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nukkamさん
平均点: 5.44点 書評数: 2855件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.2135 6点 悪魔の呼気- 由良三郎 2019/06/10 23:24
(ネタバレなしです) 1990年発表の本格派推理小説で、タイトルはちょっと不気味ですが中身は怖い要素は全くなく、主人公で探偵役の祖父と孫娘のコンビの会話にはユーモアが混じっているほどです。トリックに工夫しているのはこの作者らしいですが、一方で舞台となる老人ホーム描写のリアリティーがいまひとつに感じられるのもこの作者らしいというか...。まあ謎解きを活発にするためにはうるさいぐらいの高齢者たちを揃えて会話をにぎやかにする方が都合よいのかもしれませんが。細かい粗(あら)は気にせず次から次へと仮説が組み当てられてはひっくり返される謎解き展開を単純に楽しみながら読むのが正解なのでしょう。もっとも事件解決後のまさかの締めくくりはいくらなんでも蛇足ではという気もしますけど。

No.2134 5点 金時計- ポール・アルテ 2019/06/10 23:05
(ネタバレなしです) 2019年発表のオーウェン・バーンズシリーズ第7作の本格派推理小説ですが、行舟文化版の巻末解説によればフランス本国よりも日本での翻訳版の方が先に出版されたらしいのには驚きました。雪の上の死体の周辺に犯人の足跡が残っていない不可能犯罪が発生しますが、本書の最大の特徴は2つのエピソードを交差させながら物語が進むプロットでしょう。1つは1911年に発生した殺人事件の謎解きでオーウェンが活躍しています。もう1つは時代を1991年とし、1966年頃に見た映画のタイトルは何かという謎で始まるミステリーらしからぬエピソードですがだんだんと様相がおかしくなっていくのが印象的です。図解入りで丁寧に説明される足跡トリックは本格派好き読者を満足させるでしょうが、悪夢を見てるかのような(両方の時代の)結末の重苦しさは何と表現したらよいのやら。

No.2133 5点 相馬野馬追い殺人事件- 皆川博子 2019/06/10 22:33
(ネタバレなしです) 1984年発表の本格派推理小説です。早々と殺人事件が起きるのですが間違い殺人の可能性が出たためか捜査は難航します。さらに投石による落馬事件とか(事故かどうか微妙な)風呂場での感電死事件とか走行中の車内の排気ガス漏れ事件などが立て続けに発生しますが、どれもミステリーの謎としてはインパクトが弱いです。人間関係が複雑な上に誰が主人公なのかさえ曖昧な描写なのでとても読みにくかったです。推理も明確な証拠がほとんどありません。終盤での2人の人物によるコン・ゲーム(だまし合い)的なやり取りが不思議なサスペンスを醸し出しているのが印象的ですが、他にはこれといった特徴がないように思いました。

No.2132 5点 ドアは語る- M・R・ラインハート 2019/06/03 23:09
(ネタバレなしです) 本格派推理小説一辺倒で他のミステリージャンルを敬遠している私はサスペンス小説家として名高いラインハートはあまり関心がなく、1930年発表の本書が私にとっては「螺旋階段の闇」(1908年)に次いで2冊目のラインハート作品です。ハヤカワポケットブック版の巻末解説では「クリスティーを思わせる」と紹介されていますが、作風が大きく違うように思います。手掛かりらしきものが多数散りばめられ、最後まで犯人当ての興味で引っ張るプロットで本格派推理小説に分類できる内容ではあります。とはいえほとんどの容疑者が怪しい行動をとるというのが謎としては過剰演出気味だし、展開も非常に回りくどくて重厚過ぎて読みにくいです。謎解き説明がいまひとつ明快でないところもクリスティーとは大きく異なります。丁寧に書かれた力作ではあるのですがもう少し風通しを良くして欲しかったですね。

No.2131 5点 裁くのは誰か?- ビル・プロンジーニ 2019/06/03 22:33
(ネタバレなしです) SF作家のバリー・N・マルツバーグ(1939年生まれ)との共作第2作で1977年に発表されました。何と登場人物はアメリカ大統領夫妻とその側近たちで、反対陣営に寝返っている裏切り者を殺そうとする人物(「われわれ」と称しながら単独描写です)の正体は誰かという風変わりな本格派推理小説です。大統領を取り巻く不穏な空気はそれなりに描かれていますが、政治問題や社会問題に関する会話はほとんどありません。まあ本書にリアリティーを求めるのは筋違いなのでしょう。創元推理文庫版の巻末解説で「結末の大胆さに、髪を振り乱して怒り心頭となるか、感極まって本書を神棚に供えるか、とにかくも、しばし忘れられぬ読書体験を得られることは保証しよう」と読者を選びそうな怪作であることが紹介されてますが、確かに奇抜過ぎるアイデアが用意されていてショックで反発する読者続出かも(笑)。個人的には怒り心頭にこそなりませんでしたが「読んで損はないよ」と擁護する気持にもなれません。

No.2130 5点 一心館の殺人剣- 鳥羽亮 2019/05/19 20:21
(ネタバレなしです) 時代小説作家として高名な作者ですので何の予備知識もなく本書のタイトルを読んだ人は時代小説と勘違いするかもしれません。しかし本書はミステリー作家時代の1991年に発表された、現代を舞台にした本格派推理小説です。剣道家と不可能犯罪の組み合わせがデビュー作の「剣の道殺人事件」(1990年)を連想させますが、残念ながら出来栄えは劣るように感じました。衆人環視状態の剣道の試合最中の不可能犯罪という「剣の道殺人事件」の魅力的な謎と比べると本書は普通の密室殺人事件に過ぎません。まあそれはまだ大きな問題点ではないのですけど、主人公を偽の犯人に仕立てるために主人公のアリバイをなくすための犯人の仕掛けがあまりにも強引、ご都合主義かつ失敗リスクが高くて馬鹿馬鹿しささえ感じます。早い段階で読者にオープンにしているのがせめてもの救いでしょうか。

No.2129 6点 殺されたのは誰だ- E・C・R・ロラック 2019/05/11 22:32
(ネタバレなしです) 1945年発表のマクドナルド警部シリーズ第26作の本格派推理小説です。風詠社版の日本語タイトルも悪くありませんが英語原題の「Murder by Matchlight」も捨てがたい魅力があります。暗闇で被害者がマッチに火をつけた時にその明りの後ろの暗闇に浮かびあがる顔(犯人?)の描写にはぞくっとしました。被害者の素性がなかなか判明せず、第7章でマクドナルドが「このように混乱された状況下では、身元を偽ることはさほど難しくありません」と述べているように戦時下の雰囲気が漂っており、それは後半になって空襲警報と爆撃の中での捜査場面でピークを迎えます。登場人物の1人がマクドナルドの推理説明を補足して動機を整理してくれたのが個人的にはありがたい読者サービスでした(笑)。

No.2128 4点 法水麟太郎全短篇- 小栗虫太郎 2019/05/11 22:10
(ネタバレなしです) 法水麟太郎シリーズの中短編は1933年から1937年にかけて全部で8作書かれており何度も単行本に載っていますが分冊掲載がほとんで、意外にも全作を短編集1冊にまとめたのは河出文庫版(2019年)の本書が初かも知れません(正確に調べたわけではないので間違っていたらすみません)。奇書と評価されている「黒死館殺人事件」(1934年)に挑戦する前の入門編として読むのもよしでしょう。ページ数が少ない分「黒死館殺人事件」より早く読み終えれるのは間違いなし、しかも筋を追うのも大変な難解さは中短編であっても超弩級ですので本書でうんざりされた方は「黒死館殺人事件」には手を出さないことを勧めます。読んで疲れた上にほとんど内容を理解できませんでしたが、その中では1番読みやすかった「国なき人々」が個性を感じられず「後光殺人事件」や「失楽園殺人事件」の方があまりの奇想に印象に残っているのですから私の感性も(もともとアブノーマル気味ですが)かなり麻痺してしまったようです。

No.2127 6点 謎解きのスケッチ- ドロシー・ボワーズ 2019/05/06 18:11
(ネタバレなしです) 1940年発表のダン・パードウ警部(本書の風詠社版ではパルドー警部と表記されてます)シリーズ第3作の本格派推理小説です。控え目な描写ながら第二次世界大戦の影響が滲み出ています。謎解きが好きな若者が登場するのでパードウ警部とアマチュア探偵の推理競演になるかと思っていたらこの若者は早々と殺されてしまいます。既に何度か生命の危機を潜り抜けていた被害者は用心したのでしょう、残された言動や手掛かりは非常に謎めいていて容易に真相が掴めません。鳥のスケッチが手掛かりの一つというのもユニークで(残念ながらイラスト紹介はなし)、この謎解きはマニアックな知識が必要なので一般読者には難易度が高過ぎると思いますが決してダイイングメッセージ一発の謎解きではなく、それ以外の手掛かりもちゃんとパードウ警部が説明してくれます。

No.2126 5点 繭の密室- 今邑彩 2019/05/06 17:53
(ネタバレなしです) 1995年発表の貴島刑事シリーズ第4作です。このシリーズは3作で終了予定だったのを翻意して本書を書いたそうですが、特にシリーズ最終作らしい仕掛けはありません。怪異に満ちた本格派推理小説として始められたシリーズのようですけど本書に至っては醜い人間心理描写はあるものの怪異要素は皆無に近く、普通の本格派推理小説です。私はホラー系が苦手なので普通であることは全く問題ないのですが、肝心の謎解きの出来栄えがいまひとつです。貴島による密室トリックの推理はかなりの部分を憶測で補っているように感じます。まあそれでも辻褄は合っているのでまだいいのですが、犯人当てについては犯人が致命的な証拠を落として発覚してしまうという棚ぼた式展開に不満を覚えます。

No.2125 5点 墜ちる人形- ヒルダ・ローレンス 2019/04/26 22:47
(ネタバレなしです) 1947年発表のマーク・イーストシリーズ第3作の本格派推理小説で、ハワード・ヘイクラフトやアントニー・バウチャーが絶賛したそうですが本書がヒルダ・ローレンス(1906-1976)の最後の長編作品で、この後は中短編をいくつか発表したのみです。小学館文庫版の裏表紙で「彼女は何者かに殴打され、庭で死体となって発見される。自殺か他殺か?」と粗筋紹介されているのには困惑です。殴打されて自殺かよって突っ込みたくなりました(笑)。表現描写はかなり抑制されていて、せっかくの仮装パーティー場面は盛り上がらないし人物も誰が誰だかわかりにくかったです(しかも登場人物リストに載ってないのに結構登場場面の多い人物が何人もいます)。人並由真実さんのご講評で本書の重厚さをP・D・ジェイムズの先駆的に位置づけているのはなるほどと共感しました。前半はぐだぐだ感が強くて読みにくかったですが、マークの捜査が軌道に乗ってくる9章あたりからミステリーらしくなってサスペンスもじわじわと効いてきます。

No.2124 5点 捕虜収容所の死- マイケル・ギルバート 2019/04/26 22:30
(ネタバレなしです) マイケル・ギルバートは第二次世界大戦で捕虜となってイタリアの収容所に投獄されたそうですが、その経験を活かしたと思われるのが初期代表作として評価されている1952年発表の本書です。創元推理文庫版の巻末解説で森英俊が「スリラーと本格ミステリの要素が渾然一体となった、奇蹟のような作品」と大絶賛していますが、確かに1943年のイタリア捕虜収容所を舞台にしてイギリス人捕虜たちの脱走計画と囚人の怪死事件の謎解きを両軸にした複雑なプロットはユニークで、読み応えもたっぷりです。しかしながら登場人物リストに載っているだけでも35人の人数はさすがに多過ぎで、例えばあるイタリア人大尉の冷酷非道ぶりが十分描けていないのは残念です。舞台描写もわかりにくくて不可能犯罪(準密室状態らしい)の謎の魅力が伝わりにくく、肝心の脱走場面のサスペンスもいまひとつに感じました。殺人犯探し、スパイ探し、脱走の成否など様々な課題が入り乱れ、珍しい手掛かりによる推理など光る部分もあるのですが私のような単純思考の読者には面白さよりも混乱の方が勝ってしまいました。

No.2123 5点 クロイドン発12時30分- F・W・クロフツ 2019/04/16 22:14
(ネタバレなしです) 1934年発表のフレンチシリーズ第11作で、犯人の正体を最初から明かしている倒叙本格派推理小説です。倒叙本格派の創始者であるオースティン・フリーマンのスタイルに最も忠実な作品と評価されているようですが、少し違うようなところもあります。倒叙本格派と言うと犯人と名探偵の推理バトルが読みどころの1つだと思いますが、本書はフレンチの捜査描写や犯人との対決場面が意外と少ないのです。それにはちゃんと理由があり、代わりに予期せぬ展開を用意したり犯人の逮捕で終わらせず法廷場面に突入するなどプロットの工夫をしていますが本書が典型的な倒叙本格派かと言うと微妙な気もします。地味過ぎて退屈になりかねないクロフツですが、本書は主人公(犯人)の心理描写を増やすことでそこからの脱却を図っています。それでも地味な作品ではあるのですが。謎解きとは関係ありませんが過去のシリーズ作品で昇進を期待してはお預けをくらっていたフレンチは本書でついに悲願成就、警部時代の最後の事件となりました。

No.2122 5点 丹後鳴き砂殺人事件- 草野唯雄 2019/04/16 21:18
(ネタバレなしです) 1990年発表の尾高一幸シリーズ第8作の本格派推理小説です。マンションの一室で男性が女性(素性は明かされません)に毒殺される場面で幕開けしますが、これは何と感想したらよいのか...。犯人が立ち去った後、現場に男性が忍び込み、さらに女性(犯人とは別人)がやってきて(男性は隠れます)何と既に死んでいる被害者を撲殺、続いて新たな男性が侵入して今度は被害者をベランダから放り投げます(三者三様ならぬ三者三殺)。短時間に何人もの人間が犯行に及びしかも互いに全く顔を合わせない、偶然と言うにはあまりにもとてつもなく計画的と言うにはあまりにも綱渡りです。これを見破る尾高は「合理的な解釈」と主張していますが、いやいやこんな途方もない出来事は合理的に推理できるわけないでしょと突っ込みたくなるような怪作でした。

No.2121 5点 重婚した夫- E・S・ガードナー 2019/04/11 20:46
(ネタバレなしです) 1961年発表のペリー・メイスンシリーズ第65作の本格派推理小説です。タイトル通り重婚した夫が登場して殺されるのですが2人の妻の登場場面があまりにも少なく、いくら家族ドラマを深く掘り下げる作風でないにしてもこれでは盛り上がりに欠けますね。子供もいるのですがこちらは登場人物リストにさえ載りません。13章に至っても依頼人がなぜ不利なのかがメイスンにもわかっていないなど謎の魅力も足りません。そのためどんでん返しのインパクトも弱く、このシリーズとしては淡々と進み淡々と終わってしまったような印象です(というか印象に残りにくい作品です)。

No.2120 5点 能面の秘密 安吾傑作推理小説選- 坂口安吾 2019/04/11 20:33
(ネタバレなしです) 犯人当て懸賞小説として出版された「不連続殺人事件」(1948年)で自信を得たのか、晩年の坂口安吾(1906-1955)はミステリーを積極的に書いています。ミステリー短編集は死の年に出版された「投手殺人事件」(東方社版)(全9作)(1955年)がおそらく最初で、その後もタイトルを変えながら「能面の秘密」(角川文庫版)(全8作)(1976年)、「心霊殺人事件」(河出文庫版)(全10作)(2019年)と再版されています。ガチの本格派推理小説にこだわったとされる作者ですが、確かに半分はそういう作品ですが残り半分は犯罪小説だったりミステリーとは言いにくい作品だったりと意外と多彩です。「心霊殺人事件」のみに収められた「アンゴウ」は暗号が解読され、誰がこの暗号を作ったのかという謎はありますが謎解き経緯はほとんど説明されません。真相を知って感慨にふける主人公描写は大変印象的ですが個人的にはミステリーではないように思います。推理は確かにありますが意図的に腰砕けに終わらせたような「影のない犯人」も読者の好き嫌いが分かれそうな怪作です。突出する長所がないとはいえ「読者への挑戦状」付きの中編「投手殺人事件」のような安心して読める作品がやはり個人的には好みです。

No.2119 5点 死者の心臓- アーロン・エルキンズ 2019/04/11 20:11
(ネタバレなしです) 1994年発表のギデオン・オリヴァーシリーズ第8作の本格派推理小説です。このシリーズはトラベルミステリーとしても楽しめますが、エジプトを舞台にした本書はその中でも最も異国情緒に溢れていると思います。但しピラミッドもスフィンクスもミイラも登場しません(骨は当然登場します)。動物と糞と料理油の臭いが立ち込める、外国人旅行者がまず行かないような地域が描かれたりしており、それもエジプトの一面かもしれませんがトラベルミステリーとは言えても観光ミステリーとは言えません。なかなか事件が起きない展開に加えてギデオンと容疑者たちとのやり取りも意外と少なく、地味を通り越して退屈に近い謎解きプロットです。終盤は一気にサスペンスが高まって劇的な結末が用意されていますが、ギデオンの(後出し気味の)推理は犯人を特定する決め手としては弱いように思います。

No.2118 5点 陸奥こけし殺人事件- 山村正夫 2019/04/02 14:19
(ネタバレなしです) 短編集「振飛車殺人事件」(1977年)がシリーズデビュー作である女流棋士小柳カオリシリーズの長編第1作が1982年の本書です。ちなみにタイトルの「陸奥」は「むつ」でなく「みちのく」と読ませてます。10年前に解決済みの殺人事件を再調査していた私立探偵が殺される事件を扱い、小柳カオリと花巻警察の両者の捜査を地味に描いた本格派推理小説です。舞台が東京、花巻、北見と転々とするので(10年前の事件は鶴岡です)トラベル・ミステリーでもあります。犯人はまあこの人物しかありえないだろうと早々と絞り込まれ、アリバイ崩しの様相を呈してきますがトリックは大したことありません(というかトリックは評価するに値しないと思います)。むしろ真相の裏にある複雑な人間模様が印象に残ります。特にある人物の、初登場の時と終盤時で態度や性格があまりにも豹変したのには驚かされました。

No.2117 5点 セイロン・ティーは港町の事件- ローラ・チャイルズ 2019/03/30 17:16
(ネタバレなしです) お茶と探偵シリーズはどの作品もお茶やお茶菓子の描写がたっぷりですが英語タイトルは必ずしもお茶が使われているわけではありません。しかし日本の出版社はお茶タイトルにこだわったようで、日本語タイトルは全てお茶を使っています。そして2018年発表のシリーズ第19作の本書ですが英語原題はセイロン・ティーは使われておらず、「Plum Tea Crazy」です。だけど英語原題が「Steeped In Evil」(2014年)のシリーズ第15作を国内で「プラム・ティーは偽りの乾杯」というタイトルにしたもんだから本書の日本語タイトルにはさすがにプラム・ティーは使えなくなってしまいましたね。内容の方は序盤からセオドシアが犯人と思われる人物を追跡し、その後も次々と事件が起きる展開でサスペンスは十分です。過去の恋人たちは物語の添え物程度でしたが、今の恋人のライリー刑事からはちゃっかり捜査情報を入手して探偵活動もますます充実、逃げる容疑者もいれば押しかけてくる容疑者もいたりとにぎやかです。それだけに決着が残念レベルなのが惜しいです。終盤になって新証人が登場して都合よく犯人の嘘を暴き、まだ証拠として十分と思えないのに犯人が馬脚を現して強引に解決されてしまいます。いくつかの小事件も同じ犯人の仕業なのかはっきりしません。

No.2116 5点 白夜の警官- ラグナル・ヨナソン 2019/03/28 08:37
(ネタバレなしです) 2011年発表のアリ=ソウルシリーズ第2作ですが前作のような本格派推理小説の要素はありませんでした。警察小説ですが第2の主人公として女性ジャーナリストを配しているのが特徴です。謎解きよりも人間ドラマの方が充実しており、登場人物たちの心の傷や苦悩そして触れられたくない秘密の描写が印象に残ります。アリ=ソウルに至っては最後の最後でまさかの行動に走り、一体次作ではどうなるのだろうと気になります。タイトル通り(もっとも英語タイトルは「Blackout」ですけど)夜中でも太陽の沈まない白夜の季節での出来事を描いていますが、明るい雰囲気は全くありません。

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nukkamさん
ひとこと
ミステリーを読むようになったのは1970年代後半から。読むのはほとんど本格派一筋で、アガサ・クリスティーとジョン・ディクスン・カーは今でも別格の存在です。
好きな作家
アガサ・クリスティー、ジョン・ディクスン・カー、E・S・ガードナー、D・M・ディヴ...
採点傾向
平均点: 5.44点   採点数: 2855件
採点の多い作家(TOP10)
E・S・ガードナー(82)
アガサ・クリスティー(57)
ジョン・ディクスン・カー(44)
エラリイ・クイーン(43)
F・W・クロフツ(32)
A・A・フェア(28)
レックス・スタウト(27)
ローラ・チャイルズ(26)
カーター・ディクスン(24)
横溝正史(23)