皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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  | makomakoさん | |
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| 平均点: 6.17点 | 書評数: 898件 | 
| No.178 | 7点 | 水魑の如き沈むもの- 三津田信三 | 2011/01/16 09:44 | 
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| 民話とミステリーのおどろおどろしい合体は今回も健在で、このぶんについてはとても楽しめた。謎も多彩で刀城が最後のほうで多くの謎を整理して呈示して最終的にすべてを解くというミステリーのお決まりもかたちとしてはきちんとしているようにみえる。 ところがその解決の過程にいたっては探偵は無理な推理を長々とやってくれるし、最後も犯人が分からないままみんなを集めてしまうしとめちゃくちゃなところも目立つ。 以下ネタバレのところがあります。 旧帝国海軍の潜水具が見つかれば女子供でも装着して真っ暗な水中洞窟を潜水していける!。ピストルを手にしたら初めて手にした人が離れたところから連発で命中させて立ち会った人が気づく前に逃走できる!。睡眠薬で寝かされていた子供が起きた瞬間に大人の急所をいっぱつでしとめてしまえる!、など次々と気になるところが出てきてこれが出来るという仮定の下の推理が長々と続き、しかもその多くをまた否定してしまうこととなる。はじめっから無理なことは分かるでしょ。最終的な解決もどうもすっきりしない。 読んで楽しめたかといった点では十分に楽しんだのでそんなに文句をたれてもいけないとも思うが、現在一番期待している作家なのでちょっと言い過ぎかもしれません。次作を期待しています。 | |||
| No.177 | 8点 | 亜愛一郎の逃亡- 泡坂妻夫 | 2011/01/10 09:46 | 
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| なんとなく違和感を感じていたこのシリーズもここまで読み進むと愛着のようなものも感じられるようになった。 作者独特のユーモアとサービス精神は立派なもので、そのうえ奇抜なアイデアにあふれている。当初はこんなユニークなトリックの長編が読みたいと思っていたが、作者は多分マジックの一発芸のような趣でこの連作を書いたんだろうと一人で納得している。 単純ななテーブルマジックはあっと驚くが何度もやると種がわかってしまうように、これらの話も長編として色々な角度から推理するなんてことをすると傷が目立ってくるのだろう。 それにしても最後の「逃亡」は出場人物のカーテンコールのようでとても愉快だった。 | |||
| No.176 | 7点 | 山魔の如き嗤うもの- 三津田信三 | 2011/01/07 19:41 | 
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| 相変わらず雰囲気は好きです。こんな世界は三津田氏の独壇場でしょう。ただ最後の場面で二転三転する推理は意外性もあるが一度決め付けておいて次々と裏返すような展開はあまり好みではない。とても注目している作家ではあるがこれほど背負い投げを食らわせられるとちょっとね。こんなことなら違う推理を主張するワトソンのような存在があったほうが自然に思うけど。しかも最後に何となくぼんやりした結果となるのが消化不良の感を抱くところです。これだと犯人が結局誰でも成り立つのではないかといった感じがするのだが。 | |||
| No.175 | 7点 | 亜愛一郎の転倒- 泡坂妻夫 | 2011/01/02 11:14 | 
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| 皆さんの評価が高い「砂蛾家の消失」と「病人に刃物」はすごく奇抜なトリックではあるのですが、現実にはほとんどありえないことが職業上分かってしまうのである面でちょっとびっくりした。しばらくしてひょっとしたら作者のことだからこの小説をある一定の知識があるものが読めば現実にはありえないことが分かることを承知の上で書いたのかもしれないとの思いに至りさらにびっくりした。 まあそういったところがあるので一番好きなのは「珠洲子の装い」です。奇抜なトリックでもあり、なるほどこれならと納得させられる。 | |||
| No.174 | 6点 | 喜劇悲奇劇- 泡坂妻夫 | 2010/12/30 09:22 | 
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| この小説が出た頃は泡坂妻夫をもっとも注目しており新しいものが出るたびに買い求めたが、この作品以後ちょっと遠ざかってしまった。題名も章題も出場人物も回文というあまりに凝った内容のわりに小説としての魅力に欠けるところがあるように感じたからです。作者の小説の中ではだいぶ落ちると思うがここまでよくやったということでこの評価です。 | |||
| No.173 | 8点 | 亜愛一郎の狼狽- 泡坂妻夫 | 2010/12/30 09:10 | 
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| 亜愛一郎シリーズは作者のトリックに対する並々ならぬ才能と作者のサービス精神が詰まった短編シリーズ。トリックを考え出してからそれを小説化したような、まさにマジックの推理小説版。 推理小説が好きなら、ことにトリックを見破ったりだまされたりすることが好きな人には最適でしょう。 第1話の「DL2号」は奇抜であるがちょっとありえない?と思っていたが2話3話と読み進むに全く違った変幻自在なお話が語られる。 最初はトリック辞典を膨らませたような印象だったのが、亜に対しても三角形の顔をした洋装の老婦人にもしだいに愛着がわいてきてついにはとりこになってしまうという不思議な魅力がある。「掘り出された童話」では最初の童話が暗号であることはすぐ分かるのだがこれを解く事はまず無理でしょう。「ホロボの神」の骨の話には思わす笑ってしまう。 おもしろかった。 | |||
| No.172 | 7点 | しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術- 泡坂妻夫 | 2010/12/23 16:21 | 
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| トリックは大掛かりではないけど斬新で全く分からなかった。作者得意のマジックも組み込まれておりなかなか面白かった。もともと人をくったような話なのですごく感動するとか雰囲気がたまらないといったところはないがまあ軽く読めてそれなりに楽しい読み物でした。 | |||
| No.171 | 7点 | 凶鳥の如き忌むもの - 三津田信三 | 2010/12/21 19:47 | 
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| この小説は傑作ぞろいの刀城言耶シリーズの中ではこのサイトの評価が低い。読んでいて途中まではよい雰囲気だしなかなかじゃないかと思っていた。ところが密室の解決方法がいろいろと出てきて、これはちょっと無理かなと思いつつもまあ何とか納得しそうになると解決案を出した刀城本人から次々と否定される。どうなることかと思っていたらこれはダメでしょうという方法がじつはこの小説の解決であった。これってちょっとひどくない?医学の知識が無くてもこの方法だったらすぐに見抜けると思うけどね。でも雰囲気と個人的好みからちょっと甘い評価をしてしまった。 | |||
| No.170 | 6点 | 花嫁は二度眠る- 泡坂妻夫 | 2010/12/12 21:53 | 
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| 初期の泡坂作品はちょうど私が推理小説に興味を持ち始めた頃に出会ったため発表されるたびにリアルタイムで読んでいた。久しぶりに再読したがそれなりに伏線も張ってあり、ストーリーは全く忘れたので犯人もぜんぜん分からなかった。新作が出るたびにわくわくしながら読みいつも見事にだまされていたものです。でもこの作品ぐらいから泡坂作品からちょっと遠ざかってしまった。別に悪いというわけではないが小粒で驚きが少ない。 | |||
| No.169 | 6点 | 弥勒の掌- 我孫子武丸 | 2010/12/08 21:03 | 
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| この作者とはあまり相性がよいとはいえない。「殺戮」などは評判と裏腹に嫌な感じばかり。そのなかでこの作品はまず楽しめたし、トリックもちょっとびっくりするものでした。 | |||
| No.168 | 7点 | 午前三時のルースター- 垣根涼介 | 2010/12/08 20:57 | 
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| これをミステリーというには若干違う感じもする。青春小説や冒険小説のジャンルに近い。作者初期の作品であるが読みやすく知らない間に感情移入してしまう。導入が上手なのだろう。面白く読めることは間違いない。今の作者だったらもっとエロっぽい書き方をしそうだが、そういった描写はほとんどなくそれが返ってすっきりと気持ちが良い。主人公の少年の未来を読んでみたくなった。 | |||
| No.167 | 6点 | 借金取りの王子- 垣根涼介 | 2010/12/08 20:49 | 
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| 君たちに明日はないの続編。相変わらず読みやすく面白いのだが前作ほどのインパクトがない。前作ではリストラ請負会社などというとんでもないテーマに対する驚きがあったが、第2作となるとびっくりの度合いが少なくなる。でも読んでいて面白いことは確かです。 | |||
| No.166 | 7点 | 闇の喇叭- 有栖川有栖 | 2010/11/28 18:40 | 
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| これって北海道の人が読んだらどうかなと思う内容であるけれど、まずまず上手に出来ていると思う。ちょっとびっくりするようなトリックも盛り込まれているが本格物としてのインパクトとしては多少物足りないかな。 この小説は完結しておらず当然続きがあるものと思われ、作中の人物に愛着が深まってくればもっと楽しめるはず。次の作品を期待しよう。 | |||
| No.165 | 8点 | 厭魅の如き憑くもの - 三津田信三 | 2010/11/19 19:53 | 
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| 本格推理の面からいうとちょっと問題はあると思いますが、雰囲気がなかなかで楽しく読みました。文章も出てくる人物も分かり難いところがありすらすらとは読めず、ずいぶん読破するのに時間がかかった。読むのに時間がかかる小説はだいたいダメなのですが、本作品に関しては特有の雰囲気が長く楽しめたという印象です。ちょっと変わったところとしてはみんなを集めての最後の結末のところで、探偵役の刀城は次々とはずれの謎解きを繰り返し、最後にようやく正解らしきものにいたります。バカミスならともかくこんなへんちくりんな解決の仕方ははいかがなものかと少々感じました。 | |||
| No.164 | 8点 | 星を継ぐもの- ジェイムズ・P・ホーガン | 2010/11/03 16:41 | 
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| この作品の評がこのサイトにあるのはやはりミステリー好きが読んでも楽しめる内容だからと思います。SFとしてもよく出来ているのでしょうが謎解きとして読んでも実に面白い。翻訳小説はあまり好きではない小生でも途中からは時間を忘れて読みふけってしまいました。 | |||
| No.163 | 7点 | 妃は船を沈める- 有栖川有栖 | 2010/10/17 19:30 | 
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| 中篇をふたつくっつけたというのは本サイトの書評にもあるとうりでした。長さとしてはちょっと短い長編小説なのですがアリスと火村の掛け合いはやや少ないのは残念なのですが、その分推理小説としてコンパクトにそぎ落とされた魅力もあります。読みやすいしこういったこともときにはありなのではと思うけど、私としては作者のがっちりした長編のほうが好みです。 | |||
| No.162 | 7点 | ガダラの豚- 中島らも | 2010/10/10 07:56 | 
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| 盛りだくさんの内容をうまくミックスした小説。第1部の超能力とそれを暴くマジックが興味深くどんどん読んでいくと第2部はなんとアフリカの秘境冒険小説風となってこれまた大変面白い。第3部はまた舞台は日本。ケニヤの呪術者はとんでもない能力を発揮して主人公たちはとても太刀打ちできそうにないと思っていたらめちゃくちゃに近い展開となりめでたく終了。 おもしろかったね。かなり長い小説だが長さは全く感じさせない。最後の展開があまりに非現実的なのが欠点かな。 | |||
| No.161 | 7点 | 四月の橋- 小島正樹 | 2010/10/03 09:50 | 
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| 「武家屋敷」ではトリックの詰め込みすぎと登場人物の魅力不足が気になったが、本作品ではそういった点が大幅に改善されている。探偵も例の「っす」とは言わなくなったし、先輩弁護師の泉さんはとても魅力的に描かれている。トリックも無理がないため「武家屋敷」のように解法事典を読んでいるようなつまらなさは皆無となった。そのかわり推理小説としては小粒でややひねりが足りない気もする(読者とはかようにわがままで贅沢なものです)。 相変わらずあまりメジャーとは言いがたいリバーカヤックに対するお話がはじめのほうに長々と語られている。今回は川にちなんだお話であるのだが、カヤックの色々なテクニックのお話は薀蓄というよりはおたく気味である。 それにしても短期間に人物描写がうまくなったのはすごいではないか。次回を期待しよう。 | |||
| No.160 | 8点 | 首無の如き祟るもの- 三津田信三 | 2010/10/03 09:33 | 
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| 三津田氏の小説は初めてだが評判にたがわず面白かった。久しぶりのおどろおどろしげな本格推理小説。 このところ雰囲気だけの小説やトリックだけ(しかもかなり無理なトリック)の小説が多いなあと嘆いていた矢先であったのでそういった面では十分に満足がいく内容でした。 犯人も犯罪の過程や結果も私にはまったく推定できず(私はたいていの推理小説の犯人当てが外れるおめでたい読み手ではあるのですが)、作者の巧みなストーリー展開に巻き込まれ最後には唖然とした結果を十分楽しませてもらった。 残念なのは探偵が事件をあつかった読み物を読んでの推理といった形態をなしているため、物語の中の言葉使いなどを証拠として指摘するのはちょっと無理があるように思えたところかな。せっかく小説のはじめのほうにちょこっと探偵が出てきているのだからそのまま事件に絡ませるとよかったのに。 | |||
| No.159 | 6点 | 武家屋敷の殺人- 小島正樹 | 2010/09/26 09:05 | 
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| 話の展開は興味深いものがあり、トリックも盛りだくさんで何回も修正される謎解きも精緻であり、、、となれば本格推理小説として非常によく出来ていると思うはずなのだが、残念ながらそれほどでもない。原因は登場人物が平坦にしか描けていないことと、本の帯にあるようにトリックの詰め込みすぎにあるように感じる。私も探偵の「っす」としゃべるのは全くなじめない。弁護士がこんな言葉でしゃべったらまず自分の弁護人にはしないだろうな。 主人公の瑞樹はもう少し素敵でかわいい女性に描いてもらいたかった。そうすれば印象はぐんとよくなったのに。最後のトリックの解決も精緻なのだが解法事典の答えを見ているようでちょっとうんざりしてしまった。「つめこみすぎ」なのです。 旬な食材をふんだんに使った料理を高級な雰囲気のレストランで食べたのに意外と美味しくなかったような感じでした。 | |||