皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
miniさん |
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平均点: 5.97点 | 書評数: 728件 |
No.16 | 6点 | 冒険・スパイ小説ハンドブック- 事典・ガイド | 2015/09/24 09:54 |
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明日発売の早川ミステリマガジン11月号の特集は、”北上次郎責任編集〈これが冒険スパイ小説だ!〉”
北上次郎だとちょっと前に本の雑誌社から冒険小説のガイドが出ているが、つまり早川書房じゃないんだよね 早川は最近にミステリハンドブックの新ヴァージョンを出したが、冒険小説系については新版は出さなかった、まぁ今はブームじゃないしって事なんだろうけど、そうかミスマガでやろうというわけだね、年末のランキングと同様な手法だがミスマガの活用という点では早川らしいところ 今回の特集には座談会に霜月蒼氏も参加しているんだね、霜月氏と言えば最近はクリスティの全作品講評で話題になったけど本来は冒険小説畑の評論家だもんね このガイドブックは過去に書評済だが、今回のミスマガに合わせて一旦削除して再登録 この種のガイド本に関しては、本格オンリーなものより他のジャンルの方が新たな発見が多くて参考になる さて早川のこのガイドだが、形状的には文庫版なので名前の通りハンディで便利だ さて私がこの種のガイド本に求めるものは、各作家の海外での評価位置付けのようなものであって、個々の作品毎の紹介なんかではない このハンドブックは個々の作品解説は充実してはいるが、その作家が世界的にはどのような存在なのかがもう一つ見えてこない 一応ランキング的には結構準メジャークラスまできちんと拾ってはいるのだが、人気的にややマイナーな作家の情報が知りたいという欲求には、もう一つ痒い所に手が届かない感がある でも冒険小説を”一般”と”海洋冒険小説”の二つに分けてランキングしているのは見識だろう スパイ小説も”一般”と”謀略・情報小説”に分けていて、こうしたジャンルの捉え方は流石に早川編集部は的確で上手い ただし好きな主人公・脇役ベストは余計だけどね |
No.15 | 7点 | ミステリ・ハンドブック- 事典・ガイド | 2015/03/25 09:58 |
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本日発売の今年から隔月化された早川ミステリマガジン5月号の特集は、”新ミステリ・ハンドブックを作ろう”
どうやら早川では今夏に新たなハンドブックを刊行する予定らしく、座談会形式で今後の内容を煮詰めていこう的な企画らしい 例の文春版「東西ミステリー・ベスト」と双璧を成す早川版ハンドブックだが、両社の編集方式にはかなりの違いが有り、どちらが上とかじゃなくて一長一短な感じである 文春版「東西ベスト」は私が思うに必ずしも初心者入門ガイド役には向いていない、どちらかと言えば慣れたベテラン読者が、”そうかアンケート結果ではこの作品はこんな順位になるのか”などと感慨に浸る本である 対して早川版「ハンドブック」の方が初心者入門ガイドには向いている気がする、特にそれまで本格派しか読んでこなかった読者が他のジャンルを読んでみようと思い立った場合には最適な参考書の1つだろう 「東西ベスト」がとにかくアンケートによるポイントで単純に順位付けしたものなのであるのに対して、早川「ハンドブック」はジャンル別に整理分類してあるからね、主人公に焦点を当てた企画も有るし ただしねえ、どちらが長く使えるかといったらやはり「東西」かな 早川版「ハンドブック」の方が入門指南書としては有効だが、段々と読み慣れてくるにつれて必要性が薄れてくる感じもある、実際に私も「ハンドブック」の方は殆ど閲覧することもない 早川版は一般の「ハンドブック」とは別の姉妹版として、「冒険/スパイ小説ハンドブック」が存在し、今の私にはこちらの方が参考書的には有用である 尚、本格派しか興味が無く、これまで本格派しか読んでいなくて、今後も本格派しか読む気がしない、といった本格派に極端に偏った嗜好の読者には、「東西」も「ハンドブック」もどちらも向いていないと思う その手の読者には少々値段は高いが、「世界ミステリ作家事典」の方が合うでしょうね |
No.14 | 6点 | 雨降りだからミステリーでも勉強しよう- 事典・ガイド | 2015/01/07 09:56 |
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皆様明けましておめでとうございます、本年も宜しく御願い致します
さて私の本年一発目の書評がこれ、”何だ、小説じゃなくて評論エッセーが一発目かよ!”、と突っ込まれそうですが、私の書評の場合、どの本を採り上げるのかは各出版社の刊行日程次第となっておりますはい(笑) 本日7日にちくま文庫から植草甚一「雨降りだからミステリーでも勉強しよう」が刊行される ちくま文庫からは植草氏のエッセーが既に2冊出ており、趣味の広かった植草氏だけに全てがミステリー関連とは限らないが、今後も筑摩書房さんには続けていただきたい、文庫で1500円はちょっと高いけどね‥(苦笑) 植草氏のミステリー、いや全ての分野で最も有名なエッセー本がこれだろう、ただし内容がというよりその題名自体の方が有名なんじゃないだろうか ”雨降りだから○○しよう”みたいなパロディーとしてよく使用されている(笑) ところがこれ読んだことがある人は意外とそう多くないんじゃないかなぁ、以前はハードカバー版だったしね 実は内容は結構手強くて、植草氏のミステリー関連エッセー本にはもっと初心者向けなものも有るのだが、「雨降りだから」だけが有名になってしまったので初心者が手を出すかも知れない しかしこの本は完全にミステリー中級以上の読者向け、多分初心者が読んでも大して参考にならない、当サイトのkanamoriさんの御書評中にもありますが、マニアック過ぎです(苦笑) 日本の海外ミステリーの翻訳状況は現代ミステリーか戦前の黄金期に偏っており、戦後の40~60年代の作品で未紹介のまま埋もれているものが数多い、その辺の時代の海外ミステリー事情を反映しているのがこの本である 日本では紹介漏れしてしまったが、海外ではその全てがマイナーなまま埋もれてしまったわけでもないので、40~60年代というのは見直すべきであると思う 40~60年代はミステリーにとっては重要な変革期で、特にサスペンス小説、警察小説、通俗ハーボボイルドなどに特色が有ったり新たに生まれたりした 意外と現代ミステリーの中には、黄金時代じゃなくて40~60年代をルーツとするものも多いのである 例えばヒラリー・ウォーなども新進気鋭の作家の1人として紹介している しかし植草氏はウォーに対して”警察小説”というジャンル用語を殆ど使っていない つまりウォーを警察小説の嚆矢と見る見方は、現代の視点で過去を振り返ってみれば、あの時代に警察小説がウォーから流行し始めたんだなと理解するわけである(実際にはローレンス・トリートの方が先駆だが) だからこのエッセー本は、まだジャンルが確定していなかった時代の息吹が感じられるのである |
No.13 | 5点 | 東西ミステリーベスト100(死ぬまで使えるブックガイド)- 事典・ガイド | 2013/11/26 09:54 |
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つい先日に文春文庫から新版「東西ミステリーベスト100」が発売された、もちろん昨年ムック形式で出たあれの文庫化である
文庫化したからといってランキングの順位が変動する事は有り得ないので、ムック版を入手した人は無理に文庫版も買い足す必要は無い ただし文庫版には”おまけ”が有るんだけどね 実は私はムック版を買わなかった、理由はただ1つ、単行本を先行させてもすぐに文庫化してしまう事で悪名高い?文春だけに、おそらく1年を待たずして文庫化するのではと思っていたからだ さらにムック版では101位以下の順位が載ってなかったので、文庫化時に付け加えるのでは?との憶測が噂されたのもあるし そうです、やはり予想通りだった、文庫版では国内・海外共に”おまけ”として101~200位までの順位も載っていた、ただしもちろん解説とかは一切無し、単に順位だけである 文庫版に準拠しての書評は当サイトでは私が初めてなので、義務として(?)101位以下の順位について簡単にコメント 100位以内から漏れた法月は101位以下でも1冊位しか入らず、麻耶雄嵩や道尾秀介も目立たず 一方でやはり100以内にあまり入らなかった伊坂幸太郎は101~200位には大量に入った、しかし目立つ順位ではない 総じてこれらに共通するのは、絶対的な代表作選定に迷うタイプの作家は票が割れてしまい、たとえ平均値が高くても不利だという事だ いやむしろ平均値の高さがかえって災いしてる感じだ、悪く言えば時々は駄作なんか書いちゃう作家の方が1作に絞り込み易くて良いのかもしれない、1作しか代表作はありません、てなタイプの方が有利なんだな 海外ではマーガレット・ミラーやマクロイが100位以下でも苦戦、まぁ票割れし易い作家とは言え、投票が殆ど無いってどういう事 あとマクベインが「87分署」シリーズとして200位以内に入っている、シリーズで投票した人が何人か居たって事だけど、そんなの有りかよ、じゃぁ他の作家だってシリーズでいいだろ もっともマクベインを個別作品単位で投票したらスゲ~票割れしそうだけど(笑) 驚いたのはピーター・ストラウブが入っていて、全体的に冒険系やスパイ小説が退潮した代わりに、ホラー系が地味に健闘していると思ったのは私だけか あっ、そうそう、冒険系統でこれは言っておきたい事が 旧版に比べて新版では冒険小説の人気が下降したみたいな異見をよく聞くが、これは厳密にはちょっと違うと思う 前回アンケートでは統計学上の母体数を増やす為、各種団体に依頼したらしいのだが、その中に日本冒険小説協会も含まれており、その組織票の比率が大きかったらしいのだ 今回の投票ではアンケート配布先が広くバランスが取れており、今回の結果は現実情を反映しているはずだ つまり冒険小説の人気が下がったのではなく、元々の旧版では冒険小説の人気が当時としても高過ぎたのだ さて100以内も含めて総体的に言えるのは、強いのは定番の古典ともう1つはここ10年以内の話題作、この二極分化だね つまり80年代後半から90年代の作がすっぽりと抜け落ちている感じだ、例えば90年代に投票やっていたらパレツキーやグラフトンなどもう少し入らなかったかなぁ 国内だと新本格ブームの頃なのでまだ健闘しているが、海外ではこの傾向が特に顕著で、90年代作品はほぼ全滅状態に近い やはり20数年ぶりは間が開き過ぎである、こういうのは10年単位くらいでやるべきだろ 当サイトでシーマスターさんが鋭い指摘をされていたが、このガイド本が死ぬまで使えるようでは問題だとの御意見には同感です |
No.12 | 7点 | 読み出したら止まらない! 海外ミステリー マストリード100 - 事典・ガイド | 2013/11/18 09:58 |
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”日経”というと一般的にはビジネス書か経済学関連の出版社というイメージだろうが、たまに”おぉっ!”っていうものを出す時がある
日経には”日経文芸文庫”という文庫叢書があり、名前の通りで決して経済関連だけの専門出版社ではないのだ その日経文芸文庫から先日に海外ミステリーのガイド本が刊行された、私は発売日に即買いした 筆者は名blog”翻訳ミステリー大賞シンジケート”の主催である杉江松恋氏である マストリードっていうくらいだから、必読書100選ってことか 内容はまさにマツコイ・デラックス 杉江氏らしく例えばコージー派もきちんと拾いバランスを取るなど、本格から冒険小説系まであらゆるジャンルに渡って選択している、入門書はこうでなきゃね とここまで持ち上げておいて申し訳ないが、私はすごく疑問に感じる点があるので、採点で8点以上は付けられなかったのだ このガイド本には大きな特徴的縛りが2つ有る 1つの縛りはここ100年間に刊行されたものという限定である 一番古いのがで黄金時代のバークリー以降、ポーやドイルの古典時代は全てカットである これはこれで良いと思う、ポーやドイルは本来は時代を遡っての研究対象であって、入門書向きでないのは私も前から思っていた さてもう1つの縛りが、現時点で新刊で読めないものは厳密に省くという徹底ぶりである、なるべく省くとかじゃなくて全てカットなのだ 例えば入門書向きか迷うJ・F・バーディンも100冊に入れているが、どうやらマーガレット・ミラーの代用品っぽいんだよな という事はミラー作品が全て新刊で入手不可らしいのだよな、マジかよ(愕然) これも一応意義は認める、長らく絶版で古書価格の馬鹿高いのなんか入門書に挙げる方が非常識だしね、初心者がガイド本で見て読もうと思ったら入手困難じゃあ悶々とするだけだし(笑) しかしだ、ポイントは新刊で入手可能かどうかが分岐点として適切なのかが問題なのである Amazonには現在は絶版ではあるが、中古でのタマ数が充分に有り1円しか値の付かない本など有り余っている 一方で比較的に最近刊行されたものは、たしかに新刊現役本だが中古価格がこなれてなくて中にはかえって割高なのさえある つまり古本でも格安で入手容易なものを省く意味があるかどうかなのだ 新刊で入手可能かで一律に仕分け∞するのが果たして適当かどうかいささか疑問を感じるのである |
No.11 | 7点 | ハヤカワ・ミステリ総解説目録〈1953年‐1998年〉- 事典・ガイド | 2013/09/27 09:55 |
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発売中の早川ミステリマガジン11月号の特集は、”ポケミス60周年記念特大号”、特大号というだけあって2300円、雑誌の値段じゃねえよ(笑)
実は高いのには訳有りで総解説目録が併録されているのだ、目録はそれ自体を単行本的に出したとしても1000円位するだろうからある意味妥当な値段だろう、という事は今後も単体の解説目録を発行せずにミスマガの特集でやる予定か? だとすると年鑑ランキング本から撤退したのと同じ手法だな ところで特集の目玉はベスト3アンケート特集だろう、一見するとちょっと奇を衒ったような選択をする回答者が多い印象が有る これはおそらく後でミステリ文庫に入ったものは省き、ポケミスの形態でなければ読めないという限定条件から選ぶという姿勢の方が多かったんだと思う、だとすれば心憎い配慮だな 文庫の方は別に特集やればいいんだもんね、早川さんそのうちやってよ さて早川も創元も総解説目録は出しているが両社には違いがある 創元のは豪華保存版的性格のもので、解説目録と資料集との2分冊で両冊を同時収納出来る函入りである 対して早川のはポケミス風装丁のカジュアルなやつで、5~10年を目安に改訂版を出している 総解説目録の性質から言ってこれは早川の考え方の方が正しいのではないでしょうかね、だって次から次へと新刊が追加されるのだから、ある特定の時期に豪華保存版を出しても意味が無いような、まぁ創元の場合は分冊の資料集の方に価値を置いているのかも知れんが 早川のポケミス総解説目録で現在一番新しいのは2003年版だが古本市場でもまだ高い、その前が1998年版でこれは格安 比較的新しいものはある程度知ってるから、やはり古いのにどんなものが有るのかが知りたいという向きにはこの1998年版で充分だと思う どうせ2003年版を入手してもそれ以降から現在までに出たものは載ってないんだから 目録の宿命で紹介文のフォントが小さいので少々見難いが、眺めているだけでも幸せな気分に浸れるのもミステリー読者の性でしょうか(苦笑) ただ気付いたのは、当初はポケミスでの刊行だったが、後に早川ミステリ文庫に収録されたものも半分位は有る 早川ミステリ文庫の総解説目録も欲しいところだ、たしかSFなども含めた販促用のやつとか抜粋版はあったかと記憶しているのだが、ちゃんとした総解説目録が欲しいんだよね あつ!それと絶版解消も頼むよ、ニーズの低いものばかり復刊フェアに入れる創元もアレだがしてくれるだけマシなんだから |
No.10 | 5点 | エラリー・クイーン Perfect Guide- 事典・ガイド | 2013/09/02 09:57 |
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明日3日に論創社から飯城勇三「エラリー・クイーンの騎士たち 横溝正史から新本格作家まで」が刊行予定、論創だから取次ぎがバラツくかもしれない
”飯城勇三”という名前を聞いて知らない読者はクイーンのファンとは言えないぞ ファン・クラブの会長として評論集ガイド本などをいくつも出している有名な人物である 今回の論創社版のは、横溝、鮎川、松本清張から、笠井、綾辻、法月、北村、有栖川、麻耶雄嵩といった錚々たる名前が並ぶ作家たちがクイーンから受けた影響をテーマにした評論らしい 対して飯城勇三監修になるライト感覚のクイーン解説本がこの「パーフェクトガイド」である 当初ムックだったが、ぶんか社文庫で文庫化されていて装丁版型からして軽い、価格もリーズナブル、取り合えずクイーンに入門するガイド本ならこれがベストだろう 編集者としての仕事を含む全著作解説はもちろん、日本の各作家によるアンケート回答、各人の選ぶクイーン作品のベストなど、たしかに書名通りの完璧さだ 私のような特にクイーンに思い入れの無い読者にとっては便利な本である 中でも法月綸太郎の回答は面白かった、全て短編から選び、1位に選んだのが「ガラスの丸天井」とは、のりりんらしいねえ 逆にこいつは合わないと思ったのは依井貴裕、依井の作品は未読だが多分私には合わない作家だろうと推測した ところでクイーンという作家は、”意外性”を狙う作家じゃないという意見が巷にあるみたいだが私は必ずしも賛成出来ない ちょっとロジックに目を晦まされているような気がする 初期のクイーンは犯人設定に”属性”を多用しており、どうしたらその属性の人物が犯人足りえるか?、を追求している ところが段々と”属性”がネタ切れになってくると、今度はプロットの捻りで意外性を演出する方向に変化している ただいずれにしても、クイーンの本質はロジックよりもまずは意外な真犯人ありき、な作風に思えるのだよなぁ 余談だがこの本の中に『クイーン好み』というクイーン自身が書いたエッセイが載っているのだが、この中でヴァン・ダイン、チェスタトン等と並べて私も名前だけは知っているアンソニー・アボットやミルトン・プロッパーの名前が有るのに気が付いた アボットって当時は知られた作家だったのかな さらにコートランド・フィッツシモンズって?初めて聞いた、 |
No.9 | 5点 | 東西ミステリーベスト100- 事典・ガイド | 2012/11/21 09:56 |
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本日21日に文藝春秋から「東西ミステリーベスト100」が発売となる
あぁ復刊ね、と思った貴方、最新情報に乗り遅れてますよぉ~ 業界筋には水面下で大規模なアンケートが実施されている、という噂は予てから有ったがいよいよ集計結果が姿を表したわけだね つまり旧版以来25年以上振りに出た正真正銘2013年版の新ヴァージョンなのだ 島荘、宮部、綾辻の作家インタビューや旧版の回顧座談会も載せるなどなかなか充実した内容らしい 刊行形態は文庫じゃなくて週刊文春の臨時増刊号扱いになっている 文春は年度別ベストでも週刊文春誌上で発表されるなど、”宝島社このミス”よりもうちが老舗だとの自負があるのか頑なにムック形式をこれまで避けてきたが、版型がムックだとすればちょっとこのミスを意識したのかも知れない 旧版は週刊文春発表が1985年、翌年に文庫化、対して綾辻「十角館」が1987年、実にタイミングが悪くて国内新本格が全くカバー出来ず古典のオンパレードだったので、新版では新本格がかなりの数入ると予想される さて旧版だが、私は書評しようと思えばもっと前に出来たのだが、新アンケートの噂を聞いていたので待っていたのだ、我ながらストイックな奴(苦笑) 旧版は初心者の頃の入門バイブルだったんだよなぁ、という読者の方も沢山居られるでしょう、かく言う私も・・・、と言いたい所だが、私にとってはバイブルでは全く無かった、採点が低いのはそれが理由 私は初心者の頃にはサンデータイムズ紙ベスト99などの名作表リストを知っており、後に”クイーンの定員”なども知ってしまい、今でもそうだが私の憧れは上記の2つのリストだったのだ 私が思うに、今の読者が入門するのに適したテキストとしては、アンケートによるベスト形式ものではなくて、例えば仁賀克雄「海外ミステリーガイド」みたいな文章によるミステリー発展史年代記ものの方をお薦めしたい 「東西ミステリーベスト100」みたいなのは、初心者が参考にするよりも慣れた読者があぁこれ何位なのねみたいに感慨に浸るという読み方の方が良い気がするんだよね 当サイト書評で、、”ポケミスのランクインが少ない”とのこうさんの御指摘は大変鋭いと思う こうさんの書評見るまで私も気が付かなかったが、たしかに当時ポケミスの入手が普通に容易ではあってもその当時は文庫化されてなかったものが非常に少ない印象は有る 例外としては例えばC・ブランド「はなれわざ」がある、現在では文庫化されているが、当時は普通に入手容易なポケミスで、ある意味既に文庫化されてた「緑は危険」「ジェゼベルの死」よりも入手容易だったのがポケミスで珍しくランクインした理由なのかなと思った とにかく絶版かどうかはともかく、当時文庫で刊行されていたものに偏っているのを見ても、人気投票としては内容というよりも、入手容易度や”読まれている度”に比例した順位だったなぁという印象である まぁでも人数的にこれだけ大規模なアンケートは空前絶後であり、最大公約数的な味気無さは感じるにしても、信頼度いう面では他に類を見ないという点では大いに評価はしたい |
No.8 | 10点 | 世界ミステリ作家事典[ハードボイルド・警察小説・サスペンス篇]- 事典・ガイド | 2010/11/19 09:51 |
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他の某サイトの掲示板にて、”本格以外はミステリーじゃないだろ”みたいな馬鹿げた書き込みを見た事があるが、ミステリーという言葉は本格派のみを指す言葉ではない
数学的に言えば本格=ミステリーではなくて”本格⊂ミステリー”である という事で本格派篇の姉妹篇であるこちらも書評しておこう この姉妹篇では本格派篇とは大きく違う要素が2つある 1つ目は、本格派篇では森英俊氏が個々の作家の解説を全て書いているのに対して、こちらは森氏が全体の監修はしてはいるが、複数の評論者による共同作業でありジャンルによって執筆担当者が違う 森氏は、”本格以外だと探偵役がはっきりしている警察小説が好き、逆に登場人物に感情移入が必要なサスペンス小説は苦手”と何かで書いているのを読んだ記憶がある 言われてみると過去のこのミスの投票で、森氏はイアン・ランキンなどの警察小説を結構投票してきた、やはり好きみたい この事典でもマクベインなど警察小説の多くは森氏自身が解説を担当している 警察小説以外のジャンルは概ね他の執筆者に担当を任せているが、サスペンス小説でもラインハートやエバハートなどの所謂H.I.B.K派は森氏が担当している H.I.B.K派は従来から誤解を招き易いジャンルだったので、森氏も説明の要有りという判断なのかも知れない 2つ目は本格派篇に比べると載ってる総作家数が絞り込まれてる 本格派にもジョン・ロードのような多作家は居るが、何たってこちらにはシムノンやミステリー史上最多作作家とも言われるジョン・クリーシーなどが含まれているので、書誌的著作リストなど資料部分にかなりのページ数が割かれてしまい、マイナー作家まで掲載しきれなかった事情が有る 特に割を食った感じなのは通俗B級ハードボイルドの分野で、ぎりぎりリチャード・S・プラザー程度は掲載されているが、流石にヘンリー・ケインやマイクル・アヴァロンあたりまでは手が回らなかったようだ 余談だが、通俗ハードボイルドまで手を出す論創社がリチャード・S・プラザーは刊行したのはこの事典に一応載ってたからなんだろうか? ただ本書は本格しか読まない読者と、本格以外も読む読者とでは、価値観に差が出てしまうのが残念なところ 私はこの姉妹篇も本格派篇に劣らぬ同等の価値が有ると思うのだが ところでもう一つ本格派篇との差異は未紹介作家が殆ど掲載が無い事で、当然ながら未訳作品の紹介も少ない 私は未訳作に特別に興味は無いな、むしろ過去に邦訳刊行されながら絶版などで埋もれている作品の再評価の方が興味がある 未訳作をわざわざ原文で読まなければその作家について知る事が出来ない訳でもないだろう、未紹介作家ならともかく既訳作品が2~3作でもあれば凡その見当は付く そもそも原文で読まなくても作家について解説で知る事が出来る、その為にこういう作家事典があるんだろうに、でなけりゃ作家事典の存在意義が無いではないか(笑) 好きな作家の未訳作まで読みたいという動機ではなくて、単にその作家について知りたいだけの目的なら作家事典さえあれば原文で読む必要も無かろう |
No.7 | 10点 | 世界ミステリ作家事典 [本格派篇]- 事典・ガイド | 2010/11/15 10:11 |
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この事典により、なぜ海外ものは原文で読む必要性を痛感しなければならないのか全く理解出来ない
この事典が契機となって、国書刊行会、原書房、論創社、長崎出版、河出書房などから次々刊行された経緯を考えれば、我々読者側は翻訳されたものを素直に読めばいいのである さて本題に入ろう、この事典の肝は本書の基本方針に言及した森氏の序文にあり、特に3ページ目に注目だ 例を挙げよう、解説が1人1ページ程度な作家も居るが一般的メジャー作家の項目には当然ながらページ数が多く割かれている カー:7ページ クイーン:10ページ クリスティ:10ページ と言った具合である(解説のみで書誌的著作リストの部分は除く) これに対し、海外では一定の評価があり、本来はもっと早く日本に紹介されるべき作家だったのに、乱歩時代の嗜好なのか不当に無視されてきたり、アリンガムやイネスのように誤解されてきた作家達には意図的にページ数が多く割かれているのに気付く、例えば マージェリー・アリンガム:6ページ マイケル・イネス:7ページ レックス・スタウト:6ページ ナイオ・マーシュ:3ページ グラディス・ミッチェル:3ページ ジョン・ロード:5ページ あと古典作家だがオースチン・フリーマン:6ページ などである これらの作家達は従来の作家人名事典ではあっさりした紹介しかされてこなかった作家達である スタウトだけはアメリカ作家だが日本では人気が無かった カーですら7ページなのに、イネスが同ページ数 ドイルですらほぼ3ページ位なのに、同期のライヴァルであるフリーマンには倍の6ページも費やして解説しているのだ この事典の性格や狙いが良く分かるではないか つまり今更分かりきった作家よりも、従来無視されていた作家を重点的に光を当てようとの意図が見て取れる アリンガム、イネス、ミッチェル、フリーマンらが一時期次々に訳されたのも、この事典の影響なのは明らかである その他にもセイヤーズ:7ページ、バークリー:8ページなどもこだわりを感じる 逆に面白いのは、日本では従来から翻訳に恵まれてきたが海外における重要度が低い作家には気合が入ってない事で、例えば仏作家のステーマンは酷評してるしヴァン・ダインは3ページ、海外では忘れ去られた存在なのに日本だけで異常なマニア人気があるロジャー・スカーレットに至ってはたった2ページしかなくて、しかも解説も冷めた雰囲気である 古い作家だけでなく現代作家にも目を向けており、特にエリス・ピーターズ:5ページ、ポール・ドハティ:3ページなどには、日本では従来人気になり難かった歴史ミステリーへの誘いという意味もあるのだろう もっともポール・ドハティはいざ紹介されると期待外れだったが(苦笑) アン・クリーヴスやジル・マゴーンなどと並び称される未紹介のグェンドリン・バトラー:3ページ、男性作家だとデイヴィッド・ウィリアムズなどは解説にも熱気があり、翻訳が期待されるところだ 未紹介と言えば黄金時代や戦後の本格作家にも未だ未紹介のままの作家が何人か居り、メアリー・フィット、ナイジェル・フィッツジェラルドなどもどこぞの出版社が翻訳して欲しいものだ 特に未紹介のまま残った最後の大物フィービ・アトウッド・テイラーは、黄金時代後期に活躍し海外選出の里程標にも名前が載っており最優先で紹介して欲しい作家である |
No.6 | 7点 | 新海外ミステリ・ガイド- 事典・ガイド | 2010/10/21 10:12 |
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現在は加筆した改訂版がハードカバーで出ているが、私は古本屋で見付けた旧文庫版で読んだ
改訂版はその後に登場した作家などを加えて増補しているみたいだが、基本的な部分は大きくは変わっていないようだ、まさに仁賀ワールド全開 私はこの種のガイド本に個々の作品紹介などは求めてはいないし、紹介文に魅力を感じてその本を探すという事も無い あくまでもガイド本に求めるのは作家の位置付けであり、ミステリーの歴史の中でどの潮流に属するのかだけを知りたい性格なのだ 評価は自分で判断するので、個々の作品の評価などにはあまり興味は無い、まぁ一般的にこの作家だったらどれが代表作と言われているのかは知りたいが 何が言いたいのかと言うと、このガイド本はまさしくそういう本なのだ とにかく広く浅く、個々の作品についての深い考察などはほとんどない まずミステリーの歴史の中で各ジャンル毎の潮流が体系的に述べられ、その潮流に属する作家の顔触れが編年体式に紹介され、それぞれの作家の代表作はこれです、みたいな体系的手順になっている 全くのミステリー初心者相手にはこれでいいと思う、いやこの手のガイド本こそ必要でしょ 昨今はさぁ、ミステリーの歴史的展開など基本を理解してない読者が多過ぎ、例えばハードボイルドという言葉をアクション活劇小説と同義だと思い込んでる誤った解釈がまかり通ったりさ クレイトン・ロースンなんかもさぁ、単に密室などの不可能犯罪系専門作家としか認識していない人が多くてなぁ、ロースンやハーバート・ブリーンなどはアメリカン本格が衰微していって貧血症状を起こしていた時期の作家なんだよな このガイド本ではその辺の歴史的経緯が分かり易く説明されているし、いかにも仁賀克雄らしさが良く出ている入門書だ ただ唯一の欠点である、臣さんが御指摘の巻末索引の欠如には全くもって同意です 例えば早川のハンドブックは巻末索引にかなりのページ数を割いているが、早川のは本文が作家作品毎に分類整理されており、そうした構成なら索引の必要性は少ない しかしこのガイド本は、箇条書きではなくて文章の流れで全編解説しているスタイルなので、こうした手法こそ巻末索引が無いと不便で仕方が無い つまり読物としては良いが、事典的な使用に適さないのだ |
No.5 | 8点 | ミステリー&エンターテインメント700- 事典・ガイド | 2010/10/06 10:34 |
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数年前、偶然に古本屋で格安で見付けて買っておいたのだが、とっても役に立ったガイド本
狭い意味でのミステリー作家の多くを省き、広くミステリー的な観点で選んだエンターテインメント作家を中心に紹介している だから本格系の作家は皆無で、今後も本格しか読みたくないタイプの読者にはこの本は全く役に立たない 私はガイド本に対し個々の作品の紹介などを求めてはいない そう聞くと、”おいおい、だからガイド本なんじゃねぇの?”と言われそうだけど、私は本当に作品自体のガイドなどを欲していないのだ 私が求めているのはズバリ、個々の作品ではなく作家の紹介なのである それも日本の翻訳事情に鑑みたものではなく、海外でのその作家の評価位置付けが知りたいのだ 日本の翻訳事情に準拠したものなら、ガイド本なんか無くても分かるって でも海外での作家の位置付けって、海外の評論家の選択したベスト100とかじゃないと、なかなか知り得ないしね 日本での人気ってどうしても出版事情に左右される面があるんだよな、そういう状況が私は気に入らないわけ 前置きが長くなったが、要するにこのガイド本はそうした視点が貫かれていて、私にとってはまさに”痒い所に手が届く”ガイド本なのだ 例を挙げると、冒険小説のコリン・フォーヴズなどはこの本で知った 冒険小説というとH・イネスやマクリーンの後継は一足飛びにJ・ヒギンズやD・バグリイになってしまいがちだが、上記のフォーヴズやブライアン・キャリスンやダンカン・カイルといったところを落とすわけにはいかない フォーヴズは翻訳は沢山された割には日本では今一人気が出なかったが、海外ではマクリーンに次ぐ位の評価をされているなんて、この本が無ければ見逃すところだった ホラー分野だとピーター・ストラウブなんかもそう、F・ポール・ウィルスンとかジョン・ソールとか あと例えばトマス・ハリスはレクター博士シリーズしか思い浮かばなかったが、それ以前の非シリーズに「ブラック・サンデー」というスリラーが高評価されていて、知らなかった私は早速古本屋へ行って調達してきた、もっともまだ未読なんだが(苦笑) 「復讐法廷」のH・デンカーにも「女医スコーフィールド」という隠れた逸品があるのだが、古本屋でふと見付けた時も、このガイド本読んでなかったら絶対にスルーしてたはずだ ここまで褒めといてなんだが、このガイド本には大きな欠点がある それは評価が★☆の数で表されているのだが、これが全く信用出来ない事 例えばケンリックだと、「三人のイカれる男」の評価がメチャ低いが、内容的にそれはあり得ない 「三人のイカれる男」は出版社角川の思惑で前期作なのに翻訳が後回しになった曰く付きの作で、つまりは読まれてる度が同作家比で低いわけだ 多分複数の投票者のポイントを平均値ではなく単純に合計したらしく、要するに★☆の数が内容よりも読まれてる度合いに比例している印象なのだ だから各作品に付けられた得点が妥当かどうかで言ったら、このガイド本の評価は7点でも高過ぎる位 あくまでも作家の説明に関してだけに対しての8点である |
No.4 | 5点 | ミステリーファンのための古書店ガイド- 事典・ガイド | 2010/08/24 10:29 |
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たまにはこういうのもいいでしょ
これは書籍のガイドではなくて、あくまでも古書店のガイド本 なんたって北海道から沖縄まで著者が実際に古書店を巡り、 名前が載ってるだけなら細かい古書店まで紹介している しかも学術専門古書店などミステリーを置いてないような店は掲載せず、あくまでもミステリー古書を探すという視点が貫かれている だから神田神保町や早稲田古書街といった古書店密集地帯の章などは、ミステリーを重点的に扱う店に絞り込んでおり、案外と紹介している店が少なくて、かえって地方の方が細かいところまで拾っているくらい 笑えるのは著者の経験から、リュックを背負った古書探しの旅の服装まで指南している、うわっ本格的な奴 きっと目ぼしいのは野村さんがみんなごっそりさらってしまったんだろうから、この本を見て今から行っても、特別な珍品はもう無いんじゃないかな それにしても、内容は古書店ガイドなのに、この本の発売直後に新刊で買った相当おバカな私 |
No.3 | 6点 | 現代海外ミステリ・ベスト100- 事典・ガイド | 2010/08/06 09:54 |
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Tetchyさんの書評を見て驚いて便乗しました
実はこの本、私も登録しようかなと思っていたので これもTetchyさんの書評通りで、文庫の版型で上下二段組に見開き2ページで1作というスタイルだけど、上下二段組の必要性が疑問だし、解説も粗筋紹介に大部分が割かれ、肝心の紹介文の部分がイマイチ魅力に欠ける それと各書評の配列順が、作品題名のアイウエオ順て・・ もっと適切な配列順はなかったんだろうか 多分同じ仁賀克雄だし「海外ミステリ・ジャンルベスト100」と対になってるのだろう 「海外ミステリ・ジャンルベスト100」・・・基礎編 「現代海外ミステリ・ベスト100」・・・応用編てな感じでね 発行年を見ると「現代」の方が先だから、「ジャンルベスト」の方は思い切り入門向きにしたんじゃあるまいか 「ジャンルベスト」の方はあまりにも基本図書的な選択なんで、海外ものは全く読んでない読者にしか参考にならないだろうし それだけこの「現代海外ミステリ・ベスト100」が、作品選択という意味だけなら、よく出来ているという事だと思う 仁賀氏は作品選択のバランス感覚だけは絶妙だからね 一言で言うならまさに”過不足なし” つまりこの本で挙げられている100冊よりも範囲を広げてしまうと、ちょっとマニアックになり過ぎる それでいてこのガイド本が出た当時の現代海外ものの重要なところは全て押さえてある ジャンル的にも各ジャンルをバランスよく配分しているし 海外ものはクリスティ、カー、クイーンくらいしか読んだことがないという読者には実用的で適切な参考書だ |
No.2 | 7点 | 海外ミステリ名作100選 ~ポオからP・D・ジェイムズまで- 事典・ガイド | 2009/09/29 10:33 |
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この手のベスト100やガイドと言うと、ジュリアン・シモンズ選サンデー・タイムズ紙ベスト99やクイーン&ハワード・ヘイクラフト選のものなどが有名だが、キーティングのベスト100はその線を狙ったものだろう
私はこの種のベストものは海外評論家によって選ばれたものが好き たしかに日本人編集者選定の方が翻訳出版事情に準拠しているので実際に本を探す際には便利ではある 海外選定のものは未訳作品が含まれていたりで現実問題として本を読むのに参考にならないこともある しかし少なくとも海外での作家の位置付けというものが分かる 何が言いたいのかと言うと、日本だけで人気のある作家と、日本では人気薄だが海外では評価が高い作家の違いを感じることができるのだ 例えばロジャー・スカーレットやフィルポッツなんて海外での名作表では滅多にお目にかかれない忘れられた作家で、日本での妙な人気が異常だと言える 乱歩の弊害だな クロフツなども本国英国より日本での方が人気で翻訳にも恵まれ過ぎな印象がある むしろ密室好きな日本人受けと思われがちなカーは、案外と海外でも普通に人気作家だったりするし、アリンガムなどは完全に海外での評価の方が高い で、作家としても有名なキーティング編のベスト100だが、ジャンル別には分類せず純粋に年代順なので、シモンズ選のよりもミステリーの歴史が概観し易い ただキーティングの論評は仔細に読むと結構類型的であまり目新しさは感じられず、その割には作品選択にちょっと奇を衒い過ぎな印象も一部に見受けられた 本格以外の分野で言うと、キーティングが英国人だからなのか、ハードボイルド私立探偵小説系よりも、サスペンス小説の選択に特色があって参考になった |
No.1 | 8点 | 海外ミステリー作家事典- 事典・ガイド | 2009/06/06 14:27 |
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森英俊編集事典というと、世界ミステリ作家事典全2巻につきるわけだが、なんたって大部で値段も高いので気楽には買えない
ところが光文社文庫にコンパクトにまとめた森編集の事典が在るのだ 説明は国書刊行会版を引き継いで抜粋したような感じなのに定価1000円位だからかなりお買い得感はある 文庫版だから流石に作家数は絞り込んでいるので、マイナーな作家を知るという目的ならば国書版の高いのを買うしかないが、海外作家入門には絶好のガイド本だ しかもホラーまで含む各ジャンルに分類しているので、総合的に入門出来る 本格しか読まない読者などは、マイナー作家まで含めた本格作家のみに絞ってほしかったと不満だろうが、私は異論がある 理由は、その手の読者にはこんな入門ガイドは不要だろうし、どうせいずれは国書刊行会版を買うだろうからだ つまり光文社文庫版は海外ものをほとんど読んだことがないような読者向きなので、そういう読者には各種ジャンル別に解説してある方が親切だと思うし 入門段階から本格だけに偏って欲しくないしね |