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こうさん
平均点: 6.29点 書評数: 649件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.11 5点 疑惑の場- パトリック・クェンティン 2012/02/09 23:57
 ホイーラー単独になって第3作目です。ハリウッドを舞台にしたサスペンスで往年の名女優の一人息子が主人公で彼の1人称で語られるストーリーです。
 安易な殺人が目立つのと主人公を含めた登場人物の誰にも共感できないため他の力作のようなストーリーの深みがない印象です。一見意外な犯人を据えているようにも見えますがストーリーが単調なため誰が犯人でもいいような読後感で残念でした。

No.10 7点 女郎ぐも- パトリック・クェンティン 2012/02/06 00:55
 ダルース夫妻物第8作でシリーズ最終作は以前「わが子は殺人者」での法月氏の解説で是非読みたいと思っていた作品でした。
 被害者の人となりが徐々に露わになる所は相変わらず上手いですしラストの部分の展開もホイーラー単独作の力作サスペンスをほうふつとさせます。犯人あてとしては物足りなくてもサスペンスとしては十分楽しめました。
 訳が古臭く特にアイリスのセリフが読んでられないのは少し残念な点です。
 Qパトリック名義でもジョナサンスタッジ名義でもホイーラー単独でもいいので未訳作品が訳出されることを期待したいです。

No.9 6点 追跡者- パトリック・クェンティン 2012/01/30 00:14
 はじめに発見される男性死体の扱いがあまりにもとってつけているのは不満ですが主人公の消えた妻の追跡劇や最後の展開は流石パトリック・クェンティンと思える作品です。
 ボクサー上がりの主人公が単独でここまでロジカルに行動できるのか、途中でなんで殺されないのか、あまりにも都合よすぎる展開でストーリーは進行していきますが楽しめました。

No.8 6点 悪女パズル- パトリック・クェンティン 2012/01/30 00:08
未訳の初期パズルシリーズもこんな感じなのかもしれませんが他作品に比べて明るい作風なのが印象的です。
 結構ばったばったと殺されてゆくのに深刻さが全くないのは古き良き本格世界といった感じで結構好きです。
 大きな意外性があるわけではないですが良くできた本格作品だと思います。訳もよかったです。(古い訳の女性のセリフは読んでられないので)

No.7 5点 悪魔パズル- パトリック・クェンティン 2011/03/21 23:57
先にkanamoriさんがご指摘されているようにパズルシリーズではありますが内容はスリラーで拍子抜けしました。
 記憶喪失テーマではありますが我々にははじめから正体がわかっており全体の構図もページ配分を考えれば想像しやすいです。
 結局犯人たちの目論見も杜撰であり記憶喪失患者が見つかるというのもそもそも大分ご都合主義です。(少しネタバレですが)ギブスの所は伏線でありましたが本当に〇〇させていればすむわけでそういう意味でも杜撰でした。
 正直後のホイーラー単独のサスペンスの力作に比較しても大分落ちる印象ですがこの前作が悪女パズルだったことを考えるとkanamoriさんもおっしゃっているように作風を変化させるターニングポイント的な作品だったんだろうなと思います。
 今後パズルシリーズの復刊、新訳が出ることはあまり期待は持てないかもしれないので出来はともかくパトリック・クェンティンが読めたこと自体は嬉しかったです。女郎ぐもだけでも復刊してほしいです。 
 尚あとがきはネタバレとはいかなくても前4作でのピーターの推理に触れており稚拙な内容です。手に入るものとしては先に悪女パズルを読んでおいた方が無難かと思われます。

No.6 7点 愚かものの失楽園- パトリック・クェンティン 2010/07/28 22:10
 不倫中の中年男とその妻、夫妻の養女(婚約中)といった家庭に女たらしの強請屋があらわれ殺人事件が起こり、という典型的なパトリック・クェンティン(ホイーラー)のサスペンスでした。
 真相、真犯人は登場人物が少なく当てやすいですが主人公視点で犯人候補が二転三転するのは「わが子は殺人者」などと同様です。展開が他作品同様でかなり露骨な伏線もあり予想通りでしたが楽しめました。

No.5 5点 網にかかった男- パトリック・クェンティン 2010/05/06 01:21
 巻き込まれ型サスペンスの様な作品で既読の作者他作品とはちょっと毛色が違う内容でした。
 田舎で生活する画家が主人公でアルコール中毒で問題を抱えた妻が彼が不在の時失踪するが外面のいい夫人の失踪を警察、住人は彼の殺人と決めつけ、というサスペンスです。
 お得意の家族の悲劇を扱った割にはこの夫妻の描写がそれぞれ深みがなく夫人の失踪にもさほどひねりがなくまたこの手のサスペンスはむしろ他作家に類型作がたくさんあるのでパトリック・クェンティンの特長がでているとは言い難いです。ただいわゆる住民、警察の対応はおそろしいなあと感じる描写でサスペンスとしては十分かもしれません。
 真相が推理の余地のないのはいつものことです。 

No.4 6点 金庫と老婆- パトリック・クェンティン 2010/05/01 01:37
 法月綸太郎氏の「わが子は殺人者 」での素晴らしい評論を見て期待して数年前に手に取ったのですがこの作品集を読む限りこの作者は長編の方が持ち味を発揮しているな、と感じた覚えがあります。アンソロジーなので仕方ないのかもしれませんが同じような家庭内の隠された悲劇(?)の様なものを扱っているせいか読了するとさすがにげんなりしてきます。なんとなくヘンリイ・スレッサーを更に意地悪くした様な作品集のように感じました。
 個人的には一作目の「ルーシイの初恋」が一番楽しめました。

No.3 7点 わたしの愛した悪女- パトリック・クェンティン 2010/04/26 01:09
 パトリック・クェンティンお得意の家族の悲劇を扱ったサスペンスです。
 アンドリュウ・ガーヴ の某作品の様に今まで知らなかった人物像が明らかにされるストーリーですが描き方はこの作者らしくこってり描かれています。
 タイトルが露骨すぎ先入観が与えられるのが不満ですし元々の「The Green eyed monster」の方が秀逸なタイトルだと思います。ストーリーを読む限り主人公だけ知らないのはいくらなんでもおかしすぎる展開ではあります。本格的手がかりがあるわけではないのもいつも通りですがラストの部分はうまくまとめられていると思います。
 個人的にはパズルシリーズや 女郎ぐもを是非復刊してほしい作家です。

No.2 9点 わが子は殺人者- パトリック・クェンティン 2008/11/02 23:42
 ホイーラー単独での第一作目です。これも「二人の妻を持つ男」同様家族がテーマの作品で地味ですが気に入っています。
 パズルシリーズのシリーズキャラクターであるダルース夫妻のピーターの兄ジェークが主人公です。
 本格的推理の余地はあまりないのですが地味ですが良くできた作品だと思います。人物造形もうまく、ストーリーが進むにつれて主人公の周りの人物の本当の姿が露わになってゆく所など非常にうまいです。あまり「カタルシス」はないですが良くできたミステリであり初期のパズルシリーズも復刊してほしいと個人的に思っています。
 尚解説は法月綸太郎氏が書いていますが秀逸な出来です。

No.1 10点 二人の妻をもつ男- パトリック・クェンティン 2008/07/06 23:59
 パトリック・クェンティンは岡島二人の様に共作作家ですがこれはホイーラー単独作品です。
 主人公は出版社勤務で社長の婿で、その生活空間に失踪した前妻があらわれて起こるサスペンスです。
 人物描写は丁寧に描かれ味わい深い作風で個人的には好きな作家です。ある人物(犯人とは限りませんが)の本当の姿がストーリーが進むにつれて露わになってくる、というのが特徴でこの作品でも巧く書かれています。
 「わが子は殺人者」共似ている所はありますが、いずれも面白いです。
 難点は本格ミステリではなく、殺人が起き犯人もいますが犯人のみに殺人が可能だったわけではなくそういうロジカルな説明はされない点ですが個人的には本格ではなくても非常に好きな作家です。
 尚わが子は殺人者で法月綸太郎氏が解説していますがとても素晴らしい内容です。法月氏のある作品はおそらくこの「二人の妻をもつ男」の一部をモチーフとしていると思いますので法月ファンであれば読んで損はないと思います。最後まで読めば類似に気がつくと思います。 
パトリック・クェンティンの再良作であり敬意を表して10点に変更しました。

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こうさん
ひとこと
 私の採点で10点は単なる好みです。10~20年前の初読時の印象で不当に高いのもありますが気にしないでください。トリックものは古臭くても昔初めて触れたトリックだったら高得点の傾向が高いです。
 ガイド...
好きな作家
泡坂妻夫、有栖川有栖、東野圭吾、岡島二人、梶龍雄 
採点傾向
平均点: 6.29点   採点数: 649件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(60)
有栖川有栖(32)
岡嶋二人(24)
折原一(22)
連城三紀彦(20)
泡坂妻夫(19)
石持浅海(17)
梶龍雄(17)
法月綸太郎(12)
パトリック・クェンティン(11)