皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
あびびびさん |
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平均点: 6.33点 | 書評数: 669件 |
No.15 | 8点 | 獣たちの墓- ローレンス・ブロック | 2016/04/24 13:26 |
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倒錯3部作ー「墓場への切符」、「倒錯の舞踏」そして本書。どれも抜群に面白い。文庫540ページを一気読みしてしまった。
麻薬ディラーの妻が誘拐され、身代金を払ったにもかかわらず、ばらばらにされた死体が届く。そのディラーの兄がアルチューで、禁酒集会で知っていたマットに捜査依頼が来る。 手掛かりは0でスタートするが、あきらめない、最後まで食らいつく地道の捜査で確実に犯人との距離を縮めていくマット。その犯人たちは常習犯であることが分かり、ついに対決の時が来る。 最後は恋人エレインとの愛の葛藤、自身の想いをすべてを吐きだし、爽やかなエンディングに導いていく。 訳者の田口俊樹さんの翻訳が実に素晴らしい。元原稿より味わいがあるのでは…と思ってしまうほどだ。 |
No.14 | 6点 | 殺し屋 最後の仕事- ローレンス・ブロック | 2015/06/28 11:33 |
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依頼人が指定したホテルを出て、他のホテルを予約するなど、プロに徹したはずの殺し屋ケラーだったが、なかなか殺害オッケーが出ない。不信感を募らていると、案の定、相手の罠にはまり、要人暗殺の犯人にされてしまった。
この事件は全米に轟き渡り、ケラーの顔写真がマスコミに晒される。そのなか、必死の逃亡生活を送るケラー。復讐?再生?この窮地をどう切り抜けるのか? |
No.13 | 5点 | 償いの報酬- ローレンス・ブロック | 2015/03/24 22:23 |
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あのミック・パルーがかなり年下の女性と結婚し、アイリッシュウィスキーを控えるシーンは、思わず笑ってしまった。ライオンが、どら猫になった瞬間だった。マットとの夜の会話も少なくなったが、この夜は久しぶりにマットの回想録を聞く。
悪行三昧だった犯罪者のジャック・エラリーが、アルコール中毒を治癒する機会に、過去に迷惑をかけた人々に謝罪して回る。そのなかには強烈な怒りを含むものが多く、迷惑や拒絶が生まれたが、もっと悪い「過去の秘密」を暴露する種類のものがあった。そこに殺人事件が起こるのは必須だった…。 今回は少し長すぎた。結末もすっきりしなかった。 |
No.12 | 8点 | 八百万の死にざま- ローレンス・ブロック | 2015/02/03 19:28 |
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ローレンス・ブロックの代表作と言えばこれだが、マット・スカダーシリーズは8作も読んでいて、あまり感動がなかった。最近の作の方が切れ味あり、ニューヨークらしい情緒が楽しめる。
しかし、それはエレイン(少し登場)、T・J、ミック・パルーがいないせいでもある。やはりシリーズ物は、順を追って読まなければならない。深く反省である。 ただ、その評価は思い入れがありすぎて残念がる個人的なもので、作品的には完成度が高く、ページをめくる手が止まらなかったのは否定できない。8日目にして禁酒を破り、意識不明になったマットが如何にも興味深かった。 この作家の表現として、「なぜ、この作品を8点以下にできる?」というところではないか。 |
No.11 | 5点 | 頭痛と悪夢- ローレンス・ブロック | 2015/01/21 13:36 |
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霊能力があり、心霊コンサルタントとして静かに暮らしていた女性が、夢で殺人現場を見て、警察に駆け込むと、まさにその通りの事件があり、解決した。彼女の評判は一気に上がり、依頼人からの電話がひっきりなしに掛かるようになった…。表題作の「頭痛と悪魔」は、ほぼ予想通りの展開で目新しさがなかった。
初めの3編、「ダヴィデを探して」、「慈悲深い死の天使」、「夜明けの光の中に」、いずれもマット・スカダーものがおもしろかった。 |
No.10 | 7点 | 泥棒はライ麦畑で追いかける- ローレンス・ブロック | 2015/01/06 15:00 |
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大人の色香を漂わせた女性が、バーニイに手紙を盗んでほしいともちかけてきた。これまで正体を隠し続けてきた著名な作家が、正体を暴かれかねない手紙が競売にかけられるのを阻止したいというのだ。女性の魅力に参り依頼を引き受けたバーニイは、手紙の所有者の住むホテルの部屋に忍びこんだ。ところがそこで彼が見つけたのは、こともあろうに他殺死体だった…。
忍び込んだ先に死体があった…これは定番である。そこから濡れ衣をどう晴らすかだが、自分が泥棒だけに一筋縄ではいかない。有名な作家とは、「ライ麦畑でつかまえて」のサリンジャーを意識した写真さえ現存しないという放浪の作家で、この存在が大きなカギになるのは言うまでもない。 最後にエルキュール・ポアロのごとく、ホテルの一室に関係者を全員集めて事件を解剖する。その後に抜け目なく、泥棒らしく…。 |
No.9 | 8点 | 墓場への切符- ローレンス・ブロック | 2014/12/24 23:32 |
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「とりわけモットリーと言う、人間の皮をかぶった怪物の書き方が卓抜である。ロバート・B・パーカーも、スー・グラフトンにもできないことを、いや、だれにもできないことをブロックはやってくれた」と、スティーブン・キングがべたほめだった。
確かに、モットリーと言う殺人鬼は、凄かった。これにはエレインもくじけそうになった。しかし、マット・スカダーがいた。彼は敢然と立ち向かった! 最初から犯人が分かっているので謎ときは皆無だったが、これはマット・スカダーシリーズの中でも上位ランクされると思う。 |
No.8 | 6点 | 死への祈り- ローレンス・ブロック | 2014/12/24 23:17 |
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ある資産家の夫婦が待ち構えていた二人の強盗に殺された。しかし、その強盗は内輪もめをし、二人とも死んでしまう。警察はそれで一見落着としたが、夫婦に可愛がられていた姪がマット・スカダーに真相を暴いて欲しいと依頼する…。
大都会だからこそ発生する事件、ニューヨークの闇に潜む謎の犯人にスカダーは持ち前の粘りと根性で迫る。 それにしても、スカダーの友人のミック・パルーは凄い悪人だが、魅力的である。彼が好むアイリッシュ・ウィスキーのジェムソンを飲むようになってしまった! |
No.7 | 8点 | 皆殺し- ローレンス・ブロック | 2014/12/15 17:47 |
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今まで、チャンドラー、ロス・マクドナルド、ロバート・B・パーカーとハードボイルドを読んできたが、このマット・スカダーシリーズは自分の中では集大成みたいな感覚。
洒落た文句があるわけではないが、会話のうまさ、読後感の良さが満足感を増長させる。 ただ、物語は残酷で、ずっと親しんできた人間が次々に死んでしまう。まさに、「皆殺し」である。この先、このシリーズはどうなるのか? |
No.6 | 7点 | 処刑宣告- ローレンス・ブロック | 2014/12/05 01:30 |
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デイリー・ニュース誌のコラムニストに届いた一通の投書。署名も差出人も書かれていないその手紙は、翌週起こる殺人を予告したものだった。
誰が見ても有罪の性犯罪者が州法で無罪になり、『ウィル(意志)』という処刑人が予告殺人を敢行、そして同じように無罪放免となったマフィアのボスも殺された。ニューヨークはパニックに陥り、次の処刑宣告に巨大都市がざわめく…。 マット・スカダーは例によって粘り強い捜査ですべての事件を解決するが、あくまでも謙虚で冷静に、自分のスタイルを崩さない。しかし、マット・スカダーの友人はすべて魅力的で羨ましい限りである。最後のT・Jとのやりとりは思わずホロリと来てしまった。 |
No.5 | 7点 | すべては死にゆく- ローレンス・ブロック | 2014/12/03 13:41 |
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殺人鬼がどういう方法でアパートに忍び込み、殺人を企てるのか?なるほどそういう手があったか!
マット・スカダーも60代の半ばになり、この内容だから、シリーズの終わりを感じさせたが、続編があるということでホッとした。ある意味、マンネリ化は感じるが、それでも常に新しい発見があり、本当に外れのないシリーズである。 |
No.4 | 7点 | 死者との誓い- ローレンス・ブロック | 2014/11/15 00:16 |
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弁護士のグレン・ホルツマンがマンハッタンの路上で殺害された。その直後にホームレスの男が逮捕され、事件は公式には解決する。だが、容疑者の弟がスカダーのもとを訪れ、ほんとうに兄が殺人を犯したのか捜査を依頼してきた。
マット・スカダーが愛する元高級娼婦のエレインとの会話は本当に洗練されていて楽しい。それと、殺し屋ミック・パルーとの深夜の会話もこのシリーズの肝だ。 |
No.3 | 8点 | 死者の長い列- ローレンス・ブロック | 2014/11/15 00:10 |
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年に1度の秘密の会合を続ける男たちの集団「三十一人の会」。現在のメンバーになってから32年後、会員の半数近くが相次いでこの世を去っていることが判明。偶然とは思えない死亡率の高さに不審を抱いた会員の依頼を受け、私立探偵スカダーは調査を開始する。
犯人は急がない男だった。スカダーは粘り強い捜査で男をとらえ、ある方法で犯人を永遠に封じ込める。ハードボイルドを堪能させてくれる作者には賛辞を贈るしかない。ニューヨークよ、今夜もありがとう…である。 |
No.2 | 6点 | 泥棒は深夜に徘徊する- ローレンス・ブロック | 2014/11/06 13:13 |
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作者が楽しんで書いているのが良く分かる。主人公の泥棒、バーニィが、ストレス解消のために入った部屋は女性弁護士の一人住まいだったが、不覚にもその女性が男を連れて帰宅。とっさの判断でベッドの下にもぐりこんだが、その女性はバーで酒に麻薬を入れられ、ノックアウトの状態だった…。
それからいろいろ不可解な事件が続くが、最後に全関係者20数人を一堂に集め、エルキュールポアロのごとく事件を推理する。バーニィーが凄すぎる! |
No.1 | 8点 | 倒錯の舞踏- ローレンス・ブロック | 2014/10/30 18:38 |
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元警官、マット・スカダーは魅力的な探偵だった。大都会ニューヨークの陰に潜み、社会では処理できない邪悪に敢然と立ち向かっていく。自らギャングとの付き合いがあり、清廉潔白な身とは言えないが、快楽殺人は絶対許さない!そんな強い思いが最終章の爽快アクションにつながって行く。
久々にスカッとした結末だった。 |