皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
メルカトルさん |
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平均点: 6.04点 | 書評数: 1901件 |
No.661 | 7点 | 死の命題- 門前典之 | 2016/07/24 21:56 |
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雪で閉ざされた山荘というクローズド・サークルものにありがちな、前半はやや退屈で殺人が起こるまでが長い。探偵の蜘蛛手が登場するあたりから、俄然面白くなるのでそれまでは我慢が必要か。
かなり以前の作品とは言え、携帯電話はすでに普及しているはずだが、6人のうちだれも携帯していないのはやや不自然な気がする。他にも探せば不自然な描写がみられるかもしれないが、極力整合性を保とうとする姿勢などに苦心が感じられる力作だとは思う。 バカミスとの声が多いが、私は意外とそうでもないように感じる。確かに真相はそんな無茶なと思うが、それを言い出したらキリがないので。それにしても巨大カブトムシの亡霊の正体には戦慄を覚える。これほど意外な奇想はそうはお目にかかれない。よって、それだけで高得点を与えられる資格を持つものと、個人的には信じたい。 |
No.660 | 7点 | 鈴木ごっこ- 木下半太 | 2016/07/16 22:09 |
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厳密にはミステリと呼べるかどうかわからないが、骨格はそれに近い。これがとにかく面白い。
それぞれ2500万の借金を抱えた4人の男女。彼らは半強制的に一年間鈴木として生きることで、借金を帳消しにしてくれるという話に乗る。37歳の主婦、小梅(仮名)は仮の家族のために一生懸命美味しくバランスの取れた食事を作る。男たちは何をするわけでもなく、家族ごっこを続けるのだが、どういうからくりで借金が消えるのかが分からない。そこに借主からある指令が下る。 それぞれのやむにやまれぬ事情を背負った彼ら、ややもすると暗い話になりそうなところを、ユーモアやくだらないギャグで相殺している。なので、読んでいて肩が凝らない。 しかし、結末はかなりブラックである。しかも最後の最後で叙述トリックが仕掛けられていることが明かされ、二度びっくりすることになるのであった。 |
No.659 | 7点 | 屋上の道化たち- 島田荘司 | 2016/07/14 22:16 |
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さすが島田先生、群を抜くリーダビリティで一気に読ませます。
全編を覆うコミカルな雰囲気と連続墜落死という不可思議な謎の対比、それに並行するように寄り添うしがないサンタクロースのティッシュ配りの思いがけない展開、何かとついていない男の苦行。これらが混然一体となって一つの収束に向かうプロットは、島荘の本領を発揮していると私は思う。 ただ、トリックには確かに無理があるし、あまりに偶然が重なりすぎており、さすがに手放しで称賛するわけにはいかない点も多い。それも含めてのこの点数である。甘すぎるかもしれないが、往時の重厚な雰囲気の欠片も感じられないが、それでも本作にはどこか憎めないところがある気がしてならない。 作風はずいぶん変わってしまったが、御手洗だけはあの頃と変わらないのが嬉しいのである。 |
No.658 | 5点 | 桟敷童の誕- 佐々木禎子 | 2016/07/11 22:14 |
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物語は天城という青年が関口に弟子入りしたいと、関口邸に押しかけ、それを京極堂に相談するところから始まる。天城の一族は劇場をいくつも経営しており、そこには度々桟敷童という妖怪が現れると言う。「その人形は僕が祓うようなものではない」と京極堂は言うのだが・・・
正直、妖怪云々はまやかしだし、一応殺人事件は起こるのだが、これがまた地味で妖しくもなければ謎めいてもいない。真相がわかってみれば脱力感は拭えない。 では何が面白いのかといえば、京極堂、榎木津、関口、木場のそれぞれのキャラが際立っているのと、彼らの絡みが「いかにも」な感じがして懐かしさを覚えるのである。残念ながら京極堂は脇役みたいなもので、主役は榎木津であり、どちらかというと百鬼夜行シリーズよりも百器徒然袋に近いかなと思う。それにしても、こうしたパスティッシュを読むたびに本家の新作を読めない一抹の寂しさに襲われる。 |
No.657 | 7点 | ヒポクラテスの誓い- 中山七里 | 2016/07/07 22:25 |
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法医学教室での人間模様と、一見事件性がないように見える遺体を司法解剖し、そこから見えてくる真実を緻密なタッチで描いた連作短編集。佳作である。
主役は単位不足のため法医学教室に送り込まれた真琴、傲慢で我が道を行く解剖の天才光崎教授、外国人なのに日本語が堪能なキャシー准教授の三人。そこにおなじみの古手川刑事が絡んでくる。 どの短編もレベルが高く、単純に思える事件が司法解剖を行うことにより意外な事実が浮かび上がってくるところは共通している。専門用語が散見されるが、医学に詳しくない一般の読者にも比較的理解しやすいように書かれており、しかもその結末は様々な意味でのカタルシスを生み出すのだ。さらに、解剖に反対する遺族をいかに説得するかも、読みどころであり、サスペンスフルな展開となっている。 中には涙を誘うシーンなどもあり、物語は意外に起伏に富んだものが多く、読者を惹きつけて離さない魅力に溢れている。この辺りはさすがに中山氏の本領を発揮していると思われる。 |
No.656 | 5点 | クリーピー- 前川裕 | 2016/07/02 22:09 |
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怪しい隣人をはじめ、主人公の周囲に様々な事件が起こりすぎて、全体的にまとまりがなく、どこを主題としてストーリーを進めていくのかが不透明に。それぞれの事件はさして複雑ではないが、構成が巧妙とは言えずどう展開していくのか予測がつかないため、読んでいて不安定な気分になってくる。そこが作者の狙いなのかもしれないが、心地よいとはあまり思えない。これはマイナス要素ではないだろうか。
結末は意外性があって面白い。個人的には好みではあるが、そこに至るまでがやや煩雑で明快さに欠けるため、万人受けする作品とは言い難い。 |
No.655 | 6点 | 一八八八 切り裂きジャック- 服部まゆみ | 2016/06/25 22:23 |
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読んでも読んでも終わらない。文庫で770ページの大作、しかも文字が新聞のように細かいので、一般の文庫本なら軽く800ページは超えているだろう。だが、決して時間の無駄ではなかったとだけは言っておこう。
これだけ長尺なのだから、切り裂きジャックに関する考察や人物像の構築がふんだんに見られるのかといえば、そうでもない。ストーリーは主に主人公の柏木が霧のロンドンで体験する冒険譚を中心に進行し、切り裂きジャックによる犯行そのものにはあまり触れられていない。だが、当時の世相やかの地の生活ぶりなどが事細かに描かれており、なかなか面白い。さらにはエレファント・マンやバーナード・ショウ、森鴎外などなど実在の人物が多数登場し、その意味でも読みごたえがある。 印象深いのはエピローグで、芳しい文学の香りがそこはかとなく漂って、物語の締めくくりにふさわしいものになっていて好感が持てる。 |
No.654 | 7点 | 殺しの双曲線- 西村京太郎 | 2016/06/14 22:03 |
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冒頭の双子トリックをやりますよという宣言が、逆に真のトリックを隠ぺいするという騙しのテクニックに。これはなかなか心憎い演出だと思う。
二つの異なるストーリーがどう考えても繋がりそうにないが、結局うまく一つに収束する辺りはプロットのうまみを味わえる。しかし、肝心の吹雪の山荘というクローズド・サークルのパートに緊迫感と迫力が不足しているように感じる。さらに文体が軽い分、全体的に希薄さが拭いきれないきらいがある。はっきり言ってしまえば、薄っぺらな感じがして仕方ない。重厚さに欠けるのである。 ラストは余韻を残す感じで、個人的には好みの範疇。 |
No.653 | 7点 | ユリゴコロ- 沼田まほかる | 2016/06/08 22:01 |
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「ユリゴコロ」と題された殺人者の手記をめぐる謎、記述者は誰なのか、主人公が感じている母親の入れ替わりは本当にあったのか。など興味をそそられること請け合いで、さらにここではイヤミスの本領を発揮している。
また、現在進行形のストーリーにおいても謎めいた出来事が起こり、こちらも目が離せない。そしてまさかの形で過去と現在がリンクする。確かに勘のいい読者ならこのからくりに気づくことも可能だと思うが、当然私のごときぼんくらには無理な話。まんまと騙されたのである。 ある人物の変容ぶりには首を傾げたくなるが、よく読むとそのヒントはしっかり描かれているし、最終的にはハートフルな物語だと気づかされ、前半とのギャップには驚かされるばかりだ。 |
No.652 | 6点 | 天啓の殺意- 中町信 | 2016/06/03 22:23 |
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なるほどそう来たか、とは思う。確かに叙述トリックには違いないが、それほど騙された感は覚えなかった。30年前なら手を叩いて喜んだかもしれないが、もっと鮮やかな叙述ものを沢山経験してしまったため、この程度では大したカタルシスは得られない。そんな体質になってしまった自分が恨めしい。
それにしても原題の『散歩する死者』の意味がいまいち読めない。作者がお気に入りのタイトルだったらしいが、死者が散歩するとは一体どういう・・・。 平均点が高いのでもっと期待していたが、やや裏切られた感は否めない。しかし、意外に読みやすかったし、プロットの妙というのか、その辺りはよく練られていたと思う。 |
No.651 | 6点 | 虚構推理 鋼人七瀬- 城平京 | 2016/05/29 22:39 |
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これほど特異な設定の「本格」ミステリはほかに見当たらないのではないだろうか。
人ならざる存在が現実のものとして現れるミステリなど、あってはならないとは思わないが、異端であることは間違いない。主要登場人物からして普通の人間ではないのだから、何をかいわんやである。 しかし、クライマックスの虚構のでっちあげよりも、それまでのキャラ同士の絡みのほうが面白いのだから、やはりラノベに近いのかもしれない。いかにも漫画的で、文章が絵として浮かび上がる辺りは、本作の真骨頂といえるだろう。 これほど異様な世界観を描いた物語は、のちのちまで記憶に残りそうな気はする。それだけでも読んだ価値はあったのではないかと思ってしまうのだが。 |
No.650 | 5点 | 人形家族 熱血刑事赤羽健吾の危機一髪- 木下半太 | 2016/05/23 22:17 |
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警視庁行動分析課の刑事赤羽健吾が主役である。行動分析課とは容疑者の言動を分析し、心理面やこの先何を起こそうとしているのかなどを予測する特殊なチームだ。
このチームは他に、課長の八重樫育子、後輩の栞、ベテラン刑事のヤナさんらがいる。いずれも個性的なメンバーではあるが、ガチガチの警察小説とは違い、その底辺にはうっすらとユーモアが漂っている。 事件は数体のマネキンとともに、食卓の椅子に縛り付けられた死体が発見されるというもので、連続殺人事件となる。ホワイダニットが謎の中心で、伝説の刑事と呼ばれた健吾の祖父が絡む過去の事件もカットインされ、次第にその全貌を現すのだが。 警察小説としてお世辞にもよく出来ているとは言い難いが、所々に読者サービスらしき描写が挿入されており、飽きることはないだろう。どこをどう取ってもまずまずとしか言いようがない。 |
No.649 | 7点 | 鬼畜の家- 深木章子 | 2016/05/19 22:22 |
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明快で分かりやすい文章でグイグイ読ませる。イヤミスと本格ミステリの融合というか、イヤミスと見せかけて実は本格だったというのが本当のところか。
ほとんどが事件の関係者の証言により構成されているが、実はこれがメイントリックを支えている大きな要因となっている。そのトリックだが、意外性はあるものの、いささか強引と言えるのではないだろうか。島田荘司氏による解説にもあるように、決して目新しいものではないが、作者なりに咀嚼し、しっかりと自分のものにしているのは褒められてもよいとは思う。が、やはり無理がある。警察が本格的に関与すれば即座に暴かれるトリックというのはどうなんだろうか。 そうは言っても、面白い小説であるのは間違いないし、私などがケチをつけてもその輝きが失われるものではあるまい。ただ、後味が良いとは言えないねえ。 |
No.648 | 6点 | 白光- 連城三紀彦 | 2016/05/14 22:26 |
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一見平和に見える、どこにでもありそうな親族たち。だが、姉妹とその夫、子供と舅、それぞれが嫌らしいほどの思惑を胸に抱いており、善人は一人もいない。これだけドロドロした思念を持った人々を描いているのならば、普通は嫌悪感は拭いきれない作品になるはずだが、連城氏の手によるとそうはならない。殺人事件がまるで夢想の中で起こったかのような錯覚さえ覚える。
結局実行犯は明らかになるが、主犯は誰なのか。もしかすると一族全員の想いが殺人事件に発展させたとも言えそうであり、プロバビリティの犯罪の変形とも言えるかもしれない。 いずれにしても、本格好きな読者には不向きだと思う。どうにももやもやした消化不良な感じが心の中にしこりとなって、いつまでも残るからである。それもまたこの作品の持ち味なのであろう。 |
No.647 | 7点 | ケムール・ミステリー- 谺健二 | 2016/05/08 22:15 |
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タイトルから推測するに、多くの方がイロモノ的な作品を想像されると思うが、決してそうではない。異色というか奇書と呼ぶべきなのか判然としないが、れっきとした本格ミステリであるのは間違いないのでご安心を。
六甲山中の赤屋敷と呼ばれる大邸宅のはなれで、奇妙な「自殺」事件が連続する。現場の状況はいずれも密室で、一見自殺に違いないと思われるのだが、事情を関係者から聴取した探偵役の鴉原はこの一連の自殺の事案に疑問を抱き、友人の多磨津と共に赤屋敷に乗り込む。 ケムール人とはウルトラQやウルトラマンシリーズに幾度も登場した、一度見たら忘れられない容姿をした宇宙人である。本作はこのケムール人が至る所に登場し、まさにケムール尽くしとも呼べる作品となっている。この怪人の生みの親である成田亨の残した遺産なども紹介され、その孤高の芸術家ぶりも記されている。残念ながらこの本ではケムール人の静止画などは記載されていない。個人的には著作権や肖像権が複雑な模様で難しいのかもしれないが、表紙に堂々とこの怪人を載せてほしかった。 鴉原の暴く真相は、様々な手がかりをもとに緻密な推理を重ねたというものではなく、その点でやや不満の声も聞こえるかもしれないが、物語の雰囲気を含めて私はこの作品が好きである。少々の瑕疵には目をつむりたいと思う。 |
No.646 | 5点 | アトロシティー- 前川裕 | 2016/05/02 22:23 |
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冒頭から序盤にかけては、母娘餓死事件や悪質な訪問販売を迫力ある筆致で描き読者を飽きさせない。いわゆる掴みはOK、である。そんな私もかなりのめり込むことができた。
その後、主人公のジャーナリストである田島が事件を追うごとに、様々な人物に遭遇し、或いは自身が事件に巻き込まれるなど、なかなかいいテンポでストーリーは進行していく。現在進行形の事件や過去の事件が入り乱れる一方、登場人物も多彩なため、煩雑になりそうな危険性をキッチリと整理された文章で回避しており、その意味では腕は確かなものを感じる。 がしかし、一方でやや面白みには欠けるきらいがあり、さしたるサプライズもないのは個人的に物足りなかった。 サスペンスでありながら社会問題を扱っているため、社会派と捉えることもできる。解説には「エグミス」などと銘打たれているが、それほどえぐくはないと私は思うのだが。 |
No.645 | 6点 | 神社姫の森- 春日みかげ | 2016/04/26 22:21 |
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いろんな意味でネタバレになるので多くは語れないが、久保竣公の記憶を持つ作家久保竣皇はいったい誰なのか、というテーマでストーリーは進行していく。構成はいたって単純で、本筋は全体の半分ほどしかない。その他は京極堂の蘊蓄が大部分を占め、いささか退屈ではあるが、京極夏彦作品の雰囲気はある程度楽しめる。
前半は鳥口や木場らが本シリーズよりも妙に賢くなっている気がしてやや違和感を覚える。そしていよいよ榎木津の登場でにわかに面白くなるのかと思えばさにあらず、いつもの勢いがいまひとつ感じられず、やや格好悪いのが不満といえば不満。 だが結局拝み屋の憑き物落としと最終章には妙に納得なのであった。 尚、久保竣皇の正体は誰にでもすぐわかってしまうはずだから、そこは期待しないでいただきたい。しかし、本家京極堂シリーズの刊行が絶望的な今、こうした作品でも読んで昔を懐かしむのも悪くはないだろう。 |
No.644 | 6点 | 火の粉- 雫井脩介 | 2016/04/21 22:14 |
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まあ、面白かったですよ。普通にサスペンスとして。
でもねえ、いわゆる怪しい隣人としての、武内の不気味さが今一つ伝わってこなかった気がするのも事実。あまりあからさまに異常性を暴き出してしまっては、サスペンス小説として機能しなくなるし、だからと言って単なるいい人の面だけを強調しても締まりがなくなってしまう。そのあたりのバランス感覚は優れていると言ってもいいだろう。 ドラマ化には大変向いていると思う。脚本次第では手に汗握る本格的なサスペンスドラマに仕上げることも可能かと。ユースケ・サンタマリアはどうなんだろう。ややおとなしすぎる感じがしないでもないが・・・やはり観てみないと分からないなあ。 |
No.643 | 8点 | 追憶の夜想曲- 中山七里 | 2016/04/15 22:13 |
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うーむ、これは7点以下は付けられないな。
法廷ミステリでありながら、根幹はまごうことなき本格ミステリだ。主人公、悪辣弁護士御子柴と検事岬(岬洋介の父親)の対決は読み応え十分だが、それよりも逆転裁判が現実のものとなったのちの結末が素晴らしい。 単純に思えた事件の顛末は意外性に満ちており、これほどまでにドラマチックな物語に昇華してしまう手腕はさすが中山氏といったところであろう。すべての登場人物にしっかりとした役割が与えられており、その意味でも大変密度の高いミステリに仕上がっているように思う。 探偵役は御子柴だが、彼はなんと○○○でもあるのが新しい。 とにかく完成度の高い本格ミステリであり、一気読みがお勧めだ。文庫化されたこの機会にぜひみなさんに読んでいただきたいものだ。 |
No.642 | 6点 | OUT- 桐野夏生 | 2016/04/08 22:12 |
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様々な重荷を背負った女たちの暗い日常を赤裸々に描き、さらにその日常からこぼれ落ちていく様を乾いた筆致で綴った力作だと思う。だが、残念ながら私の肌には合わなかった。
中盤までは死体の解体を中心に、主婦たちの内面から生活様式までを描き切り、一方で警察の捜査も含めて追う側、追われる側両面からのクライムサスペンスとして見どころも多い。しかし、それ以降は意外というか行ってほしくない方向に向かってしまい、ラストはなんとなく付いていけないなと感じる結末に落ち着いており、個人的にはやや不満が残るものとなっている。 死体解体シーンは全くグロくない。と思う。また、途中から全く警察の追及が描かれなくなり、私などはそんなはずない、もっと早く真相に至るだろうと疑問に思ったりもした。その辺がないがしろにされているのはどうなんだろう。 |