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[ パスティーシュ/パロディ/ユーモア ]
地下鉄サム
ジョンストン・マッカレー 出版月: 1956年11月 平均: 6.33点 書評数: 3件

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東京創元社
1956年11月

東京創元社
1959年01月

No.3 7点 弾十六 2025/05/14 14:28
元は『地下鉄サム 第4』日本出版協同(1953)→『世界大ロマン全集第6巻』東京創元社(1956)→創元推理文庫(1959)という流れ。全10篇収録(全て国会図書館デジタルコレクションで読める)。
『地下鉄サム 第1〜第3』日本出版協同(1952〜1953)坂本義雄 訳はグーテンベルク21で『地下鉄サム』&『続地下鉄サム』として電子本になっている。全29篇収録。
他、ヒラヤマ探偵文庫『地下鉄サム選集』に3篇収録されてるが1篇ダブりなので、日本では手軽にこのシリーズ全百三十数篇中、41篇が読める。古いファンはEQアンソロジー『完全犯罪大百科(下)』に1篇収録されていたのをご記憶だろう。英語が出来る人ならあと28篇読める(MegaPack[Thubway Thamに10篇、Victorian Roguesに1篇]、WikiSourceに数篇、Internet Archiveに11篇)。なので頑張れば70篇のThubway Thamシリーズが読めますよ!(2025-05-17追記: あと9篇の邦訳が『平凡社 世界探偵小説全集7』に見つかった。なので日本語と英語で現在79篇が読めます!)
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以下、創元推理文庫の収録作品。年代順に読んだ方が良い作品もある、と思う。
原題を同定しようと頑張ったけど、原文が入手できず、推定がほとんど。記号なしは確定、☆は「たぶん」、?は「決めてに欠けるがそれっぽい」DSM= Detective Story Magazine、#️⃣表示はシリーズ通算番号、MegaPakは電子本"Thubway Tham MegaPack"収録、WikiTextはWiki sourceに英文あり(リンクはJohnston McCulleyから)
(1)「サムの放送」 ☆"Thubway Tham on the Air" (初出DSM 1930-12-06) #️⃣99
(2)「サムと厄日」 ☆"Thubway Tham’s Ides of March" (初出DSM 1928-03-24) #️⃣89
クラドックが明日は三月十五日、シーザーが殺された悪い日だ、と講釈。次の日、サムは仕事をしに出かけるが…
(3)「サムと指紋」 ?"Thubway Tham—Framed" (初出Street & Smith’s DSM 1931-05-09) #️⃣101
クラドックの様子がおかしい。何かたくらんでいるのか。
(4)「サムと子供」 ☆"Thubway Tham—Kidnaper" (初出DSM 1930-11-22) #️⃣98
最近誘拐が多くて憂鬱なクラドック、手柄を立てようとサムに張り付いてうるさい。
(5)「サムとうるさがた」 ?"Thubway Tham’s Ignoble Patht" (初出DSM 1930-12-13) #️⃣100
昔、旅先で知り合った田舎者がNYに来た。言うことがことごとくむかつく。
(6)「サムの紳士」 "Thubway Tham’th Honethty" (初出DSM 1922-10-21) #️⃣54 MegaPak4
(7)「サムと名声」 "Thubway Tham and Elevated Elmer" (初出DSM 1919-03-04) #️⃣12 WikiText
地下鉄は高架線より優秀か?大きな顔はさせないぜ!登場キャラ: エルマー
(8)「サムと大スター」 ?"Thubway Tham Shakes a Star" (初出DSM 1928-03-31) #️⃣90
映画を楽しみに行ったら、意外なものを観た。映画スターを狙え。
(9)「サムと贋札」 "Thubway Tham's Inthane Moment" (初出DSM 1918-11-19) #️⃣6 MegaPak13 WikiText
たばこ屋で働くサム。クラドックは怪しむが…
(10)「サムと南京豆」 ?"Thubway Tham’s Skyrocket" (初出DSM 1926-07-03) #️⃣81
不景気がスリ業界にもやって来た。他業種の男がサムのところに来て…

No.2 6点 斎藤警部 2025/05/13 16:50
“本格推理小説の合い間に、ユーモア味あふれる絶妙な連続推理コントをどうぞ!”

と古い創元推理文庫の見開き惹句には書いてあるが、たしかに二百ページ足らずの本短篇選集は、勢いで一気に読んでしまうより、何かの折に一篇ずつゆっくり読む事が推奨される。 実際、この本はしばらく放っておいていいかげん恋しくなって来た頃を見計らって次の一篇に目を通す、というやり方がとても良い。

また “本格推理小説の合い間に” と明記されてある以上、これは文字通り本格推理小説と本格推理小説の間に挟んで読むのが望ましいのであって、仮に本格以外のミステリに手を出した場合、たとえば本格度50%くらいのサスペンス小説、同じく30%くらいのハードボイルド小説と続けて読んだのなら、次は本格度20%くらいの冒険スリラーで残りの穴を埋めて、そこでやっと本書の次の一篇に目を通す資格が生じるというものだ。 また、前記の冒険スリラーを読むべきタイミングでうっかりコテコテの本格推理小説を読み始めてしまった場合は、一気に読破してしまうと合計で本格度180%になってしまうので、この問題を回避するに当たっては、例えばその本格推理小説を五分の一だけ読んだ時点(諸君、ここでちょうど本格度100%になる計算だ!)でヒョイと「地下鉄サム」に乗り換えて(地下鉄だけに乗り換えて)、一篇だけ読み終わり次第、したり顔で本格推理小説の方に立ち戻る、といった策が挙げられよう。 他にも色々なやり方が考えられるだろうから、各自自覚と責任を持ってフレキシブル且つセクシーにグローバルに対処していただきたい。

本作は、NYC下町の地下鉄専門スリ “地下鉄サム(Thub-way Tham)” と “クラドック探偵(警察の人です)” が毎回ゲスト(?)を迎えて繰り広げる明るいドタバタ犯罪劇。 ほんのささやかなミステリ風味を浮かべた掌編に近い短篇たちはいかにも昔のミステリ雑誌の彩りと呼ぶに相応しく、手を変え品を変えのアイデア勝負は稚気とさり気ない覇気に満ちています。 翻訳が異様なほどスムーズにこなれているのも特筆したい。 まるで実は最初から日本語で書かれたかの様だ。 運よく見つけたら読んでみて!

サムの放送/サムと厄日/サムと指紋/サムと子供/サムとうるさがた/サムの紳士/サムと名声/サムと大スター/サムと贋札/サムと南京豆(ピーナツ)

No.1 6点 クリスティ再読 2018/12/10 22:43
「新青年」って探偵小説誌というよりも、モボ御用達の総合娯楽雑誌でかなり「雑食」の雑誌だった、というのがどうも見逃されがちのようにも思うよ。カシコキあたりで愛読されて何か最近人気みたいなウッドハウスもそうだし、本作みたいな洒落た都会派ユーモア小説も「新青年」名物だったわけでね。まあイマドキ「地下鉄サム」なんて言っても誰も知らなくて、「新青年」も遠くになりにけり、やね。
で本作「怪傑ゾロ」の原作者として知られるマッカレーのもう一つの人気作だった。ニューヨークの名人スリ「地下鉄サム」を主人公として、サムを追いかけて腐れ縁の探偵クラドックとの、軽妙なコントのような短編集である。のんびりと落語を聞くように楽しむのが吉。「江戸っ子だってね!」なんて合いの手を入れたくなるような、サムのべらんめえな職人気質が楽しい。ここらへん戦前でウケた要素だろうね。
マッカレーというと、早い話最初期のパルプマガジンの人気作家だったわけで、いってみりゃハードボイルド以前のハードボイルドみたいなものだ。ゾロもそうだが、ブラック・スターのような「マスクト・ヒーロー」がお得意でね。それこそグリーン・ホーネットやバットマンの原型みたいなキャラのわけだよ。こういうパルプ・マガジンのヒーロー物やウェスタンの中から、ハードボイルドな探偵たちも育ってきたわけで、そういう連続性みたいなものを、タッチは違えども「地下鉄サム」の中に窺うこともできるのかもしれないよ。
軽く読んで楽しめて、往にし方に思いを巡らせるネタに事欠かない本作はいかがかな?


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ジョンストン・マッカレー
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