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makomakoさん
平均点: 6.19点 書評数: 850件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.16 6点 エラリー・クイーンの冒険- エラリイ・クイーン 2021/04/11 12:38
 エラリークイーンの短編がぎっしる詰まった作品集です。
 氏の精緻な構成は短編にも十分活かされていると思います。事件の提示、登場人物が現れる、意外な展開といった一発トリックがいかにうまくいっているかということになりますが、評判の高い(様です)「ガラスの円天井付き」などは私には合いませんでした。誕生石など全然興味がないもののお話なので。
 でも全体としては十分楽しめました。

No.15 7点 フォックス家の殺人- エラリイ・クイーン 2021/02/11 16:15
 このお話は10年以上前にあった女性の死亡事件ですでに有罪確定している夫の罪の見直しをエラリーが依頼されるといった内容。
 10年以上たっているのだからエラリー得意の細かいことまで検証するといっても無理なことが多いように思うが、なぜか登場人物の皆さん印象が強烈であったせいか事件の詳細までよく覚えている。まあ都合の悪そうなところは忘れたということにもできるので、お話を書く方は都合がよいかもしれない。
 登場人物は少ない。
 犯人探しとしてはとても限られた人物だけなので簡単そうなのだが、なかなかそうはいかない。
 さすがクイーンといったところではありますが、結論から言うとちょっと肩透かしな感じを受けました。こういった結論しかないのではないかとも思っていたのですが。
 もちろん推理小説として立派なもので、読みやすく楽しめることは請け合いでしょう。

No.14 6点 スペイン岬の秘密- エラリイ・クイーン 2016/05/03 09:24
 このお話はフーダニットとしては古典的なため、私でも犯人は分かりました。エラリーの挑戦で答えの前に分かったのは実は初めてなのです。
 ただし被害者が裸でマントのみ着ていたという理由はさっぱりわかりませんでした。
 種明かしを読んで、まあそうかとは思ったのですがーーー。
 下着まで脱がせて真っ裸にする必要はなかったのでは?
 まあこのほうが派手なのでこんな設定としたのでしょう。
 

No.13 7点 中途の家- エラリイ・クイーン 2016/02/16 21:24
 こんな作品の犯人を理論的に見破ったなんてすごい方もおられますねえ。私は読者への挑戦のところではたと考えてみたのですが、全然犯人は分からず(まあいつものことですが)、回答となるエラリーの話を読み進み、犯人が死んでしまったところでもまだよくわからずという情けない読者でした。
 作者にとってはうまく騙され、さらに次も読んでくれるのですから、良い読者ということとなるのでしょう、と思っていることとします。
 終わりは余韻がありなかなか素敵なのですが、今回のエラリーはことに理屈っぽく感じが悪い。もともと好感が持てるというほどのキャラクターではないのですが、本作品では今まで読んだ作品と比べてもだいぶん悪い。さらに初めのほうに出てくる警察署長も相当嫌なやつで、読み始めのあたりでは妙に感じの悪い同士が意味なくぶつかり合っているようで、ちょっといただけない。
 それにしてもクイーンはよくここまで精緻な小説をたくさん書けたものだと感心します。

以下ネタバレ

 推理小説として読めば犯人の追及も理論的で素晴らしいのですが、この犯人まったく魅力がないように書かれている人にずっと惚れていたなんて、あとで考えると変だなあ。

No.12 9点 災厄の町- エラリイ・クイーン 2016/01/30 19:50
 今まで読んだエラリークイーンの作品の中で最高でした。作品の出来としてはYの悲劇などが良いと思うのですが、テレビで見た後で読んだため衝撃がちょっと少なかったのです。
 それにしても文学と推理小説の合体を目指した本作品は本当に素晴らしい。当然ながら殺人はおき(ただしお話がだいぶん進んでから事件が起きる)、強烈などんでん返しもあるのですが、クイーン独特のパズル型小説ではなく論理は精緻でありつつ文学的作品に仕上がっているのです。
 登場人物も共感するところが大きく、読後感も実によい。
 1点減点なのは翻訳小説なのでやむを得ないとは思うのですが、今まで読んだクイーンものはすべて登場するエラリークイーンのことをクイーンとかエラリーとかの表現であったと思うのですが、今回はクイーン氏という表現であったため、これは偽エラリーに違いないといらん推理をして読んでいたため、あれ?と思ったところです。

No.11 6点 九尾の猫- エラリイ・クイーン 2015/12/31 11:08
 これは長いね。大体クイーンの長編小説はかなり長いものが多いのですが、読んでいて長さを感じさせない。無駄に長い感じがしたのはこれが初めてかもしれません。
 それというのも犯人がお話の中盤ぐらいでわかってしまってあとはそれの詰めといった感じがするため、やたら長い描写に付き合わされてしまう(ようにみえる)ためなのでしょう。
 最後まで読むと実はその長さが大切であったことがわかるのですがね。
 この小説を読む方は絶対に途中でやめてはいけませんよ。
 

No.10 7点 レーン最後の事件- エラリイ・クイーン 2015/06/22 20:43
 レーン4部作の最終章。確かに4つの作品はそれぞれ独立して読んでもよいが、やはり初めから読み通していくのがよいのでしょう。
 ただ作品としてはZからあとはちょっと落ちるような気もします。
 本作品では興味深い謎が提示されはしますが、なかなか殺人事件は起きてこない。
だいぶん読み進むにつれようやく事件発生。なるほどレーン最後の事件でしたね。
 しばらくの間レーンのお話に満たされて推理小説の読者としては満足でした。

No.9 6点 Zの悲劇- エラリイ・クイーン 2015/06/21 08:21
 XとYは読んでいたのですが、Zと最後の事件は未読でしたのでちょっとワクワクしながら読みました。
 期待ほどではなかったというのが正直な感想です。
 若い女性の一人称で語られる物語は興味深いところですし、レーンの推理も相変わらず精緻ではあるのですが、XやYと比べるとだいぶん落ちる感じでした。
 なにがといってまず颯爽とした老人だったドルリーレーンが10年たってよたよたのじじいになっている、というシチュエーションが面白くない。どうしてこんな風にしたのでしょうかね。
 若い女性の語りも悪くはないが、全然可愛げがなくずうずうしい。日本人でよかったというところか。
 物語も途中までレーンの活躍がパッとせず、最後の推理に至っても3人に絞ったといっているが、そこまでわかればこんな無茶の方法を取らずとも十分解決したでしょう。

以下ネタバレ気味です。
レーンの推理は推理ゲームとしては面白いが現実性に乏しく、最後には救おうとした人間に実にひどい仕打ちをあたえたうえ、事実上命を奪ってしまった。こんな行き当たりばったりの事件で、このような方法で解決というのは、どうも納得がいかない気もします。ほかの犯人だってあり得そうな感じが否めません。

No.8 8点 Yの悲劇- エラリイ・クイーン 2015/06/08 20:52
 Yの悲劇を読むのは40年ぶり。ストーリーやトリックなどすっかり忘れてしまうが常の私でも、このお話の犯人だけははっきり覚えていました。それもテレビドラマ(当時テレビドラマで放映されたのです)での犯人が明らかにされるシーンとBGMが頭と耳に浮かんできてしまい、犯人捜しや意外な犯人で驚くことができない分ちょっと残念でした。
 昔読んだときはあまり気にならなかったのですが、今回読み返すと何とも悲惨な話で救いようがないなあ。悪ガキも本当に気に障る。
 初めて読んだときは明らかにxの悲劇より上だと思ったのですが、今回はそれほどとは思えませんでした。やっぱり犯人がわかっていたことが大きいのかもしれません。

No.7 7点 フランス白粉の秘密- エラリイ・クイーン 2015/05/29 21:30
 推理の塊のような小説。事件が起こってそれに対するシチュエーションが述べられ、色々な手がかりも出てきて最後にはさあ犯人はお分かりですか?とくる。
 このサイトの方の中には簡単に犯人がわかってしまった方もおられるようですが、私にはさっぱりわかりませんでした。
 相変わらずの精緻な推理には感心するのですが、これほど細やかな推理をするなら現実としての無理も目立ってしまう。

以下ネタバレ気味

 心臓へ弾が当たったので大量出血したはずなのに、被害者が見つかった場所での出血が少ないから違う場所で殺害されたなんてことがしばらくわからないなんて変でしょ。服にはいっぱい血がついているはずでしょうから、一目でわかるはず。
殺害場所での大量出血の処理はどうしたのかなあ。机は血だらけだろうにその処置はブックエンドの処置だけで済むのかなあ。出血した死体を運んだらどこかに血痕が落ちそうだなあ。いくら女性といっても結構な距離を誰にも見つからずに運ぶのも相当大変だなあ。
 そんな不満はありますが、本格物として立派な小説と思います。

No.6 9点 Xの悲劇- エラリイ・クイーン 2015/05/20 22:37
40年以上前にこの小説を読みました。Yの悲劇が一番すごいぞといわれてまずYから読んだのでXはやや落ちるような気がしたのだけを覚えていました。
 今回再読してみるとなんともおもしろい。物語などはすっかり忘れていたので実に新鮮に楽しめました。
 推理小説に対する志向が随分変わったものだと我ながら感じています。
 こういった精緻な推理と緻密な構成を楽しむのは推理小説を読む醍醐味だと今は思えます。
 1点減点は赤毛の被害者に関するレーンの推理がやや物足りないのと、犯人がわかっていながらみすみす殺人を許してしまったところぐらい。
 この小説が国名シリーズほど売れなかったのはなぜでしょうかねえ。

No.5 6点 シャム双子の秘密- エラリイ・クイーン 2015/05/20 22:25
 このところエラリークイーンにはまって何冊か読み進めていますが、これはちょっと落ちるかな。
 今となっては孤立した山荘での不可解な殺人事件というのもちょっとありふれています(発表当時はそうでもなかったかもしれないが)。登場人物が少ないので読むのは楽ですが、やっぱり犯人は当てられなかった。なるほどそうくるか。
 評価がちょっと低いのは、クイーン警視が容疑者に過ぎない人物を射って重傷を負わせても対して反省していなかいうえに自分のミスで殺人をさせてしまうなど全くさえない。エラリーも事件解決の時までほとんどでくのぼうのよう。
 周囲から山火事が来るのがわかっているのなるまず逃げる算段をし、ダメなら周囲の木や草を刈り取るか穴を掘るぐらいもっと前に気づくべきでしょう。
 ほかの作品が素晴らしいのでちょっと評価が厳しいかもしれません。

No.4 7点 ギリシャ棺の秘密- エラリイ・クイーン 2015/05/06 09:50
 以前クイーンは苦手でしたが、新しい翻訳になって読みやすくもなったが、私自身の推理小説に対する感覚も変化してきたのかとても興味深く読むことができるようになりました。
 それにしてもこの小説はすごいですね。よくもこれだけのことを考え付くものです。最初の推理だけで十分に一冊となるところを、次々と変遷させ読者を混乱させてしまう。私など見事に手玉に取られてあれよあれよといいながらこの長い小説を読んでいました。
 クイーンの読者への挑戦で正しい答えにたどりついた事は一度もないのですが、今回はその中でも特別にダメでした。かすりもしない。
 こんな作品を作ったクイーンもすごいですが、正解できた人も本当にすごい。尊敬します。

No.3 7点 エジプト十字架の秘密- エラリイ・クイーン 2015/04/21 22:12
 連続首なしはりつけという猟奇的殺人事件が発生し、犯人の候補と思われる登場人物が意外と少なくなっていくので、私でも犯人が当てられそうな気がしてきたところに作者からの挑戦状がある。大体こんな挑戦で犯人が当てられたことのない私でもこれは何となくわかりそうに思えるのだが・・・。
 こんな結論、全然予想していなかった。完全に作者のからくりにやられました。  すごいねえ。参りました。
 もっと高得点を差し上げたいのだが、この小説は東南ヨーロッパは残忍で、野蛮であるという差別的発想から成り立っているのがひっかかりました。アメリカだって田舎の警官が中央から来た警視に対してひどい口の利き方をしたうえに、わいろをもらって喜んでいるなんて、日本人の私から見たら相当に民族度が低いと思うけど。
 こんなことでよいのですかねえ。
 読みにくくはないのですが、ちょっと無駄に長い感じもしました。
 これがあるのでこの程度の点数と評価しました。
 

No.2 7点 オランダ靴の秘密- エラリイ・クイーン 2015/03/23 17:57
 エラリークイーンの国名シリーズの中でも評価が高いのもうなずける出来栄えと思います。登場人物が多く、一人に対して色々な呼び方はしているのですが、今回の角川版ではかなり読みやすく何とか最後まで読み通せました。
 私は犯人当ての挑戦状の段階では、全然見当もつかない状態でした。解説によると最初はもう少し前の段階で挑戦状が提示され、正解だった方複数いたとのことです。すごいねえ。
 エラリーの推理は精緻を極めしかもわかりやすく十分に納得できるものでした。
 推理ゲームを楽しみたい方のとっては最高の作品と思います。

No.1 6点 チャイナ蜜柑の秘密- エラリイ・クイーン 2015/03/13 21:32
 私はどうもクイーンは苦手でした。人物が多く登場し、一人の人物を描写するのにしばしば異なった言葉を用いるため、途中で誰が誰だかわからなくなって投げ出すといったことがしばしばでした。
 この作品は比較的登場人物が少なくそろそろ覚えが悪くなった私でも何とか読めました。
 なかなか面白かった。でもあのトリックは一度読んでも全然意味が分からなかった。新訳本となり、かなり読みやすくなっているのですが、トリックはさっぱりわからない。この本にはなんと後ろの解説で図解入り説明が載せてあったのだが、それでもあんまりわからない。何度か絵を見ているうちに何となくわかったような気もしますが、まあトリックは成立したということで良しとしましょう。

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makomakoさん
ひとこと
歴史ミステリーや、本格物が好きです。薀蓄も結構好き。変人が登場するのは嫌いではないが、冷たい人間が出てくるのは肌に合いません。外国ものは登場人物が理解不能であったり翻訳文が合わないことが多くあまり得意で...
好きな作家
鮎川哲也、山田隆夫、綾辻行人、法月綸太郎、高田崇史、伴野朗
採点傾向
平均点: 6.19点   採点数: 850件
採点の多い作家(TOP10)
高田崇史(34)
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有栖川有栖(29)
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