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miniさん
平均点: 5.97点 書評数: 728件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.13 8点 このミステリーがすごい! 2017年版- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 2017/02/04 12:33
ランキングされた個々の作品のレベルと、ランキング本それ自体の評価とは全くの別ものである
何故なら毎年出版されるミステリーのレベルの高低に対して、ランキング本側には何の責任も無いからだ、ただ単にランキングしているだけだし
したがってランキングされた個々の作品の評価はその各本で書評されればいいわけで、当然ながらランキング本自体の評価というのはあくまでもその編集内容で判断されるべきである
さてそういう意味では、編集内容に乏しかった昨年版に比べると、今回の『2017年版』には”オールタイム・ベスト、海外短編ミステリーベストテン”という目玉企画が有る
一昨年版の国内編に続いて要望に応えましたというところでしょう
ベストテン作品の解説や、アンケート(5位まで挙げるルール)に答えた評論家各氏のリストを眺めるだけでも楽しい
集計結果はまぁ多少のありきたり感はあるが、8位にストリブリング「ベナレスへの道」が入っているんだね、成程
20位以内にフォン・シーラッハが2作ってのは最近のアンケートらしい感じ
私としては森英俊氏の1位がカーシュ「豚の島の女王」だったのには流石と思った
あとマジック・ナポレオンズの植木さんの1位がなんとT・ゴドウィンの「冷たい方程式」、SF短編アンケートだったら上位に入りそうだけどね、あっでもあれか、SFという分野を超越してるような短編だからな

さて毎年恒例の”我が社の隠し玉”コーナーいくか

小学館:
ハーラン・コーベンの名を久々に聞いたな、コーベンは本持ってるけど積読で(苦笑)
あと、”アイスランドのクリスティ”って?

東京創元社:
創元のファンには本格派しか興味ないって読者も多そうだけど、創元は本格だけ出してるわけじゃないアピールですね

論創社:
最近はフレッチャーやウォーレスにも手を出してるが良い事です
デイリー・キング「鉄路のオべリスト」を、新訳じゃなくて昔光文社で出た時の鮎哲訳のまま出すのね

新潮社:
相変わらず冒険系に強い新潮社、思想的に右寄りと言われるぶれない姿勢が新潮らしい

原書房:
ここ壱番笑えた
終始コージー派の話題のみ、いかにもな本格ばかり期待されがちな原書房だけに、いやコージー派にも力入れてますよん、的なアピールなのでしょうか

(株)KADOKAWA:
昨年版で社名変更について説明したけど、まだ違和感が(笑)

集英社:
結構面白そうな企画を毎年打ち出すんだけど、我々読者側がなんとなく後回しにしてしまう出版社でもあるんだよなぁ、申し訳ありません

早川書房:
ここはねえ、ベテラン作家や安定路線よりも、新鋭に目が行ってしまう不思議な出版社
早川が手を出したのなら、という期待感があるんだよね

講談社:
早川とは逆で、既知の作家や安定シリーズに魅力が有る出版社(笑)
ただ今回のゴダードは凄そうだな、大作ぽいから手を出し難いけど(苦笑)

扶桑社:
安定化シリーズ路線と、たまに飛び道具的に出す超異色企画という両極端な出版社
ただ今年は安定志向ですかね

国書刊行会:
今年は何と言っても小説じゃなくて評論・研究部門
マーティン・エドワーズ「探偵小説の黄金時代」(森英俊訳)
まぁ国書だから本の単価高そうだけど(笑)

文藝春秋:
昨年版では惜しくもトリ逃したがついにゲット(笑)
個々の作家の名前の強みに助けられてる面も否定出来ないにしても、ここ毎年ランキングを賑わす好調さは健在、今年も強そうな顔触れですね


別のところで言ったんだけどさ、そろそろこの出版社メンバーの中に、”ちくま書房”を加えてもいいんじゃない、どうよ宝島社さん

No.12 5点 このミステリーがすごい!2016年版- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 2015/12/16 10:00
今年の「このミス」は、う~ん、ランキング内容は別にしてなんか地味
一応、この種のランキング本を書評する場合は、ランキング結果とかの話題と、特集記事とかの編集内容などの話題は、はっきりと分けて評価するべきである、さてそこで
ランキング結果は別にして、編集・企画とか内容的に決して悪くはないんだけど、やはり今年は地味
ここ2年位有った、アンケートとかの特別企画が今年はあまり無い、特集と言えるのは作家インタビューのみって感じだ、もっともインタビューされたのが米澤さんに東山さんという人気作家だからそれなりにウケそうではあるが
まぁランキング本なんだからランキング結果さえ分かればいいのだという意見も出そうだけどね

ランキング結果についての感想は後続の方々にお任せするとして、私はマイペースに”我が社の隠し玉”コーナーから、順番は掲載順

論創社:
昨年度も2番目だったし論創早いね、儲かってるのかな(笑)Twitterなどで情報を随時知らせてくれる有難い出版社さんなのだけど、逆に言えば既知の情報ばかりで今回初めて知ったのは1つを除いて特にないなぁ
ウォーレス、ハイランド、そしてジョン・ロードの別名義マイルズ・バートンあたりに期待でしょうかね

東京創元社:
マンケルの逝去で追悼刊行になるみたい、それだけじゃなくて警察小説に力作が揃う感じでしょうか
アリンガムの2冊目の短編集も予定ですか、まぁ長編は他社で予定してるからね

新潮社:
冒険小説系に強い新潮だけにクランシーにグリーニーと手堅い

小学館:
ここも比較的順番が早いよね、ただまたべリンダ・バウアー推しですか(微笑)

集英社:
やけに北欧が多いな、ちょっとブームに乗り遅・・、いや別に良いですよ(微笑)

国書刊行会:
ここ数年鳴りを潜めていた国書だが、またホームズ・パロディですか、、英語圏以外のホームズ・パロディってまたマニアックな
あとネヴィンズと言えばクイーン評伝ですね

扶桑社:
S・ハンターはスワガーものじゃない単発作、異色作家シリーズはマシスンね
本格ミステリー三部作の最終編って?あれか?、いやあれは本格派じゃないという定評だし、とするとあのエッグとミンクの”館もの”の方か?、まぁどっちにしても興味無いけど(ゴメン)

早川書房:
いきなり「ミレニアム4」ですか、昨年版での刊行予告がずれ込んだんでしょうね
来年じゃなくて近日年内刊行ですよ、作者はもう亡くなってるので書いたのはパートナーですかね

講談社:
毎年手堅いけど、う~ん
コナリーはリンカーン弁護士の方ね

光文社:
来年はちょっと面白そう、ポー短編集の2冊目、新潮文庫の方はジャンル別に分けてたけど、光文社は分冊の基準がよく分からん
ただ面白そうなんだけどドイル、クリスティって、いかにも古典新訳文庫らしいけど、その分目新しさに欠けるというか

原書房:
論創社と並ぶ注目の原書房は、まずクイーン外典コレクションの第3弾
そしてパーシヴァル・ワイルドのこれまで未訳だった第1作「Mystery Weekend」がついに登場か、典型的な”雪の山荘テーマ”という事で以前から本格マニアの要望が高かったやつですね

文藝春秋:
ある意味最も注目なのは文春かも、エルロイですよ、あのLA4部作の正統な直系の後継作が登場、これは驚き、ダドリー・スミスにバズも再登場らしいよ
さらにスティーヴン・キングのホラーじゃないMWA受賞の著者初のミステリー作品
あとルメートルのシリーズ第3弾とか
今年は地味な各社隠し玉の中で、流石は文春、派手だぁ~

(株)KADOKAWA:
え?角川書店でしょ?って、そう今年の3月までは
これまでは持ち株会社による社内カンパニー制だったんだけど、今年の4月から制度を廃止してKADOKAWA(旧角川ホールディングス)に一本化、したがって角川書店と言う社名は現在は消え去ったのです
社名の話題だけじゃなんだから(笑)、大物ウィンズロウが控えてますよ
で今年はトリ奪回、絶対わざと狙ってただろ(大笑)

No.11 6点 このミステリーがすごい!2015年版- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 2014/12/12 10:00
ミステリー小説ファンにとって暮近くの風物詩はクリスマスツリーじゃなくてこのミスだという人も居るかも、いやいね~か(微笑)
今年はランキング常連の米澤穂信氏が意外にも1位は初めてということだ、海外では例年の接戦とは違いルメートルというフランス作家の作品が2位以下に差を付けての圧勝、当サイトでも既にkanamoriさんが御書評済ですね、私も機会が有ったら読んでみたいなぁ
海外では文春と創元の2強時代に突入の感がある、文春は1位と3位にランク、これで文春は2連覇だ
しかも昨年文春が獲った1位はS・キングだから悪く言えば大物作家の名前頼みな感が有ったが、今年は新鋭作家で獲得なので正真正銘に1位って感じがする
1位こそ文春に奪われたが質と量の両面で見るなら創元も負けていない、何たってベスト10中に6冊を送り込み、11位以下でも健闘している、内容もクラシックから新鋭作家まで幅広く、一時期の早川ポケミスを凌ぐ勢いだ

さて昨年版では面白い企画が有って内容もまぁまぁだったので久々に高目の採点をした
今年も特別企画として”歴代短編ランキング(国内編)”が掲載された、集計結果は新し目の短編には厳しい結果だったが、本家”今年のベスト6”投票のついでみたいだった昨年の投票方式とは違い、今年のは各投票者の”短編ベスト5”が一覧表の形で掲載され見易くなっている
海外編もやるか検討中との事だが、国内編の結果を見るに1位が「赤髪連盟」とかの結果になるのだったら、わざわざこのミスでやる意義という点でどうだろう‥

今年は昨年よりも点数を下げたのは企画の問題だけじゃなくて、何となくだが恒例の”我が社の隠し玉”の文面に熱意が感じられなかったのが理由
何だかルーティンワーク的な刊行予告宣伝文っぽくなっちゃってさ
まぁ私の恒例行事なんで、一応”我が社の隠し玉”にコメント、例年通りで順序は掲載順のまま(だから毎年順番が変わる、そう言えばヴィレジブックス消えた)

小学館:
昨年からベリンダ・バウアー推してるなぁ、どんな作家なんだろ

論創社:
今年は良い意味でジャンル的にもかなりヴァラエティに富んでたが来年は本格派が中心なようだ、だから駄目だとは言わないが、一部の特殊な本格マニア受けを狙ったようなものばかりにならない事を願う
新年早々はディドロにシムノンとフランス作家で幕開け、スカーレット「白魔」の完訳と、クェンティンのダルース夫妻シリーズの残ってた未訳作、いかにもその手のマニアの要望に応えましたってのもあるが、ミラーも予定しているんだな、案外と論創がミラー手掛けるのって初めてなんだな

新潮社:
目玉はあの「チャイルド44」のトム・ロブ・スミスの新作、デミドフ3部作とは別ものらしい
他は昨年亡くなったクランシーの遺作に、グリシャム、アーチャー、ランキンと大物揃い

国書刊行会:
ここ数年、ミステリー関係の話題に乏しかった国書が久々の復活
イタリアの歴史ミステリーが目玉のようだが、気になるのは”ホームズの姉妹たち”という企画、「二厘馬車の秘密」のファーガス・ヒュームに少女探偵ものがあったとは
ただ個人短編集なのかアンソロジーなのかはっきり書いて欲しかった
それとは別の”あっと驚く企画”ってのも気になる、来年の注目出版社は国書刊行会だ

扶桑社:
S・ハンターにカッスラーとこの出版社らしいラインナップ
本格マニアが気になるのはカーの孫娘シェリー・ディクスン・カー
時間遡行の歴史ミステリーって祖父譲りやん、ただし本格派なのかは不明だ、案外とサスペンスものだったりして

東京創元社:
今年は絶好調だった創元だが、来年も新顔・ベテラン取り揃えている、アン・クリーヴスはシェトランド四重奏以外の作ってことかな
ユニークなところではC・ブランド「猫とねずみ」の続編、コックリル以外のもう1人のシリーズ主役の再登場作で原著は別名義で出版されていた

原書房:
順調に復活を果たしたヴィンテージ・ミステリ、森英俊氏監修だけにそのマニアックなセレクトには驚き
最初はバークリーやパーマーと無難な名前から始まったが、今年出たブルース・グレイムに続いて来年はヴァル・ギールグッド、ヴァージル・マーカムとマイナー本格派マニア垂涎だ
トリックマニアにはクェンティンのジョナサン・スタッグ名義のやつとか待望だろうが、私が気になるのはクレイグ・ライス
ライスにはストリッパーのジプシー・ローズ・リーの代作作品が有るが、実はもう1つの代作がハリウッド俳優ジョージ・サンダース名義のものだ

早川書房:
ここ数年安定しているが、話題性だとあの「ミレニアム」の続編
スティーグ・ラーソンは先月亡くなったので、書いたのはもちろんラーソンとは別の作家

講談社:
ハリポタのJ・K・ローリングのミステリー第2弾ともう1つが謎の作品集
”総勢26人の人気作家が順番に物語を展開”との事だが、この宣伝文句だけでは内容不明、単純にアンソロジーなのか、オムニバス連作短編集なのか、リレー長編なのかはっきりさせてくれ
秋は恒例のコナリーのリンカーン弁護士もの

文藝春秋:
勢いに乗る文春が来年もさらに加速、キングのあの「シャイニング」の続編が登場
秋は恒例のディーヴァー、ライムものとノンシリーズの2本立てらしい、時期不明だがエルロイの新4部作も控える
しかし今年のランキング結果からして最大の目玉はこれだろう
今年のランキング1位ルメートル「その女アレックス」は実はシリーズ第2作目なのだ、その第1作目が予定されている

集英社:
北欧ブームもすっかり定着し、他社も英米以外の国際化をあまり前面に立てて宣伝しなくなった昨今、集英社のワールドワイドを強調した宣伝はちょっと遅れてる感はあるが
でも北欧以外にも目を向けているらしいのでまぁいいか
集英社はミステリー分野でもまぁまぁ貢献はしていて悪くは無い出版社なのだがマニアックでもいいからもう1つ個性が欲しい

角川書店:
今年もトリを逃したが、毎年狙っているんだろうか(微笑)
”過去に『このミス』1位に輝いた作品が2本映画化され、それぞれの続編が角川文庫より刊行予定”とある、さてどれだろう、何となく予測は出来そうだが

光文社:
トリ狙ったな(笑)
古典新訳文庫はもちろんミステリー専門叢書じゃない一般文芸文庫だが良い意味で何でも有り(さらに笑)、時々ミステリー分野のも出してくるが、来年はウィリアム・フォークナー
ついでだからさ、フォークナー出すんだったら”クイーンの定員”にも選ばれている「騎士の陥穽」を新訳版で御願いしたい
古本持ってるけどボロいんでねえ

さて各出版社全体にだが、何となく肝心なところを隠したままの歯切れの悪さを今年は感じた、だから”隠し玉”なんだと言われればそれまでだが、何か理由が‥
そうか一昨日10日に”特定秘密保護法”が施行されたんだ
あちゃ~、そういうオチかぁ(冷汗)

No.10 7点 このミステリーがすごい!2014年版- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 2013/12/12 09:58
今年度版の新しい試み(今年限りかも知れぬが)として、『復刊希望!幻の名作はこれだ!』という企画コーナーが新登場
いつもの今年度のベスト6アンケートに加えて、投票者に復刊希望作を3作挙げてもらい集計する方式で、一応得点ポイントによるランキング形式になっている
各投票者が何を挙げたかも逐一載ってるのでお見逃し無きよう
一方でつまらなかったのは『私の宝物』、どうでもいい宝物の御披露に鑑定団も困惑、いくら宝島社だと言ってもねえ
まぁでもここ数年の”このミス”は500円でも高いと思ってたが、今年のは内容が割と充実しており(ランキング作品の質とかの議論は別よ)、これで500円なら納得じゃないかな
では恒例の我が社の隠し玉について(掲載順)

集英社:
アメリカの警察小説や北欧・スペインと順調なようだ、他社もそうだが来年は北欧から南へのシフトの予兆を感じるな

小学館:
海外1位はS・キングだが、その息子ジョー・ヒルの新作を予定、今年は長編だね

論創社:
昨年に比して今年は頑張った論創社、来期はさらに頑張って月2冊配本だってさ、息切れしないようにね、応援してますよ
トリックマニア読者だとP・マクとかベロウに注目が行っちゃうんだろうけど、私の注目はA・K・グリーン、サッパー、E・ウォーレスといった面々、この手の作家群は従来は無視されっぱなしだったから嬉しいニュースだ、ついでにオップンハイムとかキャロライン・ウェルズとかも御検討願いたい

東京創元社:
来年が創立60周年という事で気合入ってんなぁ
注目作を揃えた単行本に文庫はウォルターズ、オコンネル、あとロラックの「鐘楼の蝙蝠」
しかし私の注目はマーガレット・ミラーの未訳作だ
初期の傑作「鉄の門」と名作「狙った獣」の間を埋める時期の作だけに期待してしまうな

国書刊行会:
コリンズ「白衣の女」「月長石」と並ぶヴィクトリア朝期英国センセーション・ノベルの最高傑作との惹句が気になるのが、メアリ・エリザベス・ブラッドンの「レディ・オードリーの秘密」
年代もコリンズの両作の間で、「白衣の女」に触発されて書いたらしい
まぁ狭い意味での純粋ミステリーじゃないんだろうけど、国書らしいっちゃらしいよな
あとクラシックミステリの密かな企画というのも気になる

早川書房:
北欧系目白押しだが珍しい南米チリが登場、来期は北から南への転換期なのかねえ
早川は旧作の新訳復刊の方がファンは喜ぶんじゃねえの

SBクリエイティブ:
ソフトバンク出版のコンピュータ関連書は私も持ってるけど、最近は文芸作品にも分野を広げているんだね
もっとも以前はラノベばかりなイメージもあったが、来期は本格的に海外ミステリー参戦なら歓迎だ
ケン・フォレットに得意のIT系スリラーという事はどう考えてもラノベじゃないっすよね(微笑)

文藝春秋:
毎年ランキングに何冊か送り込むなど好調な文春だが、ディーヴァーとか定評ある作家のシリーズものも多く、皮肉な見方をすれば大物作家の名前頼みな感も有った
しかし来年は”10年に1度の新人”が登場予定だという、ここ数年来のビッグネーム頼みから脱却出切るか

新潮社:
昨今は冒険スリラー系に強い新潮社のイメージだが、注目はあのジェイムズ・M・ケインの最晩年の未発表長編でしょうね
”あの不朽の名作の新訳”ってのはあれか

光文社:
今は残念ながらミステリー専門レーベルから離れちゃった光文社
しかし好評の古典新訳文庫には特にミステリーとは銘打ってなくても注目作がいくつも有る、だったら再びミステリー叢書に参入されたらいいかがですか?
さて来期の注目はジェイムズ・M・ケインのあの名作、ってまさか新潮社とは偶然のバッティング?

原書房:
噂されてたヴィンテージ・ミステリが復活、来年はバークリーにパーマーに多分ヴァル・ギールグッド
トリックマニア読者には、カーの親友でもある本格派ギールグッドに注目だろうが、私の注目はもちろんパーマーだ
残念ながら前期のパズルシリーズじゃなくて後期作だが、パーマーの長編の翻訳はこれでやっと2作目、よく選んでくれた

扶桑社:
来年じゃなくて今年既に刊行済だが、S・ハンターの新刊は今話題のケネディ絡みだそうだ、タイミング良過ぎ
さて来年は得意分野の軍事スリラーや冒険系も順当に予定
私としてはコリア、マシスンなど異色短篇作家の『予期せぬ結末』シリーズの続きがどの作家になるのか気になる

講談社:
看板コナリーなども控えているけど、何と言っても最大の話題作はハリー・ポッターの作者J・K・ローリングが別名義で書いたミステリー小説だ
静山社じゃなくて講談社が版権取ったんだねえ、ところでハリポタにあまり詳しくない方、”静山社”という出版社を検索してみ、なかなか興味深いから

角川書店:
最近は話題がやや地味な角川、来期もこれは強力な一発というのが感じられないが、まぁ地味に良い仕事をする角川だけに期待は持てそう
しかし例年トリを務める角川にしては今回は作戦失敗?
これは今年の紅白のトリも異変があるのだろうか、いや無いな(笑)、今年で紅白卒業宣言の歌手も居る事だし

ヴィレッジブックス:
ルへインも賛辞を贈ったという新人の一発勝負といったところ
コージー派でも何でもいいから、ここは何か他の出版社とは違う特徴をもう少し押し出せばいいのにと思っちゃう

No.9 5点 このミステリーがすごい!2013年版- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 2012/12/31 09:51
座談会も復活して昨年版に比べたら読み応えは多少有ったかな
初めて巻末書き下ろし短編というのを試しに1作読んでみた、作者はこのサイトでもたまに書評が上がる中山七里
さり気ない伏線とかそこそこ面白かったよ、それにしても”中山七里”って、岐阜県の恵那地方あたりにそんな名所が有ったような

記事はまぁまぁだったが今年のランキングは正直盛り上がらないなぁ、昨年度にはフォン・シーラッハ「犯罪」とかちょっと食指が動くのが有ったんだけど、今年は読みたいと感じるのが無い
強いて言えばkanamoriさんも書評されていた5位のデュレンマット「失脚/巫女の死」かなぁ、デュレンマットと言えば昔に早川文庫から長編が出ていたはず
例年に比べて今年度のランキングは全体的に小粒と言うか、この1作的な大物感に欠けている印象
それと過去のランクイン作家が20位までだとかなりを占め、良く言えば手馴れて堅実、悪く言えば新鮮味に欠けたランキングだ

さてと恒例の”我が社の隠し玉”いくか

小学館:
イチ推しはギリアン・フリンとベリンダ・バウアーか、小学館文庫自体が話題になっていないのが可哀想

講談社:
ハリー・ポッター以外のJ・K・ローリングはまぁ別格として、コーンウェル、コナリーと毎度御馴染み路線、ゴダードのは新作?

扶桑社:
タイプミスするとたまに”負傷者”になるんだ(苦笑)
スティーヴン・ハンターとか予定されてるが、やはり一番の注目は扶桑社版異色作家短篇集のミニ全集、ラインナップが知りてえなぁ
それより扶桑社よ、リチャード・ニーリイの新刊はどうしたんじゃ?、別に読みたい作家じゃないが書評のタイミング待ってたんだぞ!、延期かよ

集英社:
話題性は地味だけど、CWA受賞作とか意外と良い仕事してるやんけ
フィンランド、イタリア、スペインと国際色も豊か

光文社:
昨今はミステリー出版社と言うより、一般文学の”古典新訳文庫”の方が目立っているよな(笑)、来年はブラックウッドか
でもブラックウッドは創元文庫から既に名作選が出ているしなぁ、私の希望としてはレ・ファニュ「サイラス伯父」なんか新訳で出してくれたら即買いますよ

東京創元社:
アイスランド、スウェーデン、フィンランドと引き続き北欧ブーム、ドイツもね
でもそれよりオーストリアのホームズことバルドウィン・グロルラー「ダゴベルト探偵」がついに登場か
さらに藤原編集室の企画でE・C・R・ロラックの最高傑作との噂が有る「悪魔と警視庁(仮題)」も衝撃的

原書房:
かつては不可能犯罪マニア御用達出版社のイメージだったが、今ではコージー専門文庫を出すなど、良い意味で守備範囲を広げたねぇ、竹田ランダムハウスがアレだからね

国書刊行会:
今年はバトラー「ファイロ・ガッブ」とか良い仕事してくれたんだが、来年は休止なの?

新潮社:
慎重に安定作家だけでなく、話題作も出してくれる新潮社、ミステリー専門出版社以外では文春や角川と並んで貢献度は高い
来年は北朝鮮が舞台の作だとか、イアン・ランキンの新シリーズとか、あとオッ!と思ったのがジェイムズ・M・ケインの幻の・・って気になる

竹田ランダムハウスジャパン:
ここ生きてるの? だって倒・・・

論創社:
正直言って今年出たのにはあまり魅力的なのが無かっただけに、一転して来年はスゲえ~ことになりそう、
待ち焦がれたフィービ・アトウッド・テイラー「コッド岬」がついに読めるのか
デ・ラ・トーレ、パーマー&ライス、ホワイトチャーチなども待ち遠しいが、えっ!と思ったのがドロシー・ボワーズ
同じドロシーで第2のセイヤーズとも言われるドロシー・ボワーズに目を付けるとは、やるな論創、名前だけは知っていたが本来は創元あたりが目を付けそうな作家だと思う
TwitterでアフォードやABC3部作とかリクエストしてる連中の嗜好とはズレているな、社内内部企画なのかな?

早川書房:
一昨年来ポケミスが絶好調だけに大きな路線変更は無いようだ、ノンシリーズが文庫では既刊だったルへインがポケミス初登場くらいかな
TVドラマの小説版「キリング」ってそんな話題になってんの?

文藝春秋:
文春てさ、重厚感と小粋さとを併せ持った独特の社風が有るよな
一方ではS・キング、ディーヴァーと相変らずの大物路線
しかし一番気になるのは、後味の悪い厭ミス短編だけを集めた超不快アンソロジーだ、2月頃に刊行予定だがこれは絶対・・多分買う

ヴィレッジブックス:
アイルランド路線、出版社同士の契約でもしたのかな?

角川書店:
トリは今年も角川、わざと回答遅らせて狙ってるな(笑)
角川もドイツか、それと昨年から妙にSFミステリーに力入れてるが編集者替わった?

以上来年も面白そうな新刊を期待したい
では皆様、来年も良いお年を

No.8 4点 このミステリーがすごい!2012年版- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 2011/12/12 10:03
昨年に引き続いてランクする作品群の質は豊作と言われるのだが、『このミス』自体は年々ショボくなっていくような、最近は500円でも高く感じるよ
昨年の『このミス』では各社横並びに北欧系旋風かと思ったが、今年のランキング見るとちょっと拍子抜けか
ランキングで興味魅かれた作品は2位のフォン・シーラッハ「犯罪」、創元だけど文庫じゃなくて単行本だが文庫化予定あるのかな?
ドキュメンタリー風との事だが、何年か前の1位「あなたに不利な証拠として」のノワール版みたいな奴なんだろうか?
ウィンズロウ「夜明けのパトロール」は10位以内に入らなかったが、多分「サトリ」と票が割れたのが原因かもな
では今年も”我が社の隠し玉”、しかし今回はちょっと魅力に欠けるなぁ、おぉぉぉ!と思ったのは論創社だけだな
では恒例により「このミス」での掲載順にて

東京創元社: 今回のランキングで興味魅かれたフォン・シーラッハ「犯罪」の続編短篇集を予定、他は旬の北欧の警察小説など
ドイツの作家ノイハウスのは”ナチス台頭下ベルリンを舞台にした三部作”って、どこかで聞いたような・・・

集英社: 一押しがC・J・サンソムという作家、CWA賞系だからいかにもな英国風なのかな?
あとはマクダーミドのCWA賞受賞作にエルキンズ夫妻のゴルフもの第2弾、集英社って質的には悪く無さそうなんだけど、何となく後回しに(苦笑)

新潮社: 毎年それとなく魅力的なんだけど、今回の予定のはなぁ(これも苦笑)

国書刊行会: 今回はE・P・バトラー「通信教育探偵ファイロ・ガッブ」につきる、どこかで出してくれるのを長年待ってたんだよ「ファイロ・ガッブ」

扶桑社: 今年はランキングと無縁だったが時々変な穴馬を出すからなぁここ、でも知られてる作家の時は案外と期待外れなんだよなぁ

武田RHJ: 今年も20位に1冊送り込んでさ、意外とシリアス作品で良い仕事していて、もう”ランダムハウスはコージー専門”との偏見を見直すべきだよなぁ

論創社: 何たってC・ライス&S・パーマー合作のマローンとヒルディの競演短篇集が楽しみ、この調子でパーマー単独の短篇集と未訳長編も頼むよ
あとは「クレイ大佐」だが、ツイッターによるリクエストは私は不満、私の欲するものが大抵抜け落ちているんだ
大体さぁ、「クレイ大佐」って悪党キャラだから厳密にはホームズのライヴァルじゃねえだろ、他に違うのあるだろうよ

早川書房: 今年は1位だけでなく20位以内に5冊を送り込むなどポケミスが絶好調の早川、しかも既出の大物作家の名前に頼っていないのだから今の早川はどこも止められない
来年の隠し玉もS・ハミルトン「解錠師」など話題をさらいそうだ

ヴィレッジブックス: ・・・・・・・

講談社; お約束のP・コーンウェルはまぁいいや(苦笑)
D・クロンビーにD・ハンドラー、誰それ?
目玉はコナリー「リンカーン弁護士」の第2弾か

原書房: 不可能トリックマニア御用達の原書房、しかし昨年の隠し玉のラインナップはどうした?ボツなのか?

文藝春秋: 早川と並んでランキング20位以内に5冊を送り込んだ絶好調の文春、早川と比較すると既出作家や大御所の名前頼みな感じなのが気になるが、まぁいいだろう、マイケル・コックスみたいな掘り出し物と評判の作家も居るからね
来年はディーヴァー、ライムものとノンシリーズの2冊
隠し玉っぽいのはトゥロー「推定無罪」の続編

小学館: ベリンダ・バウアーの2作目と、あの「20世紀の幽霊たち」のジョー・ヒルの新作が

角川書店: トリは今年も角川、ダニエル・H・ウィルソンのロボットものってSF風サスペンスってとこか?
ウィンズロウのは多分サーファー探偵の2作目かな?

ところでB級グルメって・・・・・・・

No.7 5点 日経おとなのOFF 9月号- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 2011/08/10 09:52
日経BP社というのは『日経ビジネス』などを発行している出版部で、「日経おとなのOFF」は大人向けカルチャー・グルメなどの情報誌だ
「自遊人」、小学館「サライ」、朝日新聞出版「男の隠れ家」などのライヴァル誌となる存在だろう

「日経おとなのOFF」9月号の特集は、”おとなのミステリ案内”
この手の特集は各一般情報雑誌によく組まれるんだけど、今回のはページ数が多くて流石は日経、本気度が高い
内容はまぁここの常連の方々が閲覧したら浅くて物足りなさは感じるだろうけど、でも一般雑誌の特集にしては分量も多くて、ミステリー初心者が読んだら結構楽しめそうなんだよな
東川・有栖川・辻真先の本格ミステリー談議や、東野の探偵役比較など国内ものしか読まない読者でも充分に楽しめる
巻頭の数ページ眺めた感じでは、やはりな本格に偏ってるな、と思ったのだが、読み進むと名探偵リストとか古今東西各ジャンルに渡っていて予想以上に真っ当な内容だった
名探偵リストには例えばハードボイルド私立探偵やコージー派ジル・チャーチルの主婦探偵ジェーンまで載っていて、決して古典的なありきたりな探偵役だけじゃないのも驚いた
最後はミステリーとグルメ情報のコラボになってしまうのは、この種の雑誌の性格だから寛大な目で見るべきだろう
マニアックでは決して無いが、本屋店頭の立ち読みで眺めるだけでも楽しいので皆様一度手に取ってみてくだされ

No.6 4点 ミステリマガジン2011年9月号- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 2011/08/04 10:10
発売中の早川ミステリマガジン9月号の特集は”新生ポケミス宣言”
現行ポケミスの表紙など装丁変更の記事とか載ってるが、ポケミスについて前から思っていた事をこの際だからぶつけちゃおう

ちょっと前にポケミスにいくつか変更が有って、表紙のデザインとか2段組が1段組になったりとか
まぁ表紙はね読者の好みの問題だろうし旧スタイルが必ずしも良かったわけじゃないしね
2段組止めたのは最近の各出版社の流行である活字大きくして老眼でも見えるようにって事か
例えば創元文庫でも旧作の新版では活字大きくしてその分ページ増えてとか、値段も増えちゃっているけど(苦笑)、もう文庫の価格帯じゃねぇよな
早川文庫なんてさ文庫の縦寸法自体を水増ししてるし、他の文庫寸法と合わなくて文庫ファンの顰蹙買ったり

マガジンの記事ではポケミス新時代万歳ムードだけど、そもそも根本的にだ、ポケミスの版型は必要なのだろうか?
創刊当時の思惑では世界市場を睨み、海外では主流の”ペイパーバック”に合わせようとの目論みが有ったのだろう
しかしだ、ペイパーバックの版型は横文字言語だからこそ合うのであって、そりゃ新書版みたいに日本語を横書きすれば別だが、縦書き向きじゃないことは明らかだ、だから以前は2段組だったんだろ
そもそも海外の書店の棚にポケミスが並ぶだろうか、日本作品の英訳じゃなくて元々が海外作品の和訳なんだから英語の原著が存在するわけだし
それとさ、文庫でしか読まない読者ってよく居るけど、ポケミスに手を出すのかな
ハードカバーに手を出さないというのは分かる、もちろん値段の問題もあるだろうが収容スペースの問題とかも大きいのじゃないだろうか、本棚に同列に並べ難いし
本来はペイパーバックってつまり海外では文庫のような存在なわけだから、ペイパーバック準拠の版型であるポケミスは明らかにハーカバーよりも文庫の形態に近い、価格的にもハードカバーよりは安くて文庫+αくらいだし
だったらハードカバーに手を出さない文庫派の人もポケミスには手を出して然りなはずなのに、ポケミス無視する文庫派は多い
何故なのか?、価格面よりもやはり本棚に並べた時、各社文庫版の縦寸法が合わないので嫌われているというのが最大の理由だと思う
文庫版なら少々値段が高くても買うと言う意見はよく聞く、出版コストの問題なら作家によっては文庫をハードカバー並の価格にすれば良い、ハードカバーの大きさが嫌なんだ、という意見も聞いた事がある
もしポケミスでしか読めない作家作品を文庫で出したら買うという潜在需要はかなり有ると思うのだよな、早川は商売で損しているはず
もう”世界最大のミステリー叢書”なんていう面子は捨ててさ、ポケミス止めた方がいいんじゃないですか早川さん

ちなみに私は文庫主義者ではない、どうしてもハードカバーでニッチ狙いをせざるを得ない作家作品群が有って、それらは部数的に文庫では採算が合わない、その辺の出版社の事情は理解しているつもり
文庫派の方々も文庫以外は絶対読まないという頑なな態度ではなく、作家によってはハードカバーでも仕方無いと寛大に大目に見て欲しいな、文庫化は難しいだろうなってニッチ作家は結構居るんですよ、ハードカバーだからこそ翻訳出版出来たんで読めるだけ幸せみたいな
しかしそんな私でもポケミスの形態は嫌い、中途半端なんだよ

No.5 5点 このミステリーがすごい!2011年版- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 2010/12/16 11:19
文春ベストでも書かれていたが、今年度の翻訳ミステリーは例年にない豊作だそうだ
まぁ今回は常連作家の力作が揃ったのも一因かも、例年に比べて新人作家が上位にあまり入ってこなかったしね

このミスで楽しみにしているのが例年の如く『我が社の隠し玉』
昨年一昨年と隠し玉コーナーは魅力に欠けたが、今回は『隠し玉』だけで攻めよう、順番は掲載順で

集英社: アイスランドにスウェーデンと今年は北欧ブームを各社画策しているのだろうか、おいおい
ビョークだけがアイスランドじゃないんだな

国書刊行会: MWA評論賞受賞のヴァン・ダインの評伝が目玉か、小説の方はちょっと食指が動くのはないなぁ

新潮社: ジェフリー・アーチャーの新作一本勝負かいな、話題にはなるだろうけど

小学館: ここは地味でも意外と隠れて良い仕事するんだけど、今年はう~んちょっと魅力に乏しいな

武田RHジャパン: ランダムハウス講談社から名称変更、でもコージー系に強いのは相変わらず
昨年は上位ランキングには入って無くても11位以下では何作も入って結構健闘してるよね、コージーだけがRHじゃない感じだし

東京創元社: ここもアイスランドか、おいおい
しかし一番創元らしいと思ったのがロマンス作家ジョーゼット・へイヤーのミステリー作品本邦初紹介で、こういう作家に目を付けるのが創元の良さだわな
マクロイ「暗い鏡の中に」新訳は未読の人には朗報か

扶桑社: S・ハンターは年内刊行らしいが、来年はS・マルティニか、久し振りかも
それより気になったのはトンプスン「おれの中の殺し屋」が映画化されるのか

ヴィレッジブックス: ヴィレッジって殆ど読んでないんだよなぁ

講談社: 突出した話題作は無くても毎年安定している講談社
毎度御馴染コーンウェルにコナリーと今年も手堅いぞ講談社
それにノルウェーの作家って、おいおいお前もか講談社

論創社: 昨年は地味だったが今年はチェスタトンに四十面相クリークと動き出す予定か
あとはN・ブレイクにクェンティン、たしかに両者にはまだ未訳作があるんだよな
クェンティンは多分パズルシリーズの未訳分だろうな、ジョナサン・スタッグ名義のは原書房の方が手を出しそうだしね

文藝春秋: 昨年は予告倒れに終わった文春、きっとファンは怒ってるぞ、
で満を持して今年はS・キングにJ・エルロイ、さらにはディーヴァーのライムものと非シリーズの2冊、う~ん大物路線だな、文春恐るべし

原書房: 今やすっかり不可能犯罪系古典本格マニアの御用達出版社と化した感のある原書房
クリストファー・セント・ジョン・スプリッグにノーマン・ベロウ、いかにもこの手のマニアのリクエストにお応えしましたって感じだな
でもベロウは中後期作ではなく最初期の作なのが良心的だ、逆に邪推するとベロウ作品を順次出していく方針なのだろうか

早川書房: スウェーデンにデンマークとまた北欧か、おいおい
驚いたのはあのトレヴェニアン「シブミ」の前日譚『サトリ』をあのウィンズロウが書いたんだってぇ
創元に比べて早川書房は埋もれた名品の発掘は苦手だが、こういう話題作を持ってくるのは名人級だな、いや決して皮肉じゃなくて誉め言葉でして

角川書店: ここも最近は地味だが頑張っているな、レへインのP&Aシリーズの新作だって、最近はノンシリーズしか書いてないのかと思ってた、このシリーズは未読なので旧作をいずれ読まねば
あと早川でも話が出たウィンズロウの新シリーズにクイーンの新訳と、しばらく地味だった角川だが「犬の力」で力が出たか動きが活発に

以上、総じて北欧に手を出す出版社が目立った、1~2社だけじゃないから北欧ブームを狙っているんだろうか
ちょっと余談だけど、隠し玉コーナーの最後に、国産ミステリーの海外への翻訳事情のミニコラムがある
「新宿鮫」「姑獲鳥」「容疑者X」あたりは直訳だけど
宮部「火車」=For All She Was Worth
伊坂「ゴールデンスランバー」=REMOTE CONTROL
などは私は全て未読だから分からんけど既読の人から見たら妥当なんかしらね?

No.4 5点 週刊文春 2010年12月9日号- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 2010/12/07 10:00
毎年恒例の、まぁランキングってこうした雑誌の中の1コラムとしてやる位が丁度良いんだろうね
他にミステリー関連の記事だと、”役者ピーター・フォークと刑事コロンボ”に関する小林信彦のコラムが有った位か
”ムック”とはマガジンとブックとを組合わせた造語であり、「このミス」とかはムックであってマガジンではないので純粋には”雑誌”ではない
ただ売り方が雑誌コーナーの棚に並んでたり季刊だったりで、雑誌的性格も帯びてるだけで、内容的には単行本である
その点「文春」は週刊誌だから紛れもなく雑誌である

今年度の特徴は一言で言えば常連が強かったという事だ
ディーヴァー、オコンネル、T・H・クック、S・ウォーターズ、ウィンズロウなどはもちろんだが、1位のジョン・ハートや5位のボストン・テランも常連というほどでは無いが過去のランキング経験者だ
ジョン・ハートは「川は静かに流れ」、ボストン・テランは「神の銃弾」で過去に上位ランキングしており、けっして一発屋ではなかったという事だな、機会があったら読んでみたいな
常連組の中ではM・コナリーが12位と残念ながらベストテンに入れず、ネット上での評判は良いのにね
もう一つの特徴は、紹介文を読む限りでは、重厚で読み応えのあるものが大勢を占めた感じで、例えば昨年度のスウィアジンスキーみたいな”変なモノ”を書く作家が殆ど入ってない
今回の顔触れが決して地味だとは思わないが、例年に比べて全体的にちょっとシリアスで”お堅い”印象なのは確かだ
J・リッチーの「カーデュラ探偵社」もぎりぎり20位、既読短編が多く含まれてたせいもあるのかな

余談だが”こちらもぜひ”という囲み記事の中で、田中芳樹氏がP・マクドナルド「Xに対する逮捕状」を挙げているが、これは対象外なのでは?
H・マクロイ「殺すものと殺されるもの」だと過去に翻訳はあっても完全なる新訳なのでルール上はOKだが、「Xに対する逮捕状」は訳はそのままでハードカバー版を文庫化しただけなので、単純な出版形態の変更は対象外だったはず、まぁ田中氏はただ参考に挙げただけなんだろうけど

No.3 1点 本格ミステリ・ベスト10 2010- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 2009/12/16 10:27
850円は高ぇ~よ『本ミス』、『早ミス』だって700円に抑えてるし、『このミス』は老舗の強みで500円、『インポケ』なら200円だ
『文春ベスト』も安いけどあれはなぁ、週刊文春の1コーナーだから週刊誌としての値段だからなぁ
『本ミス』がまず腹立たしいのは相変わらず海外編は頁数で1/5程度と海外読みを馬鹿にしている
『本ミス』は読み応えはあるという意見もあるようだが、作家インタビューばかりじゃんよ、私は作家ウォッチャーじゃないから興味ねえよ
他もつまらん記事ばかりだし、肝心のランキング作品解説は無駄に長文だし、第一ランキング自体がつまらん
毎度毎度アルテとディヴァインと、あとはクイーンやカーのラジオドラマ脚本集みたいな落穂拾い
もうね作家のネームヴァリューで投票がされてる感じ
こう言うと、海外は現代作家に本格が少ないから仕方ないと反論されそうだが、実は必ずしもそうではない
例えばコージー派なんかはかなり翻訳出版されている
ところがコージーは殆んどランキングには入らず、投票者が不可能犯罪系じゃなくちゃ投票してはいけないとでも思い込んでるみたいだ
不可能犯罪系だけが本格じゃないだろ!
他のライヴァル誌では本格に限らず全てのミステリー分野が対象だから、なかなかコージーまでは拾い難い事情がある
つまり本格に特化した『本ミス』だからこそ本格の窓口を広く取り、コージーまで救わないといけないのだ、コージー派だって本格の一種だから
ところが『本ミス』は本格の定義を他誌以上に狭く解釈し、不可能犯罪オタ向けにしておけば受けるだろう的な浅はかさが見て取れる
具体例だと、この作家はコージーじゃないがアンナ・マクリーンあたりは他誌では引っ掛かり難いから『本ミス』こそ採り上げてもいいんじゃないかな
『早ミス』には杉江松恋のコージーコーナーみたいな記事があったりで、この面でも『本ミス』は『早ミス』に負けてる
もしブックオフで100円で売ってたとしても、『早ミス』『このミス』なら買ってもいいが、『本ミス』は100円でも要らない
いくつかある競合誌の中で『本ミス』が一番どうでもいい

No.2 4点 IN★POCKET 2009年11月号- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 2009/12/11 10:42
この種のランキング本の中でちょっと見逃され易いのが通称『インポケ』
まあね大きさが文庫版だからね、本棚でも目立たないよね
『インポケ』は元来が講談社発行の文庫本情報冊子って感じだが、毎年年末に翻訳ミステリーのベストを主催する
対象が文庫版限定なのでハードカバーなどは対象外
ランキング本としての他誌との違いは選ぶのが読者、作家、翻訳家&評論家の三つに分けていること
総合ランキングは上記の三つのポイントを単純に合計してるのではないかと思われる
『早ミス』は今年から一般投票を止めたらしいし『このミス』は最初から素人投票は受け付けていないが『本ミス』などはネット投票も点数に加算される
『インポケ』の場合は1/3は読者投票の点数が占めるから一般投票の影響が強いのが特徴で、これが最大の弱点だ

『インポケ』は評論家だけの集計結果を見ると他誌と代わり映えがしないが、読者投票は笑えるぜ
なんたって7位が「黒猫・アッシャー家の崩壊」だもんな
いくら今年がポー生誕200年記念とは言えそんなんありかよ?と思うが、新訳は対象範囲内なので原則ルール上は違反じゃないんだよね、昨年もホームズの新訳が入ってたし
それ以外にも10位に拡大解釈でフランソワーズ・サガン「悲しみよ、こんにちは」、12位がもう一冊のポー、13位になんとクイーン「Xの悲劇」、17位ライス「スィート・ホーム」、18位ケン・フォレット「大聖堂」といった新訳復刊が並ぶ
もうね読者が新訳を読んで投票したとは思えないよね
旧訳を既読で内容は知っているから投票したんじゃないの、って雰囲気
実は『このミス』もたしか一応は新訳も原則ではありだったと思うが、流石にプロの評論家は意図的に避けるよな
まあ「幽霊の2/3」みたいな旧訳がレア状態だったのは復刊奨励の意味で別だろうが
あともう一つ笑えるのが、お約束の毎年P・コーンウェルが上位に入ること(爆笑)流石は講談社文庫だぜ
あ、でもこれだけは褒めとこ、値段が200円です

No.1 6点 ミステリが読みたい! 2010年版- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 2009/12/07 10:15
『ミス読み』とも略されるが『早ミス』とも呼称される
もちろん早川書房だからだけど、面白いことに他のライヴァル誌に比べて呼称通り刊行時期がひと月ほど早い
だから例えば昨年度の国内ものだと、連城の「造花の蜜」などは刊行時期がタイミング悪くて他誌では間に合わなかった感じだが、締め切りがひと月ほど前倒しの『早ミス』は翌年度扱いになるので2010年度版では国内1位だ
まぁ逆に言えば1年遅れてるようにも感じてしまうが
こういうのは整合性の観点から各誌締め切り日時を合わせるべき、という意見も当然出るかもしれないな

で2010年版『早ミス』だが、この表紙はミシュランかよ(笑)
昨年の表紙デザインが『このミス』と被ったからか(追笑)
内容も思い切り刷新していて、まるで目録と化してるとの批判もあるようだが、この種のガイド本としての性格上だと目録で良いんじゃないの?私は好きだぜ、こういう編集方針
少なくとも保存版資料価値としての目録の充実度だけなら断然他誌を圧倒する
むしろ肝心のランキングが要らないくらい(笑)
こういうスタイルで作らせたらやはり早川の編集部は上手いよな
恒例の早川刊行の本が上位に来る傾向はご愛嬌

ところで巻末の特別企画”海外ミステリー・オールタイム・ベスト100 for ビギナーズ”だけど、入門向けという意味ではちょっと疑問
初心者向け限定ではない一般的な”名作100選”みたいな趣向での集計結果とあまり変わらん
評論家などの投票者諸氏がもう少し初心者向けという条件を考慮すべきだったと思う
何名か同一作家の作品が複数入っていて、例えばJ・エルロイも3冊入っている
犯罪小説やノワールも入れて本格に偏らない配慮は良いと思うが、入門向けにエルロイ3冊はちょっと重いんじゃないかなぁ
エルロイを1冊に絞りその分を軽いE・レナードとかに振り分けた方がバランスが取れた気もするが
軽さと言えばケンリックも100冊内に入ってないし
クリスティーとかごく一部の作家を除き、基本的に1作家1冊に絞った方がより多くの作家を紹介できるしね

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