皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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makomakoさん |
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平均点: 6.18点 | 書評数: 862件 |
No.62 | 8点 | 秘密- 東野圭吾 | 2009/03/22 09:33 |
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ありえないようで何となくありえるようなお話を上手に読ませてもらった感じ。東野圭吾は時に冷たく説きに暖かいが、この小説は暖かい面が出ていて好感が持てた。 |
No.61 | 9点 | 女王国の城- 有栖川有栖 | 2009/03/20 18:00 |
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学生アリスシリーズは大好きなのでこの本が出るまで本当に長く待たされた。ほとんどあきらめかかっていたときに出版されたので大変な期待のもとに読んだ。余り待たされると期待はずれとなることが多いのだが、この作品は期待にこたえ長さといい内容の濃さといいすばらしいと思う。久しぶりに長編本格推理小説を読んだなという感じ。読者への挑戦は双頭の悪魔では3回もあったが、本作品ではえらく控えめなのが一回あるのみだが、私にはぜんぜん犯人が分からなかった。本格推理小説としてよく出来ていると思うが、月光ゲームや孤島パズルでの学生らしいみずみずしさが少なくなっているのが残念。 |
No.60 | 9点 | 双頭の悪魔- 有栖川有栖 | 2009/03/11 19:57 |
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学生アリスシリーズは大好きな推理小説。月光ゲーム、孤島パズル、と進んでこの作品は断然完成度が高い。本格物としても非常に優れていると思います。細部にいたるまで緻密に構成され隙がない。初めて読んだときは推理小説化としての有栖川の進歩と実力を思い知らされ感嘆したものです。再読してもやっぱりすばらしい。ただ本格物として完成してくると若き青臭さが減少してくる。青春小説として物足りなくなってしまうのだ。孤島パズルにあるみずみずしさが少なくなったのは残念である。こんなことを感じるのは年かなあ。
さすがの有栖川もこれほどの作品を書くと次はなかなかかけない様で学生アリスは女王国の城まで10年以上待たされることとなったのはファンとしてはずいぶんつらかった。 |
No.59 | 8点 | 孤島パズル- 有栖川有栖 | 2009/03/04 20:38 |
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月光ゲームより文章もお話もさらに良くなっていると思う。宝探し、不可能と思える密室、アリバイが全員ない殺人どれも実に面白い。人物も良く描けているし新たなヒロインのマリアも素敵だ。なのに月光ゲームと同じ点数をつけたのは密室の謎が結局すっきりしないのと(これでは密室の謎を解いたことにならないと思うのだが)魚楽荘の事件はかなりのアスリートでなければ無理そうに思うがその伏線が張っていないのが気になるからです。最初に読んだときは満点あげても良いぐらいだったのだがいろんな小説を読んでいてだんだん気難しくなったのかもしれない。学生アリスが好きで本格推理小説が好きな私にとってとても大切な作品です。 |
No.58 | 8点 | 月光ゲーム- 有栖川有栖 | 2009/03/02 21:05 |
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アリスの記念すべき最初の長編。人物が多すぎる。一人ひとりがあまり描けていない。ダイイングメッセジもはきりいって無理がある。あきらかに青臭い。でもこの作品は大好きです。何度読んでも好きなものは好き。学生アリスはどれもロマンチックで本格派で私の好みにぴったりなのです。孤島パズル、双頭の悪魔とさらに文章も内容も良くなっていくところが実にすばらしい。探偵の江神さんは数ある名探偵のうちでも最も好きな探偵さんです。火村先生も良いのだが、私は江神さんのほうが好きです。学生アリスもっと書いてくれないかなあ。 |
No.57 | 7点 | 本廟寺焼亡- 井沢元彦 | 2009/02/22 12:54 |
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猿丸のすぐ後に出た作品で、当時作者に注目していたので出版後すぐ読んだ。この頃は自分の家が浄土真宗にもかかわらず宗教のしくみなど全く無知であったためかもうひとつぴんとこなかった。今回再読してみたが、これはずいぶん含蓄を含んだお話であることが大分理解できた。多少でも仏教関係に興味があればなかなか面白く読めるが、そうでない人にはちょっと意味不明のところがあるかもしれない。私としては猿丸よりは落ちるが六歌仙よりは上といった評価です。 |
No.56 | 8点 | はじまりの島- 柳広司 | 2009/02/22 12:44 |
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この作者の作品としてはじめて読んだものだが、読み始めると表現や文体が翻訳文のようだという印象、でも翻訳文よりはるかに読みやすい。ダーウィンが探偵となってヴィーグル号で訪れたガラパゴス諸島でおきた事件を解決していくストーリーは興味津々。すごいトリックがあるわけではないが(ガラパゴスならではのトリックはある)、十分に楽しめる。 |
No.55 | 7点 | 六歌仙暗殺考- 井沢元彦 | 2009/02/13 19:55 |
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六歌仙の歌仙絵が作品のキーとなって進行していく物語はかなり面白い。こういった話にありがちな薀蓄やおどろおどろしい場面はあまりない。かといって派手なトリックなども無いのだが物語のテンポはよくそれなりに楽しめる。ただ物語の最後が不完全燃焼の知りきれトンボみたいになってしまっているのがちょっと興ざめ。 |
No.54 | 4点 | ジェシカが駆け抜けた七年間について- 歌野晶午 | 2009/02/09 22:35 |
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「葉桜」で見事にだまされ、その次に書いた作品ということで期待して読んでみたが残念ながらいまいち。トリックももうひとつわかったような分からないような。不愉快な作品ではないが、面白くも無いといったところか。 |
No.53 | 7点 | 五十万年の死角- 伴野朗 | 2009/02/07 21:28 |
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江戸川乱歩賞をとった伴野朗の出世作で、得意の中国ものミステリー。初めて読んだときはハードボイルドの要素が強いと感じたが、30年ぶりに再読した今回はほとんど違和感なくよく出来たミステリーとして楽しめた。ただ長く中国にいた作者としては地名人名は中国読みでないといった考えからか、漢字に中国読みのかなが振ってある。日本読みになじんだ者としてはちょっとうっとうしい。伴野朗の作品はどれも読みやすく面白いものが揃っているのだが、なぜかこのサイトには名前が無かったので追加しました。中国物が好きな人には十分に楽しめると思います。 |
No.52 | 6点 | 奇想、天を動かす- 島田荘司 | 2009/01/21 21:27 |
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作者が力を入れていることは良く分かりますが、このトリックはちょっと無理があるでしょう。吉敷は正義感あふれているのは良いのだが、こんな勝手が通るの?上司の反対を押し切って北海道まで行ってしまうし(この間の仕事は無いのかね)タクシーは乗り放題だし。いっそ金持ちの道楽息子が警察へ入っている設定にしたほうが無理がなさそう。そういった矛盾だらけではあるが作者のやさしさや力いっぱいの迫力は伝わってくるので私としてはこのぐらいの評価としました。 |
No.51 | 8点 | 隠蔽捜査- 今野敏 | 2009/01/12 18:35 |
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警察小説はあまり好みではない。キャリア官僚は好きでない。がちがちの原則主義者も困ったものだ、この主人公はきっと馬鹿なのだろうと思いつつこの小説を読んでいた。作者は読者がこういった感情を抱くであろうことを想定して書いており、それが途中から強い意志をもった立派な官僚、人間としてもなかなかいいやつではないかという感じになってくる。最後は家族もうまくまとまってきて感動的だし読後感も大変に良い。
多少減点したのは主人公がはじめは普通の人間なら分かりそうなことまで全く理解できないぐらいへんな人間なのに後半では結構普通っぽくなってくるのがちょっと違和感があるため。 |
No.50 | 8点 | 高層の死角- 森村誠一 | 2009/01/03 22:14 |
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このサイトで森村誠一へのコメントが少ないのは社会派推理小説への評価が下がっているからだろうか。一世を風靡した人間の証明も採点がない。高層の死角を最初に読んだときはまだ学生で高級ホテルのことなど全く知らなかったためかホテルに関する事柄ばかりが印象に残っていたが、今回再読してみるとホテルの密室殺人はそれほどウエートがあるわけでなくむしろそれ以後のアリバイ崩しの分量が多いのにちょっと驚いた。ホテルでの密室殺人も犯人のアリバイも細かいところまで実に良く考えてあり、一流の推理小説だと思う。読んでいないならおすすめですよ。
森村誠一は熱く情に流される人間が良く出てくる割には小説全体がとてもクールな印象を受けるところが、大好きな作家とまではいかないところです。でももうちょっと評価されても良いがなあ。 |
No.49 | 7点 | 二の悲劇- 法月綸太郎 | 2008/12/29 11:56 |
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法月らしい誠実できちんとした本格推理小説。でもこの2人称表現はあまり好きではない。ことに前半は無駄な描写がだらだらと続き意味なく長い感じ。我慢して呼んでいると途中からスピードがついてきて最後は結構面白い。ただストーリーそのものに違和感がある。私は物書きでないから分からないけど小説家から原稿をもらうのに女性編集者はそこまでやるの?この女性ならそのことを悩んでしまうか、絶対拒否して逃げて帰ってきてやっぱり悩んでしまうのではないかという気がしますがね。 |
No.48 | 7点 | 頼子のために- 法月綸太郎 | 2008/12/28 09:21 |
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推理小説としては良く出来ていると思いますが、終結は何でこんなこととするのですかね。もうちょっと手前で終わってくれれば良かったのに。倫太郎の態度もやっぱり賛成しかねるし、もう少し違った形にいくらでも変えられると思うのだけど。
法月倫太郎はこれを書くまでは比較的順調に長編を発表していたのに、こんな風にしてしまうから悩んで次がなかなかかけなくなったのじゃないかな。まあいつもうじうじ悩んでいるのがこの作者の持ち味ともいえるからしかたないか。 |
No.47 | 10点 | 占星術殺人事件- 島田荘司 | 2008/12/21 22:25 |
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20年ほど前に読んだときは人間をばらばらにしてなどという異常な世界への嫌悪感と、御手洗のエキセントリックな性格についてゆけずあまり好きといえない作品であった。今回再読してみると自分が本格物を多く読んでこんな世界に免疫が出来たせいか、これぞ本格推理小説といった感じがすばらしく非常に面白かった。トリックは大体覚えていたにもかかわらず再読した今回のほうがはるかに良い印象。人間の嗜好って変わるものですね。 |
No.46 | 7点 | 一の悲劇- 法月綸太郎 | 2008/12/15 22:28 |
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この本の評価は私にとっては難しい。プロットは良く考えられているし、過去の名作をストーリーの中にちりばめてあるのも推理小説好みのものにとって楽しい。しかし主人公があまりに自分を責めすぎてとても陰鬱であるうえに、最後には救いようのない悲劇が訪れる。法月の才能は当時の新本格作者のなかでも秀でたものがあることは認めるのだが、このうじうじと暗い雰囲気はちょっとね。よく出来た小説であると思うが評価はちょっと低め。 |
No.45 | 7点 | カンナ 飛鳥の光臨- 高田崇史 | 2008/12/14 09:11 |
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QEDと異なる歴史推理シリーズ第1弾。事件のトリックはまあこんなものと言った程度だが、歴史推理は聖徳太子の存在などこの手の話に興味があるものにとってはあまり珍しいものでないなと思っていたら、結論は意外なところに展開して結構面白かった。ちょっとこじつけ風なむりもあるけど。
男女二人の主人公でQEDと似ているが、甲斐はタタルほどエキセントリックでなく、貴湖はナナチャンよりずっと頼りになる。さらに忍者はっとりくんに出てくるような忍者犬も登場する。漫画チックだが軽く読めて楽しかった。この話はシリーズのようで完結しておらず次回が楽しみ。 |
No.44 | 7点 | 紫の悲劇- 太田忠司 | 2008/12/07 22:27 |
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霞田兄妹シリーズを順次再読しているが、これは新しいバージョンの第1作。シリーズを短期間に順を追って読んでいくと作者の意図が何となく分かる。登場人物も怪しげだったり、志郎と対立する探偵もかなり変な人間で、良い意味でも悪い意味でも本格推理小説物の雰囲気が強くなってきている。太田忠司の小説は読みやすく読後感も良いのだがやや物足りないところがあったので、個人的にはこういった方向への転換は悪くないと思う。 |
No.43 | 7点 | 東京『失楽園』の謎- 太田忠司 | 2008/12/07 09:34 |
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霞田兄妹シリーズはいつも目新しい何かを物語に反映させている。薀蓄と言った感じではなく自然に興味をわかせるようになっているところが楽しい。10年前に出てすぐ読んだが、当時あまり興味がなかったパソコン通信とエンジェルがキーとなっているためか、前作の巴里人形の謎と比べて印象が薄かった。トリックも犯人の一人もすぐ分かってしまうが、最終的には意外な結果となる。初読は6点、再読は7点が私の印象です。 |