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[ SF/ファンタジー ]
双生児
クリストファー・プリースト 出版月: 2007年04月 平均: 6.33点 書評数: 3件

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早川書房
2007年04月

早川書房
2015年08月

早川書房
2015年08月

No.3 6点 八二一 2021/05/12 20:36
第二次世界大戦、ヨーロッパ戦線に表と裏を双生児一人一人に語らせる。対立する二人の男の目を通して描く壮大な「騙り」の世界に感動。

No.2 6点 小原庄助 2020/07/31 10:04
一種の改変歴史もので、この手の小説は、歴史のifを描くのが常道だが、そこはワザ師プリーストだけに、よくある改変歴史ものとは似ても似つかない。
主役の一卵性双生児は、オックスフォード大学のボート選手。英国代表としてベルリン五輪に出場し、ヒトラーを生で目撃。さらにはルドルフ・ヘスとの対話あり、美少女を連れての脱出行あり、三角関係あり。恋と冒険の瑞々しい青春小説パートを経て、双子は戦争の渦にのまれていく。
第二次大戦初期を背景に(大事件ではなく)ありふれた人間的な営みによって歴史の流れが変わってゆく過程を描きたかったそうだが、いたるところにトラップが仕掛けられ、一瞬も油断できない。小説の中で迷子にならないように気を付けて、じっくり読んでほしい一冊。

No.1 7点 Tetchy 2015/10/19 01:42
SF作家のプリーストが今回取り上げたテーマは第2次大戦時代を扱った改変歴史物語。J・L・ソウヤーと云う名の双子の奇妙な人生譚だ。

第2次大戦時の英国首相として有名なチャーチルの手記が言及する良心的兵役拒否者でありながら現役の英空軍爆撃機操縦士という相矛盾する価値観を内包するソウヤーと云う人物の正体は同じイニシャルを持つジャックとジョウゼフのJ・L・ソウヤーと云う全く同じイニシャルを持つ双子のそれぞれの来歴が混同されたことだったと判明する。戦争の混乱期にありがちな間違いであるのだが、プリーストの語りならぬ騙りはそんな定型に陥らない。

まずJLとジョーという同じJ・L・ソウヤーという名前の双子が片や英国軍の軍人の道を、一方は兵役拒否者として赤十字で働く道を選んだそれぞれの人生が手記や記事の抜粋などの様々な形式で語られる。
メインとなるのが戦争ドキュメント作家スチュワート・グラットンが興味を示したチャーチル直属の副官となったほとんど無名のソウヤーなる人物で、それが読者の1人が自身のサイン会に持参した手記によってJ・L・ソウヤー大佐であることが高い確率で確認される。
しかしそこに書かれている内容と関係者の証言や手記とは異なる事実が判明してくる。

これらの記述は様々な人物による手記や著作、記事の抜粋によって構成されている。これが全て“信頼できる語り手”であるか否かは不明であり、それらによって物語が進んでいることに留意されたい。従って前に書かれた内容が新たな事実によって否定され、物語のアイデンティティが揺らいでいく。

これは夢か現か妄想か?この足元が揺らぐ感覚はまさにプリースト作品ならではのものだ。

とにかく読書中は付箋だらけになってしまった。しかしそれこそが本書を読み解くのに必要な作法であることは物語の最後に気付かされる。上に書いたように2人のソウヤーの手記の内容は異なり、さらには挿入される様々な記事や手記においてもまた辻褄が合わないことが多々書かれているため、前に書かれた文章を行きつ戻りつしながら補完していくことが必要なのだ。しかしそれがまた物語の、いや本書で語られる歴史の真実を揺るがせることになるのだから侮れない。

さて誰が嘘をつき、誰が真実を語っているのだろう?いやもはや事実の受け取り方はその者に与えられた情報や体験によって構成されるが故に、純然たる真実はあり得ないのか。
一見ストレートな物語と見せかけて読み返すと様々な語り―騙り?―が散りばめられていることに気付かされるという実に複雑な構成を持っていることに気付かされる。全くプリーストは相変わらず一筋縄ではいかない作家だと思いを新たにした。
この複雑な物語を解き明かす一つの解釈として巻末の大森望氏の解説に書かれた緻密な説明は必読。ホント、この作品には解説本が必要だ。


クリストファー・プリースト
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