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[ 本格 ]
世紀の犯罪
サッチャー・コルトシリーズ
アンソニー・アボット 出版月: 2019年07月 平均: 6.33点 書評数: 3件

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論創社
2019年07月

No.3 7点 弾十六 2022/08/07 16:21
1931年出版。サッチャー・コルト第2作。電子版(dブック)で読みました。翻訳はきびきびしたリズムが良かったです。なお電子本アプリ「dブック」は非常に使い勝手が悪かったので全くおすすめしません。
アボットといえばリレー長篇『大統領のミステリ』(初版1935) 当時、雑誌Liberty編集長(1932-07-30号以降)だったAbbot(本名Fulton Oursler 1893-1952)がFDRから主題をもらったもの。英Wikiの略歴を読むと、1920年代にはフーディニのインチキ心霊術撲滅活動に協力して作品を発表しているようだ。無神論者だったが、カトリック教徒へ(1943)ここら辺、ちょっと興味深い。
さて、本作はヴァンダインの影響がかなり明らか。実際の事件を下敷きにしている(ホール、ミルズ殺人事件(1922-1926); リンドバーグ誘拐殺人事件(1932-1934)以前で、史上最も多く報道された事件だという、なのでこのタイトルになったのだと思われる。なお『ベラミ裁判』(1927)もこの事件が元ネタ)、作者=作中の「わたし」、ドキュメンタリー・タッチの話の進め方。ヴァンダインや初期EQと違うのはロジック・パズルではないこと。アボット流は、いろいろな捜査を同時多発的に行なって、数々のバラバラな手がかりをラストであっという間にジグソーパズルを上手くはめる感じ。スピード感は初期ペリー・メイスンに似ている。
推理味は薄めで、中心となる謎が弱い(結局は実在事件の辻褄合わせになってしまう)が、私にとっては1920年代のネタ(特に科学捜査に関するもの)が非常に多くて満足。意外な事実もたくさん教わったので、点数はおまけです。コルト第1作はリジー・ボーデン事件が元ネタらしいので、こちらも読んでみたい。
以下トリビア。原文は入手出来ませんでした。dブックにはページ数が表示されないので全体比の位置をパーセント表示します。
作中現在は、出版時の数年前で、p(5%)、p(31%)、p(92%)から「1925年6月初旬」のはずだが、p(79%)の日付だと作中現在が1931年(つまり出版時)になってしまう。そこ以外は1925年でほぼ問題無い(弾道試験を除く)。
その弾道試験についてp(71%)にかなりの記載があるが、そのような状況になったのは出版時くらいの頃ではないかと思う。詳細はWeb記事「カルヴィン・H・ゴダードが語る発射痕鑑定の歴史」に詳しい情報があるので是非一読いただきたい。
米国消費者物価指数基準1925/2022(16.93倍)で$1=2285円。
銃は「スミス・アンド・ウェッソン22口径、ブルーバレル」p(71%) が登場。.22 Long弾を使用するMフレームのLadysmith(1902-1921)だろうか。
p(2%)主要登場人物
※サッチャー・コルト(Thatcher Colt)… ニューヨーク市警察本部長(New York City Police Commissioner)
※マール・K・ドアティ(Merle K. Dougherty)… 地区検事長(District Attorney)◆「地方検事」が定訳だが…
p(4%) ドット・キング◆ Dot King、本名Anna Marie Keenan(1894-1923)、芸名Dorothy King、Broadway女優。1923年に殺害されたが犯人不明。ヴァンダイン『カナリア殺人事件』の元ネタ。
p(4%) エルウェル◆ Joseph Bowne Elwell(1873-1920)米国のブリッジの名手で、当時はオークション・ブリッジが主流だったが、ルールの新案をいろいろ提案していたという(コントラクト・ブリッジはVanderbiltによる1925年のルール制定以降「ブリッジ」の代表となった)。1920年6月11日に45口径で何者かに射殺された。有名な未解決事件。ヴァンダイン『ベンスン殺人事件』の元ネタ。
p(4%) ロススタイン◆ Arnold Rothstein(1882-1928) 米国の実業家、ギャンブラー、ギャング。組織犯罪の元祖。1928年11月4日にマンハッタンのホテルで撃たれ死亡、犯人不明の未解決事件。
p(4%) クレーター判事◆ Joseph Force Crater(1889年生まれ) ニューヨーク州最高裁判所判事。1930年8月6日午後9時半ごろ、ニューヨーク西45番街のレストランを出て、二人の連れと別れ、一人タクシーに乗り込んだ後、行方不明となった未解決事件。
p(5%) 数年前の6月初旬◆作中現在
p(5%) タクシー運転手に上着の着用を強いる規則◆New York Times 1925-6-4記事によると、警察第二本部長代理がtaxicab driversに命じた規則。全てのドライバーは、新案デザインの庇つき帽子、リネンの白collar、ネクタイ、coatを勤務中に必ず着用すること、とされた。1925-6-15から適用。
p(5%) ムラージュ… 証拠を蝋や石膏で型取りし、犯罪を解決に導く画期的な手法◆Moulageのことか。
p(8%) 事件から数年経過した
p(8%) 米国聖公会◆ Episcopal Church in the United States of Americaのことだろう。
p(10%) グリマルキン◆ Grimalkin 詳細は英Wiki (2022-8-8追記)
p(10%) 検死官◆ ここはmedical examinerのこと。 「監察医」が定訳のようだ。p(14%)参照。(2022-8-8追記)
p(10%) ミュルジェール… デュ・モーリエ◆Henri Murger(1822-1861)とGeorge Du Maurier(1834-1896)か。どちらもボヘミアン生活を描いた小説で有名。
p(12%) 顕微鏡写真用カメラ◆ Photomicrographicか。顕微鏡だと大袈裟すぎる気がする。拡大写真用カメラか。
p(13%) ベルティヨン
p(13%) 指紋を見つけるには、懐中電灯よりも蝋燭の炎のほうが有効
p(14%) アーセナル◆五番街65丁目、当時は警察署だったようだ。
p(14%) 検死審問の廃止◆ ニューヨーク市では1918年1月1日以降、検死官coronerではなくmedical examinerが検死を取り仕切ることとなり、インクエストは廃止された。(NYC以外のニューヨーク州は検死官制度のままだったようだ)
p(14%) 洗濯屋のマークを網羅した台帳
p(16%) ライトアップされたタイムズ・スクエア
p(17%) 天国の木… ニワウルシ… エイランサス・グランデュローサ(学名)… アボイナ語◆この学名は見当たらず、ニワウルシ(庭漆)又はシンジュ(神樹)はAilanthus altissima。ailanto(アンボン語)はtree of heaven, tree of godsという意味のようだ。
p(22%) レヴェレーション(訳注 英国の老舗ブランド)◆Revelation luggageは1923年創業のロンドンのスーツケース・ブランド。創業時の正式名称は“The Revelation Expanding Suitcase Co Ltd”だろうか。厚みの可変対応が特徴で、当時の広告(1935 UK Revelation Advert)に「どんどん幅が広がる」イラストがあってわかりやすい。24インチ型が£4-2-6(52700円)。別の広告(1928)で値段は「布張りは19/6(11000円)から、革張りは69/6(39200円)から各種サイズがありますよ」他の広告(1932)では「英国皇太子御用達」を謳い「高級Morocco dressing caseが£22(276000円)」いずれも会社の表記は“Revelation Suitcase Co. Ltd.” 170 Piccadilly London。(円換算は各年の英国消費者物価指数基準によるもの)
p(22%) バーロング… ミンダナオ島のモロス族やスールー諸島の原住民◆ナイフ。英Wiki “Barong (sword)”参照
p(23%) モージェスカ(訳注 女優)の写真◆ Helena Modjeska(本名Helena Modrzejewska)(1840-1909)ポーランド生まれのシェークスピア悲劇女優。1876年米国に移住。英語は不完全だったが人気を博した。
p(27%) アルブレヒト・アルトドルファー『光輪の聖母子像』の複製◆ Albrecht Altdorfer “Maria mit dem Kinde in der Glorie”(1526)
p(27%) アンドレア・デル・サルト『聖家族と聖エリザベツと幼児聖ヨハネ』のカラー・エッチング◆ Andrea del Sarto “Madonna and Child with St. Elizabeth and St. John the Baptist”(1529)
p(27%) ホール博士、リケソン、シュミット神父◆ Edward Wheeler Hall(1922年の事件), Hans Schmidt(1913年の事件)、リケソンは調べつかず。(2022-8-8追記: 序文に書いてある「ウエストニュートンのリチェソン」と同じかも、と調べたらClarence Virgil Thompson Richeson (1876-1912)と判明した)
p(30%) 二人の陽気なジャマイカ人が家事全般を取り仕切り
p(31%) 指紋採取… ボーメスが導入した法律… ドアノブを用いるやり方◆ Baumes Lawsはニューヨーク州上院議員Caleb H. Baumes(1863-1937)を議長とするニューヨーク州犯罪委員会により提案され1926年7月1日に成立した数種類の州刑法令。本書にある通り、指紋採取についての規定も含まれているようだ。英Wiki ”Baumes law“参照。
p(36%) インドのサンゴ色の糸
p(36%) うちの夕食は6時半… 使用人たちがまっとうな時間に食事◆そういう気遣いのある家庭もあったのだろう。
p(36%) 国際司法裁判所◆当時の時事ネタらしい。1920年創設のPermanent Court of International Justiceのことか。
p(37%) ジャズ◆当時の有名曲はWiki “List of 1920s jazz standards”参照
p(37%) 電波を空けておく◆このような対応があったんだ
p(39%) 速記ができる
p(41%) 電話会社が自動システムを導入… 現在は発信元を突き止められない◆交換手の時代には色々と記録が残りやすかったのだろう。
p(42%) 風呂が五つ
p(42%) 朝食… オレンジ・ジュース、シリアルと生クリーム、目玉焼き、ラムチョップ
p(42%) 朝の調べ(アルボラーダ)◆alborada(スペイン語)
p(42%) 殺人者の目◆ Murderer's Eye
p(42%) パトリック・マホン◆ Patrick Mahon、1924年5月逮捕
p(42%) ロールパン… オムレツ
p(44%) 狭いレッジ◆ledge
p(45%)️ 彼女のことを心配するアボット◆ここら辺は一切プライヴェートを明かさないヴァンダインと違う
p(45%)️ 新聞記者の守護聖人フランシスコ・サレジオ◆ Francesco di Sales (Salesio)(1567-1622) Wiki「フランシスコ・サレジオ」参照。
p(45%)️ 犯罪発生率が最も高いのはセントルイス…
p(47%) 悪い噂を流す女(キャッティ)◆catty アボットは猫派と見た
p(48%) 自分の秘書に隠し事は不可能
p(49%) 高級取りで、週に45ドル稼ぐ◆秘書の給与。月給換算で44万6千円
p(50%)️ チョックフル・オーナッツ・ショップ◆ Chock full o'Nuts Shopは1926年、ブロードウェイ43丁目にWilliam Black(1902-1983)が開店したコーヒーショップ。
p(50%) 流行りの少年のようなボブカット
p(53%) 航空隊◆本書では、グローヴァー・A・ウェイレン(Glover Aloysius Whalen 1886-1962) NYC警察本部長在任(1928-12-18〜1930-5-21)が導入したように書いているが、英Wiki “NYPD Aviation Unit”によると、創設は1919年のことらしい。ウェイレン自伝“Mr. New York”(1955)にも警察航空隊に関する記載はなかった。
p(54%) ジョセフ・フィールズ判事◆調べつかず
p(55%) ニューヨークの老舗社交クラブ<プレイヤーズ>◆1888年創設。英Wiki “The Players (New York City)”参照。
p(58%) パウルス・シレンティアリウス◆ Paulus Silentiarius、ギリシア6世紀の詩人
p(59%) ドレスデン美術館所蔵の≪システィーナの聖母≫◆ラファエロ作Madonna Sistina(1514)、指は誤りではない説もある。
p(60%) マーク・トウェインの“ストマック・クラブでの講演”◆ "Some Thoughts on the Science of Onanism" a Speech by Mark Twain in Paris at the Stomach Club in spring, 1879. 際どいネタのため、ずっと秘匿されていたが1943年に謄写版で活字化され、初の印刷版は100部限定(1952)だった。ちょっと古いが『四畳半襖の下張』事件(1972)を思い浮かべていただければ…
p(60%) ロータス・クラブ(訳注 ニューヨークの老舗クラブ)◆ Lotos Club、1870年創設。
p(62%) およそ三十年前のロンドン… チェルシー・オールド教会◆ Chelsea Old Church、1941年4月にドイツ軍の空襲を受け、かなり破壊されたがThe Thomas More Chapelにはほとんど被害がなかった。
p(63%) 粗羅紗(ベイズ)張りのドア
p(63%) ホット・アンド・コールド◆Hot and Cold、英Wiki “Hunt the thimble”参照。
p(64%) 指紋採取の技法◆当時の手法がかなり詳細に書かれている
p(69%) グリーニー邸… 当時ニューヨーク市立博物館… 博物館は現在、五番街の新しいビルに移転… ◆ Museum of the City of New Yorkは1923年にHenry Collins Brown(1862-1961)により設立され、当初の住所はEast End Ave. at 88th St.の旧Gracie Mansionだった。その後、1930年に五番街の新築の建物に移転した。
p(69%) メイシーとギンベル… オヴィントンとウールワース◆いずれも米国の百貨店。Macy’s: Rowland Hussey Macyにより1851年創業、NYC店は1858年。Gimbel Brothers(Gimbels): Adam Gimbelにより1842年創業、NYC店は1910年開業。Ovington’sは元々陶器やガラス製品の販売店として1846年創業。WoolworthはFrank Winfield Woolworthにより1879年創業。
p(69%) 寄席芸人(ボードビル)
p(71%) 昨今、弾道試験の信頼性が著しく低下… 専門家の力不足◆ FBI資料(1941)に旋条痕比較を含む銃器鑑定が各州法廷でどのように受け止められたか、の便利なリストあり。否定的だったのはケンタッキー州1928年、マサチューセッツ州1928年だけだったのだが… (FBIの銃器鑑定テキスト1941)
p(71%) ブローニング、ウェブリー、スミス・アンド・ウェッソン、モーゼル、パラベラム◆最後のParabellumはLuger P08のこと。米国最大メーカーの「コルト」が入っていないのは本部長名と紛らわしいから?
p(71%) 発射された銃弾に刻まれた撃鉄ややすりや研磨装置によってついた細かな傷跡◆これは「銃弾(bullet)」ではなく「薬莢(cartridge)」のことでは?少なくとも銃弾は撃鉄と直接接触しない。「やすりや研磨装置」はejectorやextractorのことだろうか。
p(73%) とうもろこしのかき揚げ(コーン・フリッター)と同じくらいアメリカじこみ◆Corn Fritters、米国南部のが有名らしい。
p(73%) ツィンガロ… クワドルーン◆ zingaro(イタリア語)、quadroon
p(73%) カード占いの手法… マザー・シプトン… マドモアゼル・ルノルマン… クリスクロス・エースイズ◆Mother Shiptonは英国の伝説的予言者。本名Ursula Southeil(c1488-1561)、Marie Anne Adelaide Lenormand(1772–1843)はフランスの占い師。クリスクロス・エースイズは調べつかず。
p(78%) 手袋の内側のイニシャル
p(79%) イタリアのオペラ… 14丁目… フォン・スッペの「ボッカチオ」◆ Franz von Suppé作Boccaccio, oder Der Prinz von Palermo(1879)
p(79%) 一九二七年一月◆ここでは明言されていないが、後の情報に基づき再構成すると、これは四年前のことだと思われる
p(79%) [眠りは]人生を少なくとも1/4に減じてしまう◆ここは誤訳か。「人生の1/4を減じてしまう」が正解だろう。
p(81%) わたしはホテルに住むことにして、あの家は家具つきで賃貸に
p(82%) わたしが人生から得た唯一の喜びは、推理小説を読むこと… 完全犯罪ものに目がない◆この熱狂的な情熱はどこから?でも当時は大不況真っ只中でこういう人が結構いたのだろう。そして探偵小説の黄金時代だった。バーナビー・ロス四部作やJDC/CDのフェル博士やHM卿もまだ世の中に現れていないのだ。羨ましい!
p(82%) 長距離電話… 電話会社が警察に提供する高速サービス
p(86%) フェルトのつばなし帽(トーク)◆toque
p(86%) スカートの丈は膝が隠れるくらい◆当時の主流はふくらはぎあたりか。「流行より高い」という意味かも。
p(87%) 五年前の八月
p(92%) ニューヨークでは目下、記録的な暑さが続いている… 気象局開設以来、六月にこんなクソ暑い日が続いたのは初めてだ◆ ブログ“Heat - New York City Weather Archive”によると、NYCで90℉(=32.2℃)以上の日が6月中に9回以上あったのは史上四回だけ: 1943 (11), 1966 (10), 1925 & 1991 (9)。この記事によるとNYCは八月が一番暑い月で、最高気温記録は94℉(=34.4℃)

No.2 7点 蟷螂の斧 2020/06/02 10:23
「BOOK」データベースより~『ボート上で発見された男女の遺体。事件の真相を追及するべく、NY市警察本部長のサッチャー・コルトが捜査にのりだす!金田一耕助探偵譚「貸しボート十三号」の原型とされる作品の完訳!』~
 長谷川史親氏は『探偵小説談林』の中で「貸しボート十三号」には原型の作品があると指摘していました。昨年、本作が翻訳されその原案であることが紹介されました。本作ではコテージの番号が13号でした(笑)。
 1931年の作品で、現在では警察小説に分類されると思います。捜査の様子がどちらかと言うとドキュメンタリータッチで紹介されています。ボートに残された木の葉から犯行現場を突き止めていくというような感じで進んでいきます。殺害された二人は浮気している仲なのですが、双方の家族はそれを認めません。どんな背景があるのか?。殺害されたのが牧師なので、その真相は当時としてはかなりインパクトがあったのではないかと思います。

No.1 5点 nukkam 2019/07/16 20:45
(ネタバレなしです) アメリカのアンソニー・アボット(1893-1952)はジャーナリストだったフルトン・アワスラーのミステリー作家としてのペンネームで、1930年代から1940年代前半にかけて発表されたニューヨーク市警のサッチャー・コルト警察本部長シリーズ(長編8作といくつかの短編)の本格派推理小説で人気を博しました。私はこのシリーズ、「ナイトクラブレディ」(1931年)と「シャダーズ」(1943年)を先に読んでいますがあまりにも無茶苦茶なトリックにB級ミステリーの典型という印象を抱いていました。しかし1931年に発表されたシリーズ第2作の本書は死体発見の場面こそやや派手ですが、全体としてはそれほど破天荒な内容ではありません(英語原題の「The Crime of the Century」はあまりにも大仰ですが)。コルトの強引な捜査活動はリアリティのかけらもありませんし、読者に対して真相を推理できる手掛かりをフェアに提示しているかも疑問ですが、14章でコルトが登場人物たちの容疑を次々に羅列する場面はいかにも本格派黄金時代に書かれた作品であることを感じさせます。


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