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[ 青春ミステリ ]
“文学少女”と死にたがりの道化(ピエロ)
野村美月 出版月: 2006年04月 平均: 5.60点 書評数: 5件

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エンターブレイン
2006年04月

No.5 5点 バード 2021/09/27 06:23
ライトさやかわいいキャラで整った味にミステリ要素がスパイスとしてピリッと利いていて、コクのある作品だったわ。ただ、ひと昔前の作品なのでキャラクター造形は少し古めかな。絵も特別良いという訳でもないので、少し鮮度が気になったかも。
シリーズ二冊目以降に手を出すかと言われると・・・、またお腹が空いたらいただくわ。

No.4 5点 ボナンザ 2021/02/27 15:09
最初に人間失格をもってくるあたりがいかにもだが、野村の作風と竹岡の淡いイラストがうまく合っていると思う。

No.3 6点 じきる 2020/12/10 11:44
ミステリー系のライトノベルでは一番好きなシリーズ。

No.2 6点 メルカトル 2019/07/05 22:26
「どうかあたしの恋を叶えてください!」何故か文芸部に持ち込まれた依頼。それは、単なる恋文の代筆のはずだったが…。物語を食べちゃうくらい深く愛している“文学少女”天野遠子と、平穏と平凡を愛する、今はただの男子高校生、井上心葉。ふたりの前に紡ぎ出されたのは、人間の心が分からない、孤独な“お化け”の嘆きと絶望の物語だった―。野村美月が贈る新味、口溶け軽めでちょっぴりビターな、ミステリアス学園コメディ、開幕。
『BOOK』データベースより。

謎が謎を呼ぶミステリ的側面と、適度な萌え要素のラノベ的側面が丁度良い具合に融合した逸品。勿論キャラは立っていますのでご安心を。「文学少女」と言うだけあって、今回は太宰治愛が止まらない作品になっています。『人間失格』がモチーフです。想像ですが、本シリーズでは一人ずつ内外の作家や作品に関する思い入れが語られているものと思われます。
作風は全く違いますが、プロットや構造は京極作品に類似するところが見られます。凝ったトリックなど存在しませんが、その見せ方によっては十分ミステリとして成立するのだという事を証明したような内容です。ただ、遠子の推理(想像)は何を根拠にしているのか判然とせず、伏線を回収して論理を組み立てるような本格ミステリ志向の方には不向きだと思います。真相に意外性はなく、驚くような結末を期待すると裏切られます。

最終的には、人間はどんなに異端でも、当たり前だけど人と違っても死んではならないという一点に集約されるのでしょう。そこに救いを求めるのは、読者として当然であり、「こんな私でも生きていてよい」、自ら命を絶つのは絶対駄目なんだ、たとえ太宰がそうだったとしても・・・それが結論なのかなと、思います。

No.1 6点 おっさん 2014/12/31 10:28
「わたしはベーカー街の名探偵でも、安楽椅子に座って編み物をしながら事件を解決する物知りおばあさんでもないわ。ただの“文学少女”よ」

ファミ通文庫ですw
内外の文学作品がモチーフとなる事件を、ミステリ・タッチで描く“文学少女”シリーズ(長編8、短編集4、外伝4)の、第1作目。カバー裏には、「口溶け軽めでちょっぴりビターな、ミステリ学園コメディ、開幕!!」と刷り込まれています。
じつはこれ、2006年の刊行直後、いまはすっかりご無沙汰していまっている若い友人のM君から、最近読んで面白かった本として、薦められたタイトルでした。彼の進取の気性と、読書家としてのセンスには一目置いていたので、買い求めはしましたが・・・ちょっと読んで、あまりにマンガチックな導入に鼻白み、そこで断念。その後、M君とのあいだでも、本書が話題にのぼることはありませんでした。
ところが。
最近になって、個人Twitter の企画「ライトノベル・少女小説から選ぶオールタイムベストミステリ」で、この作品が票を集め、第二十位に食い込んでいるのを見て、急にM君が思い出され、なんだか無性に読みたくなり、再び手に取ってみることにしました。
「失礼しまぁぁぁす! きゃうんっ!」と言って女の子が転んでも、何するものぞw
お話は、こんな感じで始まります。

高校の文芸部に所属する、ただ二人の部員。物語をこよなく愛する、自称“文学少女”天野遠子(あまの とおこ)――愛ゆえに、彼女は本(小説)のページを、むしゃむしゃ食べる!――と、若くして断筆した天才作家にして、いまはその正体を隠し、遠子のためだけにショート・ストーリーを紡ぐ“ぼく”こと、井上心葉(いのうえ このは)。
この二人が、ひょんな事から、後輩の竹田千愛(たけだ ちあ)の恋愛相談を受けることになる。部長の遠子の命令で、得意の文才を生かし、千愛の想い人であるという、弓道部の「片岡愁二」へのラブレターの代筆を始めた心葉。それが功を奏し、千愛の恋はうまく軌道に乗ったはずだったのだが・・・
彼女の態度への違和感から、片岡愁二のことを調べてみると、学内にそんな名前の生徒は存在しないことが分かる。問い詰める心葉に対し、あくまでその存在を主張する千愛は、愁二からもらったという手紙を見せるのだった。
「愁二先輩は、今、すごく苦しんでるんです……けど、あたし、バカだからよくわからなくて……だから、だから……お願いです、愁二先輩のこと、助けてあげてください」
『恥の多い生涯を送ってきました』――と始まるその手紙には、太宰治の『人間失格』に共感した片岡愁二という少年の、凄絶な内面が吐露されていた。殺人の告白、そして自殺のほのめかし。
ではやはり、彼は実在するのか? しかし――どこに存在するのか?

ラノベであっても、あくまで現代日本の日常をベースに物語が進行する本書は、超自然現象とは無縁です(本を食べる――という、ヒロインの人間ばなれしたキャラクター設定だけは、正直、この世のものとは思えませんが。この点は、よほどマンガ、アニメ耐性のある読者でないとキツイ)。なので、ミステリアスな状況設定にはあくまで合理的な理由づけがあり、「片岡愁二」をめぐる序盤の謎は、中心となる事件(スリーピング・マーダー)をあぶり出す役割を果たします。
その、過去の転落事件の解決に関しては――しかし安直のそしりを免れません。大の大人が、揃いも揃って、高校生のガキのまえで告白大会を始め、最終的には当事者同士で、罪の十字架を背負い続けることで自己完結してしまう(おまけに主人公側も含めて、誰も、真相を隠蔽することに抵抗を感じていない)。
ここ(五章 “文学少女”の推理)で終わっていたら、ただの凡作です。ところが本書の真価は、一見メインと思われた、その事件の謎解きのあとにこそ、ありました。
そこ(六章 “文学少女”の主張)に至り、お話はそれまで見せていた風景を一変させます。ああ、これはそういうミステリだったのか! 明と暗の、見事なコントラスト。
シリアスからコメディへ、コメディからシリアスへ、めくるめく転調を重ねるクライマックス(太宰治というモチーフに、ここで別な光が当てられる)は、感動的です。
前述のような瑕疵もあり(さらに言えば、もし過去にそうした事件が起こっていたら、屋上は閉鎖され、簡単に人が出入りできなくなるのでは?)、無条件で、一般のミステリ・ファンに推薦できるわけではありません。
でも、そんなことはどうでもいいw
ラノベであることを逆手にとったような、全体の仕掛けに唸った筆者としては、シリーズの、このあとが気になってしょうがありません。今回の手口は、繰り返し使うわけにはいかないだろう。では、ホワイダニットのような方向性でいくのか、それとも・・・?
どうやら、しばらく付き合うことになりそうです。

ごめん、M君、もっと早く読んで、君といろいろ話がしたかったね。


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