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[ 本格/新本格 ]
本廟寺焼亡
古美術研究家・南条圭
井沢元彦 出版月: 1981年06月 平均: 6.00点 書評数: 2件

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講談社
1981年06月

講談社
1984年08月

No.2 5点 2021/09/20 13:00
 京都下京区七条西洞院、京都タワーの北西裏に位置する本廟寺。親鸞聖人直系で厖大な信徒数をほこるこの名刹では、時期教王の座をめぐる骨肉の争いがおこっていた。ある夜木屋町の高級バー "パラダイス" で現教王夫妻溺愛の四男・妙良がスコッチ「ザ・グレンリベット」に仕込まれた青酸カリで毒殺され、それに続いて一族がまた一人・・・。
 マンモス教団を舞台に繰りひろげられる連続殺人事件。犯人は教王一族を引きずり降ろそうとする改革派・同行衆のメンバーなのか、それとも? ロマンスグレイの名探偵・南条圭が、事件の奥深き謎に挑戦する。
 『猿丸幻視行』で第26回江戸川乱歩賞を勝ち取ったのち、間を置かずに執筆された受賞後第一作。1981年刊。ミステリとしての出来はお世辞にも良くないが題材的には激ヤバ。京都に実在する浄土真宗某派をモデルに(明言してるも同然なので、あえてここでは示さない)、戒名・御祈祷・納骨・永代供養と無縁墓地・石屋及び仏具屋へのリベートと檀家への上乗せなど、仏教錬金術のフルコースに加え教団幹部の腐敗と銭ゲバぶりが描写される上、真犯人の設定もアレ。ラストは題名通りに、国宝含む全伽藍が紅蓮の炎に包まれるというオチで、いかに乱歩賞受賞者とはいえよく回収されなかったなと思わせる内容である。ヘタに騒ぎ立てるよりは無視した方が賢いという、大人の判断だったのかも知れないが。
 ただ充実した各種リサーチに比べミステリとしてはガリガリ。大した厚さでもないのにそちらに紙幅を取られ、露骨に骨組みが目立ってしまっている。メインとなる第三の事件のトリックも演出が不味く、全般にあまり評価できる作品ではない。
 どちらかというと4点に近いが、作家として微妙な時期にヤバネタに挑んだ意欲を買って何とか5点。仏事関連の裏側は霊感商法絡みで割と知られてきたので、現在評価するのは難しいかもしれない。本書を読むと井沢の本領が『逆説の日本史』系列にあるのがよく分かる。

No.1 7点 makomako 2009/02/22 12:54
猿丸のすぐ後に出た作品で、当時作者に注目していたので出版後すぐ読んだ。この頃は自分の家が浄土真宗にもかかわらず宗教のしくみなど全く無知であったためかもうひとつぴんとこなかった。今回再読してみたが、これはずいぶん含蓄を含んだお話であることが大分理解できた。多少でも仏教関係に興味があればなかなか面白く読めるが、そうでない人にはちょっと意味不明のところがあるかもしれない。私としては猿丸よりは落ちるが六歌仙よりは上といった評価です。


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