皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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こうさん |
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平均点: 6.29点 | 書評数: 649件 |
No.249 | 7点 | だれもがポオを愛していた- 平石貴樹 | 2008/10/08 01:13 |
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本格ミステリの醍醐味が味わえる作品でした。最近まで知らなかったのですが数年前有栖川有栖氏のエッセイで激賞されていたので手にとってみましたが新本格以前にここまでこてこての本格が書かれていたのが驚きです。
設定もいかにも「昔の本格」という感じですが作風は違いますがやはりクイーンをほうふつとさせる作品です。 アメリカのボルティモアでポオの作品を模倣した日系人「アシヤ家」を襲う連続殺人事件が起こりたまたま日本からきた大学を卒業したばかりの女性刑事「更科丹希」が名探偵役で全ての謎を解き明かす作品です。 いわゆる大技系の作品ではないですが数々の伏線がありそれらが真相として意味を持ってくる作品でクイーンの国名シリーズに一番近い出来だと思います。(激賞していた有栖川氏の国名シリーズ以上に)また昔ながらの読者への挑戦も入っておりいうことありません。読み手として繰り返し戻って推理する習慣をなくしてしまったため更科丹希の推理にただ感心するだけでしたがそういった推理しながら読む方には最高の作品だと思います。推理しながらクイーンを読んでいた高校時代に読みたかったなあ、と思います。 そもそも日本の若い女刑事が探偵役という設定も現実にはあり得ないのですがこのいかにも本格の作品ではありかな、と思いますしキャラクターも魅力的で本格らしからぬ探偵役だと思いました。 ポオの作品を読んでなくても楽しめますが個人的には20年ほど前中学か高校のときアッシャー家の崩壊を途中で挫折し全く覚えていなかったので読んでおけばよかったと少し後悔しました。難点は大技ではない点と謎への興味が読者によっては薄い可能性がある点くらいでしょうか。丹精な本格としては本当に国名シリーズ並みの出来です。 |
No.248 | 10点 | イニシエーションラブ- 乾くるみ | 2008/09/30 22:56 |
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このサイトの評判で購入し読んだ初めての本でした。たまたま自分の「高評価の近い人」に入っていたdeiさんとぷねうまさんのお二方の10点にこの作品が入っていて「乾くるみ」という作家も「イニシエーションラブ」という作品も全く知らなかったのですが購入してみました。
読み始めるといわゆる恋愛小説のような内容で正直読むのが苦痛でしたが予備知識が全くないため乾くるみは恋愛小説作家なのかと思いどこにミステリ要素があるのか最後にはわかるだろうくらいに考えあまり期待せず読んだのですが、最後までほとんど何も考えずにミステリ読みにあるまじく途中の大事な伏線の部分をかなり読み飛ばしながら最後の数ページでやっと違和感を感じる始末でした。その時点で一度冒頭まで戻ったのですが結局真相を見破れずあの一言まで到達してしまいました。何も考えずに読んだおかげで久し振りの衝撃をうけ大満足です。 読み返すと典型的〇〇トリックのバリエーションで伏線の山であることには気づきます。正直事前情報なしでは全く疑うことすらなかった自分が情けなく思いましたが事前情報があってもあのストーリー内容ではミステリ的疑いを持ちながら読むのはたぶん無理だったかな、と思います。 やはりこの作品はミステリ以外の何者でもないと思います。恋愛小説は読んだことがないのですが恋愛小説としてはおそらく陳腐なのではないかと思います。 このサイトのおかげで読むことができたことも感謝です。これからも参考にさせて頂こうと思います。 自分の馬鹿さかげんには腹が立ちましたが作品は大満足でした。これだけ衝撃を受けたのは個人的には昨年読んだ中西智明のカルト作品の「消失!」以来でした。 事前情報なしで読むことを強くお勧めしたい作品です。deiさんとぷねうまさんのお二方は内容に触れず簡単に書いて下さったので楽しめたのはそのおかげです。 |
No.247 | 7点 | 斜め屋敷の犯罪- 島田荘司 | 2008/09/28 21:38 |
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今初めて読むと感動できないかもしれませんがあの時代に占星術に連発してよくぞ本格を連発して出してくれた、と個人的には思います。(実際には色々書かれていますが)これと北の夕鶴はトリックの実現性が問題となるかと思いますが、スケールの大きいトリックを見せてもらっただけで個人的には大満足だった記憶があります。なんだかんだいってトリックの大きさで言えばやはり初期作はすごかったなと今更ながら思います。 |
No.246 | 6点 | 三度目ならばABC- 岡嶋二人 | 2008/09/28 21:22 |
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岡島作品らしい会話を楽しむ短編集といった印象でした。キャラクターのため作品の明るさは岡島作品の中でも屈指でしょう。ただミステリとしては軽めなのは仕方ないと思います。あまり深く考えずにさっと読めました。 |
No.245 | 8点 | 法月綸太郎の新冒険- 法月綸太郎 | 2008/09/28 21:15 |
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短編の法月綸太郎作品は所謂パズラーとしては他作家より一枚上だと思います。世界の神秘を解く男は個人的にはあまり面白くなかったですが他作品はどれも十分楽しめました。作りは単純ですがひねりのある「身投げ女のブルース」が最も面白かったです。 |
No.244 | 5点 | 同級生- 東野圭吾 | 2008/09/28 21:06 |
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個人的には学園ものを読むのがかなりきつくなった印象があります。(作品のせいではないですが)大学生ものはまだ共感できるのですが高校生ものだと読んでいてもあまり感情移入しづらいです。事件、真相については小振りですが悪くはないと思いますがやはり教師に対する作者の悪意をどうしても感じてしまいその点は気持ち良いものではありませんでした。 |
No.243 | 6点 | パワー・オフ- 井上夢人 | 2008/09/28 20:59 |
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ミステリではないですが楽しめた作品でした。岡島作品同様会話中心にストーリーが進行しテンポよく、引き込まれました。
テーマがコンピューターウイルスのため時間が経つとどんどん色褪せてゆくのは仕方ないですがまだ現代でも通用するのではないかと思います。 |
No.242 | 9点 | Yの悲劇- エラリイ・クイーン | 2008/09/28 20:52 |
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20年前に初読のときは犯人がネタばれしていて読んでいてもさほど面白みがなかったですが、後年読んだときはロジックの整合性に感動した覚えがあります。やはりX,Y,Zは一貫して現代でもロジックに浸れる傑作たちだと思います。(レーン最後の事件は正直楽しめませんでしたが)
犯人指摘の鍵となるルイザの尋問の部分は忘れがたいです。あと凶器のマンドリンも忘れがたいです。 「意外な犯人」ということでいえば現代では驚くに値しないかもしれませんがロジック、館ものの雰囲気、名探偵と全てそろっており傑作には違いありません。ロジックはしっかりしておりトリックから推理する作品ではないため犯人あても十分可能な作品だと思います。 一つ難点をいえば「オランダ」もそうですが「本」を読んだ人のうちの誰かが犯人に決まっているのに警察の捜査が杜撰なことです。「名探偵」の引き立て役であるためしょうがないことではありますが。 |
No.241 | 8点 | 法月綸太郎の功績- 法月綸太郎 | 2008/09/26 00:04 |
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いわゆる正統派本格色の短編集として好感が持てました。謎と謎解きだけにクリアカットにまとめられていて新本格作家の中でも短編集の水準は個人的には一番かなと思います。
「イコールYの悲劇」は出来はともかく都筑道夫の「黄色い部屋はいかに改装されたか?」へのオマージュとなっている点だけでも満足でした。作品としては皆さん同様「都市伝説パズル」と「ABCD包囲網」が気にいっています。 個人的には本家のABCの殺人動機は好きではないのですがこれはひねりがあって面白かったです。中国蝸牛の謎はそもそもミステリといえるかどうか、と感じました。 法月綸太郎も短編には非常に合っている感じで全体として良かったです。 |
No.240 | 4点 | ダブルダウン- 岡嶋二人 | 2008/09/25 23:50 |
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テンポのいい会話でひきこむ力は流石と思います。正直ミステリとしての出来も良くなくいきあたりばったりの杜撰な犯行だと思いますが読みやすいですし後味も悪くないと思いました。出来を考えるとまあまあな読後感でした。 |
No.239 | 7点 | パラレルワールド・ラブストーリー- 東野圭吾 | 2008/09/25 23:43 |
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主人公側からの視点で全く違うストーリーがカットバック形式で語られていきますがさすがに時間軸をずらしているのは予想つきます。あとはどう収束してゆくかですが「記憶操作」がテーマとなっておりミステリとはいえないと思いました。あとはストーリーにのめりこめるかどうかですが比較的スリリングに書かれていて実現困難だと思いますが読み物として面白いと思いました。
ただ主人公が前の彼女と途中で遭遇したときの会話で本人が記憶違いを確信したはずですが同じようなケースで昏睡に陥った後輩がいたと思いますがストーリー上まずいのではないでしょうか。 |
No.238 | 9点 | オランダ靴の秘密- エラリイ・クイーン | 2008/09/21 23:39 |
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個人的には国名シリーズでは最も気に入っている作品です。ミステリとしての出来ならおそらくギリシャ棺なのでしょうがとっつきやすくわかりやすいことから個人的には「オランダ」が好きです。
この作品もロジックはしっかりしており「絆創膏」の小道具もいいと思います。難点はクイーンだから仕方ないといえばそれまでですが犯行を未然に防ぐための警察の動きがあまりにもお粗末なことです。最初に犯人の性別がわかるのにもかかわらず予定通り殺人が行われているのはどうか、と思いました。読者の視点でいえばそうやって殺人が繰り返されてフェアな情報が集まってくるわけですが。情報提示については一番フェアな作家でしょうしクイーンが面白くなるとクリステイがいかにフェアでないかがよくわかると思います。国名シリーズはどれもフェアな作品ですが読みやすさでいえばやはり「オランダ」か「エジプト」だと思います。 |
No.237 | 7点 | 二の悲劇- 法月綸太郎 | 2008/09/21 23:24 |
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個人的に首なし、顔なし死体ものはあまり好きではなくこの作品も初読時はそれだけで低い評価でしたが再読して見直した印象です。
顔なしトリックも「エジプト十字架」よりひねっていると思いますし途中でそれが明らかになったところで終わりでなく更に一ひねりがあり二人称視点も活かされていると思いました。 ただページ配分上最後の一ひねりがわかりやすいのが難点かもしれません。 また倫太郎のキャラクターはクイーンの模倣なのでしょうがより「ちゃらく」している印象でやはり好きにはなれないです。 |
No.236 | 8点 | 獄門島- 横溝正史 | 2008/09/21 23:14 |
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数ある古典作家のなかで横溝正史だけ偏見がありこれまで読んでなかったのですが今回初めて手に取ってみました。
作品そのものは現代でも通用する傑作だと思いますが不満点がいくつかありました。まず見立て殺人の必然性がどうしても納得できません。そもそも見立ては日本特有のものだと思いますが読者ではなく作品人物に対してわざわざ見せる必然性がないと思います。普通に殺しっぱなしのほうがはるかに手間もかからず安全に思えてしまいます。恐怖心を与えるとしてもこれは三人目の段階では少なくとも被害者候補は明らかですし見立てるまでもないでしょう。 そして三人目が誰かわかっていての警備があまりにも杜撰に感じます。 また殺人決行の条件がありある情報、あるものが島に入ったことから決行される所は上手いと思いますが、結末を見る限り情報を自分の目で確認してから決行する時間の余裕がなかったようには見えませんでした。しかも「本陣」を解決した「名探 偵金田一」がいるとわかってるのに滞在中にあえて決行するのもどうかと思います。例え金田一でなくても不審者が一人でもいない方が犯行は確実になりそうですがわざわざ金田一がいる時にあえて殺人をおかす犯人のキャラクターも前時代的です。 またやはりあの名セリフは「〇〇〇〇」と聞こえた、というような書き方もしくはひらがな、傍点などがやはりフェアかと思い現代ではアンフェアだと思いました。 作品そのものは傑作だと思いますがそういった点は不満でした。 |
No.235 | 4点 | 虹を操る少年- 東野圭吾 | 2008/09/21 22:56 |
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この作品はミステリではないと思います。ストーリーにひきつけられる力はあると思いますしユニークな発想だと思いますが、ミステリ的盛り上がりがなく不満です。また読者としての読解力が不足しているだけなのかもしれませんが作者が訴えたいことがよくわかりませんでした。 |
No.234 | 6点 | 慟哭- 貫井徳郎 | 2008/09/21 22:51 |
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〇〇トリックものでした。個人的には前例があっても見せ方がうまければ良いかな、と思いますがこのトリックの場合はミステリ的な盛り上がりはトリックにのみかかっているのでわかってしまうと盛り上がりが半減してしまうのは仕方ないかなと思います。この作品はわかりやすくその点フェアに書かれているのでしょうが盛り上がりはいまいちでした。また犯人のキャラクターが個人的にはいまいちで「慟哭」にも感情移入できませんでした。ストーリーとしては無難にまとまっているとは思います。 |
No.233 | 9点 | 葉桜の季節に君を想うということ- 歌野晶午 | 2008/09/17 23:40 |
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推理作家協会賞受賞作の評判で初めて読んだ歌野作品でした。この手の作品のバリエーションはいくつもあると思いますがとにかく初めて読んだバリエーションだったので満足でした。他作品と違いわかったあとの読後感やそもそも成立するかどうかの違和感は強く残りますし誰も考え付かなかったというよりどちらかというと他作家が考え付いてもやらなかったアイデアなのかもしれませんが個人的にはそれでも満足でした。伏線については張られていてもそれで感心はしませんでしたが。
個人的には作品全体に多少問題があってもトリックのみでも評価に値するのではと思わされた作品でした。 |
No.232 | 7点 | ハサミ男- 殊能将之 | 2008/09/17 23:19 |
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叙述トリックの一バリエーションですがこの手の作品でもわかりやすいお手本のような作品だと思います。前例があることも作品の減点にならずまた通常の作品であればトリックの判明がそのまま作品の真相でストーリーが終わるものがほとんどであるのに比べてもこの作品は構成もよく考えられていると思います。叙述トリックでの驚きがない、もしくは小さいのは仕方ないと思いますが個人的には楽しめた覚えがあります。 |
No.231 | 7点 | 終章からの女- 連城三紀彦 | 2008/09/17 23:07 |
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連城作品はトリッキーなものが多いですが、これはトリッキーさとは一味違う作品でした。
冒頭数ページで女が男を刺殺したシーンが描かれ、その後第一部でマンションで夫が刺殺、放火されその妻が容疑者となって、というストーリーです。 あまり前情報なしで読んだ方が良い作品でしょう。本格ではなく真相というか動機は事前に読者サイドに手がかりがないので絶対にわからない類のものですが奇抜でした。 一般人としては行動、考え方が真似できないものですがキャラクター描写により何となく納得させられます。この作品も他作品同様男女間の模様が色濃くでていますが他作品よりむしろこってり、どろどろした印象で読後感はあまりよくないかもしれません。 ただ真相まで読み進めたところで読者は納得できないまでも事前の伏線、犯人の描写の意図が理解でき今までの連城作品とは違う面白みがありました。また冒頭のシーンの使い方は中町信を思わせます。 知名度は高くないと思いますが秀作だと思います。 |
No.230 | 8点 | 異邦の騎士- 島田荘司 | 2008/09/15 22:22 |
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他の皆さんと同じですがやはりミステリとしての評価とは別で読み物として感動した覚えがあります。発行順に予備知識なく読めたのがラッキーでした。龍臥亭以降の里美と石岡のストーリーは正直好きにはなれずパロディサイト以降は全く読んでいませんしこの作品の価値を落としていると個人的には思います。ただ斜め屋敷も含めた初期三作はいずれも非常に楽しめました。 |