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[ 本格/新本格 ]
六点鐘は二度鳴る
織田信長推理帳 ほか
井沢元彦 出版月: 2008年03月 平均: 5.00点 書評数: 1件

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小学館
2008年03月

No.1 5点 E-BANKER 2019/06/05 23:26
「天正十二年のクローディアス」(2007年)に続いて小学館より出版された井沢元彦自選短編集の第二弾。
最初と最後の2編以外は、あの織田信長が探偵役を務めるというのが斬新(!)
2008年の発表。

①「妖魔を斬る」=本作は探偵役がなんと宮本武蔵。名うての剣士に戦いを挑みに来た武蔵が見たのは剣士の刺殺死体。ということで、これほどの使い手がなぜむざむざと殺されたのかが謎の中心。あの武蔵が女性に篭絡されそうになりながら我慢する姿が微笑ましい・・・
②「六点鐘は二度鳴る」=ここから名探偵・織田信長がスタート。宣教師から西洋時計を贈られた信長。そう、本作は当時の日本の時間の数え方(丑三つ時とか・・・)と西洋時刻との差が謎を解く鍵となる。要はアリバイトリックだね。
③「不動明王の剣」=今回は密室(のようなもの)トリック。不動明王が脇に差している剣で刺し貫かれた死体が密室で見つかるというものだが、トリックというほどのものではない。
④「二つ玉の男」=鉄砲を操る狙撃手VS信長。まるでゴルゴ30のようなお話だが、大昔でありながら迷信など一切信じないという信長の性格が事件を解決に導く。
⑤「身中の虫」=松永久秀。戦国の世でも有名な怪人物かつ裏切り者。信長は久秀を飼い慣らそうとしたが、お茶会の席で毒殺事件が発生してしまう。犠牲となったのは忠臣・佐久間信盛・・・。これもトリックは付け足しのようなもの。
⑥「王者の罪業」=信長が美しい妻をたぶらかしたとする手紙。これが事件を彩る謎となるのだが・・・。伏線は割と分かりやすい。
⑦「裁かれたアドニス」=毒殺トリック自体はまぁいいんだけど、こんな回りくどい方法で信長を嵌めようとしたって無駄だと思うけどね・・・。
⑧「抜け穴」=本編の主役は「賤ヶ岳七本槍」の一人・片桐市正且元。徳川に攻め込まれた大阪城内で淀君の世間知らずにウンザリしていた心のスキを家康にまんまと突かれてしまう・・・。さすがに狸だね。

以上8編。
趣向は面白い。大昔の戦国の世にもかかわらず、その常識を打ち破る合理的精神で天下人となった信長。
そういう意味では探偵役にぴったりとも言える。
そして、物語にスパイスを加えているのが優秀な家臣とキリスト教の宣教師たち。さすがに歴史ミステリーはお手の物。

ただ、ミステリー的な観点からすると、特段取り上げるものはない。ちょっとした気付き⇒真相解明という安直な展開が多いしね。
そこは言わぬが花ということかな。


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井沢元彦
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