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メルカトルさん
平均点: 6.02点 書評数: 1769件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.329 7点 黒猫館の殺人- 綾辻行人 2013/09/08 22:20
再読です。
初読の際はどうも地味な印象でイマイチだと思ったが、今回読み直してみてその面白さを再認識できた。特に手記にばら撒かれた伏線の数々は、あらすじを知った上で読んだせいもあり、これはそんな意味があったのかと感心しながら読み進むことができ、随分楽しめた。
メイントリックに関しては、同時期に発表されたS氏の某作品との類似性が盛んに指摘されているが、果たして単なるシンクロニシティなのだろうか、真相は藪の中である。
どなたかこれに対してご存知の方がおられたら、是非ご教示願いたいと思う。
これだけのスケールの大きいトリックが、同年に二作別の作家によって使用されるのはいささか不自然と思われるがいかがなものだろうか。
まあそんな些細なことは別にして、本作は「館シリーズ」の雰囲気を十分継承した由緒ある異色作と言えるのではないかと思う。
これまで過小評価していたきらいがあったので、今回再読して評価が変わり、取り敢えず個人的に満足している。

No.328 6点 わが一高時代の犯罪- 高木彬光 2013/09/04 22:15
再読です。
中編である表題作を含む短編集。今思うと、どの作品のトリックも凡庸で看破しやすいものがほとんどだが、初読時はそれでも感心して読んだものだ。
私の一推しはロマンチシズム溢れる『月世界の女』である。これも分かりやすいトリックだが、結構いい話ではないだろうか。
そしてラストの『鼠の贄』は最初から手掛かりを大胆に提示しているが、この心理的な誤謬に気づく人は少ないかもしれない。
この仕掛けは現在でも十分通用するものだろうし、なかなか気の利いた短編だと思う。
本来ならば、平均点が示しているように、もう少し高得点でも良かった気もするが、やはりいま読み返すとこの点数も已む無しといったところか。

No.327 5点 首切り坂- 相原大輔 2013/09/01 22:27
再読です。
明治時代の話なので耳慣れない言葉遣いなどを使ったり、当時の街並みや風景などに配慮して、雰囲気を出しているのはいいが、やや読みづらいのが難点。
犯人は何故首を切断したのか、という理由はいたって平凡で謎というほどのものではなく、首を地蔵の上に置いたわけもさしたる問題とはならない。結果、フーダニットもハウダニットもいかにも中途半端な印象を受ける。
また唐突に犯人が探偵役の口から切り出されるのも、なんだかなあといった感じ。読者が犯人を推理する余地があまりないのも、伏線がほとんど張られていないのもマイナス要素である。
メイントリックに関しれは、これはもう完全にバカミスとしか言いようがない。意外性を狙ったのは分かるが、そんな偶然が万に一つも起こるはずがないと思わざるを得ないのは、本作を読まれた方ならご理解いただけるであろう。
これら全ての現象を「呪い」の一言で片づけているが、果たしてそれで読者は納得するだろうか。

No.326 5点 最後の喫煙者- 筒井康隆 2013/08/29 22:18
いつの間にか時間の流れが速くなり、世の中のあらゆる時計までもがそれに合わせるようにどんどんスピードがアップして、終いには一年があっという間に過ぎてしまうという話。
世界的に禁煙運動が進み、最後の喫煙者となって国会議事堂の屋根に籠城する男の話。
老境に差し掛かったターザンの蛮行を描いた話など、とにかく荒唐無稽で理屈抜きの無茶苦茶なストーリーが目白押しの短編集。
主にSF的な趣向が根底にはあるようだが、そんなことなどどうでもよくなってしまうような、ハメの外しっぷりはこの作者らしいと言えるのかもしれない。
書かれた年代が年代だけに、放送禁止用語が嫌というほど出てくるのは少々嫌気が差してしまうが、とにかくこのはじけ方は尋常ではない。
オチもあったりなかったりで、必ずしもきれいな着地を決めているわけではないのはやや不満な点。
一番のお気に入りは、背中に20cmもあるコガネムシを背負うことによって寄生させ、寄生させた男は天才になってしまうという『こぶ天才』。オチも決まっている。

No.325 6点 六花の勇者- 山形石雄 2013/08/26 22:24
魔神の復活を阻止するために選ばれた6人の勇者たちの活躍を描くという、絵に描いたようなファンタジーの王道作品。
とは言っても、第一巻は6人が集結するまでしか描かれておらず、まあ登場人物の紹介とそれぞれの特徴がどんなものかくらいしか読者には分からない。
しかし、なんと勇者は6人揃うどころか7人目まで登場してしまい、1人が偽物だということになり、それぞれが疑心暗鬼に陥る。
疑われたのは主人公のアドレットで、彼は仲間の疑いを晴らすべく戦い、尚且つ広義の密室の謎に挑む。
という訳で、若干ミステリ的要素もありつつ、しかしあくまで主題はアクションであり、誰が偽物かという命題と共にうまくミックスして描かれている。
それにしても、アドレットは「俺は地上最強」を連呼しすぎ。かなり鼻に付く感じである。
そんなこともあり、2巻以降はパスするつもりだったが、驚くべきエピローグに次巻も読まなければならない気にさせられてしまった。これは反則だよな、しかしながら上手く読者を繋ぎ止める、見事な戦略だとは思う。
ファンタジー好きは迷わず読むべきであろう。

No.324 7点 日本殺人事件- 山口雅也 2013/08/23 22:31
再読です。
現代の日本、しかしそこは、人力車が走り、廓が存在し、スーツを着た侍が日本刀を帯びているという、とんでもない世界だった。
この物語は作家山口雅也が古本屋で見つけた、外国人が書いたミステリを翻訳したという、一風変わった設定となっている。
だから、日本は日本でもパラレルな、しかし確かな現実感を伴った世界である。
そうした舞台で起こる、3つの古来から伝わる日本文化に関わる殺人事件を、トウキョー・サムという外国人私立探偵が解決する。
それぞれ面白いが、特に最終話はなかなか凝っている。両腕を切断された花魁から始まる「花鳥風月」連続殺人事件はトリックに新味はないものの、じっくり読ませる良く出来た本格ミステリではないだろうか。
愛とは何か、花魁にとっての愛とはどんなものなのかを読者に問う問題作でもある。

No.323 6点 あくむ- 井上夢人 2013/08/21 22:16
再読です。
これは気味悪いよね。感触としては背中を柔らかいブラシ様のもので逆なでされるような感じだろうか。
5作からなる短編集だが、どれも終始一貫して奇妙で独自の味わいを醸し出している。どこかいかれた、厭らしさを持った作品ばかりで、読後感は正直スッキリしない。
ホラーと言えばホラーなんだけど、普通の感覚と相当なズレを感じるような、作者の頭の中を見てみたいような。
しかも、どれもこれもが明後日のほうに着地しているため、不安定な感触は半端ない。
でもなかなか面白いのであるから、余計に厄介な代物である。

No.322 6点 「北斗の星」殺人事件- 吉村達也 2013/08/19 22:19
再読です。
ああ、吉村達也だなと思う。軽くて読みやすくて洒落た作風は間違いなくこの人の作だとつくづく思う。
吉村氏の作品も随分読んだが、一番印象に残っているのがこれである。あとがきの取材ノートを読んでいると、元気だった頃の氏の活躍ぶりが嫌でも思い出される。でも亡くなってしまったんだよね。まだ若かったのに・・・
さて本作は珍しく、名探偵朝比奈耕作シリーズでありながら、彼はホテルに缶詰にされてほとんど出番がない。
代わりに活躍するのが、いつもは事件に巻き込まれてばかりいる平田均である。まあすべて彼が解決するという訳ではないが。
内容としてはよくありがちな、吹雪で閉ざされ外部との連絡の取れなくなった、スキー教室で起こった連続殺人事件を扱ったもの。
それに心霊現象やオカルト的要素を加味しながらも、決して重くなり過ぎない作品に仕上がっている。
アッと驚くようなトリックや仕掛けはないけれど、動機は十分納得のいくものであるし、テンポよく読ませる辺りはさすがと言えよう。

No.321 6点 魔女は甦る- 中山七里 2013/08/18 22:26
80個以上の肉片と化した細切れ死体、謎の薬品会社、何匹もの飼い猫の失踪、嬰児の誘拐と、序盤の掴みは完全にOK。
ダークな雰囲気も好みの範疇にあるので、読んでいて何ともやるせない気持ちにさせられるのは事実だが、苦痛とは感じなかった。
ただ残念なのは、真相の説明があまりにもあっけないこと。それまでの捜査で色々な事実が詳らかにされているので、それで十分納得はできるわけだが、それにしても何ともあっさりしすぎている。
それと犯人像、これにはいささかがっかりである。
我々読者はこういうのを求めているのではない、とだけ言わせていただこう。
本作は、実質的なデビュー作のようなものなので、やや荒削りな面があるのと、『ドビュッシー』や『カエル男』のようなどんでん返しを期待すると裏切られるので、これから読もうとする人は気を付けたほうが良い。
そして、事件を捜査する刑事達や被害者を含めて、多くの登場人物がそれぞれ暗い過去を背負っていること、事件の解決があまりに救いのないものになってるので、後味はかなり悪い。
それでも、続編の『ヒートアップ』は文庫化されたら読みたいとは思っている。

No.320 7点 丸太町ルヴォワール- 円居挽 2013/08/12 22:22
まず冒頭で「河原町祇園」の名前が出てきたことで、一筋縄ではいかぬと知らしめられた思いがする。さすが京大ミステリ研出身だ。
ライトノベルで重要なキャラは立っているので、その点では合格だろうし、なかなか楽しめる。
ミステリには違いないが、私がこれまで読んできたどれとも性質が異なる作品であり、異色というカテゴリーでは括り切れない、何とも不思議な作風であるのは読めば納得されると思う。
第一章のボーイミーツガールの全然甘くない会話のやり取り。ここからして普通の恋愛小説とは全く違う。
そして終盤に炸裂する驚愕の○○トリック。これはしかし、誰も予測しえなかったものだろう。
なぜなら、それまでに私の読む限りではほとんど伏線が張られていないから。
だから嫌でも騙された感が印象に強く残る。
さらには、主役が何度も入れ替わる構成も実に凝っていて、それだけでも読む価値は十分あると言いたい。
読者によっては、あまり良い評価を下さないと思われるが、それだけ革新的かつ実験的な作品だということだろう。

No.319 6点 トランプ殺人事件- 竹本健治 2013/08/08 22:24
再読です。
雰囲気はデビュー作にかなり似通った、そこはかとなく幻想味を帯びた作品に仕上がっている。
必ずしも面白いとは言えないが、小道具のトランプのカードの使い方は上手い。気になるのはブリッジの専門用語やゲームの遊び方などがしつこく説明されているが、さっぱりわからないのでほとんど飛ばしてしまったこと。
これは必要なかったのでは?と思いきや、そこには意外なものが隠されていて、ああなるほどよく考えられているなと感心させられた。
が、個人的にはあまり好きなジャンルではないので、楽しめるというほどでもない。
全体的に地味な作品だが、竹本氏の作品としては破綻なくまとめられている。

No.318 5点 ウロボロスの基礎論- 竹本健治 2013/08/04 22:43
再読です。
ミステリ界を震撼させるう○こ事件。何故犯人はミステリ小説の天井部分やページの間に次々とう○こをしていくのか。
というまあおそらく、日本のミステリの中で最も下品な作品。ではあるが、無論作者は大真面目で書いているところが笑える。作中の人物もこのう○こ事件に対して、真剣に各々の推理を述べ立てる。
そして例のごとく、作中では全く別の事件も並行して起こっていき、そこには矢吹駆や牧場智久まで登場し、さらに混沌としてくる。
実名登場人物は、笠井潔、綾辻行人、法月綸太郎、麻耶雄嵩、小野不由美、そしてあろうことか中井英夫までが登場する。
さらには、法月氏や麻耶氏の原稿まで挿入されて、何がなんだか訳がわからないカオス状態に。
1300枚を超える大作のわりには、例によって謎がそのまま残されている。それもおそらく読者の最大の関心事が未解決のままで完結してしまっており、まあ竹本氏らしいと言えばそれまでだが、これは読み手によってはかなり業腹だろうと思う。
よって、高得点はやはり期待できないだろう。

No.317 6点 空飛ぶ馬- 北村薫 2013/07/28 23:13
再読です。
まあ、可もなく不可もなく、というのが正直な感想。
文体は時折キラリと光るものを感じさせる時もあるものの、どちらかというと平板で読んでいて若干退屈さを覚える。
『砂糖合戦』はなかなか面白かったが、他はごくごく普通の出来。
女子大生の「私」にもあまり魅力を感じず、探偵役の円紫はおとなしすぎてあまり好みではないし。ただ、さすがに推理は切れ味鋭いものを見せる辺りは名探偵の面目躍如といったところか。
全体的に、謎はまずまず興味を持たせるが、肝心の真相がいまひとつ感心しなかったのは残念である。

No.316 7点 七つの海を照らす星- 七河迦南 2013/07/21 23:09
児童養護施設で起こった「学園の七不思議」と称される謎にまつわる事件を、二年目の保育士北沢春菜が児童福祉司の海王の助けを借りて解決する、連作短編集。
全体的にトリックそのものは他愛のないものが多いが、伏線もかなり張られていて好感が持てる。
やや文体が私には合わないと思う部分があったり、第5話などはミステリから乖離しており、正直この話だけは不要だと感じた。
それとそのトリックも、もしこんなのが真相だったら嫌だなと思った通りのものだったのには、はっきり言って腰砕け。
まさかの稚拙なトリックに、驚きを隠せない。
だが、そうした欠点を補って余りあるのが、最終話の衝撃。
創元社の伝統というか、お約束ではあるが、それにしても心の中でアッと叫ばずにはいられない見事な締めくくりであった。
第4話で披露される回文も実によく考えられていて感心した。

No.315 5点 密閉教室- 法月綸太郎 2013/07/15 22:34
再読です。
全体的に散文的な印象を受けた。若い頃の作品だけあって、まだまだ文章がこなれた感じでなく、どことなく回りくどい感じである。
教室からすべての机と椅子が消えてしまうという、大胆な仕掛けは面白いし、その理由もまあ納得がいくものだ。
しかし、ツッコミどころも結構多い。果たして消えた机と椅子に関するトリックは実際可能なのか、とか、普通の高校生に現役の刑事が助手を依頼するのは普通あり得ないだろうとか。
終盤のめまぐるしい連続反転技は、好みの範疇だが、鮮やかに決まっているとは言い難い。
まあとにかく、若書きで荒削りな印象は否めない。

No.314 6点 ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!- 深水黎一郎 2013/07/11 22:15
再読です。
「犯人ってはあなただ!」って言われても、殺されたわけではないし、死因は心筋梗塞でしょ?その点がどうもスッキリしないというか、イマイチ納得できないんだよね。
これが本当の殺人事件で、まさに犯人は自分だというのであれば、これは凄いなということになるのだろうけれど。
まあしかし、アイディアとしてはなかなかだと思うし、デビュー作にしてはよく書けているのではないだろうか。
それにしても、サイドストーリー的な超能力のくだりは、どう解釈すればいいのだろう。
一見無関係に見えるのだが、真意はいずこにあるのか。
だが、メイントリックより、こちらの双子の姉妹のテレポテーションのトリックのほうが感心した。
なるほど、そんな意表を衝いた鮮やかなトリックを考え付くとは、並みの新人ではないなと思わされた。

No.313 6点 極限推理コロシアム- 矢野龍王 2013/07/01 22:06
再読です。
なんとなく、本棚からあふれていたのを見て手に取ったついでに読んでみた。
これはどうしても『インシテミル』を想起させられてしまうが、こちらのほうが出来は良いと私は思う。
だが、かなりの中だるみというか、着々と殺人が起こるのに、恐怖感や緊張感が感じられないのは、最早仕方のないことなのか。
そしてそれまで、大した推理もなされていなかったにもかかわらず、突如として降って湧いたように真相が明かされるのも、なんだか不自然な気がした。
しかし、その真相はなかなか驚くべきもので、ラストに至ってやっと話が締まってきた感がする。
色々と描き足らない部分があったように思うが、終盤だけは十分楽しめたので良しとすべきだろう。
夏と冬の館で同時に殺人が並行して進行していくのは、なかなか良いアイディアだった。

No.312 6点 本格ミステリ・ベスト100- 事典・ガイド 2013/06/27 22:33
1975年から1994年までの20年間の国内・本格ミステリ・ベスト100。
注目の第1位は、ん?と疑問符付のあの作品。創元社から出版されたせいなのか、よく分からないがどうにも納得しかねる。
まあ確かに傑作だとは思うけど、しかしこれが第1位とは、万人が認めるとはとても思えない。
第2位も、個人的には高評価だが、あくまでエンターテインメントとしての評価であって、本格ミステリとなるとどうだろう。
この二作には何となく違和感を感じる。堂々の1位2位って感じがしない。
他にも、これがベスト10入り?みたいな作品も個人的にはあるので、納得のベストとは言い難い。
数えてみたら、ベスト100の中で、既読なのは79作品だった。逆に言うと、21作品は読めていないので、その辺りまだまだ未熟だと感じた。まあ敢えてそれらをこれから読もうとは思わないけどね。
しかしまあ、それぞれの評論を読んでみると、なかなか的確に評価されているし、中には本質を突いているのも見受けられ、この手のガイドブックにしては質が高いのではないだろうか。

No.311 8点 奇想、天を動かす- 島田荘司 2013/06/25 22:36
再読です。
吉敷竹史シリーズの最高傑作が『北の夕鶴2/3の殺人』だとすれば、本作はさしずめ集大成と言ったところか。
とにかく、不可思議、不可能犯罪を無理はあるにしても合理的に処理する豪腕は、さすがに島荘である。
例えば死体の周りにぐるりと火の付いたろうそくが並んでいる理由などは、常人にはちょっと考え付かないものではないだろうか。
ただ、犯人の存在感がやや薄く感じられたのは少々残念な気もする、もっとこの一見頭の弱そうに見える老人をクローズアップしても良かったと思うが、いかがなものか。
まあしかし、あれこれ文句をつけても、本作は島田氏の代表作の一つであるのは間違いないだろう。

No.310 7点 天に昇った男- 島田荘司 2013/06/16 22:44
再読です。
まさに異色作という言葉がピッタリの作品。一応社会派とジャンル分けされているが、どちらかというとファンタジーに近い内容となっている。あのオチがなければ確かに社会派だが・・・
冒頭の死刑執行のシーンは、真偽のほどは定かでないが、私にとっては十分にリアリティの感じられるものであり、その後の展開も意外ではあったが、そんなこともあるのだろうかと初読の際は思ったものである。
知恵遅れの少女との恋、前科者に対する差別、死刑を生き延びた奇跡的な男のロマンなど、短いページ数のわりには様々な要素が盛り込まれており、充実した中身となっている。
なので、ミステリとしてよりも一つの物語として楽しめると思う。
そして読者を島田氏独自の世界へ誘う筆力は相変わらず素晴らしいものがあるのではないだろうか。

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メルカトルさん
ひとこと
「ミステリの祭典」の異端児、メルカトルです。変人でもあります。色んな意味で嫌われ者です(笑)。
最近では、自分好みの本格ミステリが見当たらず、過去の名作も読み尽した感があり、誰も読まないような作品ばか...
好きな作家
島田荘司 京極夏彦 綾辻行人 麻耶雄嵩 浦賀和宏 他多数
採点傾向
平均点: 6.02点   採点数: 1769件
採点の多い作家(TOP10)
浦賀和宏(33)
島田荘司(25)
西尾維新(25)
アンソロジー(出版社編)(23)
京極夏彦(22)
綾辻行人(22)
折原一(19)
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森博嗣(17)