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臣さん
平均点: 5.90点 書評数: 654件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.11 6点 悪魔の降誕祭- 横溝正史 2019/02/19 09:30
「悪魔の降誕祭」 6点
絵に描いたような本格ミステリー中編作品。ドラマでいえば、60分に収まりそうな内容です。でも、160ページだけど2つの殺人があって、それだけで楽しめる要素は十分です。しかもコンパクトなのでわかりやすい。
犯人に意外性があり、金田一の謎解きは筋が通っているのだが、なんとなく釈然としない。動機なのかなぁ?

「女怪」 7点
金田一の恋心がベースとなっている、というのが特徴の短編小説。ミステリー的にみればたいしたことはありませんが、個人的にはお気に入りのベスト短編です。

「霧の山荘」 6点
CC館モノか、いや、一族モノか?実際はどちらの要素もかなり薄めで、あっさりしている。
でも本格要素はすくなからず詰め込んであり、イイ感じに仕上がっています。
真相は中編ならではといった感じ。かる~く楽しめます。

No.10 7点 蝶々殺人事件- 横溝正史 2018/12/19 13:35
いま読んでも違和感はない。まあ現代風と言えなくもない。
トリックもまずまずの出来、いや多くの読者が感心するレベルだろう。
ただ、犯人はこの人しかいない、というのが欠点かな。でも当時は驚いたんだろうなあ。
ということで、いちおうは上出来レベルの評価である。

でも、そんな評なんてどうでもいい。
それよりもストーリーの記憶がまったくよみがえってこないことに驚嘆した。
映像を観てないせいなのか?
ずっと、なんとなくだが、横溝長編の中で本作は、6,7番目ぐらいの出来だと記憶していたが、これはひどい、ひどすぎる。(自分自身の記憶力のことです。)
金田一長編なら、「悪魔の手毬唄」「夜歩く」「犬神家」「獄門島」「女王蜂」
金田一短編なら、「女怪」
由利長編なら、「真珠郎」「蝶々殺人事件」
由利短編なら、・・・忘れた!    (時代物は読んでいない)
と、自分勝手なランキングを楽しんでいたのに、これもかなりあやしくなってきた。
たしか、数年前、「夜歩く」を再読したときも、もしかして初読かと思ったぐらいだ。
じつは、「真珠郎」「悪魔が来りて笛を吹く」は再読せずに書評したが、これらも2,3%ぐらいしか覚えていない状態だった。「手毬唄」も未再読だがちょっとマシで5,6%ぐらいか。「犬神家」の記憶は、映像版をなんども観たのでかなりマシ。
とにかくひどすぎる。

No.9 8点 夜歩く- 横溝正史 2016/08/30 09:53
ミステリー性も十分、物語性も十分。
制作時期は1948,9年。名作群『本陣』『八つ墓村』『獄門島』『犬神家』『悪魔』などとおおむね同じ、脂ののったころ(1945年~1960年)に書かれています。
良作かと思いますが、やや印象が薄いのは、金田一の登場が遅く、事件周辺の(一人称の私を含む)関係者たちが主人公に見えてしまうからなのかもしれません。

事件が起こるまで多くのページが割かれていますが、その部分のサスペンスは申し分なしです。その前半で関係者の人物像を、種々の事象を交えながら描写し進めていく流れは、そこだけ読んでいても楽しめます。
そして、後半(特に金田一登場後)、登場人物だけを見れば前後で何も変わりませんが、舞台をがらりと変えたのは、読者を飽きさせない絶妙な(ある意味安直な)ワザだと思います。これぞ、ストーリーテラー・横溝という感じがします。

最大に評価できるのは、アリバイトリックやあの真相を含む本格色全般でしょう。あれだけあれば上記作品群に決して負けていません。ただ、いろんな意味で問題や疑問点のある作品ではありますが。

No.8 6点 幽霊座- 横溝正史 2015/08/07 09:40
『幽霊座』『鴉』『トランプ台上の首』。金田一モノ中編3編が収録されている。

表題作は歌舞伎の世界が舞台。しかもその劇場、特に舞台裏の奈落が舞台となっている。舞台設定としては抜群だろう。映像化を狙ったような内容だ。
100ページ程度の話で、17年前の失踪事件から始まり、連続殺人も起き、派手な展開なのだが、やや尻すぼみ。舞台は日本的だが、いかにも海外ミステリーを参考にしているなという感じがする。
『鴉』。これも過去の失踪事件が発端となっている。『幽霊座』もそうだが、人間関係がミソ。これら2作は、その辺りを楽しむのがいいだろう。
『トランプ台上の首』はタイトルどおり、生首を見つけるところから始まる。なぜ、首だけが残してあったのか。その他、謎だらけで、ミステリーとしてはもっとも楽しめた。しかし、「蜘蛛」の謎は、ふつうに考えればわかるはず。

3作とも中編なのでやや物足りなさはあるが、横溝らしい雰囲気のある作品群といえる。
異なる作品でだが、等々力警部と磯川警部の両警部が登場するのも本書の楽しみの1つだ。

No.7 7点 本陣殺人事件- 横溝正史 2011/03/07 12:38
金田一初登場の歴史的作品。国内本格ミステリの指針となる作品でもあります。
でも理解できない箇所も多くあります。金田一の謎解き解説は、全体の短さに比べれば長めにページを割いていて、作者の意気込みが感じられますが、これを論理的解明というのでしょうか。やや飛躍ぎみかなとも感じました。

(以下ややネタバレ気味)
犯人と三本指の男との関わり方については、偶然性にたよったところがあり不満が残ります。機械トリックはまずまずといったところでしょうか。一方、三本指の男の例のセリフは申し分なし。動機については、「獄門島」と似たようなもので、この程度ならOKかなという印象です。まあ、両作品とも名作であることにちがいありません。

都筑道夫は、「黄色い部屋はいかに改装されたか?」の中で、本書について面白いことを述べています。三本指の男を登場させたことを大きな欠点として評した白石潔に対して、「論理で解明されれば、荒唐無稽な犯罪もそうでなくなると言ったところで、パズラー嫌いの人には通じないでしょうけど、パズラーを批評するひとが、うわべのグロテスクだけで、ものを言っては困ります。」と批判しています。
三本指の男の登場が重要なのはもちろん紛れもないことですが、パズラーは論理で解明できればそれでよしという考え方には賛同できません(なお私は決してパズラー嫌いではありません)。

近年、ミステリファンが論理、論理と叫ぶ風潮は都筑がきっかけなのでしょうか。論理って、そんなに大事なのでしょうか?
荒唐無稽な事件やトリックはなんら問題もありませんが、むしろ荒唐無稽な理由付け(飛躍しすぎの論理、無理やりの論理、くどすぎる論理)は、帳尻合わせをしているみたい(著者の言い訳を聞いているみたい)で興醒めしてしまい、マイナス評価になってしまいます。
「黄色い部屋はいかに」を読んでから本書や「獄門島」を読んだせいか、天邪鬼なため、大好きな横溝なのにちょっと批判的になってしまいました。
ただ、たんに自分の読解力が欠けているだけのことなのかなという気もしますが(笑)。

No.6 7点 獄門島- 横溝正史 2011/02/23 13:11
国内では絶大な人気を誇る横溝ミステリの代表作です。
何十年かぶりなので内容の記憶はほとんどなし。唯一憶えていたのが吊り鐘のシーン。他の横溝作品も似たようなものですが、本作は読後の感動すら忘れていました。というよりも、読後にあまり残らなかったのかもしれません。
今回の再読でも、傑作中の傑作だとは思われませんでした。トリックは映像的だが面白みなし、見立てはさほどの意味なし、動機は理解できず、横溝ならではの雰囲気も他の作品ほどではなく、ケレン味もわずか(横溝作品の中では地味)。良かったのは和尚のひとことだけ。これだけはすばらしい。
金田一が現場にいながら殺人を全く防げなかったのも不満の一つです。最後の種明かしは立派ですが、この程度なら並の探偵です。独自調査もなく、皆といっしょの行動をとり、しかも助手もなく、三人称で書かれているから仕方ないのでしょうか。逆に言えば、三人称で書くことで、読者への手掛かりサービスを十分にしたということでしょうか。それでも容易には解けないようにした会心の自信作ということなのでしょうか。ということはやはり傑作?
東西ベストミステリ100の堂々たる1位。これもうなずけません。
都筑道夫がどうして本作を「今日の本格」と呼んで褒めちぎるのか、そして「悪魔の手毬唄」「蝶々殺人事件」をなぜ「昨日の本格」と呼ぶのか?答えは「黄色い部屋はいかに改装されたか?」にあるのですが、これを読んでも納得しがたいです。とりあえず内容を忘れているのは再読しないとダメですね。

No.5 6点 悪魔が来りて笛を吹く- 横溝正史 2010/12/27 09:46
帝銀事件を模した「天銀堂事件」の事件場面がいつまでも記憶に残っている。「悪魔の手毬唄」ほどではないが十分に楽しめた。
今年は横溝を再読しようと思っていたが、他の未読作品ばかりを追いかけてほとんど手が出せなかった。来年こそはぜひとも。

No.4 6点 真珠郎- 横溝正史 2010/07/30 21:55
既読の横溝作品の中では、金田一が出ていないせいもあって、おどろおどろしさと悲しさを多く感じ、逆に笑えるところがほとんどなかった作品だった。こういう作品ばかりだと、おそらくなんどもブームにはならなかっただろうが、当時はこういうのも悪くないなと思ったものだ。
同じ由利麟太郎モノでも、最近読んだ「夜光虫」よりも作風としては明らかに自分に向いている。

No.3 8点 悪魔の手毬唄- 横溝正史 2010/07/30 21:51
私にとって、童謡の見立て殺人の初体験本です。ミステリー読者として初心者のころに、手毬唄に興奮しながら読んだ記憶があります。「犬神家」の次ぐらいに読んだので、まだまだ横溝のストーリー・テラーぶりには驚かされましたね。
当時は(今も)横溝作品の中で本書が最高峰だと思っていましたが、「犬神家」よりも記憶が薄れているぐらいなので、今回の評点は、とりあえずこの程度にとどめておきます。再読してから9点か10点を付けるかもしれません。
横溝の他の主流作品(金田一モノや映像化作品)は無条件にオール8点にしてもいいぐらいですが、記憶が全くない作品の書評は書きようがないですね。

No.2 4点 夜光虫- 横溝正史 2010/06/30 12:45
戦前の由利麟太郎&三津木俊助シリーズ作品です。
横溝作品は数十年ぶり。
本書のキーワードは、サーカス、ライオン、謎の時計塔、ゴリラ男、人面瘡、宝探し、そして美男と聾唖の美少女。横溝なら許せると最初は思っていましたが、荒唐無稽なストーリーが進んでいくと、まるでジュブナイルだなと途中で投げ出したくなってしまいました。
いちおう本格ミステリの形式を保っていますが、メイントリックは既読の横溝作品にもあったはずです。だからというわけではありませんが、途中で気が付いてしまいました。でも戦前に書かれた本書のほうが先のはず。そういう意味では価値ある作品かもしれません。
期待はずれの面はありましたが、再読したいと思っていた他の横溝作品の準備ができてよかったです。横溝の、あの大げさな言い回しには、少しウォーミングアップが必要ですからね。

No.1 8点 犬神家の一族- 横溝正史 2009/05/22 19:14
地方旧家のどろどろした雰囲気がよく出ていて、しかもリアリティのなさゆえ、かえって恐怖感をたっぷり味わえる。でも、その恐怖は、つまるところ人間関係、親子の情愛などからくるもので、意外に身近さを感じる。そんなところに人気の秘密があるのかもしれないな。

本作は記念すべき僕のミステリデビュー作品。若い頃、横溝作品は多数読んだが、みな似た雰囲気なので、今では記憶が交錯して、どれがどれなのかわからなくなってしまっている。でも本作だけは、映画の印象が強烈だから、記憶にはっきりと残っている。

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臣さん
ひとこと
あいかわらず読書のペースが遅い。かといってじっくり読んでいるわけではない。
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