海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

makomakoさん
平均点: 6.18点 書評数: 861件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.41 7点 維納音匣の謎- 太田忠司 2008/11/30 07:48
霞田兄妹シリーズも4作目となると読むほうは気軽に物語へ入れる。アンティックオルゴールの話やウイーンのお菓子の話が物語に散らばっているのも楽しい。名探偵霞田志郎はとても優しいため、毎回犯人を特定していくつれて周囲の人や犯人にまで心を痛め最後に落ち込んでしまう。最後に何とか立ち直って物語り終了となり読後感がよいのだが、今回はやや違った終わり方で、犯人は真相があきらかにされた後もまったく反省の色なし。そのため名探偵は大いに怒って落ち込まなくてもすむ。
 初めて読んだときは違和感を禁じえなかったが、今回再読してみると最近のご時勢の先取りのような人間で違和感は前回ほどではなかった。そういえば前々作の倫敦時計の謎でもペットを殺されたのが動機となっており、最近の事件に共通するものがあるようだ。

No.40 7点 伯林水晶の謎- 太田忠司 2008/11/29 13:32
倫敦時計に比べると多少落ちる。トリックめいたものはほとんどないが、でも本格物としてまずまず楽しめる。相変わらず読みやすい文章で読後感も良い。新しい登場人物は後で考えれば怪しげな趣味の人物であり、料理の仕方ではずいぶんおどろおどろしくもなりそうなのであるが、太田忠司らしくするりと軽く仕上げているところが良い。

No.39 9点 倫敦時計の謎- 太田忠司 2008/11/29 13:24
霞田兄妹の第2弾。上海香炉がやや地味だったが、これは白昼の事件あり、連続殺人ありで、登場人物も太田忠司の作品にしては奇人変人が登場するなかなか派手な本格物。今回再読したが十分に楽しめた。高得点はひいきの作者であることも少しはあります。
 1点減点はからくり時計の殺人の解決を霞田志郎に指摘されるまで警察が出来なかった点と(これは簡単に分かるはず)、ロングケースクロックのトリックはよほどの幸運(悪運?)がない限り無理であろうと思われるところ。
 このサイトに書評がないのは寂しい。もっと評価されても良いと思うのだが。

No.38 8点 上海香炉の謎- 太田忠司 2008/11/24 10:29
太田忠司のシリーズものでは、本格志向の高い霞田兄弟シリーズが最も好きだ。本格物としてはトリックがやや小粒であるがとても読みやすい文章で悲しく美しい物語が展開される。素敵な小説だと思う。登場人物が漫画チックな傾向にあるのが好みが分かれるところかもしれない。同郷の人間として名古屋弁や親しんでいる町が舞台のなっているのも好ましいのだが、こちらも他府県の人にはひょっとしたらマイナスなのかな。

No.37 6点 あわせ鏡に飛び込んで- 井上夢人 2008/11/21 20:18
切れの良い短編集だと思います。一番すきなのは「あなたをはなさない」かな。結構長いことかかって書いたものを集めたようで統一性はないが、それなりに面白い。個人的には井上夢人は長編や連作のほうが好みではある。

No.36 8点 君たちに明日はない- 垣根涼介 2008/11/16 10:03
これは面白い。リストラ請負会社などというものが成り立つかどうか不明であるが、とにかく普通に考えればいやな仕事には違いない。実際に大変な仕事が次々と依頼される。ところが冷たそうな主人公はリストラ相手と肉体関係になったりかなりハチャメチャ。エッチな描写も結構ある。しかしストーリーが展開するにつれ彼の人生がさらりと浮かび上がり、リストラ側の人物たちも次の仕事に命がけでがんばったりする勇気と浪花節の世界へと進む。いいぞがんばれと応援したくなる。

No.35 7点 ワイルド・ソウル- 垣根涼介 2008/11/16 09:33
まさか戦後にもこんな移民で日本人が苦しんでいたとはまったく知らなかった。その子供たちが日本へ復讐にやってくるというそのまま書けば陰惨で暗い話なのだが、日系移民の子供たちはまったくの南米人でまさにサンバのリズムにのって行動するがごとく。からりとして悲壮感がない。長い話だが一気に読めてる。多くの賞をとったのもうなずける。

No.34 9点 ミステリーを科学したら- 評論・エッセイ 2008/11/16 09:06
これはミステリーではない。作者はもと東大微生物学の教授という一流の科学者。そして退職後にミステリ小説を書いてしまうほどの長年のミステリーファン兼作家。その作者が膨大な読書暦の中で疑問に思ったことや、医学的にあきらかに間違いと思われることを忌憚なく述べている。ミステリー小説で医学的に、また物理的にあきらかに間違っていると思われる展開は気になるところだ。なんせそこが間違っていると小説そのものが成り立たないこととなってしまうのだから。こういったところを専門家の目で解説し、ファンとしてまた作家としての優しい目で擁護している。いろいろな古典ミステリーも出てきて楽しい。ミステリーファンなら是非一読を。

No.33 4点 絡新婦の理- 京極夏彦 2008/11/16 08:35
京極の作品はどれも分厚くて敬遠気味だったが、今回分冊が出た機会に読んでみた。まず不自然と思われるような漢字の使用でねちねちとした文章が好みにあわない。ストーリーも複雑でなかなか進展しないのでうんざりして途中でやめようかと思ったが、このサイトの書評が好評なので何とか我慢して読んだ。私にとって寝る前に読書すると寝つきには最適。探偵は躁病で今も生きていればきっと精神病院に入院しているぞ。京極堂はどこであんなに調査することが出来たか不明(秘密の警察組織を持っているの闇の大物なのだ)。こんなに長くて余分なことをいっぱい書くのならせめて調査の過程を書いてもらわないと。警官も人を罵倒するばかり。犯人側と目される登場人物も変な人ばかりで、まともな人間のいうことは相手にされずどんどんひどい目にあってしまう。
 冒頭と最終の雰囲気は谷崎純一郎のような耽美的世界でとても良い。ミステリーではなかなかお目にかかれないほど。ただほとんどのミステリーで犯人がわからず探偵の名推理に唖然とするばかりの私が、珍しいことにこの作品の冒頭部分ですでに蜘蛛の正体がが分かってしまった。どうやってこれをストーリーと結びつけるかなと思って読んでしまったのが、採点の低い原因のひとつではあります。皆さんの評が高いのにこんなこと書いて失礼しました。

No.32 7点 夜と昼の神話- 邦光史郎 2008/11/02 15:25
邦光史郎の歴史推理シリーズは日本古代史と推理が同時に楽しめる。探偵の神原東洋は陰気で現代文明嫌い女嫌いなうっとうしいおじさんだが薀蓄はなかなかのもので、邪馬台国の話や三王朝交代説を基にしたような古代王朝の変遷を述べるあたりは古代史に興味があるものにとってはなかなか面白い。本格推理、古代史、超能力、ロマンス、エロティシズムを盛り込んだサービス版ともいえる。最近あまり評価されていないしこのサイトにも採りあげられていなかったが、私的には結構好きな作品です。

No.31 7点 地底獣国の殺人- 芦辺拓 2008/10/26 08:27
この小説は作者も断っているように本格推理小説ではある。初出版されてすぐ読んだが時はあまり感心しなかったが、10年ぶりに読み直してみると結構面白かった。ただロストワールドだアランクォーターメンだなどと出てくると、秘境冒険小説を読んでいる雰囲気となり、これがまた大好きなのでせっかく作者が張り巡らしてくれている推理の手がかりなどはまたしてもほとんど無視して読んでしまった。これが森江春策シリーズであるのが違和感のあるところで、おじいさんの森江春之助が残した文章を春策が推理するようなかたちなら良かったようにも思う。でもそうするとこの小説のユニークさが薄れるし最後のどんでん返しが成り立たなくなるし。まあこれでよかったのかな。そこで作者へ注文。芦辺さん、田中光二のロストワールド2のような秘境冒険小説の日本版続編を書いてくださいよ。絶対買って読むから。

No.30 5点 暗黒館の殺人- 綾辻行人 2008/10/21 22:18
綾辻の館シリーズは大好きで、十角館の殺人からすべてリアルタイムで読んでいた。長い間館シリーズが出なかったので本当に待ち望んだ作品。しかもかなりの長編での発売に年甲斐もなくわくわくして読んだのだが、残念ながらいまいち。ことに前半がやたらに長い。綾辻のでなければ投げ出してしまいそうだった。

No.29 2点 どんどん橋、落ちた- 綾辻行人 2008/10/21 22:07
これはいけません。だますといってもいくらなんでもひどすぎる。学生時代の作品のようで、あとがきに今はそうそうたる推理作家たちの集まりで披露したが誰もわからなかったとかいてある。そりゃそうでしょう。こんなトリックわかるはずないよ。

No.28 9点 猿丸幻視行- 井沢元彦 2008/10/21 21:41
これは何度読んでも面白い。殺人のトリック自体はやや小粒ではあるが、猿丸太夫と柿本人麻呂をからませた歴史推理とパズル論議が複雑でよい。薀蓄と言うより知的興味をひかれる。登場人物が過去に人物と一体化する作用があるという薬を飲んで民俗学者で歌人の折口信夫に一体化してしまうというありえない設定で始まるのだが、読んでいるとごく自然に物語の世界へ入り込んでしまう。この作品は第26回江戸川乱歩賞に輝いたもの。当時乱歩賞受賞作品はすべて読んでいたので発売されたらすぐ買って読み、これが歴代乱歩賞で一番と思ったのを思い出す。さらにいえば第26回江戸川乱歩賞選考では今は本格好きからは古典のように扱われている島田宗司の占星術殺人事件(このときは占星術のマジック)を抑えての受賞なのだ。私が持っている昭和55年度発行版では選考委員の評も載っておりこれもなかなか面白い。パズルが嫌いでない本格推理愛好家なら必読でしょう。

No.27 7点 僕の殺人- 太田忠司 2008/10/19 13:31
太田忠司の記念すべきデビュー作。彼は同じ名古屋在住でもあり個人的にひいきの作家だ。作品も新宿少年探偵団シリーズ以外は大体読んでいるつもり。いろいろな分野の小説を書いているが、やっぱり本格推理が一番だと思う。これは彼の小説の原点でありトリックもどんでん返しも推理の要素も含まれた秀作であろう。ただ彼の作品すべてに見られるように登場人物がかなりナイーブでやさしいため(ことにレストアなどは探偵がもうすぐ病院が必要なほどだ)、本格ものとしてどうしても少し弱い気がするのは私一人だろうか。

No.26 9点 風が吹いたら桶屋がもうかる- 井上夢人 2008/10/19 09:47
面白なあ。こんなのすきだなあ。好きな作家でもあまりなじめない作品と言うのがひとつぐらいはあるのだが、井上夢人の作品はどれ読んでも実に面白い。登場人物があわないという評もあるが、私はこんなちょっと変わっているけど憎めない理屈屋のイッカク、ナイーブで誠実な超能力者(低能力者?)ヨーノスケ、そして普通人の峻平の組み合わせが楽しい。ことに話しのはじめにごとに出るヨーノスケの超能力の練習は思わず声を出して笑ってしまった。これぐれも電車の中で読まないこと。変なおじさんに見られますよと注意されてしまった。終盤にちょっとマンネリ気味となるので1点減点とした。

No.25 7点 マッチメイク- 不知火京介 2008/10/15 22:19
プロレスを扱った推理小説ってあまり知らないのだがこれはなかなか面白い。プロレスの仕組みも何となく分かるところも興味深い。プロレスが主体の推理小説だから何となくその方面のおたくなものかと思いきや、江戸川乱歩賞をとった立派なミステリーである。トリックも大掛かりではないがさほど無理がない。軽く読めて読後感も悪くない。

No.24 5点 ゴッホ殺人事件- 高橋克彦 2008/10/15 22:07
ゴッホは大好きな画家で作画した場所に立ちたくてフランスまで行ったぐらい。高橋克彦も好きな作家なのでこの本は非常に期待して読んだ。前半はゴッホと弟のテオに関して斬新な見解がきわめて精緻な構成のもとに述べられているのだが、精緻すぎて私のようなゴッホ好きでもやや疲れてしまった。ひとつの説を組み立てるには実際にはこれぐらいの試行錯誤があるに違いないと思うのだが、それをすべて小説に書かれると読むほうはうんざりしてしまう。期待が大きかったので点数が少し低くなった。長編推理は好きなのだが、これはぐたぐたとしたところが多い。半分ぐらいの長さにしてもらえたらもっと評価点数は高くなると思う。

No.23 6点 写楽殺人事件- 高橋克彦 2008/10/15 21:53
高橋克彦がこのサイトになかったのは不思議なことだ。確かに伝奇ものや歴史ものが多いが、ミステリーだってちゃんと書いているのだ。この写楽殺人事件は29回江戸川乱歩賞受賞作品で出版されてすぐ読んだときは、浮世絵のことをまったく知らなかったのでその面白さや奥の深さを知らされ感心したものだ。写楽が誰であるかの新説であるかと思って読んでいくと事件と結びついてきて実に面白かった。今回再読してみると推理の過程がちょっとくどい感じがしてはじめ読んだときほどの感銘はなかった。でもこの作品は高橋克彦のその後発表された多様な作品を読むきっかけとなった私のとっては思いで深いものです。美術に関心があるならお勧めです。

No.22 8点 昆虫探偵- 鳥飼否宇 2008/10/13 14:00
これは面白い。まず最初からカフカの変身もどきで、主人公がゴキブリになってしまう。しかもゴキブリになって喜んでいるというあっけにとられるような滑り出しでちょっと心配になる。しかも出てくるのがすべて昆虫(蜘蛛も出るが)。こんなことで大丈夫なのかと思いながらオムニバス風の話を読んでいると次第に興味をそそられてくる。すべて私の好きな本格推理小説をパロッたもので、作者の昆虫に対する科学者らしい愛情と遊びの精神が好ましい。出てくる名前も学名風(多分)でいかにも理系の感覚がうかがわれ、昆虫に興味がないものでも十分に楽しめた。

キーワードから探す
makomakoさん
ひとこと
歴史ミステリーや、本格物が好きです。薀蓄も結構好き。変人が登場するのは嫌いではないが、冷たい人間が出てくるのは肌に合いません。外国ものは登場人物が理解不能であったり翻訳文が合わないことが多くあまり得意で...
好きな作家
鮎川哲也、山田隆夫、綾辻行人、法月綸太郎、高田崇史、伴野朗
採点傾向
平均点: 6.18点   採点数: 861件
採点の多い作家(TOP10)
高田崇史(34)
樋口有介(30)
有栖川有栖(29)
アガサ・クリスティー(29)
東野圭吾(28)
太田忠司(27)
東川篤哉(25)
北森鴻(24)
米澤穂信(17)
今邑彩(17)