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[ 本格/新本格 ]
インディアン・サマー騒動記
文庫版で『夜の床屋』に改題
沢村浩輔 出版月: 2011年03月 平均: 5.83点 書評数: 6件

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東京創元社
2011年03月

東京創元社
2014年06月

No.6 6点 まさむね 2018/02/18 20:03
 「夜の床屋」と改題された文庫版で読了。
 (文庫版の)表題作から連なる前半の3短編は、個人的には好きなタイプの「日常の謎」系統。いずれも、スマートに物語に入り込ませてくれます。
 後半は、ガラッと雰囲気を変えていきます。自分はどこに連れられて行かれるのか…といった不安感と期待感の中で読了いたしました。不思議な余韻を残す作品です。
 既存短編にプラスαの意味付けをしつつ連作短編に仕立て上げた工夫は認めつつも、その評価は分かれそうな気がします。

No.5 5点 E-BANKER 2015/06/21 20:02
~奇妙な事件に予想外な結末が待ち受ける、新鋭による不可思議でチャーミングな連作ミステリー~
単行本版の「インディアンサマー騒動記」を改題した文庫版にて読了。
2011年発表。

①「夜の床屋」=無人駅の前には人っ子ひとりいない寂れ切った街・・・と思いきや、なぜか明かりを煌々と灯している一軒の床屋。なぜその床屋はこんな場所で夜にだけ営業しているのか? 真相は相当強引な解釈。
②「空飛ぶ絨毯」=ファンタジックなタイトルだが、なかなかサイコな一編。夜寝ているうちに敷いていたはずのカーペットだけが盗まれるという珍事件がテーマ。
③「ドッペルゲンガーを探しに行こう」=小学生の一団とともに、廃工場へドッペルゲンガーを探しに行くはめになった探偵役の佐倉。少年たちは明らかに嘘を付いているのだが、ではなぜ・・・? 伏線は最初からあからさま。
④「蒲萄荘のミラージュⅠ」=Ⅰという名のとおり、⑤の前編という位置付け。でもここから作品自体の雰囲気が一編し、シリアスな展開になる。なぜ蒲萄荘に猫が大量に集まってくるのか・・・解答は次編以降。
⑤「蒲萄荘のミラージュⅡ」=Ⅱとはいえ⑥へつながるための導入部的な役割。
⑥「『眠り姫』を売る男」=タイトルだけでは何の意味か分からないだろうが、ファンタジックというか実に風変わりな物語。作中作の中に登場する男たちの正体は?

以上6編。ほか、ラストに解決編的なエピローグあり。
実に一風変わった連作ミステリー。
①を読んだだけでは、創元お得意の「日常の謎」系ミステリーかと思わせるが、途中から雰囲気が一編。
一体どういう話なんだ?!
という感覚になる。

解説等を読んでいると、もともとは⑥がミステリー賞受賞作であり、そこから後は⑥から芽(枝?)を出すように派生させていった様子。
正直、無理やり繋げたなぁーとの感覚は拭えないし、ラストも尻切れなのが消化不良気味。
連作だし、正統派ミステリーというよりは変格を狙ったものなのだろうから、次回作以降に期待というところ。
(②のような作品はリアリティ云々は別にして好み。)

No.4 4点 2015/06/09 10:01
いちばん気に入った『夜の床屋』にしても、最後にもうひとひねりほしいなという物足りなさを感じました。
この作品で賞をとりましたが、作者自身も書きあげてから書き足りない何かを感じたのでしょう。それで、なんとか挽回できないか、うまく続きを書けないか、と連作短編を書きつづけた、ということかもしれません(すみません、すべて想像です)。

それぞれの短編の独立性はかなり高いといえるし、作風さえも違うから、個別の短編を集めただけと聞いていれば、それなりに楽しめたのかもしれません(勝手なものですね)。
連作というのを知って読んだから、支離滅裂感しか残りませんでした。
しかも、後続の作品は、表題作と同様の物足りなさを抱えているような気がします。というか作者は物足りなさを生かして、連作「長編」として決めてやろうと狙ったのかもしれません(もちろんこれも想像)。
そして、エピローグで・・・。
このエピローグも、作者の言い訳のように聞こえました。
でも、たしかに後半の2,3編とエピローグとは、うまくつないだような感もありますね。

異なる作品群をなんとかつないでいくという気合やテクニック、力量は感じられなくはありませんし、本格ミステリーの変化球版といえなくもないのですが、個人的には、ちょっとちがうかなと感じました。まあ嗜好の問題だとは思いますが・・・。

No.3 6点 メルカトル 2015/04/09 21:37
何とも不思議な短編集である。まずそのタイトル、何が『インディアン・サマー』なのか、理解不能だ。と同時に、売れそうにないタイトルでかなり損をしていると思う。今回、文庫化に際して『夜の床屋』と改題されたのは大正解だろう。
そして、一応連作短編集の形をとっているが、それぞれが独立しており、「僕」という登場人物が共通しているだけで、ほかに関連性はないように見える。よく解釈すれば様々な作風が読めてお得感があると言える。ところが、エピローグで思ってもみなかったK点越えの着地を見せ、読者を驚かせる。すべてを読み終えて、日常の謎かと思えば本格、本格かと思えばファンタジーというように、万華鏡のように景色が変わっていく様は、ある意味戸惑いさえ覚える。
短編をかき集めて、あとから無理矢理取って付けたように関連付けたとの誹りを受ける可能性も大いにあるが、逆にその据わりの悪い後味が何とも言えない妙味を与えているように思えてならない。

No.2 6点 名探偵ジャパン 2015/04/06 10:17
「夜の床屋」のタイトルで文庫化したもので読了。
ミステリーズ!新人賞受賞作である「夜の床屋」を皮切りに、連作短編集の形となっている。
あまり多くを語るとネタバレになるし、かといって、個人的には諸手を挙げておすすめできるものでもない。まあ、私も書店サイトなどの評判が気になって購入したのではあるが。
表題作が受賞した「ミステリーズ!新人賞」は、読んでのごとくミステリ小説の賞だが、こうして連作として組み込むことでその様相は変わってきてしまう。途中で明らかに「これは解決してないぞ」という短編が出てくるので、「最後に何かある」とは感づいてしまうのだが。
こういう構成、好きな人は好きだろうが、私は、どうにも据わりが悪い短編集だと感じた。
三津田信三の刀城言耶シリーズ(怪奇だと思われたものが実は人為的なものだった)の逆パターン? って、これだけでネタバレしちゃうから。




No.1 8点 虫暮部 2013/04/22 14:11
“日常の謎”に見せかけて着地点が見事。本作の成立過程(既発表の短編三本を取り込んで異なる解釈を与える)を見ても、作者はホラ吹きの才があるようで楽しみ。


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