皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 本格 ] ケープコッドの悲劇 アゼイ・メイヨシリーズ |
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P・A・テイラー | 出版月: 2013年01月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 3件 |
論創社 2013年01月 |
No.3 | 6点 | kanamori | 2013/02/17 23:54 |
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避暑地ケープコッドを舞台にした米国黄金期の本格ミステリ。大手実業家ポーター家の雑用係で60歳になる老人アゼイ・メイヨを探偵役に据えたシリーズの第1作です。
本書は、有名作家の死体を貸小屋で発見することになった近所のコテージの女主人”わたし”の視点で語られていき、会話文が主体なこともあって確かにコージー・ミステリの雰囲気がありますね。 探偵役が個性的で、警察を使って関係者を呼び寄せるために自動車を盗んだり、証言を拒む人物を脅したりと、アゼイじいさんの突拍子もない探偵活動には面喰いました。また関係者を一堂に集めた終盤の謎解きでは、過去の多くの職業の体験が推理の拠り所となっていて男版ミス・マープルといった感じもします。ただ、論理的な謎解きとは言えないところがあって、そこはちょっと気になりますが。 |
No.2 | 6点 | mini | 2013/02/05 09:56 |
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某超有名掲示板でロジャー・スカーレット「白魔」の新訳復刊を待っているという書き込みが最近有ったが、今の海外古典のファンってそうなんだよなぁ
今では本国でも忘れ去られたような作家や残った未訳作ををやれ復刊しろ翻訳しろとかうるさいくせに、本来ならミステリーの歴史上重要な作家なのに誰もリクエストもしないで不当に無視されている作家も数多い フィービ・アトウッド・テイラーもそんな1人である 刊行前の論創社のTwitterでもテイラーの話題なんて出版関係者以外全然出てなかったしなぁ テイラーはヘイクラフトやクイーンの名作リスト表にも名前が載っていて、黄金時代アメリカン本格を語る際には落とせない作家の1人である にもかかわらず、スチュアート・パーマーと並んで誰もリクエストしたがらない不当な扱いを受けてる作家の代表格で、本来ならとっくに翻訳されていてしかるべき作家だった パーマーはコージーっぽいという意見も他のネット上で見たが、どちらかと言えばユーモアミステリーの先駆者としてクレイグ・ライスなんかに通ずる系譜だと私は思う コージーっぽさならこのテイラーの方がコージーな雰囲気を持っていて、テイラーを先駆として黄金時代後期のレスリー・フォードを経由してマクラウドで現代コージー派が成立したんじゃないかなぁ でも「ケープコッド」は書かれたのがまだクイーンもカーもデビューした頃の1931年の作なので、いかにもなアメリカン本格黄金時代らしさも持ち合わせている、ちなみにパーマーのデビュー作「ペンギンは知っていた」も同じ1931年なんだよねえ 探偵役のアゼイ・メイヨも味が有って、いかにもこの時期の本格黄金時代風だ ちなみに私は犯人を当ててしまった、完全に直感なんだけど中途で何となく自分が作家だったらこの人物を犯人に設定するけどと思ったらその通りだった それにしても日本の海外古典マニアって、テイラー、パーマー、レスリー・フォードみたいな作風の作家達には目を向けないんだよなぁ、誰もリクエストしないし、各出版社頑張って欲しいよ スカーレットみたいなどうでもいいマイナー作家はともかく、C・D・キングやアフォードみたいな作風だけが翻訳すべき作家じゃないのだが、日本の海外古典本格ファンってのは、よくよくお屋敷もの館ものと不可能興味とトリックしか求めてないんだなとガッカリしてしまう ところで論創社の全集も101巻目となりカバーデザインが変わったが、新しい装丁はセンスが有って良いねえ、ロゴマークも旧タイプの素人臭かったエンブレムと違って新しいロゴマークの方が断然良い |
No.1 | 6点 | nukkam | 2013/02/03 14:02 |
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(ネタバレなしです) アメリカ本格派推理小説の黄金時代に活躍した女性作家のフィービ・アトウッド・テイラー(1909-1976)は20作ほどのアゼイ・メイヨシリーズを残したことで知られています(1951年以降は作品を発表しなかったのは本格派推理小説の人気凋落と重なったからでしょうか?)。デビュー作にして代表作とされる、1931年発表の本書はアガサ・クリスティーと同様、いやそれ以上に会話を重視し、捜査を含めて動きの描写の少ないプロットの本格派推理小説です。時に単調にもなりますがほとんどの登場人物の証言がどこか怪しく、容疑は転々とします。推理があまり論理的でないのが少々惜しいですが、当時のアメリカ本格派推理小説を代表するヴァン・ダインやエラリー・クイーンとは異なる個性を感じさせる作品です。 |