皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
江守森江さん |
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平均点: 5.00点 | 書評数: 1256件 |
No.696 | 5点 | リスの窒息- 石持浅海 | 2010/03/27 13:52 |
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最初に、女子中学生の局部表現は小説でも「猥褻物領布」先々は「チャイルド・ポルノ規制」に抵触しかねない(ホントか?)
狂言誘拐物として大手新聞社の社員達が女子中学生に翻弄される展開は楽しく読めた。 しかし、相変わらず行動原理が作者独特の動機や倫理観に基づいている為に納得しかねる。 作品が成立しなくなるが、サッサと警察に通報しろ!と思う(私なら常務を拘束して警察に通報し、責任は警察に丸投げする、その責任で会社を解雇されそうになったら裁判で争う) 次に、新聞社のやり手社員なのに被害者の住所をたぐる事への気付きがご都合主義的に遅い(私は誘拐メール到着時に次善策として直ぐに考えた) 更に、狂言誘拐を考えた女子中学生も、これだけの能力があるのだから、作品以前の場面で母親に直接浮気を止めさせるとか、父親に離婚を決意させるとか対処出来ただろうと考えた。 誘拐の成功は奪った金を堂々と遣える時点だと思っているので、根本的にこの狂言誘拐は新聞社の社員達が‘普通な大人レベル’の対処行動をすればどう転んでも成功しないのが見えて弱い。 作品成立の根底を否定したくなる面が払拭出来ない事と一気読みの楽しさを相殺したら水準レベルになった。 |
No.695 | 5点 | 影の凶器- 梶山季之 | 2010/03/27 09:03 |
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作者の真骨頂とも云うべき産業スパイ物の一冊。
スパイ方法が会社の重要情報を仕切る重役の秘書を誑し込むセックス・スパイで、現在でも対象相手を選べば通用していると思える位にリアル。 タイトルを「影の凶器」としたセックス・スパイだと悟らせない手口は恋愛にも応用可能で、一風変わった実用書でもある。 |
No.694 | 4点 | 女の警察- 梶山季之 | 2010/03/27 08:52 |
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和製ハードボイルドと言うか「盛り場ミステリー」で夜な夜な銀座に出没した作者らしい作品。
今読み返すとさほどエロくないのに「猥褻物領布」で略式起訴された曰く付きな作品でもある。 しかし、作者の作品の面白さはエロくてユル〜い方面であると思っているのでシリアスなこの作品は好みではなかった。 シリーズとして何作でも書けそうな主人公を結末で殺してしまう辺りは作者らしい。 ※余談 女性の名器の俗称の一つである「ミミズ千匹」はこの作品で世に広まったらしい。 |
No.693 | 5点 | モルグ街の殺人- エドガー・アラン・ポー | 2010/03/27 08:15 |
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再読するまで「歴史的価値以外に評価すべき点が無く、現在視点では陳腐極まりない」と書評し「盗まれた手紙」の書評と対比させる予定だったのだが・・・・・。
確かに、犯人像なんか知れ渡り、その部分だけをピックアップすると陳腐ではあるが、そこに至る過程は正しく本格探偵小説の原点だった。 それでも読んで面白い(私的評価の第一義)か?と問われれば微妙としか言えない。 私的な評価基準では、書かれた時代を考慮はするが「現在視点で読んでも面白みや‘納得’があるか」に重点を置いている。 この作品の意義や影響について知りたい方は沢山評論があるので自分で勉強して下さい(私的に評論を幾つか読んだが疲弊しただけに終わった) ※ボヤキ 趣味で楽しむ為の読書が学生時代に強いられた勉強みたいでは堪らない。 それでも息子に「勉強しなさい」と言ってしまう自分がイヤになる。 |
No.692 | 7点 | 盗まれた手紙- エドガー・アラン・ポー | 2010/03/27 07:53 |
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※但し書き
私的な歴史的古典作品の書評方針を「モルグ街~」とこの作品を利用して表してみた。 どちらかと言えばファジーな選択を好むので未読な儘の膨大な古典作品群は「乱歩のトリック集成」や「藤原宰太郎のネタバラシ推理クイズ」で済ませたい気持ちが強い(読むべきか?読まずに済ますか?の線引きに悩む) さて、この作品だが時代に風化・埋没しない最たる例だと思う。 この作品の肝な部分は現在でも多数転用されているし、パクリと批判されるどころか上手く見せれば褒められもする。 話のタネの為だけに読んでも価値がある。 書かれた時代を考慮せず、現在視点でも高評価になるだろう。 |
No.691 | 4点 | 現金強奪計画―ダービーを狙え- 西村京太郎 | 2010/03/27 06:46 |
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映像化されれば面白そうなクライム・サスペンス。
日本国内で真面目に大掛かりな犯罪に取り組む姿を描くと普通にドタバタミステリーになる。 作者が中山競馬場より東京(府中)競馬場に馴染みがある点とレース知名度から、売上世界一・年末の風物詩「有馬記念」が対象レースでない事に私的な不満があった。 初期の作者は本格ミステリから大型犯罪物まで手掛け‘トラベル・ミステリー’一辺倒な二時間ドラマ御用達作家になるとは想像できなかった。 |
No.690 | 6点 | 白の恐怖- 鮎川哲也 | 2010/03/26 04:55 |
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詳細不明だが(不満点が多々あり)生前作者が「白樺荘事件」(予告有)として改稿を視野に入れていた為に絶版後の復刊を許可しなかった作品で、読める可能性は限定されている(所有するマニアの友人から借りるOR都内某図書館の蔵書を他地区利用する等)
閉ざされた雪の山荘での遺産相続を巡るサバイバル・サスペンスな雰囲気をミスリードにした仕掛けミステリ。 ※以降、作品の狙いに触れるので要注意!! 解決編手前の章(日記形式なので最終日前日)の“終わり二行目”で驚きを得られるかが作品評価の分かれ目になる(綾辻「十角館〜」・我孫子「殺戮〜」・歌野「葉桜〜」レベルにはあると思う) 解決編(星影竜三登場は謎解きのみ)までは登場人物達も犯人に騙される究極の叙述トリックになっている。 しかし以下の点に減点要素がある(作者もこの辺りに不満だったと想像した) 1.伏線に乏しい。 2.閉ざされる以前に山荘以外の場所で最初の殺人が発見される(アリバイから作者の狙いに到達できる) 3.閉ざされた山荘に警察関係者も居て緊迫感が薄い(ミスリードとして弱くなる) さて、改稿されていたら「りら荘〜」「黒いトランク」などに並び得る傑作に仕上がっただろうか! ※星影竜三の表記は作品上の表記に準じた。 |
No.689 | 4点 | 網にかかった悪夢- 愛川晶 | 2010/03/25 22:28 |
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今作以前では探偵役の根津愛をワトソン役に移行させ新たな美形探偵を覚醒させる新シリーズ。
どうもパッとせず根津愛の登場する作品すら次で打ち切りになった感がある(作者が作家として健在な限り可能性だけは常に存在するので断言はしない) 新シリーズの紹介編に終始するのとサイコな感じのミステリーでわざわざ新シリーズなんて不必要だと思えた。 今では年一冊書き下ろしの落語新解釈ミステリーだけを渇望される作家になっている。 |
No.688 | 2点 | コズミック- 清涼院流水 | 2010/03/25 01:53 |
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ミステリーの範疇に含めるか?との大前提をすっ飛ばしていた(そんなのドウデモイイ)←追記
この作品をバカミスとして評価するかダメミス・クズミスと評してゴミ箱に叩きつけるかはミステリーに対する踏み絵なのかもしれない。 私的には、アンチ・ミステリの亜流であるとの認識でクズミス認定しワーストランキングのチャンピオンを早見江堂と争う作家だと思う。 ゴミ作品も躊躇せずに読んで来たが、以降の作品が余りに分厚いので先に進むのを断念した唯一の作家でもある。 今やミステリーとは別世界の人なので、さほど影響はない。 |
No.687 | 6点 | 越境捜査- 笹本稜平 | 2010/03/25 01:36 |
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先にドラマを観て原作者は今野敏だろうと勝手に勘違いしていた。
勘違いの儘でも問題ない位に小説も今野敏「隠蔽捜査」シリーズ風味で、作者名を伏せて読まされ「キャラと設定を変えた新シリーズだよ」と説明されたら納得するだろう。 取り敢えず面白いので出版されている第二弾と先月から連載開始した第三弾も追いかける予定。 警視庁と神奈川県警は本当に仲が悪いらしい! |
No.686 | 4点 | UNKNOWN- 古処誠二 | 2010/03/25 01:22 |
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出版当時、本格ミステリとして手にしたので肩すかしな感じだった。
そんな事より、今や作者の紹介文では「戦争作家」が謳い文句で普通なミステリー読者とは関係ない世界へ逝ってしまった。 私的な感情だが、未だに外交で折に触れ戦争責任を持ち出す中国・韓国と同様に不快なので戦争関連小説はなるべく読まないと決めている。 |
No.685 | 4点 | GOTH リストカット事件- 乙一 | 2010/03/25 01:07 |
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ミステリとしての寄せ集め感、壊れた世界、ブラックなラノベ風味、読み辛いわけでもないのに読むのが苦痛でしょうがなかった。
アンソロジーで一編だけ読んだ時にはさほど感じなかっただけに連打でノックアウトされた気分。 最近、年齢の関係か波長の合わない若手作家がとみに増えてきている。 ※余談 本格ミステリ大賞も結構キワモノや微妙な作品に平気で受賞させてるな~と呆れている。 候補作のノミネート方法が根本的に間違っているのに何故か改善されない。 |
No.684 | 4点 | 蒸発- 夏樹静子 | 2010/03/25 00:40 |
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遥か昔に、角川文庫の推理小説フェアか何かで天藤真や鮎川哲也と一緒に平台に並べてあったので勘違いで購入した。
その当時に読んだのだが、トリック云々以前の問題としてガキな少年が大人の女性が描く愛のカタチを理解出来ずに消化不良だった記憶しかない。 それ以来作者から離れ、映画化と同時に読んだ「Wの悲劇」以外接していない。 わざわざ再読すべき作品とも思えないのが慰めになっている。 |
No.683 | 6点 | 事件屋悠介- 清水一行 | 2010/03/23 23:29 |
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作者のご冥福をお祈りします。
骨太で重厚なドキュメンタリータッチな経済小説からコミカルなエロ・博打・一代記、更には社会派推理まで作風は幅広い。 この作品は汚職情報をネタに元凶に食い込んで上前をハネる事件屋を描いたドタバタ・ピカレスクロマンで、ゆる~い方面での作者の持ち味が活きている。 ※補記 本来なら作者の真骨頂である一代記、とりわけ好きな「不敵な男」の書評で追悼したかったのだがミステリーでは無いので、少しでもミステリーである「この作品」にした。 |
No.682 | 7点 | 幻影城の殺人- 篠田秀幸 | 2010/03/23 05:21 |
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弥生原公彦シリーズ第二弾。
ハルキ・ノベルスらしさ全開で、角川春樹への賛辞な舞台設定もリアルタイムに角川映画に接した世代にはノスタルジックで楽しい。 本格探偵小説らしい「読者への挑戦」も嬉しい。 トリック(一部)を拝借した森村誠一まで登場させるサービス有りの四重密室は(私は胴体運び出しの疑問点から犯人と操りに到達したが)既存トリックの組み合わせだが構成は上手い。 空中密室の方は、他に推理のしようがないパターンなのでヒントと言える。 斬新さの面で満点には一歩及ばない。 ※オマケの解答 作家は年代順に綾辻・京極・清涼院、大物編集長は宇山。 それよりも、作者をモデルにした登場人物を高木誠一と高木彬光の本名にし、「人形はなぜ殺される」を度々引用した遊び心に口あんぐりだった。 |
No.681 | 6点 | 犯人に告ぐ- 雫井脩介 | 2010/03/22 22:47 |
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映画を先に観てしまったが全く問題なかった。
ミステリー要素に関しても、この手の警察小説ならさして違わない。 エンターテインメントとしてはキャラ立ちも含めて非常に面白いので合格点には達している。 ミステリーでも、推理せずに読める小説は楽で息抜きになる。 |
No.680 | 5点 | 悪夢のエレベーター- 木下半太 | 2010/03/22 22:31 |
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これまたミステリーの範疇に含めるか微妙な作品。
パニック・エンターテインメントとして非常に楽しく、一気読みし、後は忘れて何も残らない。 某作家が面白ければミステリーと言っていたが、それの代表例として挙げたい! 映画化作品も同様に面白い(←ゴメン:映画を観たつもりだったが観たのはドラマの方だった) |
No.679 | 4点 | 獣たちの熱い眠り- 勝目梓 | 2010/03/22 22:13 |
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官能バイオレンスがミステリーの範疇に含まれるのか判断は微妙で、含まれるとするならSM小説の大家である団鬼六や千草忠夫の一部作品はミステリーになってしまう(複雑な心境)
暴力的なバイオレンスに主眼を置いた大藪春彦とは違い、官能的なバイオレンスに力点がある。 官能的バイオレンスとSMの違いは合意のもとに成立しているかどうかなのだが、小説ではどちらも強姦で違いは感じられないのが残念。 この作品を映画化した村川透監督が「土曜ワイド劇場」などで監督としてクレジットされていて驚いた。 脚本家「葉村彰子」名義の一員として書いた「江戸を斬るⅡ」での遠山桜を見せ付け‘ない’金さんが作者では一番秀逸だと思っている。 |
No.678 | 4点 | 赤の女王の名の下に- 汀こるもの | 2010/03/22 18:02 |
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メフィスト賞に応募した五作全てが出版された時点で作者の評価を見直さねばならないのかもしれない?
「本格ミステリをおちょくるラノベ風アンチ・ミステリな類」を一ジャンルと考え、ジャンルに沿った評価をするなら、シリーズ全作が頂点を争うレベルで満点になってしまう(要するに不快感を極めれば頂点に到達する) 断じてそんな評価はしたくない! 普通に広範なミステリーと考えればクズミス・ダメミス方向なシリーズに落ち着くし、そちらの評価の方が納得できる。 それでも、慣れなのか?達観なのか?不明だが楽しんで読め、ミステリーとは関係ない人生観なんか変に共感してしまう。 よって最低レベルより水準レベルに近い採点にした。 ※余談 自分の採点では3点と4点、7点と8点の間に1点差以上の壁がある(4~7点評価の作品は水準レベルで境界は微妙とも云える) |
No.677 | 4点 | 殺人の棋譜- 斎藤栄 | 2010/03/22 15:23 |
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本格ミステリ中心に選考されていた頃の乱歩賞受賞作でタイトルから将棋ミステリーだと分かる。
当時、将棋会館に偶に通う程度なへっぽこではあるが、将棋ファンだったので、将棋とミステリーがどの様に融合したか期待しながら読んだ。 将棋自体はタイトル戦の対局をサスペンスに絡めただけの誘拐物で、これが野球や他の対戦競技全てに転用可能な作品である事にガッカリした。 一応暗号ミステリー&誘拐物としては水準レベルなのだが、タイトルに「棋譜」と銘打つならゲームとしての将棋を融合させる位はしてほしかった。 もっとも、それが達成されていたなら今でも将棋ミステリーの金字塔として燦然と輝いているだろう。 |