皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
空さん |
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平均点: 6.12点 | 書評数: 1505件 |
No.19 | 5点 | 寂しい夜の出来事- ミッキー・スピレイン | 2022/07/24 23:56 |
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スピレインの共産主義嫌いが露骨に表明された作品で、マイク・ハマーは「奴らにくらべたら、ナチだって鼻たれ小僧みたいなもんだ。」とさえ考えています。そういった彼の思想が存分に地の文で書かれた作品です。
一方では、冒頭の霧の夜ハマーが橋の上にたたずむことになる理由は、判事から、人を殺すのを楽しんでいるおまえは平和な社会の中では存在理由が見つからないなどとののしられて、落ち込んだためで、自己否定的な気分も、かなりしつこく描かれます。判事の夢を見たことまで書かれているほどですが、やはり俺は暴力的方法で事件を解決するんだということにならなければ、スピレインになりません。そんな憎しみと暴力性に対するねじれた感情が延々書き連ねられているという点では、ハードボイルドらしくありません。 プロットは、最後の意外性部分で話をごちゃつかせてしまったように思います。 |
No.18 | 6点 | やくざの帰還- ミッキー・スピレイン | 2022/05/20 23:37 |
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収録中編2編のうち。表題作はライアンの一人称で語られる、『おれはやくざだ!』の続編です。長編ではご存知マイク・ハマーの他タイガー・マンのシリーズがある作者ですが、中短編では同じ主役を使ったものは他にはないようです。前作についても多少触れられていますが、話のつながりはありません。前作の訳は井上一夫の一人称を「わたし」としたかっちりした文章だったのに対し、本作の久保順訳は「おれ」で、「喰うことにしたんだな。」とか「全くいいや。」とか、さすがにくだけすぎかなと思えます。ポケミス100ページほどの中に、様々な要素をつめこみ、誰が誰やらわからなくなるようなところもありましたが、次から次へと人が殺されていくスピード感はなかなかのものです。
『私生児バナーマン』は表題作ほど目まぐるしくはありませんし、訳文も少しおとなしめ。悪役の正体が明かされた後の意外性は、本作ではうまくきまっていると思いました。 |
No.17 | 7点 | 俺の拳銃は素早い- ミッキー・スピレイン | 2021/12/13 00:02 |
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古代ローマのコロッセオと現代の都会とを比較したりして、素早くて巧みじゃなきゃおまえは死んじまうぜ、なんていう講釈から始まる本作。しかし実際には、ハマーの拳銃さばきはちっとも素早くないと思える内容でした。
だからと言って作品自体がもたついて退屈なわけではありません。銃をまだ抜いていなかったからこそ命が助かる件にはなるほどと思わせられましたし、後半、銃は要らない、素手で倒してやると殺し屋に飛びかかっていくところも楽しめます。さらにハマーが先に発砲しなかったから成り立つ、犯人の悲鳴をハマーの哄笑が覆い隠してしまう狂気じみたラスト・シーンには異様な迫力があります。 ローラの扱いについては、後の作品のことを考えると、こうならざるを得なかったのだろうなと思えました。 ちなみに読んだのは原書なので、人並由真さんが書かれている一人称「僕」の違和感は感じずに済みました。 |
No.16 | 5点 | 七年目の殺し- ミッキー・スピレイン | 2021/05/18 19:18 |
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『カストロ・スパイ』と表題作の2編の中編を収録しています。2作ともダブル・クライマックスを用意した作品なのですが、どちらもかえって最後があわただしくなりすぎるという欠点を持っています。『カストロ・スパイ』は邦題からもわかるとおりのキューバ情勢を取り入れたスパイ・アクションで、原書ではこちらの原題 “The Flier” が本のタイトルになっています。しかしこれがごちゃごちゃしすぎて、スピレインにしてはおもしろさがストレートに伝わって来ないのです。まあ、リアルな国際状況を的確に描くことのできる作家でないせいもあるでしょうが。
邦題の表題作の方が、これもやはりかなりごちゃごちゃしているとは言え、おもしろくできています。7年間冤罪で刑務所に入っていた元新聞記者が、何度もボコボコにされながら、最後は目的を達することになる話ですが、ただラスト・シーンで明らかになるある人物設定はどうもねえ。 |
No.15 | 6点 | おれはやくざだ!- ミッキー・スピレイン | 2020/12/11 22:53 |
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中編の表題作と2編の短編を収録。この表題作はつかみの部分から真相が明かされるラストまで、いかにもスピレインらしい作品で、安心して(?)楽しめます。
『ドラゴン・レディとの情事』のドラゴン・レディとは第二次大戦中の爆撃機B-17の名前で、彼女を愛おしむ「十人の夫ども」の話です。全くミステリではありませんが、ヘミングウェイ的な意味でハードボイルドな感じはあり、「おれたち」のノスタルジックな思い入れと現代における彼女の意外な活躍が実に楽しめます。 『蹴らずんば殺せ』は、巻末解説には、宿屋の女主人が主役の男の症状を麻薬中毒と勘違いして薬を捨ててしまうところだけを取り上げて「ある種のドタバタのファルスで、これも変わっている」と書かれていますが、それは軽い味付け部分に過ぎません。全体としては最後が慌ただしすぎるきらいはありますが、主役が町を牛耳る悪党どもをやっつけるハードボイルドです。 |
No.14 | 5点 | 鮮血の日の出- ミッキー・スピレイン | 2020/08/01 13:23 |
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タイガー・マンのシリーズ第2作。前作で出会ったエディスと結婚して諜報機関を退職しようとしていたまさにその日に舞い込んできた新たな指令は、アメリカに亡命してきた共産圏の情報部局長をめぐる事件に関するものでした。
プロット自体は、なかなかおもしろくできていて、アクションもふんだんに盛り込まれています。冒頭の、タイガーが以前に助けたことのある男の話も、当然どこかでつながってくるんだろうなと予測はできますが、クライマックスにうまく結びつけています。タイガーが機関の研究者から渡される秘密兵器も、期待どおり最後には有効活用されることになります(それにしても破壊力がありすぎ)。 しかし一方で、作者の安っぽい反共産主義的思想の大盤振る舞いはどうでもいいやという感じですし、エディスをロンディーンと呼んだりする恋愛側面の甘ったるさには辟易させられるところもありました。 |
No.13 | 6点 | ガールハンター- ミッキー・スピレイン | 2019/09/28 07:48 |
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前年に未発表旧作(一応手を加えているんじゃないかとも思えますが)『縄張りをわたすな』で長編を再開したスピレイン、新作マイク・ハマーものは、作者だけでなくハマー自身の復活物語でもありました。スピレイン自身がハマーみたいにアル中になっていたわけではないでしょうけれど。作品設定としては、ハマーは7年間飲んだくれて落ちぶれていたことになっています。いくら悔恨と悲しみに打ちひしがれたとはいえ、そんなにまでなるかなあとか、恨みを持つ輩によくも狙われなかったもんだとかいう疑問は、この際無視することにして。
冒頭で生きているらしいとわかったヴェルダは、作中では一切登場しません。二人の再会は次作でのお楽しみ、とういうことで。昔みたいな体力はないとかくよくよ考えながらも、殺し屋相手に頑張るハマーには、やはり拍手を。ラストシーンは、伏線がわざとらしいですが、いかにもスピレインです。 |
No.12 | 5点 | 縄張りをわたすな- ミッキー・スピレイン | 2019/05/17 23:00 |
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スピレインは1952に『燃える接吻』発表以来、長編をしばらく書いていませんでしたが、1961年の本作をきっかけに、翌年には『ガールハンター』でマイク・ハマーもの第2期を開始し、さらにタイガー・マン・シリーズなどもコンスタントに発表していくことになります。
その、ハードボイルド・ファン(文学派にこだわる人は別として)にとっては待望の本作、発表当時期待して読み始めた人には肩透かしだったかもしれません。アウトローな世界を描いてハードなシーンも多いのですが、主役ディープの感情がちょっとセンチメンタルになりすぎているのです。原題は “The Deep”。定冠詞がついていることからしても、旧友が殺されたことで故郷の街に帰ってきた主人公の名前というだけではなさそうです。 旧友殺しの真犯人の正体はかなり意外ですが、ラスト1行で明かされる事実は、簡単に予測できるでしょう。 |
No.11 | 6点 | スピレーン傑作集2/ヴェールをつけた女- ミッキー・スピレイン | 2019/02/27 23:41 |
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1950年台に発表されたスピレインの中短編4編を収録。
『立ちあがって死ね!』は最後の方ご都合主義なところもありますが、そんなところもまた楽しめる娯楽アクション・ハードボイルド中編です。 次の表題作中編については、訳者でもある小鷹信光の詳しい巻末解説に、なんとジョン・エヴァンズによる代作であるという、本作掲載誌に後年書かれた記事(編集前記)が紹介されています。SF設定を背景に持っていても、いかにもスピレインらしい語り口で、小鷹氏は初期マイク・ハマーもののパロディと主張しています。スピレイン自身が創作にどの程度関与していたにせよ、他の人が書いたからこそのあまりの「らしさ」かなとは思えます。 短い『殺しは二人で』と『性はわが復讐』はミステリとは言い難い作品で、特に後者は性と社会についての作者の哲学を小説の形で書いたものといった趣です。 |
No.10 | 7点 | ねじれた奴- ミッキー・スピレイン | 2018/10/22 20:19 |
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今までに読んだスピレインの中でも、特に話が複雑に入り組んでいて、結末の意外性もある作品です。様々な登場人物の思惑が、事件をややこしくしています。kanamoriさんの評を先に読んでいたため、真相は最初からわかっていましたが、現代では、元ネタよりも直感的に当てにくいでしょう。一人称私立探偵小説であることが、ミスディレクションにもなっています。
タイトルにも二重の意味があります。ひとつは事件そのもので、大詰めで「これほどひねくれたケースはおがんだこともないくらいだ」という文が出てきます。またラスト・シーンで犯人のセリフの中にも「ゆがみ、ねじれたもの」という表現があります。さらに最終ページのオチのつけ方が、このシリーズとしては意外で衝撃的です。 そんな異色作だからといって、アクションの方にも手抜きはなく、ハマーは市警の悪徳刑事たちを相手どって派手に活躍してくれます。 |
No.9 | 6点 | 俺のなかの殺し屋- ミッキー・スピレイン | 2017/10/17 22:34 |
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表題作および『孤独の男』の長めの中編2編が収録されています。
表題作の語り手スカンロンは警部補で、自分が生まれ育った地区で起こった連続殺人の捜査をすることになります。しかし主役が警察官でも警察小説っぽい感じはありません。この作者らしく、いやマイク・ハマーもの以上に、街の雰囲気や住人たちの描き方等まさにハードボイルドです。プロローグにクライマックス直前のシーンを持ってきていて、「わたしは自分自身を殺さねばならないのだ」なんて思わせぶりな表現も出てきます。犯人の意外性はマニアックな本格派作家が考えそうなものですが、伏線不足なのが残念なところ。 もう1編『孤独の男』は、罠にかかって殺人罪で裁判にかけられ、それでもなんとか無罪を勝ち取った元刑事の話です。真相は表題作とは逆にすぐに予想のつくものですが、スピレインらしいハードなおもしろさはさすがでした。 |
No.8 | 5点 | 銃弾の日- ミッキー・スピレイン | 2017/01/08 22:56 |
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タイガー・マン・シリーズの第1作で、作中で彼は「おかしな名前でしょう? でも、おやじが、そうつけたんです」と自己紹介しています。綴りはTiger Mann。『ヴェニスに死す』の作家と同じ姓なんですね。ファースト・ネームの方は、今では確かにそういう名前の有名人もいるしね、といったところです。
タイガーは諜報機関に所属していて、国連で機密情報が東側に漏れている事件が話の中心にあります。一応国際政治を背景にした作品だけに、共産主義嫌いの作者らしさはマイク・ハマーものよりもはるかに露骨に表れています。ただしどんな機密なのかの説明などは当然ながら全く無視していて、謀略スパイ小説としてのおもしろさはなく、国際政治は派手なアクション・スリラーのための方便に過ぎません。 その一方で特にラスト・シーンなど、スピレインの官能的な甘さが存分に発揮された作品でもあります。 |
No.7 | 5点 | 蛇- ミッキー・スピレイン | 2016/06/23 22:45 |
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マイク・ハマーが久々にカムバックしての第2作です。ヴェルダとの再会シーンから始まりますが、その冒頭部分からなかなかいい雰囲気を出しています。犯人の設定がスピレインらしくないとも思えますが、それだけにまあ意外性があるとも言えるでしょう。
しかし、ハマーが銃を突き付けられ危機一髪になるシーンが3回あるのですが、どれも偶然助かり、しかも『大いなる殺人』みたいな伏線もないのでは、ハマーって、やたら運がいいだけじゃないかと思えてしまい、偶然のパターンを変えてはいても、さすがに安易と言わざるを得ません。 最後部分も、犯人がいつの間にか現れて、しかも犯人はそこに以前に来たことがないとしか思えない展開になるのは、説得力に欠けます。犯人がその場所を知らなかったとは考えにくいですし、知らなかったとしても、ハマーとヴェルダを尾行するのはかなり困難な場所なのです。 |
No.6 | 7点 | 大いなる殺人- ミッキー・スピレイン | 2016/02/23 18:48 |
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マイク・ハマー・シリーズ第4作では、このタフガイ探偵がなんと殺された男の赤ん坊を自分の家に連れて帰って世話をするなんて、意外なところを見せてくれます。もちろん探偵の仕事があるので、すぐに看護師をやとって面倒を見させるんですけど。その仕事も、誰かに依頼されてではなく、その子を孤児にした犯人を許せないという正義感から、捜査に乗り出すのです。
で、その殺人事件を中心としたプロットはというと、これが謎解きとしてかなりきっちりできているのです。ハマーがギャングたちにずいぶん痛めつけられたりもする派手でハードなストーリーの陰に隠れて目立ちませんが、これまで読んだスピレインの中でも、最も論理的に組み立てられた作品だと思います。 ラスト1段落のオチをつけるために、その直前はご都合主義な展開になっていますが、オチのための伏線は早い段階からたっぷり張ってあります。 |
No.5 | 6点 | 復讐は俺の手に- ミッキー・スピレイン | 2015/02/06 21:19 |
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悩める探偵といえばまずクイーンを思い浮かべますが、本作ではマイク・ハマーは過去の事件を思い出してかなり悩んでいます。とは言っても、スピレインですからクイーンみたいなマジな重さはなく、白々しい感じもしますが。思い出しているのは『裁くのは俺だ』のラスト・シーンなので、あのデビュー作の結末を踏まえた上で、どうひねりを加えるつもりなのかと思っていたら、こう来ましたか。最後の3ページぐらいで思いがけないことを起こしてくれます。その時点で、発表当時の常識、しかも作者の発想を考えれば、当然そうだろうと想像できるのですが、これまたクイーンばりに最後の1行でタネを明かしてみせる技巧まで使うとは、驚きでした。
そんな意外性演出以外にも、冒頭の事件でハマーが私立探偵の免許を取り消され、私立探偵の資格を持っているヴェルダを表に立てて捜査を続ける構成など、なかなか楽しめました。 |
No.4 | 7点 | スピレーン傑作集1/狙われた男- ミッキー・スピレイン | 2014/04/20 23:18 |
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5編を収めたスピレインの中短編集ですが、マイク・ハマー登場作はありません。
最初の『狙われた男』は140ページ近くある中編で、マイク・ハマーものよりも正統ハードボイルドに近い印象で、『赤い収穫』と似たところがあります。恋愛劇は通俗的ですが、最後のひねりもうまく決まっていて、傑作と言っていいでしょう。 次の70ページ程度の『死ぬのは明日だ』も同じようなタイプですが、冒頭にクライマックス部分を置いて、その場面に至る事件の顛末を語っていくという手法がとられています。これも相当な出来栄え。 他の3編は短い作品で、まず『最後の殺人契約』は伏線が露骨すぎてオチの丸見えなのが冴えませんが、『高嶺の花』は逆に意外なオチを用意した「奇妙な味」系と言ってもいい、ハードボイルドとは無縁の作品。犯罪実話『慎重すぎた殺人者』は地味なドキュメンタリーと、スピレインの意外な作風の幅を堪能させられました。 |
No.3 | 6点 | 燃える接吻- ミッキー・スピレイン | 2013/09/18 23:41 |
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タイトルだけは記憶にあったアルドリッチ監督のかなり有名な映画『キッスで殺せ』の原作なんですね。原題”Kiss Me, Deadly” とは、どちらも微妙にずれているような。
マイク・ハマーが今回相手にするのはそこらのギャングではなくマフィアであるだけに、FBIも出てきたりして展開が派手で、結末直前までは、今まで読んだスピレイン3冊の中では一番面白いと感心していたのです。しかしこの犯人の意外性にはあまりいい意味ではなく驚かされました。ノックスやヴァン・ダインの規則中でも現在まで通用する条項に、厳密には違反しています。ひねくれたことを考えるマニアックなパズラー作家じゃあるまいし、と評価も下がったのですが、さらに一ひねりしてあり、こっちはそんなことをする必要性が低いし伏線不足だとは言え、まともな「結末の意外性」でした。それでまた持ち直してこの点数になったという次第。 |
No.2 | 6点 | 女体愛好クラブ- ミッキー・スピレイン | 2013/01/31 21:16 |
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手を出すのがためらわれるほど何ともいかがわしい邦題ですが、内容との関連からもこれはよくないのではないでしょうか。原題は”The Body Lovers”で多少はましか。
さて、その内容は冒頭1ページ目からして、いかにもハードボイルドらしい香りがします。『裁くのは俺だ』の頃から見ると文章も達者になってきていて、地の文にも気の利いた視点の表現がかなり見受けられます。とは言っても、マイク・ハマーの思想はやはり単純なアメリカ中心の倫理観で、反共産主義。『ガールハンター』で10年ぶりにカムバックした時には酒に溺れて、ネオ・ハードボイルド探偵の先取りみたいだったそうですが、その3作あとの今回は、愛しのヴェルダと共に最初からタフガイぶりを発揮してくれます。 プロットはベタな設定ながら、おもしろくできています。最後はあまりにご都合主義だなと思えますが、派手に決めてくれました。 |
No.1 | 6点 | 裁くのは俺だ- ミッキー・スピレイン | 2012/10/07 11:32 |
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この作家もぜひ読んでおかなければとずいぶん前から思っていながらも、やっと初読したスピレイン。
意外だったのが、マイク・ハマーの女性に対するモラリストぶり。文章については、ハメットやチャンドラーとは比較できないとしても、ハドリー・チェイスほどの迫力が感じられないのは、ちょっとつらいところでしょうか。 ハマーを始めとする登場人物のキャラクターにしても文章にしても、まさに通俗ハードボイルドという呼称がふさわしい内容です。ただしストーリー展開は、miniさんも書かれているように意外に正統派ミステリっぽいところを持っています。 発表当時ブーイングを巻き起こすインパクトを放っていた作者の暴力や性に対する感性も、落ち着いてごく普通に楽しめるようになってしまったことには多少悲しみを感じながらも、このある意味「古典」にやっと接することができたことにとりあえず満足して… |