しぶりに今邑女史を読んだのだが、この人の作品がこれ程洗練されていて、尚且つ読みやすいとはまさに嬉しい誤算であった。 全体として、切れ味の鋭い内角をえぐるシュートといった感じの作品が多く、ほとんどが読者の意表を突く展開で、意外性も十分。 オチも素晴らしく、短いが読み応えのある短編集である。 なんとなくやり切れない気分や、不可思議な余韻を残す作品が多いのも評価できる点ではないだろうか。 |
No.149 | 6点 | マドンナ- 奥田英朗 | 2011/04/14 21:48 |
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中間管理職の悲哀を描いた、主人公達の心情が手に取るように分かる、ユーモラスな短編集。
やはり表題作の『マドンナ』が最も共感できる。 40代の男が淡い恋心に大いに戸惑い、心揺らす様は読んでいて身に詰まされるし、凄く理解できる。 これほどまでに主人公の心の中に入り込んだ描写を出来る作家はそうはいないと思う。 それだけに貴重な存在であろう。 『ボス』もなかなか良い出来だ、ラストシーンは少しだけ癒されるかも。 |
No.148 | 6点 | ミミズからの伝言- 田中啓文 | 2011/04/12 21:44 |
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SF、伝奇、ミステリ、都市伝説など様々な要素を取り入れた、脱力系ホラー短編集。
あとがきにもあるように、7作品全てに共通するキーワードは「だじゃれ」。 かなりグロイものも含まれているが、最近あまり見られなくなったホラーらしい奇想溢れる短編が並んでいて、飽きが来ない。 それぞれのオチも捻りが効いていて、なかなか楽しめる仕上がりとなっている。 |