皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
nukkamさん |
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平均点: 5.44点 | 書評数: 2813件 |
No.20 | 5点 | 検事鵞鳥を料理する- E・S・ガードナー | 2016/02/15 01:59 |
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(ネタバレなしです) 1942年発表のダグラス・セルビイシリーズ第5作です。助けを求める女性からの電話を受けたセルビイがバス停留所へ駆けつけると赤ん坊の入ったゆり籠が残されていて電話をかけたと思われる母親は行方不明、しかも赤ん坊の父親は死んだばかりの財産家らしいという事件が起きます。果たして赤ん坊の将来はどうなるのかというメロドラマ風な展開を見せます(一時的に赤ん坊を預かるブランドン保安官の夫人が実にいい味を出してます)。謎解きプロットも強敵弁護士のA・B・カーはもちろん、女性弁護士のアイネズ・ステーブルトンやラーキン警察署長までもがセルビイの捜査に干渉して二転三転する複雑なもので、セルビイがいかにして事件解決するかの興味をうまくつなげて終盤へなだれ込みます。 |
No.19 | 6点 | 憑かれた夫- E・S・ガードナー | 2016/02/07 03:14 |
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(ネタバレなしです) 1941年発表のペリイ・メイスンシリーズ第18作です。ヒッチハイクでロス・アンジェルスへ向かう女性が大型車に乗せてくれた運転手に車中で襲われ、抵抗する内に車が横滑りして数台に衝突し、女性が気づいた時にはなぜか運転席でハンドルを握っていて運転手が消えていたという事件で幕開けしますが、プロットは地味で法廷場面も盛り上がりを欠き、真相は結構入り組んでいますのでじっくりと読むことを勧めます。第19章でメイスンが「生物でない手掛かりは余り重視しない方がいい。それよりも動機だとか機会だとかいうものを分析してみて、どういうことが起こったかを推理する方がずっと効果が大きい」と語っているのが興味深いですね。 |
No.18 | 6点 | 色っぽい幽霊- E・S・ガードナー | 2016/01/23 03:28 |
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(ネタバレなしです) 1955年発表のペリー・メイスンシリーズ第46作の本格派推理小説です。ハヤカワポケットブック版の裏表紙紹介では「全篇の約三分の二が法廷場面」と書かれていますがさすがに3分の2は誇大広告気味です。物語は全17章で構成されていますが法廷場面が開始されるのは第10章から。しかもその後も何度か捜査場面の挿入で中断されています。とはいえ内容は十分面白く、メイスンの宿敵(?)の地方検事ハミルトン・バーガーが自信満々なのもごもっともな状況設定と、複雑な人間関係が徐々に明らかになる展開はサスペンスに富んでいて、謎解きも意外としっかりしています。ちなみにタイトル(英語原題は「The Case of the Glamorous Ghost」)から色事描写を期待してはいけません(笑)。 |
No.17 | 6点 | うしろ向きの騾馬- E・S・ガードナー | 2016/01/16 23:15 |
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(ネタバレなしです) 「奥の手の殺人」(1939年)以来久しぶりとなる1946年発表のテリイ・クレインシリーズ第2作です(といってもこのシリーズはこれで終了のようです)。ペリイ・メイスンシリーズと違って警察(特にマロイ警部)の手ごわさがよく描かれています。シンシアの態度が協力的とは言い難い(敵対的でもない微妙な関係です)状況下でのクレインの辛抱強い捜査が本書の読みどころです。派手な手掛かりはありませんが推理説明がしっかりした本格派推理小説として楽しめました。ロマンス描写もありますが米国作家の作品とは思えないほど慎重な態度に終始した展開に最後はある人物が爆発してますね(笑)。 |
No.16 | 5点 | 万引女の靴- E・S・ガードナー | 2016/01/06 12:29 |
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(ネタバレなしです) 1938年発表のペリイ・メイスンシリーズ第16作です。1930年代の作品に力作の多いガードナーですが、本書も一癖も二癖もありそうな人物がずらりと登場する上にプロットが予想外の展開を見せて読ませどころ満載です。メイスンに敵意むき出しのホルコム部長刑事の駄目っぷりも効果的です。しかしハッピーエンド狙いのためか強引で魅力に乏しい真相になってしまい、検察だけでなく読者まではぐらかされた感が残るのが惜しいです。あと物語とは関係ありませんが、序盤で秘書のデラの体重を暴露してますけどいいのかなあ。 |
No.15 | 6点 | 延期された殺人- E・S・ガードナー | 2015/12/04 18:24 |
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(ネタバレなしです) E・S・ガードナー(1889-1970)の死後に発見された2作のメイスン作品の1つで1973年発表のシリーズ第82作の本格派推理小説、よくもここまで書き続けたと感心するばかりです。結果的にはシリーズ最終作です。行方不明になった姉メイを危惧する依頼人、実はその依頼人こそがメイ本人ではないかとメイスンが疑うところから始まる本書は、最晩年の作品ゆえか粗いと思わせる部分もありますが意外と緻密で複雑な謎解きプロットで読ませる作品でした。 |
No.14 | 5点 | ブロンドの鉱脈- E・S・ガードナー | 2015/11/08 07:21 |
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(ネタバレなしです) 1962年発表のペリイ・メイスンシリーズ第67作です。序盤のモデル契約書絡みの謎がやや難解です。殺人事件は中盤まで起きませんが起きてから法廷場面まではあっという間です。被害者を容疑者たちが次々と訪れていたという設定が謎を深めていますが、解決は切れ味鋭いと評価するか唐突であっけない真相だと評価するか微妙なところです。もう少し謎解き伏線を丁寧に張ってあればよかったのにと思いました。 |
No.13 | 5点 | 検事踏みきる- E・S・ガードナー | 2015/10/27 22:42 |
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(ネタバレなしです) 1948年発表のダグラス・セルビイシリーズ第8作です。セルビイの失脚をもくろむ敵方がセルビイの捜査に色々と難癖をつけるのはシリーズのお決まりパターンです。しかし本書の場合、殺人ではと疑うセルビイに対して明らかに自殺なのに殺人と決めつけて捜査するとはとんだ見当違いだという主張も(自殺という証拠だって十分でないので)説得力に乏しく、セルビイが危機に陥っているという切迫感がいまひとつです。それでも宿敵の悪徳弁護士カーの策謀や怪しい証言の数々をどう切り抜けて真相を見破るか最後まで予断を許さない展開はさすがです。犯人自身が指摘したように、推理よりもハッタリ要素の方が強い解決になっていますが。 |
No.12 | 6点 | 歌うスカート- E・S・ガードナー | 2015/09/06 01:20 |
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(ネタバレなしです) 1959年発表のペリイ・メイスンシリーズ第60作です。人物Aが撃った銃で致命傷を負わされた被害者がまだ死なないうちに別の人物Bが撃った別の銃で殺された場合、一体AとBはどういう罪を負わされるでしょう?その答えは本書の中でメイスンが説明していますが、その説明した状況と似たような殺人が実際に発生してしまい、被告だけでなくメイスン自身も絶体絶命のピンチに陥ります。これだけでも十分わくわくさせる展開になっていますが、それ以上に私の印象に残ったのが賭博で負けた金を取り返す方法(しかも合法的に)。いやー、本当にあれがまかり通るの?これさえ知っていればあなたもカリフォルニア州のカジノで負け知らず...なんてわけないか。でも本当にびっくりしました。 |
No.11 | 5点 | そそっかしい小猫- E・S・ガードナー | 2015/08/29 00:00 |
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(ネタバレなしです) 1942年発表のペリイ・メイスンシリーズ第21作です。失踪事件に小猫の事件に殺人事件とばらばらな印象の出来事が続き、しまいには〇〇(殺人事件ではない)の容疑で意外な被告が告発されるなど予想もしない展開に振り回されますが最後はもつれあった事件がきれいに収束される解決につながっています。真相には不満な点もありますが謎解きの伏線も巧く張ってあります。あと恒例行事のハミルトン・バーガー検事とメイスン弁護士の論戦(皮肉合戦?)がいつも以上に楽しく読めました。 |
No.10 | 6点 | うかつなキューピッド- E・S・ガードナー | 2015/08/16 21:03 |
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(ネタバレなしです) (女性が)「自分を尾行している男の顔をぶったらどうなるか知りたい」という依頼で幕開けする1968年発表のペリイ・メイスンシリーズ第79作の本書はたたみかけるようなストーリーテンポが圧倒的です。次から次へとクライマックスシーンに突入するかのような勢いです。大した推理もなく解決されてしまうので謎解きとしては呆気ないのですが、退屈しない作品であることは確かです。 |
No.9 | 6点 | 虫のくったミンク- E・S・ガードナー | 2015/03/19 16:27 |
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(ネタバレなしです) 1952年発表のペリー・メイスンシリーズ第39作です。たたみかけるような尋問で手掛かりを求めるのがメイスンの得意技ですが、本書では登場人物が次々に行方をくらますのでその捜査手法が思うように進められず、もどかしさがいつもと違う緊張感を生み出しています。シリーズに登場する警官の中では冷静沈着型のトラッグ警部がいつになく熱い思いを語っているのも珍しいですが、最終章でメイスンの代わりにトラッグが真相を説明しているのもこれまた珍しいです。その締め括りはかなりの衝撃度です。 |
No.8 | 6点 | 怒った会葬者- E・S・ガードナー | 2015/02/25 11:42 |
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(ネタバレなしです) 1951年発表のペリー・メイスンシリーズ第38作です。作者によるまえがきの中で「状況証拠の問題を扱ってみた」と書いている通り、手掛かりを豊富に揃えて本格派推理小説としての謎解き要素が濃く、母娘間の対立と気づかい、検事だけでなく弁護士とも争うことになる状況設定などプロットも充実しています。登場人物も多過ぎず少な過ぎずで(ハヤカワポケットブック版の)古い翻訳がそれほど気にならない読みやすさでした。タイトルに使われている会葬場面が非常に短かったのがちょっと意外でしたが、確かに会葬者の1人が色々な場面でやたら怒ってましたね(笑)。 |
No.7 | 4点 | メッキした百合- E・S・ガードナー | 2014/10/13 21:59 |
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(ネタバレなしです) 1956年発表のペリー・メイスンシリーズ第51作です。どうも本書のメイスンは法廷で精彩を欠いているように感じられます。いつもなら自分の流儀を押し通すはずなのに今回は被告人からああしろこうしろと注文つけられているし、反対尋問では検察から「異議あり」を次々に決められています。まあ後者に関してはメイスンも検察の尋問に対して「異議あり」を返していますけど。最後はちゃんとどんでん返しが鮮やかに決まるのですが、メイスンの推理説明が一見論理的でいるようでいてその決め手が「人の性格を正しく判断すること」というのでは説得力のある論理とは思えませんでした。 |
No.6 | 5点 | ためらう女- E・S・ガードナー | 2014/09/24 18:37 |
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(ネタバレなしです) 1953年発表のシリーズ第41作です。本書は本格派推理小説には分類できないでしょう。終盤にメイスンがあるものを破壊して見つけた証拠品はあまりに唐突に提示され、しかもほとんど推理がからみません。「三日月形の〇〇」に関する推理も飛躍し過ぎの感じがします。とはいえサスペンスはシリーズ屈指の出来映えです。最初からクライマックスを迎えているかのように読者をぐいぐいと引っ張り、やっと光明が見えたと思ったらピンチが更に広がってしまう展開はハヤカワポケットブック版の古い翻訳もハンデにならない面白さです。スマートな捜査が身上のトラッグ警部の意外な一面も読めます(これには驚きました)。 |
No.5 | 6点 | 影をみせた女- E・S・ガードナー | 2014/08/26 18:03 |
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(ネタバレなしです) ペリー・メイスンシリーズは法廷論争が見所の一つですが(但し中には法廷場面のない作品もあります)、特に1960年発表のシリーズ第63作である本書ではメイスンの法廷テクニックが冴えわたり、いつのまにか検事側ががんじがらめ状態になってしまうのが印象的でした。そのテクニックは法律知識に裏づけされたものですが、読者に全く難しさを感じさせない語り口が見事です。犯人当ての謎解きが脇に追いやられてしまった感もありますけれど、本書の法廷論争はこの作者にしか書けないと思いました。 |
No.4 | 7点 | 日光浴者の日記- E・S・ガードナー | 2014/02/16 10:09 |
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(ネタバレなしです) 1955年発表のペリイ・メイスンシリーズ第47作の本格派推理小説です。メイスンは証拠隠滅や犯人隠匿と疑われても仕方ないような行動をとってはらはらさせることがありますけど、今回はそれを目撃されてしまいもう絶体絶命...、と思わせてのそこからの逆転劇が凄いです。それは巧妙なミスディレクションあっての賜物で、数あるシリーズ逆転劇の中でも鮮やかな印象を与えます。 |
No.3 | 7点 | もの憂げな恋人- E・S・ガードナー | 2012/09/12 16:41 |
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(ネタバレなしです) 1947年発表のペリイ・メイスンシリーズ第30作でなかなかの会心作の本格派推理小説だと思います(私の読んだハヤカワポケットブック版では1954年と誤記されてましたけど)。前半はなかなかつかまらない関係者の追跡がスリリングに描かれ、ようやく会えたと思ったらこれがとんでもない曲者という始末。ここで見せ場を築いたのが「ころがるダイス」(1939年)でも活躍していた受付係のガーティで、第12章のユーモラスな展開は思わず笑ってしまいました。さらに後半では現場見取り図を駆使しての緻密な謎解きまで堪能できて至れり尽くせりです。 |
No.2 | 6点 | 死のスカーフ- E・S・ガードナー | 2010/02/15 16:35 |
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(ネタバレなしです) 1959年発表のペリイ・メイスンシリーズ第59作でサスペンスと謎解きのバランスがとれた佳作です。謎解き伏線が現代ではちょっとなじみにくい手掛かりに立脚しているのが時代性を感じさせますが、法廷外裁判の駆け引きの面白さは今も色褪せていません。 |
No.1 | 7点 | 傾いたローソク- E・S・ガードナー | 2009/01/26 11:35 |
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(ネタバレなしです) 1944年発表のペリー・メイスンシリーズ第24作で本格派推理小説としてのプロットがしっかりしています。細部を丁寧に検証しているため、ややもすると退屈になり気味ですが現場見取り図を使って謎のポイントをわかりやすくしたのがいい工夫です。ちょっとした着眼点の違いでどんでん返しを演出しているのが非常に巧妙で、私も検事と一緒に「しまった」と内心で舌を巻きました。なお本書の最後はシリーズ次作の「殴られたブロンド」(1944年)へとつながる締め括りとなっています。 |