皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
nukkamさん |
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平均点: 5.44点 | 書評数: 2814件 |
No.874 | 6点 | 危険な関係- 新章文子 | 2015/11/29 01:15 |
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(ネタバレなしです) 新章文子(1922-2015)は童話や少女小説、占い本なども書いていますがミステリーの第1作は1959年発表の本書です。この人のミステリー作品はどちらかと言えばサスペンス小説に分類されるものが多いようですが、本書は本格派推理小説です。作者の特徴である人物の心理描写の上手さは本書でも十分に発揮されており、単に個々人の性格描写だけでなく互いの関係や生き様にまで踏み込んで物語に深みを与えています。ただミステリーであることに忠実であり過ぎたのか、臣さんのご講評で指摘されているようにどの人物も腹に一物ありのようになっていて、それがサスペンスを盛り上げるのに寄与している一方でどこか物語的に余裕のないようにも感じられます。読者が共感を抱きやすい人物を登場させていた仁木悦子とはそこが作風の違いになっています。じっくり丁寧に作られたプロットではあるのですが謎解き場面はあっけなく終わり、読後の余韻は残りません。 |
No.873 | 5点 | 子どもの国の殺人者- デービッド・カーキート | 2015/11/27 23:13 |
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(ネタバレなしです) 米国の大学助教授であったデービッド・カーキート(1946年生まれ)が1980年に初めて書いた本格派推理小説です。デビュー作ゆえか文章がやや硬すぎるようにも感じましたが、容疑者同士の謎解き議論が暴走してしまう場面などは案外笑えました。残念ながら真相の推理説明が十分ではないように思います。それにしてもアミューズメントパークみたいな日本語タイトルは作品内容と合っていないのでは。英語原題は「Double Negative」で、舞台は5歳児までの言語習得過程の研究所(保育所を付設)です。 |
No.872 | 5点 | クイーンたちの秘密- オレイニア・パパゾグロウ | 2015/11/27 22:48 |
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(ネタバレなしです) 1986年発表のペイシェンス・マッケナシリーズ第3作の本格派推理小説です。「ロマンス作家は危険」(1984年)と同じく出版業界の裏舞台を描き、個性豊かな作家を揃えていますが特記すべきはパパゾグロウの夫であるデアンドリアを登場させていること。作者自身を作品に登場させているのは珍しくありませんが、身内を登場させるのは珍しいですね。やたらと好人物に描いているのが何とも微笑ましいです。プロットが複雑過ぎて全体的に読みにくいのが難点です。 |
No.871 | 6点 | 雪の断章- 佐々木丸美 | 2015/11/27 22:34 |
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(ネタバレなしです) 佐々木丸美(1949-2005)はその生涯からして謎めいており、残された作品はわずか17作、「榛(はしばみ)家の伝説」(1984年)を最後に執筆を止めただけでなく自作の再版も禁止するなど世間と距離を置いたまま世を去っています。1975年発表のデビュー作で後に映画化もされた本書は殺人事件があって推理による謎解きもあるのですが、ミステリー部分は全体の10%か20%ではないでしょうか。メインプロットは主人公の飛鳥という少女のおよそ10年間にまたがる青春物語です。飛鳥の心理描写は非常に複雑で、時には理解者にも心を閉ざすなどその行く末は目が離せません。随所で挿入される「雪」の描写も詩的な雰囲気づくりに効果的です。どうもこの作家はミステリー小説家というよりはメルヘン小説家として鑑賞するのがよいように思います。 |
No.870 | 5点 | ロンドン幽霊列車の謎- ピーター・キング | 2015/11/25 19:27 |
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(ネタバレなしです) ピーター・キング(1922年生まれ)は2003年以降作品を発表せず、年齢的にも引退したかと思いましたが2008年に非シリーズ作品の本書を発表しました(今度こそ最後の作品みたいです)。ヴィクトリア朝の英国を作中時代にして洗練された筆致で描いています。いきなり人間消失の謎で始まりますが第1章で明かされたのは脱力もののトリックでした。その後も音だけで姿の見えない幽霊列車や蛙の化け物など、まるで島田荘司が好みそうな謎が登場しますが演出はあっさり目です。前半は殺人犯探しの本格派推理小説風プロットですが後半は冒険スリラーに転じてサスペンスがどんどん高まります(しかし犯人探しは主目的でなくなってしまいます)。終盤以外は派手なアクションは控え目ですが、起伏に富んだストーリー展開でぐいぐい読ませます。 |
No.869 | 6点 | 白魔- ロジャー・スカーレット | 2015/11/21 22:48 |
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(ネタバレなしです) 1930年発表のケイン警視シリーズ第2作の本格派推理小説です。大勢の下宿人が住む豪邸(第9章で見取図があります)という、いかにも古典的な舞台に起きる殺人事件を扱っています。謎解きの魅力では同時代のアガサ・クリスティーの作品と比べても決して劣らないですが(巧妙なミスディレクションもあります)、容疑者たちとケイン警視との単調なやり取りに終始しているところがこの作者の限界でしょうか(クリスティーも人物描写に問題ありと指摘されることがありますが表情づけや会話の抑揚などでメリハリはつけていました)。本書の1番の特色は論創社版の巻末解説でも触れていますが、全24章の第9章で早々とケイン警視に犯人の名前を指摘させながらちゃんと終盤まで犯人探しを成立させているプロットでしょう。 |
No.868 | 5点 | 彼は残業だったので- 松尾詩朗 | 2015/11/18 10:02 |
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(ネタバレなしです) 島田荘司の傑作「占星術殺人事件」(1981年)を読んで刺激を受けた松尾詩朗(1960年生まれ)の2000年発表のデビュー作の本格派推理小説です。刺激どころかプロットのあちこちに「占星術殺人事件」の影響が見られますね。島田荘司は江戸川乱歩、高木彬光、そして自分自身の代表作を引き合いに出してまで本書を激賞していますが、本書がそれらと並ぶ古典的地位を将来得られるかは疑問です。軽妙に仕上げることは作者のねらいであり長所でもあるのですが、猟奇的犯罪を扱っているのですから凶悪事件のインパクトをもっとアピールしてもよかったのではと思います。人物描写に軽薄感がつきまとっているのも事件性と微妙に合っていない印象を受けました。大胆なトリックの説明が要を得てわかりやすいのは好印象です。 |
No.867 | 6点 | ネロ・ウルフの事件簿 ようこそ、死のパーティへ- レックス・スタウト | 2015/11/16 00:30 |
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(ネタバレなしです) ネロ・ウルフシリーズの「黒い蘭」と「ようこそ、死のパーティーへ」の2つの中編を一つに収めた第一中編集「黒い蘭」(1942年)を、論創社版はそれぞれ他の中編と組み合わせた独自編集で二巻に分けました。「ようこそ、死のパーティーへ」とセットにされたのは第五中編集(1951年)の「翼の生えた銃」と第六中編集(1952年)の「『ダズル・ダン』殺人事件」です。三作品とも本格派推理小説としてしっかり作られていますが、特に切れ味鋭い推理が印象的な「翼の生えた銃」と七つの手掛かりから犯人を追い詰める「『ダズル・ダン』殺人事件」はなかなかの出来栄えです。それにしても鉄面皮のイメージのあるウルフが結構怒ったりどなったりしているのには驚きました。なお「『ダズル・ダン』殺人事件」は1951年に米国で最初に出版された時の原題が「See No Evil」、第六中編集では「The Squirt and the Monkey」に改題、更に後に「The Dazzle Dan Murder Case」へと改題され、日本でも以前に「ヒーローは死んだ」という題で翻訳紹介されていたというややこしい経歴を持つ作品です。 |
No.866 | 5点 | 伊藤博文邸の怪事件- 岡田秀文 | 2015/11/13 17:46 |
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(ネタバレなしです) 歴史小説家である岡田秀文(1963年生まれ)が2013年に発表した本書は、明治時代を舞台にした本格派推理小説です。時代背景と謎解きを巧妙に絡めていますが、これはある意味弱みになっているかもしれません。現代の社会常識と大きく異なる時代性描写に優れるほど、そんなの推理のしようがないではないかという不満につながる危険性があるのですから。大胆な真相ですが探偵役の推理よりも自白に頼っているところの多い謎解きも好き嫌いは分かれそうです。 |
No.865 | 5点 | 島崎警部のアリバイ事件簿- 天城一 | 2015/11/12 14:01 |
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(ネタバレなしです) 2005年に出版された短編集で、PART1は列車の名前をタイトルにしたアリバイ崩しの中短編9作、PART2はよりバラエティーに富んだ14作が収められています。「ダイヤグラム犯罪編」の副題を持つPART1は時刻表を駆使する作品が多く、中には1つの作品で時刻表が5つも6つも使われています。ただ路線図が付いていなくてわかりにくい謎解きの作品があるのは不満でした。このPART1ではトリック批判の多かった鮎川哲也の「砂の城」(1963年)を擁護するために書かれた「急行《さんべ》」(1975年)が力作だと思います(鮎川作品のネタバレになっていますので注意下さい)。、「不可能犯罪編」という副題のあるPART2の方は書かれた時代が1948年から2001年までと幅広い上に全部がトリック作品というわけではなく、犯罪小説風や社会派推理小説風な作品もあるなど作品集としては統一感に欠けています。もっともPART1より多彩で楽しめたという読者もいるでしょう。この中では天城作品にしては珍しく犯人当て要素の強い「雪嵐/湖畔の宿」(2001年)が個人的には楽しめました。 |
No.864 | 3点 | 観音崎灯台不連続殺人事件- 草野唯雄 | 2015/11/11 10:11 |
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(ネタバレなしです) 1988年発表の尾高一幸シリーズ第6作で、過去の怨恨絡みの復讐劇を描いたサスペンス小説です。復讐する側も復讐される側も悪事の応酬となり、全く関係のない人間まで殺されてしまう仁義も正義もない展開です。尾高の推理は冴えまくっていますがそれほど緻密なものではなく、本格派推理小説の謎解きではありません。一気読みできる読み易さはありますがそれだけといえばそれだけの作品です。 |
No.863 | 6点 | チェスプレイヤーの密室- エラリイ・クイーン | 2015/11/10 14:18 |
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(ネタバレなしです) 1960年代から1970年代前半にかけて他の作家がエラリー・クイーン名義で書いたミステリーは30作近くもあり、真正のクイーンであるフレデリック・ダネイとマンフレッド・リーの承認を得ていることから偽作というレッテルこそ貼られてはいませんが、ハードボイルドや犯罪小説といった従来のクイーンのイメージと合わない作品があることもあってクイーンの熱心なファンでもそこまで手を伸ばそうという読者はまだ多くないようです。クイーン名義で3作品を書いたSF作家のジャック・ヴァンス(1916-2013)が1965年に発表した本書は、それらの中では最も真正のクイーン作品に近いと高い評価を得ている本格派推理小説です。ハードボイルドほどではないにしろ、どこか冷めた雰囲気があって謎解きも微妙に盛り上がりませんが最後はサスペンスが増加して、密室トリックがなかなか印象的でした。ヒロイン役のアンは他人と(家族とも)距離を置くような描写が多く、読者が共感を抱きにくいキャラクターではないでしょうか。だから最後の方で「かわいそうなお父さん」としんみりしているのを見ても「へえ、そういう感情もあったの」とこちらもドライな感覚で受け止めました。 |
No.862 | 5点 | 女囮捜査官 2 視姦- 山田正紀 | 2015/11/08 08:49 |
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(ネタバレなしです) 1998年発表の北見志穂シリーズ第2作です。猟奇的なバラバラ殺人の犯人の異常ぶりが終盤にたっぷり描かれ、サイコサスペンス色濃厚なジャンルミックス型の警察小説としてよくできていると思います。ただ朝日文庫版の巻末解説で我孫子武丸が指摘しているように、ある種の不可能犯罪を扱い、巧妙なミスディレクションやトリックも用意してありながら謎の演出が弱いために本格派推理小説を期待すると物足りなさを覚えます。また時に矛盾を感じさせる犯人の行動が「異常な犯人だから」というのは説明として短絡的に過ぎるように思います。 |
No.861 | 5点 | ぼくらの気持- 栗本薫 | 2015/11/08 08:37 |
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(ネタバレなしです) 1979年発表の「ぼくらの」三部作の第2作となる本格派推理小説です。「ぼくらの時代」(1978年)から2年が経過した設定ですが主人公3人の友情は変わらず会話は学生時代のノリと同じです。有力容疑者と成ったヤスヒコが単独行動に走り(そしてますます窮地に陥る)、それをぼく(栗本薫。男性です)と信がフォローするプロットで、このスラップスティック(どたばた劇)な展開はクレイグ・ライスのミステリーに通じるものがあります。特に終盤のサスペンスはすさまじく、いい意味で作者の若さが発揮されています。ただ謎解きとしては問題点もあり、動機の説明に力を入れていますがそれだけでは犯人当てとしての説得力は不十分です。機会についても推理してますが、多少の行き当たりばったりには目をつむるにしても本書の場合は余りに好都合で犯行が成立したという印象が残りました(失敗してもやり直しができたと説明はしていますが)。 |
No.860 | 5点 | 仮面舞踏会- ウォルター・サタスウェイト | 2015/11/08 08:14 |
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(ネタバレなしです) 1998年発表のフィル・ボーモントシリーズ第2作の本格派推理小説です。1923年のパリを舞台にしており、背景や食事の描写が丁寧です。歴史上の有名人が大勢登場していますが中ではヘミングウェイとガートルード・スタインが印象に残りました。古典的な本格派推理小説の雰囲気づくりを心がけた前作の「名探偵登場」(1995年)と比べると、麻薬や同性愛(直接的な描写はほとんどありません)が扱われ、アクションシーンも多いなどハードボイルド要素が表に出ているためか(もともとこの作者はハードボイルド作品も書いているそうです)、謎解きとしては若干散漫な印象を受けました。密室トリックが大したことないのは「名探偵登場」と共通しており、これは残念。ユーモアを適度に織り込んで重苦しくなり過ぎないのはよい工夫だと思います。 |
No.859 | 6点 | ハーヴァードの女探偵- アマンダ・クロス | 2015/11/08 07:52 |
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(ネタバレなしです) 1981年発表のケイト・ファンスラーシリーズ第6作です(英語原題は「Death in a Tenurned Position」です)。名門ハーヴァード大学に初の女性教授誕生というニュースに男性教授たちが様々な反応を見せるところから物語が始まります。フェミニズムを取り上げているのがこの作者らしいですが、本書の場合はケイトが探偵活動の方に集中していますのでフェミニズムが苦手な読者にも受け容れ易い本格派推理小説だと思います。もっとも戦うタイプの女性でないと世渡りが難しいような結論になっているのがこの時代ならではでしょうか。謎解きは通常だと不満の残りそうな真相ですが、動機の説得力で支えています。 |
No.858 | 5点 | 芝居も大変- アリサ・クレイグ | 2015/11/08 07:35 |
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(ネタバレなしです) 1988年発表のディタニー・ヘンビットシリーズ第3作のコ-ジー派ミステリーです。最初は人物関係がごちゃごちゃしていますが読み進む内に物語の流れはスムーズになります。凶悪犯罪を扱っても陽気な作品の多い作者ですが本書では殺人事件にさえ至りません。しかし楽しい作品ながらも犯罪の影に潜む悪意は結構強力だったと思いました。 |
No.857 | 5点 | ブロンドの鉱脈- E・S・ガードナー | 2015/11/08 07:21 |
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(ネタバレなしです) 1962年発表のペリイ・メイスンシリーズ第67作です。序盤のモデル契約書絡みの謎がやや難解です。殺人事件は中盤まで起きませんが起きてから法廷場面まではあっという間です。被害者を容疑者たちが次々と訪れていたという設定が謎を深めていますが、解決は切れ味鋭いと評価するか唐突であっけない真相だと評価するか微妙なところです。もう少し謎解き伏線を丁寧に張ってあればよかったのにと思いました。 |
No.856 | 5点 | 湖底のまつり- 泡坂妻夫 | 2015/11/06 09:45 |
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(ネタバレなしです) 「11枚のとらんぷ」(1976年)、「乱れからくり」(1977年)と2作続けて本格派推理小説の傑作で注目を浴びた作者が1978年に発表した長編第3作で、連城三紀彦が「大掛かりな詐術で描いた巨大な『騙し絵』」、綾辻行人が「凄い作品」と大絶賛です。本書は幻想的な雰囲気、登場人物の情感描写など過去2作品とは異なる個性を発揮していることに成功していますし、『騙し絵』ならではの仕掛けもあります。ただ繰り返される官能描写は好き嫌いが分かれそうで、少なくとも万人に勧められる作品とは言えないでしょう。この官能描写も単なるお飾りではないところが巧妙ではあるのですが。 |
No.855 | 5点 | 脅迫者たちのサーカス- 日下圭介 | 2015/11/05 13:26 |
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(ネタバレなしです) 1994年発表の倉原真樹シリーズ第6作で、色々なミステリー要素を含んでいますが総合的には誘拐サスペンスに分類できるかと思います。読者には誘拐でなく家出であることが最初から明かされているのですが、にもかかわらず身代金要求によって警察が誘拐事件として捜査を開始するプロットがなかなか個性的です。真樹の地道な捜査、スクープねらいのメディアの暴走、家庭ドラマ、執行猶予期間というタイムリミットなど様々な場面が入り乱れ、良く言えば多彩、悪く言えば焦点の定まりにくいストーリーです。真樹は女性ゆえに警察内で実力を正当に評価されていないようですが、あの独断的行動では出世に縁がないのもやむなしでしょう(笑)。最終章で真樹がある真相を見抜いたことが示唆されていますが、ちゃんと推理説明してくれないので本格派推理小説好きの私には不満でした。 |