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miniさん |
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平均点: 5.97点 | 書評数: 728件 |
No.668 | 7点 | シーザーの埋葬- レックス・スタウト | 2015/10/30 10:08 |
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本日か明日あたりに論創社から、レックス・スタウト「ようこそ、死のパーティーへ―ネロ・ウルフの事件簿」とジョン・ロード「ラリー・レースの惨劇」が刊行予定
ジョン・ロードのはこれまで代表作の1つと噂されていた未訳作なので期待大だ スタウトのは同じ論創の既刊「黒い蘭」に続く中編集の第2弾 初期作「毒蛇」と「腰抜け連盟」を読む限りでは、初期のスタウトはまだミステリーを書く事に慣れていないなという感じである デビュー作「毒蛇」では犯人の正体を明かすタイミングが中途半端だし、「腰抜け連盟」ではプロットがゴチャついて多過ぎる登場人物達を整理しきれていない スタウトは書くに従って上手くなっていった作家なのだろう、評判で言えば初期~中期にかけての2トップが「料理長が多すぎる」と「シーザーの埋葬」である ただしこの両作、私が言うところの代表作ではない 何度も説明しているが、私は最高傑作と代表作という語句をはっきり区別する主義である 代表作と言うのは、出来栄えはその作家の中で3~4番手位でも構わないから、それ1作を読めばははぁこの作家はこんな感じか、みたいに特徴が良く出ている事が条件である、つまりはその作家で最初に読むのに適しているという事だ 逆に言えば、どんなに傑作でもその作家にとっての異色作や特殊な作は代表作とは認めない、例えばポアロやマープルが登場しない「そして誰も」を代表作だと思った事はない もちろん逆の意味で、特殊な設定の作ばかり書くような作家の場合はそういう作品が代表作となるが さてそこで「料理長」と「シーザー」である ウルフシリーズと言えば、ウルフ=思考、アーチー=行動・調査と相場が決まってる ウルフは自宅に籠って外出しないのだ ウルフが遠出するのは止むを得ない事情が有るときのみ ところがさ、出来栄えでの2トップ「料理長」と「シーザー」はどちらもウルフが遠出するんだよな(笑)、「料理長」では美食趣味の為、「シーザー」では愛情込めて栽培する蘭の品評会に出席の為だ 何故だかシリーズの中では、直球よりも投げてみた変化球の方が良いコースに決まっちゃったみたいな(再笑) この「シーザー」だと、本格として程良く纏まっていてストーリーテリングも決まっている ウルフが遠出するという異色作なので代表作には推せないが、シリーズの中では名作の1つだろう ただそう考えると、ウルフシリーズの代表作ってどれなんだろう? |
No.667 | 5点 | にぎやかな眠り- シャーロット・マクラウド | 2015/10/29 09:58 |
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明日30日に創元文庫からコージー派の元祖シャーロット・マクラウドのシャンディ教授シリーズ第1作「にぎやかな眠り」新版が刊行される
年末あたりにはシリーズ第2作「蹄鉄ころんだ」がこれも新版で刊行予定らしい コージー派作品は中古市場でも格安なものが多く、レア感は全く無い しかし新刊で絶版なものは一応改版を出す事に意義が無いわけではないので、まぁこれも必然なのでしょう、シリーズ第1作だしね これは既に書評済だが一旦削除して再登録 今回の新版は他の作家・作品と共に復刊フェアの一環なのだろうが、某超有名掲示版では他の今年の復刊フェア作品は全部持っているがこれだけ持ってないみたいな投稿が有って笑ってしまった やはりな、コージー派だけは興味無いってか、復刊フェアとかチェックする奴等ってこのような読者ばかりなんだろうな、1冊位試しにコージー派作品読んでみろよ、ジャンル的に偏見を持ち端から毛嫌いするってのは一番良くない読み方だぞ 本格しか読まない人でもコージー派だけは馬鹿にして読まず嫌いだったり、ハードボイルドなど他の分野にも多少は手を出す人でもコージー派だけは手を出さずな風潮もあるけれど、コージー派はどう見ても本格の範疇であって他のどの分野にも属しようがない 作家にもよるが単に謎解き面がやや薄味というだけなのであって、物語進行も謎に対する興味で引っ張っているし、そんなに無駄なシーンで水増ししてるわけじゃない マクラウドなどは特にそうで、コージー派に偏見を持つ人が読んでもそれほど違和感は無いだろう 「にぎやかな眠り」はシャンディ教授シリーズの1作目で、クリスマスらしいトリックが使われている 残念ながら私はあれが登場した時点で、これ絶対伏線だろ!って感じで見破っちゃったけどね |
No.666 | 7点 | ストリップの女- ベン・ベンスン | 2015/10/26 09:54 |
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* 私的読書テーマ”生誕100周年作家を漁る”、第5弾ベン・ベンスンの3冊目
戦後50年代に興隆を迎えた警察小説分野の代表的作家の1人ベン・ベンスンは、前期には「あでやかな標的」「燃える導火線」「脱獄九時間目」といったタイムリミットものを書いていた しかし本来が地味で真面目な作風のベンスン、正直言ってあまり作者の資質に似合わないという感じも有った 既読の「脱獄九時間目」ではそのリミットが効果的に感じられず、「あでやかな標的」では制限時間が緩くてのんびりムードな感さえ有った 書かれた順番的に後期に属すると思うこの「ストリップの女」では、タイムリミット設定などは全く無く地味で真面目でちょっと社会派風な警察小説となっている しかしこれが良いのだ、この作者にはこういう方向性の方が絶対合っていると思う 社会派風な味わいは「あでやかな標的」や「脱獄九時間目」にも感じるのだが、その2作に於いてはややわざとらしい取って付け感が有るんだよな 警察捜査活動と犯人側の経歴がカットバック式に交互に書かれているが、これが実に効果的、わざと真相を曖昧なまま終わらせるラストも正解だと思う 警察小説を土台に、ウールリッチとビル・S・バリンジャーの哀愁スパイスを加えたらこんな感じになるんじゃないだろうか これまで代表作と喧伝されてきた「脱獄九時間目」などよりも、この「ストリップの女」の方がずっと出来が良いように感じた 尚、原題はそのまま「エキゾティック・ダンサー」だが、これだと007風になってしまう(笑)、内容的に「ストリップの女」という邦題名にしたのは大正解でしょう |
No.665 | 6点 | 黄色い部屋の謎- ガストン・ルルー | 2015/10/23 10:10 |
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昨日に早川文庫からルルー「黄色い部屋の秘密」の新訳版が刊行された
最近は古典の発掘が減った早川だが、意外と新訳版への切り替えだけは地道に進めており、今回もその一環だろう それにしても題名に関してクイーンでもそうだが、創元は「~の謎」が多いのに対して、早川は「~の秘密」と付けるのが好きだねえ(笑) 時々さぁ、創元に比べて早川は古典に冷たいなどと言う人が居るが、それは黄金時代のガチ本格派だけを念頭に置き過ぎた意見だと思うよ 案外とねえ、文庫じゃなくてポケミス版では黄金時代よりもっと前の古典的作品なども刊行してる べロック・ローンズ、サックス・ローマーの怪人ヒュー・マンチュー、カミなどちょっと異色なところは創元だと手を出さなかった分野で、黄金時代中でもヒュー・ウォルポールやロード・ダンセイニなどもあるし 早川は古典を発掘しないというのは、例えば古典的スリラー小説なんか興味無いってタイプの読者がそういう意識で見るから誤解しているんじゃないだろうか、本格派だけが古典じゃないんだよね むしろ古典的スリラーなんかは早川の方が良く手を出してくれていると思う 古典に関して早川よりも創元の方を多大にヨイショする読者っていうのは、絶対に本格派しか読まないってタイプか、あるいはポケミスの版型が嫌いで文庫版にしか手を出さないタイプの読者だと私は確信している まぁそんなわけで、「黄色い部屋」も創元版だけじゃなくて早川文庫版も出たのですよ、しかも新訳ですよ さてルルーってフランス作家だ ところがさ古典時代に於いて、フランス作家って結構微妙な位置付けである 古くはミステリー創世紀にエミール・ガボリオを輩出し、その後も怪盗ルパンのモーリス・ルブランが登場したりするが、正面きった本格派作品というのは英米作品に比べたら少ない、と言うか古典時代では1907年の作である「黄色い部屋」が唯一の本格派みたいな感じだ あまり偏見で見るのも良くないのかも知れないが、う~ん怪しい(笑)、本当にルルーは英米作家と同様な気持ちでこれ書いたのだろうか? もちろんその可能性は有る、だって当時は英米作品も仏訳されてただろうし、当然ルルーもそれらの英米作品を知ってただろうしね 主人公は高名な探偵と謎解き合戦で張り合うアマチュア探偵 おお!このパターン、ホームズを相手に張り合うルパンを思わせるではないか 英米への対抗意識と言う意味でフランス人の誇りを感じさせて微笑ましい |
No.664 | 5点 | 象牙色の嘲笑- ロス・マクドナルド | 2015/10/14 09:58 |
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* 私的読書テーマ”生誕100周年作家を漁る”、第1弾ロス・マクドナルドの5冊目
ロスマクを初期・中期・後期で分けると、本名のケネス・ミラー名義の頃が初期、名義をジョン・マクドナルドに変えリュウ・アーチャーが初登場する「動く標的」からが中期かな ちなみにその後、ジョン・D・マクドナルドという作家から名前が紛らわしいとイチャモンを付けられミドルネームにロスを加えている 再びイチャモンを付けられ、今度は名前からジョンを削除してロス・マクドナルド名義とした「凶悪の浜」からターニングポイントと言われる「運命」「ギャルトン事件」あたりまでが中期か、まぁその2冊は中期と後期との過渡期の作という意見も有るようだ その後アーチャーの登場しない単発作「ファーガスン事件」を挟んで次の「ウィチャリー家」から完全に後期に突入する 「象牙色の嘲笑」はまさに中期の真っ只中の頃の作で、初期の旧式なハードボイルドの亜流から脱却したが、後期のいかにもこの作家らしさも全開とは言えず、悪く言えば中途半端と言えなくもない ただ私はハードボイルドでさえも本格派としてどうかという視点が嫌いで、いかにもハードボイルドらしいハードボイルドの方がが好きな読者なので、正直言って後期のロスマクはあまり好きではなくて、むしろ中期の方がバランスの良さを感じる面も有る とまぁ概略的な話はこれ位にして 「象牙色の嘲笑」ってさ、あまり突っ込んだ書評を見た事無いのだけれど、いや私が勘違いして読み間違えているだけかも知れないのだけれど 「象牙色の嘲笑」ってさ、結構バカミス級のトンデモな作だと思うんだけど |
No.663 | 6点 | 八一三号車室にて- アーサー・ポージス | 2015/10/12 10:21 |
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* 私的読書テーマ”生誕100周年作家を漁る”、第9弾はアーサー・ポージスだ
短編の名手の1人アーサー・ポージスを私が最初に読んだのは、アンソロジーに収録されていた「イギリス寒村の謎」である、探偵役セラリー・グリーンが登場する国名シリーズのパロディ、いやパロってるのは題名だけで殆どギャグである あぁポージスってこういう作家なのかとその時は思ったのだが、あらためて短編集を読んでみると、「イギリス寒村」はかなり極端な作だった ただしどの短編にもお笑い精神は有るようで、一見すると真面目な謎解きものでさえも、使用されるトリックにはパロディ気分を感じる 解説で森英俊氏も指摘しているように、元々が数学者であるだけにポージスは典型的な理系作家である、それはトリックや謎の性質でも明らかで、例えばエネルギー保存則が絡む殺害方法などはいかにも理系的発想だ ただトリックの発想自体、例えば動物を使いたがるとか凶器の鈍器が重過ぎての不可能状況などのパターンを使い回している作が数編見られたのは気になった ポージスを他の短編作家と比較するならE・D・ホックとジャック・リッチーかな ホックは短編でもプロットがしっかりしているが、その点ポージスはアイデアやトリック一発勝負な感が強い、その意味ではトリックにしか興味が無く馬鹿々々しいトリックも笑って許せる読者には合うかも リッチーとの比較では、ポージスにはリッチーで感じるペーソスや情趣のような感性が欠けているので、良く言えば読んだ後も何も残らない清々しさはある 全体が犯罪小説などの非パズラーを集めたミステリー編とパズラー編とに分かれているが、どちらも出来栄えに差は無い 集中ベストはミステリー(非パズラー)編だと「完璧な妻」と、あと偶然の使い方が命中する「跳弾」なども面白い パズラー編では何と言っても表題作、あの作家のあの短編集は既読だったのになぁ、あの異名が出てきても私は気付かなかった、やられた(苦笑) |
No.662 | 6点 | 狙った獣- マーガレット・ミラー | 2015/10/06 09:58 |
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先日に論創社からマーガレット・ミラー「雪の墓標」とロジャー・スカーレット「白魔」が刊行された
「雪の墓標」は長編の順番で言うと「狙った獣」の1つ前1952年の作で、昨年夏に創元文庫から刊行された「悪意の糸」が1950年の作だから、どちらもミラー作品翻訳上での空白地帯になっていた時期の作で、初期から中期への作風の変化を知るのに適切かも知れない * 私的読書テーマ”生誕100周年作家を漁る”、第8弾マーガレット・ミラーの5冊目 ロス・マクドナルド夫人がマーガレット・ミラーで、たしかにロスマクの神経症的な作風はミラーを思わせるものがある さて初期には一部で注目はされていたもののもう一つ人気作家とまではいかなかったミラーを一躍メジャー作家に押し上げた中期の代表作がMWA賞受賞作「狙った獣」だ たしかにこれは受けそうだな、題名通り”狙ったな(笑)”って感じで、大胆な仕掛けが優先された作だしねえ 仕掛けの有るサスペンス小説の典型例みたいな感じで、実際にこの作が出た1955年前後の時期には、フランス産も含むこの手のタイプの作品が次々に登場している ミラーは後期にもエンディングサプライズにこだわっているので、「狙った獣」だけが異色作というわけでは決してなく、ある意味ミラーらしさが横溢した中期だけじゃない全作品中での代表作の1つと言ってもいい ただ「狙った獣」はねえ、あまりにも仕掛け一発狙いに頼り過ぎてる感も有って、途中経過こそがサスペンス小説の魅力として見るなら後期の諸作の方に魅力を感じる面も有る 実を言えば、私は結構序盤の描き方で、これはこういう仕掛けを狙っているんじゃないのかなと気付いちゃったのだよね 私の評価での比較で言うと、あまり面白いとは思わなかった「殺す風」などよりはこの「狙った獣」の方が好きだが、「鉄の門」との比較では私は「鉄の門」の方が好きだ でね、何故サスペンス小説としては「殺す風」よりこの「狙った獣」の方が上だと思うかと言うと、「殺す風」って犯人らしい犯人が居て犯罪らしい犯罪が行われる、要するに本格派こそが王道だみたいな狭い視野の読者が喜びそうな真相なんだ、でも「狙った獣」の場合はサスペンス小説として書かなければ意味を成さない真相だからね |
No.661 | 5点 | ローリング邸の殺人- ロジャー・スカーレット | 2015/10/04 10:43 |
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先日に論創社からマーガレット・ミラー「雪の墓標」とロジャー・スカーレット「白魔」が刊行された
某超有名掲示板では以前から「白魔」はいつ出るの的な投稿が多く、今年の論創の予定の中でも一番人気だったのが笑える 本国アメリカでも忘れ去られているのに、世界中でも日本だけで異常な人気のある作家が何人か居るが、ロジャー・スカーレットはその代表格だろう 海外で選ばれた名作表や里程標は昔からわが国にも紹介されてきたが、その中にこの作家名を見た記憶が殆どない、とにかく日本だけでの人気作家なのだ 日本の読者ってよくよく”館もの”が好きなんだな ”館もの”という舞台設定が大嫌いな私としては、ロジャー・スカーレットなんて全く興味の無いどうでもいい作家の1人である 某有名掲示板なのでも全作出せという要望が絶えないスカーレットだが、実は長編がたった5作しかなく、その最後の作が「ローリング邸」である この「ローリング邸」は、あのクソつまらなかった第1作「ビーコン街」に比べたらかなりマシな出来だと思う と言うのも、アマチュア書きみたいないかにもな”館もの”だった「ビーコン街」と違い、「ローリング邸」は”邸”という語句が付いている割にはいわゆる”館もの”っぽくないんだよね どちらかと言えば外部の人間との接触が重要なトリックで、館自体の存在があまり重要な意味を持っておらず、”館もの”らしい雰囲気も希薄だ 典型的な”館もの”というスタイルを求めるような読者には肩透かしかも知れないが、気の利いたトリックが仕掛けられており、むしろ私のような”館もの”というシチュエーションに何の愛着も無い読者の方がかえって楽しめる作かも |
No.660 | 6点 | 涙が乾くとき- トマス・B・デューイ | 2015/09/30 09:57 |
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* 私的読書テーマ、”生誕100周年作家を漁る”、第4弾トマス・B・デューイの2冊目
小鷹先生監修の河出書房版『アメリカン・ハードボイルド』は好企画な叢書で、最初は営業上の大人の事情かハメット(それも「マルタの鷹」だぜ)やチャンドラー(こちらは中短編集)から始まっているが、次第にやや日本での知名度的にマイナーな作家が紹介され、ハードボイルドファンには格好の贈り物だった 版型がちょっと中途半端なサイズだったのが弱点だったが、後に何作かは河出文庫化されている ただし大御所のハメットやチャンドラーなどの文庫化は見送られ、文庫化されたのはマイナー作家が中心だ、まぁこれは当然だろう、大御所だと他の出版社とバッティングするからね 逆に考えれば、文庫化されなかった作家はそれほどマイナーでもないと見なされていたとも言える訳で、大御所以外ではエド・レイシイ、ウェイド・ミラーとかトマス・B・デューイなどがこれに相当する ただしメジャー級のジョン・エヴァンスは文庫化されている、当時はエヴァンスでも日本ではマイナー扱いだという出版社の判断か? しかしねえ、ミラーとかデューイだと日本での知名度ではやはりマイナーでしょ、他に読める作品が極めて数少ないのだから 活躍時期もロスマクと被るトマス・B・デューイは、概要についてはポケミス版「非常の街」でも書いたが、今回は小鷹先生の詳しい解説で新たな発見をした それはデューイの経歴、特に住居の変遷で、幼時をオハイオ、ペンシルヴェニア、ミシガン、イリノイ州などで過ごし、大学はカンザスとアイオワ、シカゴで事務員、カリフォルニア州ハリウッドで編集者、その後首都ワシントンで国務省勤務、戦後はロサンゼルスで会社勤め、しかも作家活動を辞めた後はアリゾナ州立大学で教職に就く うわー、すげ~引っ越し魔(笑) デューイの弱点として、ハードボイルド派にしては珍しく、私立探偵が住む街並みが魅力的に書かれておらずあっさりした描写になっている点がある しかしデューイの経歴見たら納得だぁ~(笑) シカゴのマックシリーズも、本拠地シカゴの街並みの描写が少ないのが欠点と言われているが、そもそも作者自身がシカゴに住んでたのはほんの一時期だけなんじゃねえの?、こりゃシカゴという街に愛着が無いのも当然だ 実際にシリーズ末期にはマックはシカゴを捨ててロサンゼルスに移り住む決心をするのだそうだ、生まれ故郷を捨てるという珍しい私立探偵だ(笑) ロスマクと並ぶ正統ハードボイルド派の雄トマス・B・デューイだが、やはり持ち味は住む街の雰囲気とかじゃなくて、登場人物を見つめる温かい眼差しなんだろう、♪あ~ったかいんだから~♪ ただこの「涙が乾くまで」は一般的ハードボイルド作品としては一応の水準作なのだろうけど、何しろ読める作が2冊しか無いので分からんがデューイの中では凡作の類なんじゃないかなぁ、何でこれが選ばれたんだろ? |
No.659 | 6点 | 冒険・スパイ小説ハンドブック- 事典・ガイド | 2015/09/24 09:54 |
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明日発売の早川ミステリマガジン11月号の特集は、”北上次郎責任編集〈これが冒険スパイ小説だ!〉”
北上次郎だとちょっと前に本の雑誌社から冒険小説のガイドが出ているが、つまり早川書房じゃないんだよね 早川は最近にミステリハンドブックの新ヴァージョンを出したが、冒険小説系については新版は出さなかった、まぁ今はブームじゃないしって事なんだろうけど、そうかミスマガでやろうというわけだね、年末のランキングと同様な手法だがミスマガの活用という点では早川らしいところ 今回の特集には座談会に霜月蒼氏も参加しているんだね、霜月氏と言えば最近はクリスティの全作品講評で話題になったけど本来は冒険小説畑の評論家だもんね このガイドブックは過去に書評済だが、今回のミスマガに合わせて一旦削除して再登録 この種のガイド本に関しては、本格オンリーなものより他のジャンルの方が新たな発見が多くて参考になる さて早川のこのガイドだが、形状的には文庫版なので名前の通りハンディで便利だ さて私がこの種のガイド本に求めるものは、各作家の海外での評価位置付けのようなものであって、個々の作品毎の紹介なんかではない このハンドブックは個々の作品解説は充実してはいるが、その作家が世界的にはどのような存在なのかがもう一つ見えてこない 一応ランキング的には結構準メジャークラスまできちんと拾ってはいるのだが、人気的にややマイナーな作家の情報が知りたいという欲求には、もう一つ痒い所に手が届かない感がある でも冒険小説を”一般”と”海洋冒険小説”の二つに分けてランキングしているのは見識だろう スパイ小説も”一般”と”謀略・情報小説”に分けていて、こうしたジャンルの捉え方は流石に早川編集部は的確で上手い ただし好きな主人公・脇役ベストは余計だけどね |
No.658 | 4点 | ウィチャリー家の女- ロス・マクドナルド | 2015/09/09 10:17 |
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* 私的読書テーマ”生誕100周年作家を漁る”、第1弾ロス・マクドナルドの4冊目
後期3大傑作と言われる「ウィチャリー家」「縞模様の霊柩車」「さむけ」の中で、私にはこれが一番劣るように思った 上記の3作の中でやや毛色の異なる「縞模様の霊柩車」は別にすると、「ウィチャリー家」と「さむけ」はちょっと似ている面も有る どちらも失踪人探しから始まり、複雑なプロットと真相、無理矢理なトリック等々 まず問題はこのトリックの部分 「さむけ」のトリックもまぁ無理と言えば無理なんだろうけど、う~ん、でも私にはそれ程無理とは思わなかった、ネタバレになるから詳しくは書けないが、一応年月も経ってるしねえ 「さむけ」のトリックはまぁ何とか許容範囲なんじゃないかなぁ、本格派みはもっと無理なのいくらでも有るからね しかし「ウィチャリー家」の方は流石にちょっと無理を感じる また複雑なプロットだったら、「さむけ」位極端にやっちゃった方がロスマクらしくて良い、逆にシンプルな良さを狙うなら「縞模様の霊柩車」位で丁度良い 「ウィチャリー家」ってそういう面が中途半端なんだよなぁ 後期を代表する3作、私の評価は「縞模様の霊柩車」≧「さむけ」>>>「ウィチャリー家」ですね |
No.657 | 6点 | 月夜の狼- フレドリック・ブラウン | 2015/09/04 09:57 |
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もう一応刊行されてると言っていいと思うのだけれど、論創社からハーマン・ランドン「灰色の魔法」とフレドリック・ブラウン「アンブローズ蒐集家」が配本となる
ハーマン・ランドンはこれで2冊目だけれど、最初に出したのが「怪奇な屋敷」という非シリーズ、いかにも本格派しか読みません的読者しか買わなそうなもので、何で作者のメインシリーズを出さねえんだよと思ってたら、今回のは題名からして怪盗グレイ・ファントムもののようだ、こっちは買うぞ(笑) さてもう1冊のブラウンのは驚くことにあのエド・ハンター・シリーズなのだ このシリーズは過去に創元文庫から何冊も出ているのだが、実はたった1作だけ未訳作が存在したのである それも最終作とかじゃなくてシリーズでも中途半端な順番の作で、何で1作だけ未訳で取り残されていたのかさっぱり分からん、創元では当初は全部出す予定だったみたいだけど 今回論創社から出た「アンブローズ蒐集家」では、あのビアスの名前でもあるアンブローズ名の人物の連続失踪事件を描いたもので、主人公エドに助言を与えるアム伯父の本名もまたアンブローズなのだ、これはシリーズのファンには見逃せない SFの専門読者だとブラウンはSF作家のイメージだろうが、そもそも作者のデビューはミステリー作品であり、それがエド・ハンター・シリーズ第1作目の「シカゴ・ブルース」なのだ、しかも作者の最終長編もSF作品ではなくて同シリーズなのである このシリーズ、年代を追ってのエドの成長物語的側面も有るようで、「シカゴ・ブルース」では伯父と関わって父の殺害事件に巻き込まれ、私は未読だが第2作でもまだプロの探偵役ではない そして探偵社に就職し、新米ではあってもプロの私立探偵として第1歩を記すのがシリーズ第3作目の「月夜の狼」なのだ 感動物語的要素の強かった「シカゴ・ブルース」に比べて、「月夜の狼」では怪奇的雰囲気の中での狼男?登場と死体消失の謎(中盤で真相は判明するが)とか、宇宙人との交信の真偽を巡って、逸脱気味になりながらも探偵社社員としてのプロの仕事に邁進するエドが描かれ、謎解き興味中心の読者にはこちらの方が受けそうだ まぁ、「シカゴ・ブルース」にはシリーズ第1作目らしいまた別の魅力は有るんだけどね |
No.656 | 8点 | 密造人の娘- マーガレット・マロン | 2015/09/01 10:00 |
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先日に早川文庫でマーガレット・マロン「密造人の娘」が刊行された、元々は早川ミステリアス・プレス文庫で刊行されていたもので、今回は普通の早川文庫に加わったわけだ
早川ミステリアス・プレス文庫は早川がアメリカの出版社と提携して数十冊出したもので、提携上の契約とかが有ったのかもしれないが当時は普通の早川文庫との住み分けが面倒臭い文庫だった 現在ではそのいくつかは普通の早川文庫で出し直されていて、例えばアーロン・エルキンズ「古い骨」なども元々はミステリアス・プレス文庫だったのである エルキンズは早くから標準早川文庫に移行されていて、私に言わせてもらえばちょっと1人だけ恵まれ過ぎだった ミステリアス・プレス文庫で刊行されたまま放置されていた作家・作品もいくつも有り、そういう資産を生かす気がないのか早川は?と思っていたらやっとマーガレット・マロンを出してくれたわけだねえ まだトニイ・ヒラーマン、マイケル・ディブディン、キャロリン・G・ハート、トム・サヴェージ、シャーリン・マクラムとか残っているよん、いつ出してくれるのかな早川さん アメリカのミステリーの賞は、日本だと協会賞辺りに相当するMWA賞だけじゃなくて他にも幾つか有って、私立探偵小説だけが対象のシェイマス賞、バウチャーコン主催でお祭り的要素の強いアンソニー賞、ファンクラブ主催で読者投票参加型のマカヴィティ賞、コージー作家組合御用達のアガサ賞などが代表的な賞だ こういういくつも賞がある場合、よく1作で各賞を総なめって作品が有るか?という興味が湧くのだがこれがなかなか無い 例えばとある作家が、A作品でMWA新人賞、B作品でMWA本賞、また別のC作品でアンソニー賞を獲るとかはよくある、つまり別々の作品で別の賞を獲るパターンだったらそれ程珍しくは無い しかし同一作品でいくつもの賞を獲ったパターンは案外と無いのである、1992年発表の「密造人の娘」はこれらの賞を1作で総取りした珍しい例なのだ ただし上記の中でシェイマス賞だけは受賞してないが、そりゃそうでしょ「密造人の娘」はハードボイルドじゃないからねえ 読むまでは題名の由来は被害者か何等かの事件関係者の事だと思っていたが、実は主人公の女弁護士それ自身を指しているのだと知ってびっくりした ヒロインが弁護士なので便宜上、当サイトのジャンル投票はリーガルにしたが、う~ん、正直言ってあまり適切な分類ではない、やはり海外部門には”女性探偵”という区分が必要な気がする まぁ1992年というのは、グリシャムやトゥローなどと登場した年が近いので、一応はリーガルサスペンスブームの変型の一種かとも思えるが、しかしリーガルサスペンスには書き手が弁護士作家である事が暗黙の条件なので、マロン自身は弁護士ではないから微妙だ 文章はベテラン作家並みに良いが、それも道理で、マロンは全くの新人ではなくこの作以前にもミステリーが何作か有り、「密造人の娘」は作者のデビュー作などではなく出世作という位置付けだ 世のネット書評では低い評価が多いが、理由の1つにアメリカ南部の風土や選挙制度などが日本人読者に伝わり難いというのがあるみたいだが、私はそんなにその面は気にならなかったなぁ 意外性に乏しいという指摘もサプライズ勝負な作じゃないし、地味ながら数々の賞を受賞したのも頷ける傑作だ |
No.655 | 7点 | 見知らぬ者の墓- マーガレット・ミラー | 2015/09/01 09:59 |
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* 私的読書テーマ、”生誕100周年作家を漁る”、第8弾マーガレット・ミラーの4冊目
以前に書評済だったがテーマに合わせて一旦削除して再登録 ロス・マクドナルド夫人がマーガレット・ミラーで、たしかにロスマクの神経症的な作風はミラーを思わせるものがある ミラーは初中期は仕掛けのあるサスペンス小説という感じだったが、後期には私立探偵的な人物を配置してロスマク風に変わってきている ただし私立探偵が必ずしも主役とは限らず、この作品も探偵は結局は狂言回しの進行役で主役はヒロインの女性だ はっきり私立探偵自身が主役と言い切れる「まるで天使のような」は、ミラーとしたらむしろ例外的な異色作に思える ミラー後期の代表作の一つと言われるこの「見知らぬ者の墓」では、MC役の私立探偵の目を通してヒロインの潜在意識の奥に潜む謎を探っていく ヒロインの夢の中に自身の墓が登場し、墓碑銘に彼女の4年前の死亡日が記されているというとびきりの謎を持ちながら、ミラー独特の筆致で単なる謎の為の謎に陥るのを免れている 一方で各章の冒頭に記された手紙に関するかなりあざとい仕掛けには驚くと同時に読者によって好き嫌いが分かれそうだが 世のネット書評では謎は強烈だがこの真相にはがっかりてな意見も散見されるが、本格派作品ではないわけだし、プロット全体を通しての仕掛けみたいな作だからこれでいいんじゃないかなぁ |
No.654 | 7点 | まるで天使のような- マーガレット・ミラー | 2015/08/28 09:05 |
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本日28日に創元文庫から、ホック「怪盗ニック(2)」などと同時にマーガレット・ミラー「まるで天使のような」新訳版が刊行される
昔はミラー作品は早川と創元とで競っていて、創元にも「見知らぬ者の墓」といった名作は有ったが、「鉄の門」「狙った獣」などを持つ早川の方が優勢な感がしていた、中でもミラーに於ける早川の看板作品がこの「まる天」だった、中古市場でもそこそこの値が付いていた時期も有ったようだ しかし以前に創元文庫で「狙った獣」が刊行され、そして今回の「まる天」、今後はミラーも創元にシフトしていくのだろうか * 私的読書テーマ”生誕100周年作家を漁る” 、第8弾マーガレット・ミラーの3冊目 ロス・マクドナルド夫人がマーガレット・ミラーで、たしかにロスマクの神経症的な作風はミラーを思わせるものがある ミラー作品を大雑把に時期で区分すると、「眼の壁」「鉄の門」あたりの初期、代表作の1つ「狙った獣」以降の中期、そして「耳をすます壁」以降の後期となると思う 後期作品は現在では一般的評価が高いが、その中に私立探偵3部作とでも呼べそうな3作が有る、「耳をすます壁」「見知らぬ者の墓」「まるで天使のような」である ミラーの他作品にはMC役として警察官が登場するものもあるが、私立探偵が登場するとなると上記の3作になる 注目すべきは発表年で、「耳をすます壁」は1959年、他の2作は60年代初頭の作だ そう、この時期は夫君のロスマクが作風の転換を計り代表作を次々に発表していた時期に近いのである 特にこの「まるで天使のような」ははっきり私立探偵が主役を務めている 「耳をすます壁」「見知らぬ者の墓」の2作にも一応私立探偵は登場する、しかし既読の「見知らぬ者の墓」を見る限り私立探偵自体は決して主役じゃない、どちらかと言えば司会進行役の役割しかもっていない、たしかに私立探偵の調査で話は進むがこの内容では主役とは言えない、事実上の主役は夢に悩む女性である ところがだ、「まる天」ではMCではなくはっきり私立探偵が主役だと言い切れるような存在感が有る、最後の最後まで登場するし つまりミラー作品の中では最もハードボイルド小説の形態に近い 仕掛けの面では「狙った獣」や「見知らぬ者の墓」のような大掛かりな仕掛けは無いし、周辺の登場人物とあの内部の登場人物との関連性は読者の誰でもが疑うところで読者の予想を大きく上回るものでもない しかしこの最も私立探偵色が強い作では、真相が全体の雰囲気と調和してバランスが良い、ミラーの中ではやや異色なので代表作とは言い難いが、最高傑作の1つではあるだろう |
No.653 | 5点 | 殺す風- マーガレット・ミラー | 2015/08/28 09:04 |
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* 私的読書テーマ、”生誕100周年作家を漁る”、第8弾マーガレット・ミラーの2冊目
これは以前に書評済だったが、私的テーマに合わせて一旦削除して再登録 ロス・マクドナルド夫人がマーガレット・ミラーで、たしかにロスマクの神経症的な作風はミラーを思わせるものがある 私の記憶が間違えていたらゴメンナサイだが、たしか「殺す風」は瀬戸川猛資がすごく褒めていたんじゃないかなぁ 何度も言うように私は瀬戸川の評論とは相性が悪いのだが、この作品もそうでミラーの中では好みではない この「殺す風」はミラー作品の中ではちょっと珍しく、はっきり犯人と呼べる人物が居て一応犯行計画に基づいたような悪質な事件性がある しかも真相はすっきりと解明されるわけだしね つまりだ他のミラー作品に比べて「殺す風」という作品は、普段は本格派にしか興味が無いとか、サスペンス小説に対しても謎解き要素ばかりを追い求めるようなタイプの読者に受ける作品だ ミラー作品の中で「殺す風」だけを突出して高評価する人は、根本はサスペンス小説に興味がそれほど無くて、本格派嗜好の読者だと思うんだよね 私がミラーに求めるものは違うし、サスペンス小説の場合は書き方要素を採点基準にしているので、「殺す風」はどうも面白くない サスペンス小説はいかにもサスペンス小説って感じの作品の方が好みだ 「殺す風」は男女の憎愛を淡々と描きながらラストのサプライズに持っていくミラーらしいようならしくないような茫洋とした感じが狙いかも知れないが、この淡々とした味わいが美しさに昇華してないのが不満 やはりミラーには「鉄の門」のようなガラス細工の美しさを求めちゃうからなぁ、そのガラスが砕け散るサスペンスも含めてね |
No.652 | 6点 | わが目の悪魔- ルース・レンデル | 2015/08/11 09:58 |
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発売中の早川ミステリマガジン9月号の特集は、”幻想と怪奇 乱歩輪舞ふたたび”
昨年に続く怪奇ホラーと乱歩との関係特集だが、昨年に便乗企画やっちゃったからなぁ、当サイトでの私の書評、アンソロジー(国内編集者)「乱歩の選んだベストホラー」を参照してくださいませ もう1つの小特集が”追悼ルース・レンデル” 先日には同じ早川からポケミスで「街への鍵」も刊行されている 「ロウフィールド館」を読むまでは、私はレンデルのノンシリーズ代表作は「わが目の悪魔」だとずっと思っていた しかしレンデル逝去のニュースに今年になって「ロウフィールド館」を読んでみたら気が変った 「ロウフィールド館」って館もの嫌いな私としては題名が気に入らず、長年積読だったんだよな しかし読んでみると「ロウフィールド館」って内容的に全然いわゆる”館もの”じゃないんだよね、やはりノンシリーズの代表作は「ロウフィールド館」だと思う そんなわけで「わが目の悪魔」相対的に評価が下がってしまったが、しかしである、やはり「わが目の悪魔」はなかなか良作である 「ロウフィールド館」が現代版カントリーハウスが舞台なのに対して、「わが目の悪魔」は大都市ロンドンの普通の集合住宅での日常が舞台になっている 互いに何の面識も無いような住人同士のすれ違い、こんな些細な出来事から話を大きく膨らませるテクニック、そして日常の中に潜む狂気 異常な狂人が都会に潜んでいるのではなく、ちょっとした嗜好を持つに過ぎない見掛けは普通の小心な男 そこからの展開は見事で、サスペンス小説らしさでは「ロウフィールド館」を上回っている面も有る ただやはりちょっと地味かなぁ、「ロウフィールド館」に比べてケレンが足りない 私は地味さを弱点とは思わない読者だが、レンデルという作家に関しては「ロウフィールド館」くらいいやらしいネチこさが有った方が似合うのかも |
No.651 | 6点 | 終戦のローレライ - 福井晴敏 | 2015/08/06 09:58 |
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8月6日終戦間近です
お願いします シュウセンローレライ え?え?なんて? シュウセンローレライ、フー!、シュウセンローレライ、フー! シュウセンローレライ書評してね いや、ちょっと待ってちょっと待ってお兄さん シュウセンローレライってなんですの? 書評しろと言われましても、意味わからんからできませ~ん シュウセンローレライ、フー!、シュウセンローレライ、フー! 戦闘地域の南国シュウセンローレライ いや、ちょっと待ってちょっと待ってお兄さん シュウセンローレライってリゾートなん? でも南国言うてもいろいろあるよ テニアン、グアム、サイパンどれですの~? シュウセンローレライ、フー!、シュウセンローレライ、フー! 彼女と潜水艦でシュウセンローレライ ちょちょちょ、ちょっと待ってちょっと待ってお兄さん 嘘はついたらいけません、彼女と潜水艦言うてたけども 彼女ドイツ人だし潜水艦も元はUボートや~ん シュウセンローレライ、フー!、シュウセンローレライ、フー! ナーバル、シーゴースト、伊507 エノラゲイフラッシュローリングサンダー いや、ちょっと待ってちょっと待ってお兄さん そこシュウセンローレライちゃいますの? 意味わからんからやめて言うたけど、もう終戦待ってまっすん エノラゲイフラッシュローリングサンダー、エノラゲイフラッシュローリングサンダー 運命の時エノラゲイフラッシュローリングサンダー ドイツの父さんは、日本から来た祖母から生まれた 日本人の祖母を持つ元SS将校の名は、フリッツ・S・エブナー ちょっと待ってちょっと待ってお兄さん それ言うなら日独ハーフととドイツ人とのクォーター エブナーの妹は後にジャパニーズピーポー 歌ってみたけど、名も知らぬ遠き島より流れ寄る椰子の実ひとつ 絶対米国に渡さんシュウセンローレライ フー! ちょっと待ってちょっと待ってお兄さん あざした! |
No.650 | 6点 | 喉切り隊長- ジョン・ディクスン・カー | 2015/08/03 09:58 |
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予定では本日3日に扶桑社文庫から、シェリー・ディクスン・カー「ザ・リッパー」が刊行されるらしい、文庫で上・下2巻のちょっと大作っぽいようだ
さてシェリー・ディクスン・カーという名前でもうお分かりのように、カーの孫娘なのである 内容的には切り裂きジャックテーマの一種の歴史ミステリーなのも祖父を髣髴とさせるではないか カーは晩年には歴史ものに傾倒していたのは皆様御存知でしょう、ただ私は「ビロードの悪魔」はじめカーの歴史ものは殆ど未読で、唯一既読だったが「喉切り隊長」である 一応当サイトのジャンル投票では歴史ミステリーに投票したが、歴史ものという観点を離れて見れば、これはまんま”冒険スパイスリラー”である 当サイトでのTetchyさんの御書評が過不足なく言い表されておられるので、私が付け加える要素は殆ど無いのですが(苦笑)、弱点ポイントの御指摘も同感 一部の紹介文に、”刺客を放った黒幕は誰か?”とか”徘徊する喉切り隊長の正体は?”とか、本格派的興味を煽る文句が散見されるが、そういう期待で読んではいけない 刺客を放った黒幕なんて凡そ推測出来てしまうレベルだし、そもそも謎解き的興味で話は進行しない カーは本質的には冒険ロマン志向の作家だと思うが、歴史上に舞台を移す事で、水を得た魚のように冒険ロマン精神が全開になったのだろう、まさにノンストップフルパワー、作者の楽しんで書いている姿が目に浮かぶようではないか |
No.649 | 8点 | ユダの窓- カーター・ディクスン | 2015/07/28 09:58 |
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明日29日に「ユダの窓」が刊行される、流石にこれは書評済だったが新刊に合わせて一旦削除して再登録
いやー、「ユダの窓」の新刊と聞いて、「火刑法廷」「三つの棺」に続く加賀山氏による新訳か、と思っていたらさぁ、ちょと待てちょと待てお兄さん!版元が創元文庫だったのでビックリ これまでカーの3大名作「火刑」「棺」「ユダ」は早川独占というイメージだったが、創元が一角を崩した格好になったわけだな、今後もしかして「火刑」「棺」にも手を伸ばす可能性も有るのだろうか、ただ早川も「火刑」「棺」の新訳を出して間もないしなぁ、そうなったら完全に競合だな さて私は、”代表作”、”最高傑作”、”入門向き”という称号をはっきり区別する主義である どういう定義かと言うと、最高傑作というのは文字通りの意味で説明の用無し 問題は代表作という用語で、最高作と混同して使う人が多いが、この両者には明確な差異が有る 最高作は出来が一番なら異色作でもいいのだが、その作家にとっての異色作は絶対に代表作とは呼べない 代表作とは出来栄えではその作家内で仮に3~4番目位の出来でもかまわない、もちろん出来の悪いものでは駄目だけど 代表作と言うのは、その1作を読んだだけで、その作家が”あぁこんな作風なのね”、と理解出来る作の事である、つまり”その作家らしさ”が出ている必要が有り、だから異色作では駄目なのだ そして代表的な作がいくつか有る中で、比較的に初心者が読んでもとっつき易いのが”入門向き”である ではカーの場合はどうか 私が選ぶカーの最高傑作は「三つの棺」である、しかしこれは入門には全く向かないし、代表作と呼べる要素もあるが異論も出るだろう 「火刑法廷」も入門向きではない、理由は皆様お分かりでしょう 私だったら入門書には「魔女の隠れ家」を選ぶが、代表作選定についてはカーの場合難しい、ちょっと1作に決められない さてそこでだ、「ユダの窓」である 「ユダ」は代表作とは呼べない、何故ならカーらしさの重要な要素の1つであるオカルティズムが無いからだ さらには「火刑法廷」がその題名に反して法廷ものでは全然無いのに対して、「ユダ」は法廷ものに特化している異色性も有って、異色作は代表作に非ずの原則に反する そうなると「棺」とは別のもう1つの別格最高傑作みたいな位置付けだろうか、最高って言うのだから1作に絞らなきゃ駄目、とか言われたら苦しいが(笑) しかしだ、カーという作家に入門するには不適だが、一般的なミステリー入門には相応しい つまりカーの中では、という縛りを解き、単にミステリー全般での入門書としてなら通用する、「ユダの窓」とはそんな作である 短編レベルの小粒なトリックだし、これを事件が起きて捜査陣が来て調査し、そこへ徐に探偵役が登場し、といったような普通の書き方をしたらせいぜい水準作位にしかならなかったろう 一方で、不可能状況抜きの平凡な事件性で法廷場面に終始したら、カーの筆力をもってしても普通の法廷もの以上には成り得なかったと思う トリック小説と法廷ものとの、プリウス並みのハイブリッド感覚、これこそがこの作の傑作となった理由だ |